キタスイで魔法少女パロ。魔法少女キタサンは黒幕スイープと仲良しなようです。
注:原作とは別の世界線です。

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お祭り魔法少女は魔女様と仲良し

6月某日。バケツをひっくり返したような土砂降りが降っていた時のこと。

魔法少女がひとり、黒幕のラボの前に立っていた。

 

そんな彼女の側には、他の魔法少女たちの姿はない。ここに辿り着くまでの道のりの間で、散り散りになってしまったのだろうか。…否、そういうわけではない。

 

彼女は最初から“ひとりで”この場所にやって来ていた。しかも戦闘用の魔法少女コスチュームではなく、私服で。

 

魔法少女はおずおずと扉を開ける。部屋の中の空気は埃っぽい感じがしたが、もう慣れっこである。

 

「あら。来たわね、キタサン。」

 

扉の開く音に反応してか、それとも、そろそろ彼女がくるだろうなという推測からか。

 

こちらを振り向いた小柄な少女こそ、魔女・スイープトウショウであった。

 

 

 

 

 

(…なんて、小説の書き出し風に書いたはいいけどさ…)

 

あたしの名前はキタサンブラック。みんなからはキタサンとか、キタちゃんって呼ばれてる。職業は…学生、と、一応、魔法少女。何故一応なのかはご想像にお任せ。

 

さて、そんな魔法少女(一応)であるあたしがいま居るこの場所は、まぁ、その…確かに、ニュアンス“だけ”を見れば黒幕のラボで間違いないのだけど、恐らく多くのひとが想像するであろうその光景とは大幅に異なる。

 

壁際にはなんかすごそうな魔法陣の絵が飾られており、窓際には見たことのない生き物の干物とよくわからない植物の植わった鉢が所狭しと並んでいる。あと照明が部屋の中央にあるシャンデリアだけなので、どことなく暗い。

 

(ハロウィン!!部屋がめっちゃハロウィン!!)

 

流石にオレンジカラーの飾り付けモールがかかっているわけではないが、どことなく部屋の雰囲気はハロウィンのそれである。伝わってくれ。

あと他にあるものといえば、それなりに大きな本棚と、最近新しく買った小さなダブルベッドだけである。一人暮らしには十分だが、二人暮らしには少し狭い。スペース的にはそんな場所だった。

 

(以降、この場所は黒幕のラボではなく、魔女の家と呼ぶことにしよう。魔女住んでるんだし)

 

そんなどうでもいいことを考えながら、再び作業へと戻ったスイープさんをぼんやりと見つめる。彼女は初めて会った時と比べて、とてもいきいきしているように見える。きっとそれは、気のせいではなくて。

 

あたし達が出会った日のことをなんとなく思い出す。あれは半年くらい前だったか、1か月ちょっとくらい前だったか。

 

あの日も、今日みたいな土砂降りの日だった。

 

 

 

「あっ…あのっ!!」

 

ゲリラ豪雨の最中に敵(後から知ったことだが、どうやらスイープさんの使い魔であるらしい)と戦った直後で、濡れてべとべとと肌に張り付くコスチュームに気分が悪くなっていたころ。

 

晴れの日とは真逆に、人通りがなくなって閑散とした町の様子が視界にうつる最中、その視界の端に、ぽつんと映り込む魔女帽子の少女。

 

目と目が合う。魔女帽子の彼女は、面白い遊び相手を見つけた、と言わんばかりの笑みを口元で浮かべながら、回れ右180度して駆け出していく。

 

そんな彼女の様子が、なんだか放っておけなくて。否、放っておいたらいけないような気がして。

 

気が付けばあたしは、その魔女帽子を追いかけていたのだ。それはもう、コスチュームが雨で濡れることなんて、もうすでに頭から抜け落ちたみたいに。

 

そうこうしているうちに、一切人気の感じられない路地裏にふたりが揃った。この先は行き止まりで、所謂袋のネズミという奴である。なにやら魔法のようなパワーを使って壁をすり抜けて逃亡したりとかしないだろうなとか思っていたが、どうやら杞憂だったようである。

 

「へェ、魔法少女。あんたって、意外とへんてこなのね」

 

魔女帽子が振り向く。悪戯っ子のような笑みを口元に浮かべ、ふふんと言わんばかりに胸の前で腕を組む少女。だが、その瞳には悪戯っ子のような光も自信に満ちた雰囲気もなく、ただ、どこか、寂しくて、哀しそうに見えた。

 

「…貴方を、放っておけなかったんです」

 

彼女のそんな視線に晒されるのが、嫌で。彼女が哀しそうなのが、嫌で。

 

「へェ。それはどういう意味でかしら?

