TS転生貧弱冒涜ロリ 変身願望を持つのは間違っていない 作:アあゝ
助かる……!
ロキファミリアのホーム『黄昏の館』。その一角にある一室に複数の男女が集まっていた。
ハイエルフ、パルゥム、ドワーフ、そして神。
定例会議の議題はアイズが突然拾ってきた少女についてだった。
「リヴェリア、どうやら彼女は目覚めたようだね。どうだったかな」
「いくつか些細な疑問点はある。だがフィン、お前が感じたような危機感を抱かせる要素はないと断言しよう」
アイズとはまた違った金色の髪をした少年、ロキファミリアの団長であるフィンは論点になっている少女と先ほど顔合わせをしたリヴェリアに話を伺った。
時折右手の親指を抑える仕草を見せながら続く報告に耳を傾ける。
「ラヴクラフト……。うん、聞いたことのない姓だね。ロキはどう思う?」
自分が所属するファミリアの主神に伺い立てる。
全知零能。そんな存在になり果ててもなお、彼ら彼女は子供たちには到底わからないモノを知っているから。気まぐれに答えてくれないこともあれば、核心に迫る答えを齎すこともある。
知性を孕んだ蒼い瞳が答えを待った。
「う~ん、わからん! いやあ厳密には思い当たらん節が無いわけやないけども。その子との繋がりは多分ないなあ……」
主神があまり聞いたことのない訛りでそう答える。
似非関西弁で答えたその神、ロキは暇を持て余した神々の遊びの中である人間にちょっかいを出したことを思い出したが、すぐに可能性の中からはじき出す。
「少なくとも何処かとの因縁が続いている訳じゃないんだね」
フィンがロキに伺ったのはラヴクラフトと名乗った少女がクロッゾ家のように何か血の因縁を抱えていないかどうか。
自分の名前が無いという時点でスキルなど関係なしに厄ネタの匂いを感じ取っていたフィンの、最低限の身辺調査だった。
「アイズが連れてきたときは一体何事かと思ったが、まさか恩恵なしで闇派閥の人間を倒すとは見どころがあるわい」
ドワーフ族の男。たっぷりとひげを蓄えたガレスは関心を見せる。
「ああ、アイズの説明の時点では分からなかったが、本人と話して判明した」
「アイズが上手く伝えられなかったのはお主の雷が原因だと思うんじゃが……」
「ん? 何か言ったか」
「おお、こわいこわい」
ラヴクラフトをアイズが連れてきたとき、ロキファミリアは荒れに荒れた。
容態の分からない少女を診た後、リヴェリアはじゃが丸君を買いに行っただけのはずなのに何があったかをアイズに問い詰めたが、詳細がすべて明らかになる前に危険をさらしたアイズへの小言の嵐に変わった為何も分からなかったのだ。
「アイズとラヴクラフトの話を聞く限り、場所はダイダロス通りだ。ラヴクラフトがやった死体を見ることは困難だろう」
「多分今頃他の闇派閥に回収されてるだろうね」
「当然どうやったかも本人に聞いたんじゃろ?」
「ああ、聞いた私もまだ信じられないが、魔法を使ったらしい……」
「ほんまか!?」
部屋全体に驚愕が走る。
ある者は想定外の掘り出し物を見つけたと、ある者はどんな魔法を使ったのかと、そしてある者は疼きの原因を確信して。
エルフが恩恵なしで魔法を使う事例を聞いたことはあった。だがヒューマンが、それも年若い少女が行使したとなると古今東西の英雄譚を聞いても中々無い。
「あの子は家族もいないといった。天涯孤独の身だ、それに類稀なる力を持っている。その力が本人の意思に反して悪しきものに使われる可能性を考慮して私はあの子をロキファミリアに迎え入れたいと考えている」
「うん、僕もその意見には賛成だ。だけどリヴェリア、決してアイズと重ねちゃいけないよ」
図星。フィンの忠告を前にリヴェリアは無自覚に抱いていた思いに気付く。
二年前、モンスターに肉親を殺されて復讐心だけの状態のアイズを拾った。それから二年、リヴェリアはアイズの母代わりになった。
たった二年。されど二年。
深く接してきてリヴェリアやフィン、ガレスやロキなど親しい輪が広がってきたものの、未だ復讐に突き動かされるアイズを前に他の団員たちは恐れの感情を見せている。
