【書籍化】物語に一切関係ないタイプの強キャラに転生しました 作:音々
【十三階段】達もまた一枚岩ではなく、そして彼らは偉大なる【光王】のためにネオン輝くこの街を基点として行動をしている。
しかし今、彼らはとある難題を前にしていて、如何にそれを排除するのかについて頭を悩ませていた。
「くそ、忌々しい騎士。デュランダルの担い手、ルクス・ライトめ……」
ある男が呟く。
それはルクスに対して暗殺者を何度も放っている男だった。
いや、より正確に言うのならばネオンシティに辛うじて残る騎士の血脈を根絶やしにするために、彼は多方面に暗殺者を放流していた。
しかし、だが。
ある時を境にその全てが阻まれている。
「そもそもあいつは何者なのだ。曰く【予言】にもやつの記載はないらしいし、本当にどこから湧いて出たんだ?」
「リヴァイアサンの確保も失敗、ナイト家最期の騎士であるフラーの排除も邪魔された。もはや無視は出来ん━━経歴は分かっているが、しかしやつの力の源は一体何なのだ?」
「分からん。少なくともライト家の聖剣は我らの手中にあり、魔剣の製造ラインに利用されているのは間違いない」
「では、あの聖剣はなんだ?」
「……分からん」
現状、ルクスは明確に【十三階段】に対して敵対の意志は見せていない。
ただ敵対するものを悉く打ち倒してきただけ。
しかしそれは間違いなく【十三階段】に対しての敵対行為であるし、だからと言って本格的に行動に移られると厄介だ。
虎の尾を踏んでしまう危険性、そしてその虎が【十三階段】に対して多大な被害をもたらしてしまう可能性。
何もかもがわからない。
だからこそ、頭を悩ませている。
マジで、あのいきなりポップしたアレは何なんだ?
「なにを話しているんです?」
と、そこで遅れて背広姿の男が現れる。
その中では最も階級が低く、しかし下っ端達に対して指示を出せるほどの地位はある、そんな男。
その男に対し、忌々しげに一人が言う。
「ああ。我らの敵対者になるかもしれない、ルクス・ライトなる男について話していた」
その言葉を聞き、その男は首を傾げる。
「うちのアルバイトが、何か?」
◆
俺が働いている会社はギリギリブラックではないが、しかし薄給であまり私生活で贅沢出来ない点について俺はどうしたものかと悩んでいた。
週休二日、しっかり残業代も出る。
しかし、給料がなぁ……
上司もクソだし、転職しようか?
しかし、このネオンシティで多めの蓄えもなしに転職するのは怖い。
だからひとまずお金を貯めてから考えよう。
……そんな訳で、今日も今日とてアルバイト。
マンションの部屋から出ると、ちょうど狙ったようなタイミングで可愛らしい隣人と鉢合わせになった。
「おじさま、こんにちは」
「今日もお仕事ですか?」
「ああ、リヴィアちゃんに、タナトスちゃん。こんにちは」
俺の知識にある、【十三階段】に利用されて主人公に敵対することとなる章ボスと瓜二つな少女━━何故か双子だけど。
より正確に言うのならば、彼女達のうち、タナトスは【十三階段】の手により殺されて、魂の半分を失ったリヴィアは魔剣に囚われ、そして章ボス【リヴァイアサン】へと変貌する。
……最初、俺は不謹慎だがようやっと主要キャラと出会えたという事に狂喜乱舞し、そして原作改変しようと二人を守ろうとした。
しかしながら、いつまで待っても二人に【十三階段】の魔の手は伸びてこなくて、俺は拍子抜けすることとなった。
そしてよくよく考えてみるとこの双子、色々と俺の知る二人と違う事がある事に気づく。
仲が良い、それこそ文字通りの意味で一つの存在になりたがっていた彼女達。
しかし目の前の二人はよく喧嘩をしているし、なんなら一人称が「私」で違っていた。
原作の【リヴァイアサン】は「私達」と言っていたし、やはり二人はただの名前が同じなそっくりさんなのだろう。
「今日も私とタナトスが作ったご飯を楽しみにしててよね?」
「そうです、おじさま。私、腕によりをかけて作るから、楽しみにしててください」
「ああ、楽しみにしてるよ」
俺は二人の頭を撫でて、それから職場へと向かう。
……アルバイトは、警備の仕事だ。
工場だが、今のところなにを作っているのかは分からない。
給料は多いし、クライアントも良い人なので、まあ、悪い事はしてないだろうけど。
それに基本、警備とはいえ危険人物が侵入してくる事なんてないし━━なんて思ってたら、なんか今日、侵入者が現れた。
「くそ、くそ。くそッ」
警棒とテイザー銃を構えながら油断なく距離を詰める。
対し、侵入者━━なんかやたらイケメンだった。なんかレジスタンスのリーダーしてそうっすね━━は俺を忌々しげに睨みつけてくる。
「あんたみたいな人が、どうしてここに……!?」
「お金が欲しいからだが?」
「……下衆がッ!!」
そこまで言われるほどなの、アルバイトしている事って!
いやまあ、今働いてる会社って副業禁止だからバレたらまずいのはその通りなのだが。
まあ、良い。
とりあえず適当に捕まえて━━
「俺達はここで立ち止まる訳にはいかないんだ!」
「あ」
と、なんか明らかに代償がありそうな真っ赤な炎に包まれた男。
その姿は次の瞬間、灰となって消えた。
自害、ではなさそうだし、転移系かな?
まあ、良い。
俺の仕事は警備。
とりあえず侵入者がいた事は報告しないと。
……捕まえられなかった事で、なんか減給されないかな?
◆
「と、まあ。そんなアルバイターなのですが」
「……いや、くだらん話を今するな。そのアルバイターがくだんのルクス・ライトな訳なかろう」
上司の言葉にその男は身体を震わせる。
「す、すみません! あいつは減給させときます!」
「クビにしとけ」