アタシに見惚れたから?アタシが危なっかしく見えたから?それとも・・・?」

 

あたしだけが幸せなのが、嫌で。誰かだけが不幸なのも、嫌で。だから。

 

「…貴方を、助けたいんです」

 

嫌だったから、あたしに何かできないかと思った。

 

「…ふーん、こんなところまでついてきて何考えてるのかと思ったら、そんな図々しいことを考えてたワケ?」

「そ、そんなこと……」

 

土砂降りはまだ降り続いていて、大きな雨粒があたしの体を濡らしていく。でも、今はもうそんなことどうでもよくて、ただ、あたしは。

 

「…ま、立ち話もなんだし。雨やみそうにないし。アンタはびしょ濡れだし。

アタシの家に来る?」

 

そう言って、魔女帽子は不機嫌そうに笑ったのである。

 

 

「ほら、着替え。それとタオル。お風呂はいまから沸かすからしばらく我慢してなさい」

 

魔女帽子の少女…もとい、スイープトウショウさんはそう言って、あたしにタオルと着替えをぽいぽいっと乱雑に投げ渡す。

 

「あ、ありがとうございます…」

 

髪を拭いて、顔を拭いて。そういえば渡された着替えってどんなのだったんだろうと思って広げてみれば、これまた何やら魔法使い風というか、なんというか。言うなれば、魔女衣装を簡略化して実用的にしたような感じだ。あとデザインがパーカーに似てる。

 

「あの、これ……」

「…本当はアタシの特別な使い魔のコスチュームとしてデザインしたものよ。完成後のイメージを膨らませるために試作したやつだから、魔力も何もない普通の服だけどね」

 

淡々とそう述べるスイープさんの声は、なんとなく寂しさがこもっているように感じて。多分、気のせいじゃない。と思う。

 

「それと、さっきの話の続きだけど。

 

アタシはね、もう誰の助けも借りないの。ましてや、魔法少女なんかのは、ね」

 

そう言った彼女の言葉は刃物のように鋭利で、視線は刺すように痛かった。

 

「でも、…貴方が、寂しそう、だったので」

「はぁ?アンタ、さっきアタシが言ったこと聞いてなかったの?そんな図々しいことをまだ」

「あたしは!!…確かに、図々しいことを言ってるかもしれません」

 

頼まれもしないのに助けたいだなんて、そんなの、図々しいにもほどがある。

 

「貴方とあたしはついさっき出会ったばかりで、あたしは貴方のことを何も知らない。

貴方の過去に何があったのかも、どうして寂しそうな眼をするのかも、全部…」

 

そうだけど。そうだとしても。

 

「でも!!

それでも、貴方には笑っていてほしいんです。幸せでいてほしいんです。」

 

だから、もう。刃毀れした刃も、折れてしまいそうな針も。全部、終わりにしよう。

 

「貴方のためなら、あたし、魔法少女だって辞めます!!魔物だろうが魔族だろうが、なんだってなって見せます!!だから!!

 

 

…貴方を、幸せにさせてください」

 

スイープさんの瞳の奥が、ぐらっと揺れるのを感じる。

 

目を離したら逃げてしまいそうな気がして。気が付いたときには、あたしはスイープさんの手をつかんでいた。

 

「…へェ。相変わらず、図々しいことを言うじゃない」

「うっ…」

 

あたしの腕が、軽くひねられて振りほどかれる。

 

…やっぱり、そうだよね。こんな身勝手で図々しいお願い、聞いてもらえるわけが…

 

「決めたわ。今からアンタを、アタシの使い魔にしてあげる」

 

…え?