リヴェリアにとってアイズが恐れを抱かれているという事実は、アイズにとっての今の居場所であるロキファミリアを居づらい場所にしているのではないかという不安を生みだした。
そんな時だ。
アイズがアイズ自身の意思でモンスター以外のものに興味を抱いた。それも同じ天涯孤独な子を。
心の何処かで自分たちよりも共感しあえる相手を見つけたのだと歓喜したのだ。アイズの心を癒す新たな光を。
「……すまない、失念していた。他ならぬ私が他人に在り方を押し付けるなどと……」
「何かする前に気付けただけマシじゃろ。まあアイズのことを考えたら同年代の友を持つのは良いことだと思うしワシも賛成じゃが?」
落ち込んだハイエルフの背中を叩いて起こす。
恨みを込めた瞳に「そっちの方が似合っとるわい」と軽口を叩いた。
「僕たちの答えは決まった。神ロキ、貴女は如何する?」
「そりゃあ勿論……!」
ロキファミリアの幹部陣の答えが決まり、六つの瞳が全てロキに降りかかる。
団長の言葉を受けて、座っていた神が立ち上がった。
閉じていた口を開き、そのままニヤリと口角を上げる。
「本人に直接会ってみないと解らんわ~! 」
★
リヴェリアが去った後の部屋で暫定ラヴクラフトは改めて自分の状態を確認する。
闇派閥の男たちに追われていた時には碌に調べることもできなかったからだ。
「……わお」
部屋。単純にそう呼称していたこの部屋は『黄昏の館』の中に備え付けられた救護室だった。
黄昏の館の外観が情熱の炎のような赤色で構成されてはいても、この部屋に限っては落ち着いた雰囲気を感じさせる内装をしている。
ベッドから立ち上がってすぐに見渡すと部屋の端に洗面台がある、大きな鏡が備え付けられたものが。
鏡の前に立ち、反射する自分の姿を視認した途端思わず声が溢れた。
精巧なドールのように白い肌、月の寒さを内包したかのような銀色の髪、そして凝視していると闇に呑まれそうな漆黒の瞳。
それらが奇跡的なまでに絶妙なバランスで配置されている。
──かわいい。
今まで自分が出会ったかわいいものランキング一位のアイズと遜色ない程にかわいい顔。というか好みの問題で今この瞬間一位が変わった。
APPは18だ。自分の中では。
鏡の中の少女は不思議なことに自分と同じ動きをする。不器用に口角を上げると微笑んだ顔に、指をブイの字にすると微笑みながらピースしてくる芸術品のような絵面に。
────かわいすぎないか?
本当に自分がこの子になったのか、と現実を受け入れられない本心。
これも、これも? これもか?
奇妙な立ち姿。鏡の中で少女は様々なポーズをとる。
反り腰になって掌で顔を隠すポーズ、横を向いて人差し指を向けるポーズ、両手を顔の近くに配置して左足を少し前に出すポーズ。
自分の思い通りに動く姿に漸く脳が自分の体だと理解してきたところに、全く意識していなかった死角から声がしてきた。
「どうしたの?」
「はッ!?」
ドドドドと擬音が聞こえそうな身振りで後ろを振り向く。
そこにはアイズがいた。鏡の前でポーズをとっていたことを心底不思議そうに思っている様子だ。
醜態を見られたことを自覚して顔に血が上ってくる。
……恥ずかしい。
「……よ、ヨガです」
「ヨガ」
「体の血行を促進してくれたりして体にいいんですよ……?」
「そうなんだ……!」
目を泳がせながら雑な言い訳を聞かせると、アイズは思っていなかった位に食いつきを見せる。
「私もやってみたい!」
「な……」
純粋な瞳。その瞳は心なしか輝いていた。
ラヴクラフトは知る由もなかったが、アイズはラヴクラフトが持っていた自身より強大な相手に立ち向かう強さの所以が
そして暫くした後……。
「こ、これがヨガ……!」
「そ、ソーデスネ……」
バァ──────ン
そこには
並び立ってポーズをとる二人、それをする二人の瞳は対照的だった。
黄金に輝く瞳と漆黒の瞳。
片や「ヨガ……! 何か力を感じる!」と上機嫌になり、片や「何も知らない子を騙して何やってんだ自分は……」と深い自己嫌悪に陥らせていた。
「なにやってんねんアイズ……! うちも混ぜてーや~!」
二人して鏡に映る妙に様になったジョジョ立ちを見ていると、後ろから声がした。
振り向くとそこには三人の姿、エルフのリヴェリアさん、金髪の少年、そして赤髪の……女性。
「私たちがこのポーズをとる理由はあるのか……?」
「そんなんノリやノリ! せっかくアイズたんと見知らぬ美少女の二人組がポーズ取ってるんやから乗るしかないで! このビッグウェーブにっ!」
「あっ、ロキ」
アイズがポツリと呟くのを聞いて
なぜ似非関西弁なのかは置いといて、確かに人間離れした風貌をしている。髪の色が鮮血のような赤じゃなく真っ白なら似非関西弁も相まって『13キロや』と言いそうな雰囲気をしていた。
残念ながらプロポーションには恵まれていない。
「アイズ、何か話があったのかもしれないが、ここは悪いけど先に僕たちに譲ってくれないか。これからの大事な話があるんだ」
「……うん、わかった」
金色の少年が諭すようにアイズに伝える。
彼は見た目通りの年齢ではないと思わせるほどの落ち着きを感じる声。只者ではないのだろう、ファミリアの神様と副団長と共に現れた時点でそう思うべきだった。
ポーズを崩してアイズは渋々従う。
「またね」
「うん……」
名残惜しそうに部屋から出ていくアイズを手を軽く振って見送る。姿が見えなくなったのを見計らって少年が口を開いた。
「挨拶がまだだったね、僕はフィン。このロキファミリアの団長だ。そしてこっちが」
「主神のロキちゃんやで~よろしゅうな~!」
「えっと、よろしくお願いします」
思ったよりもフレンドリーな北欧神話の悪神とロキファミリアの団長。
人は見た目に依らないと言うが、とりわけ強くそれを感じさせる面々だ。
「あの、お話って一体……?」
疑問を浮かべて問いかける。
リヴェリアとの話の内容からロキファミリアへの入団に関わる話なのだとはラヴクラフトも理解していた。
これから共にダンジョンに潜る仲間、いつか共に酒を飲み交わしながら冒険での話を笑い交じりに振り返る。そんな親しい間柄になれるかはまだ分からない、だが団長と副団長と主神が出揃った今この瞬間こそが、これからの自分とロキファミリアの関係を構築する分岐点だ。
神の気まぐれは時に何を起こすか分からないというのは、様々な物語でよく聞く話。まして今回は神の子供として庇護下に入るかもしれないのだ。心象を悪くしてしまったらどうなるか、最悪な結果が身を過り背筋が凍る。
敵か味方か、そんな物騒なものではないが悪印象を与えたくはなかった。
副団長としてこの場にいるリヴェリアから先ほど勧誘を受けたとはいえ、気を引き締める。
「そんな畏まらなくてもええんやでぇ? 別に取って食おうなんて考えとらんよ~?」
「と言われましても……神様だし……」
「ん~これは重症やなぁ……まあ初対面でハグは辛いって子もおるしなぁ、しゃーないわ……」
一気に距離を詰めてくるロキを前にラヴクラフトはしどろもどろになる。
多分これが彼女の素なのだとは分かりつつも直ぐに対応できるほど器用ではなかった。
「入団試験、ですか」
「そうだ、まあロキを除いて私たちの答えはもう決まっているから形式的なものだがな」
リヴェリアさんが解説を始める。
ロキファミリアは現存するファミリアの中では大規模なファミリアなので、無条件に入団することは出来ない。
ダンジョンを踏破することを目標にしている手前、成長する見込みのない者や素行の悪い者などは足手纏いになるので試験で篩いに掛けている、とのことだった。
ロキの趣味によっては捻じ曲げられることもあるらしいが。
「実技試験はアイズが君に興味を持っている時点で突破扱いだよ」
「えっ」
フィンの言葉に驚いて声を漏らす。初耳だ。
アイズが自身に興味を抱いてくれたことも、彼女が興味を持つことにそれ程の影響度があることも。
モンスターを殺戮するために力を求めるアイズ、彼女の成長を最も間近で見ることのできた此処にいる面々は、興味を抱くことの特別性を強く理解していた。
そんな理由を知る由もなかったが、複雑そうな面持ちを見せる面々に彼女には何かがあると感じ取った。