 

「そ、それって…」

「もちろんただの使い魔じゃないわ!!たった一枠だけの、特別な使い魔よ!!

 

 

だから、アタシのために尽くして働きなさい!!寝床と逃げ場くらいは用意してあげるわ!」

 

幸せに、してくれるんでしょ?

 

そう言ったスイープさんの瞳の奥には、まだ、寂しさが揺れているように見えたけど。

 

でも、これから少しずつ、この寂しさも溶かしていけたらいいなと思ったんだ。

 

「はい!!」

 

 

 

 

(……とまぁ、こんなことがあった)

 

それから次第にあたしがこの家に泊まることが多くなって、シングルのベッドにふたりで寝るのはきついからという事でダブルベッドを買って。もちろん部屋に運び込んで組み立てたのはあたしである。なぜかと聞かれれば、あたしだったからとしか答えようがない。

 

そしてそんなスイープさんはいまどうしているのかというと、今日もまた泊りに来たあたしのことなんか気にも留めずに、スケッチブックとにらめっこしている。

 

「…。」

「‥‥。」

 

……寂しい‥‥。

 

彼女の膝の上にあたしを模したぬいぐるみがちょこんと座っているのも、余計寂しさと嫉妬心に油を注ぐ。あたし(のぬいぐるみ)め、さも当然のような顔をしてスイープさんのお膝の上に座りやがって。あたしなんか、一回も座らせてもらったことないのに。ついでに座ってもらったことも。

 

なんだか悔しかったので、その衝動のままつかつかとスイープさんに近づき、ぽいっと、ぬいぐるみをお膝の上から追い出した。

 

「!?ちょっ、何すんのよ!!」

「構って」

「は?」

「頭撫でてください」

 

衝動のままにそう言うと、彼女はしょーがないわねと呟いて、あたしの頭をよしよしと撫でてくる。

 

「…あんたって、ほんとめんどくさい使い魔よね」

「うぅ…でも、あたしが傍にいるんだから、たまには構ってくださいよ…」

「はいはい、たまにはね」

 

むむむ。あれ?おかしいぞ?スイープさんを幸せにするためにここに来たはずなのに、いつの間にかあたしがスイープさんに幸せにさせられてないか?

 

まぁいいか、とお決まりの定型文でとりあえず棚に上げる。スイープさんは最近、よく笑うようになった。全部が全部あたしの影響だと自負するわけではないが、初めて会った時と比べて、あたしに心を開いてくれるようになったのかなぁと思う毎日である。

 

「そういえば、さっきまで何の作業をしてたんですか?」

「あぁ。多分、見れば分かるわ。」

 

彼女は頭を撫でていた手をいったん離すと、机の上に置いてあったスケッチブックの一ページを指さす。

 

「?…これ、なにかの、衣装…ですか?」

 

なにやらディティールをわずかに簡略化したような振袖の絵が描かれていた。ご丁寧にも、パーツごとに矢印が引かれていて、ここは黒!とか、ここは赤!とか書いてある。

 

「アンタの新しい戦闘コスチューム…の、一案よ。もう戦うことは無いとは思うけど、戦闘コスチュームがずっと魔法少女時代のものと同じなのも気に入らないからね。

アンタはアタシの特別な使い魔なんだから、ここは専用のコスチュームに変えちゃおうと思って」

 

アンタのぬいぐるみを見ながらイメージを膨らませて、さっきようやく納得のいくデザインが書きあがったのよ、と彼女は自信満々に言った。

 

そうか。…そっか。“特別な使い魔”か。

 

「スイープさん、…あたし、ちゃんと使い魔できてるのかな」

 

一緒に過ごしてから何か月が経ったか覚えていないが、いまだに自信も実感も湧かない。

 

彼女が専用コスチュームを作ってくれるくらいの使い魔に、あたしはなれているのだろうか。

 

「もちろん!!アンタほど特別な使い魔はいないわ!!だからちゃんと、自信持ちなさい!!」

 

そう言った彼女の瞳の奥には、寂しさは感じられないように見えて。この世で一番の宝物を見つけたかのように、きらきらしていて。

 

「…はいっ!!」

 

だからそれが、すっごく嬉しいなって、そう思ったんだ。

 


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