この世界の常識を知らないから見逃していたが、あの子ほどの年齢で冒険者になるというのはやはり相当な訳アリらしい。
「だからこれから行うのはただの面談だ。それも試験というより親交を深めるためのきっかけを探るものだと認識してほしい」
「……わかりました」
アイスブレイク。
概ね想像通りの展開に頷いて見せた。
「じゃあ早速始めるで~」
☆
「まずは名前を教えてくれるかな」
書面を片手に団長が発言を促してきた。
場所は変わり、救護室から会議室のような場所に移動している。
この部屋に来るまでに度々通り過ぎる初対面の人々に会釈していると皆大きな反応を見せた。行動には出ないが、それも割とネガティブ寄りの雰囲気のものを。
リヴェリアさんが「気にしなくていい」と都度囁いてきたことから、このファミリアでは幼い者が冒険者になることに何か思うことが有る者が多いのだろう。それも多分、先達のアイズが原因で。
「ラヴクラフトです、名前はありません」
「それじゃあ不便やないか? 今は便宜上ラヴたんって呼ばせてもらうけど、やっぱり名前が有るのと無いのとではかなり違うで」
「まあ、そうですけど……自分の名前が必要になるときなんて今まで無かったので……」
嘘、嘘だけど事実。
ロキに投げかけられた質問に出鱈目に答えた。
「う~~ん、これからはそうじゃなくなるからな……しばらく時間貰ってええか?」
「え、あっはい」
「冒険者になる際にギルドに届け出を出す必要があるんだ。それだけじゃないけれど、君自身を指す名前は必要だからね」
「……いい名前でお願いします!」
「今すぐに決まるものでもない、話を進めさせてもらうぞ」
「まかせとき!」と笑顔でサムズアップするロキ。
届け出か。異世界だろうがファンタジーだろうが、ちゃんとした管理組合があることに感心する。
多分犯罪を起こした時には所属ファミリア自体が要注意団体になったり、ダンジョンに潜って二度と戻ってこなかった時には身元確認に使われたりするのだろう。
だから名前が必要。最悪、一生誤魔化し続けるつもりだったけれど、まさか考えてくれるなんて。
天涯孤独な身にとって、神に名前を付けてもらうのは本来の肉親に名を付けられるのと遜色ないんじゃないだろうか。
親身になってくれているようで、何か心が温かくなった。
「次は年齢だな。……体感でいい」
「体感……。多分十は超えてないです」
「ふむ、そうか」
さっき鏡を眺めてみた時のフィーリングを信じるなら多分そう。
恐らくアイズとほぼ同じくらいだ。
「ならアイズたんと同い年でええんちゃう? 年齢差で気遣いなんちゅうのは小さいからまだなさそーやけど、やっぱり気楽やしな」
「たしかに、レベルの差はあれど同じ年の者が傍にいるのは良い兆候を見せそうだ。うん、僕もそれに賛成だよ」
ロキとフィンの一言で自分の年齢が決まる。
九才。アイズの年齢と今この瞬間同じになった。
フィンが言うように自分は成長することが出来るだろうか。
悪漢の前で窮地に陥った自分とアイズのファーストコンタクト。
一撃で内臓を吹き飛ばしたあの姿に届くことができるか、あの子もまだ子供、これからも破竹の勢いで成長するだろうに。
──これは新たな試練だ。
自分が成りたかった自分とは、困難を前に一歩を踏み出せる自分。
いつか完全に成長したあの子の横に並び立つ、未来のロキファミリアの双璧にならなければならない。いや、成る。
決意を新たに次の質問を待った。
「次の質問で面談は終わりだ、ギルドに提出するために必要なのも後はこれだけでね」
「はい」
「ギルドでは冒険者の親族への仕送りの代行をしているんだけど、そのために故郷の名前とどうやってオラリオに来たのかを記録しているんだ。君にはあまり関係ない話かもしれないけれど、通例でね」
──本日はお越し下さってありがとうございます、弊社へはどのような交通手段でお越しいただいたのですか?
何処かで聞いたようなフィンの言葉に固まる。
どうやってオラリオまで来たか……? 故郷は何処か……?
考えていなかった、気が付いたらオラリオという町の滅茶苦茶曲がりくねった迷路のような通りに居たわけで、故郷が何処かと言われても分からない。
交互に三人を見ると、じっと此方を見つめていた。心なしか先ほどまでよりも強く答えを待ち望んでいるように感じる。
前ならバスと電車を活用して何分かけて来たと言えたが、それは通用しない。
「か、かなり遠くにインスマスという村、漁村なんですけどね、あるんですよ」
「聞いたことがあるね。確か魚が新鮮だとか」
「……ええ、余りに新鮮すぎて大量発生してます。……村民よりも」
完全に出鱈目な事を口に出す、気が付いたら通りに居たなんて伝えても信じてもらえないはずだ。
そんな判り切った出まかせに、なぜかフィンは食いついた。確かに想像しているあの村の魚は新鮮だ。村民と交わって新たな魚が生まれ、村人の殆どが深きものになっている。
「そこから南に向かったところに、アーカムという隠された都市があるんです。そこから馬車に乗ってインスマスを経由してオラリオまで……」
「ふむ……、ロキ」
「分かっとる、アーカムってどんなところなん?」
「陰湿で暗い雰囲気の都市です。隠された都市なので仕方ないんですけど、都市内の人々は排他的な印象です」
「うわあ、ラヴたんの前で言っちゃなんやけど嫌なとこやな~」
フィンがロキに耳打ちした。
ナニカに同意したように、ロキは都市についての質問を投げてくる。
「じつは都市の創設者にはラヴクラフト家の始祖が居るんですけど、その影響で余り人との接触はなくて」
「……だから名前を呼ばれることは無かったと」
リヴェリアさんの言葉に頷く。
アーカムという架空の都市を創り出した御大、その子孫だということにして話を通す。
「つまりはお堅い立場で居るのが嫌で、心機一転新たな出会いを求めてオラリオに来たって感じやな?」
「そうです、閉鎖された空間で妥協して生きるのは嫌だったので……自分が後悔しない生き方をしたくて」
「っ! ……ふぅ~ん、わかったわ! ありがとなぁ」
ロキは返答に一瞬目を開いた。
ロキの雰囲気はラヴクラフトが故郷について話していくたび硬くなっていたが、その答えを前にして雰囲気は消散する。
暫くして答えに満足したのか、笑みをたたえて礼を口にした。
ロキが一体何に反応したのかを一瞬では判断できなかったが、上手く誤魔化せたと信じる。
「故郷のことは把握した。ギルドに書くことは以上だけど、僕個人で気になることがあるから聞かせてほしい」
「えっとなんでしょうか」
「君が闇派閥の構成員に襲われた場所はダイダロス通りというんだけど、いったいどうしてあんな所に迷い込んだんだい?」
ダイダロス通り。
あそこは入ったら二度と出られないと云われる場所であり、入り込むのは中々の覚悟を要する、今の情勢を鑑みても。フィンが続けてそう言う。
なぜ自分があそこにいたか、それはわからない。知る由もない。
──気が付いたらあの通りに倒れ込んでいたから。
架空の都市から来たと嘘をついた手前そうは呟けないけれど、似た言葉で返答する。
「気が付いたら迷い込んでいたみたいです。着の身着のまま、金銭の類を何もかも奪われてしまって……」
「それは災難だったね、ありがとう。リヴェリアは何かあるかい?」
「ある、あるが……後でにしよう」
「じゃあ、これで入団試験は終わりだ。ロキ、如何する?」
全員の視線が主神であるロキに集中する。
受験の合格発表の時みたいに緊張して身構えてしまう。
ロキはいつもと同じ糸目をラヴクラフトに向けた。
びくりと震える、その瞳の中に秘めた意図がまだわからないから。
そのまま時間が過ぎる、目を見つめ合いながら過ぎた時間は一瞬だったか、それとも永遠だったか。
長い時間の末、とうとうロキが口を開く。
「おめでとう~! 合格や! ロキファミリアはラヴたんを歓迎するでぇ~!」
明るい主神の言葉。聞き届けて体が軽くなる。
団長と副団長が「入団おめでとう」と祝福してくれた。
他人から家族になったからか、ロキが抱き着いてきたのを甘んじて受け止める。
「おぉ~! ラヴたん優しいなぁ……! 最近はアイズたんが冷たくなってきて……」
「嫌なら拒否してもいいんだからな」
リヴェリアさんがそう言うが抵抗しない。
久しぶりに感じるぬくもりがとても心地よかったから。
「じゃあ早速『恩恵』を授けようやないか! うちの部屋に行くで!」
無事にロキファミリアに入団出来た自分は、どうやら神から直々に『恩恵』を授けられるようです。