魔法少女さんとサイボーグさん   作:カードは慎重に選ぶ男

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前回のあらすじ

街に被害が出まくっているのに惚けるばかり魔法少女さんに対して、サイボーグさんは怒鳴り散らしてしまう……。
まぁサイボーグさんの視点だと、どう見ても重要な情報を握りまくってるのに教えてくれない胡散臭すぎる女だからね。仕方ないね……。
ライダー的に言うと、ウィザードの戦闘に仲間面しながら白い魔法使いが現れるような感覚に近い。





第10話:魔法少女さん、覚醒する

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦会議再開だ。

 

 

「お前のバリアに乗って多段ジャンプできねぇのか?」

「残念ながら……。綿毛のように気ままに生きられたら、と思うこともありますけれども、兎角この世はままならないものです」

 

僕は桜色の球体バリアを目の高さに直系10センチぐらいの出力で展開して、それを長手袋装備の人差し指で突いてみせた。

人差し指は、何の抵抗もなく球体バリアをすり抜けてしまった。

自分でも最近まで気づかなかったんだけど、実は僕の球体バリアってキュアチェリー本体と全く干渉しない仕様なんだよ。

球体バリアを捨てて逃げる時には便利そうなんだけど、こういう時に足場にするのは無理なんだ。

 

 

「それなら……『コレ』で解決じゃねえか」

 

と思っていたら、お姉さんは僕に歩み寄って、御姫様抱っこをしてくれた。

ああナルホド、僕が直接バリアに触れないなら、お姉さんの足でバリアを踏めば良いんだね。

 

……って、んんん????

 

 

 

「!!」

 

エッッッッッッ!!?

変な声が出そうになったけど、僕は穏やかな美少女ロールプレイングを執念で死守した!

キュアチェリー様はギャグ顔を晒したりしないんだよ!

いやいや、そうじゃなくて!

 

……背中や膝裏で感じるお姉さんの腕は、人間じゃ有り得ない硬さなのが分かった。

この両腕の中も全部、この間見えたみたいな機械やコードが一杯に詰まっているんだ。

そう思うだけで、心臓がドキドキして言葉が出てこなかった。

 

こうなったら……なるようになれ!

辛うじて鉄面皮だけは維持しつつ、脳が沸騰したみたいな興奮状態の僕は、御姫様抱っこされているのを良いことにお姉さんの首へと両腕を回して絡ませてみた。

首回りもやっぱり硬くて、漆黒のライダースーツみたいな外面の中は機械類なんだって思った。

中の機械類が直接見えている訳じゃないんだけど、背中や膝裏や両腕から伝わる硬質な感触に、僕は内心興奮しっぱなしだった。

4号との交戦後の時にいけない物を見てしまったような気がして胸が高鳴ったのと同種の興奮だ。

 

 

「一足で5メートル前後は飛べるがな、7号も機雷で対応してくるだろうから臨機応変に頼んだぞ」

「こちらこそ不束者ですけれども、宜しくお願いいたします……」

 

僕、顔とか耳とか真っ赤になってないよな?

お姉さんが何も言ってこないから大丈夫だと信じたいところだけど。

でも一応ピンクの長髪をちょっと弄って耳だけは隠しとこ……。

こうして、僕たちは7号を追ってハネムーン(そらのたび)を開始した。

とはいえサイボーグさんが大ジャンプして、僕がその先に球体バリアを用意するだけなんだけどさ。

 

空中の7号よりも少しだけ高度を大きめにとって、しばらく接近していくと、ようやく巨大カブトムシもこちらを認識したみたいだった。

子機の爆弾カブトムシが僕たちへと差し向けられた。

まぁ子機は動きが遅いのでそんなに回避は難しくなかったし、僕たちの共同作業は意外にも好調だった。

サイボーグさんは順調に空中ジャンプを重ねて7号に近づいた。

 

 

でも僕の心を乱す要素もあった。

それはズバリ、音だ。

お姉さんの硬質な両腕で御姫様抱っこされている僕は、こっそりお姉さんの胸元に耳を押し当ててみたんだ。

そうしたら……遠くからじゃ全然分からなかったんだけど、お姉さんの身体の中からは人間じゃありえない音が無数に聞こえてくるんだよ。

前にもハグしたことはあったんだけど、今回はお姉さんの側が激し目に動き回っているから全然状況が違う。

 

水が沸き立つ音だとか。

何かが回転する音だとか。

部品同士が擦れる音だとか。

金属フレームが軋む音だとか。

 

人間みたいな心音は聞こえないんだけど、代わりに多種多様な音が聞こえてくるんだ。耳が幸せ……♡

(いや)(うえ)にも、僕の想像を掻き立てるには十分だった。

中身の機械類を想像してしまって、気持ちの昂ぶりを押さえきれなかった。

直接スキンが破けるところを見るんじゃなくても、こんなゾクゾクする境地があるなんて思わなかったよ。

下手したら、直接中を見るよりもイケナイことをしている気さえする……!

 

 

ああ、でももう7号が目と鼻の先だ。

名残り惜しいけど。

本当に名残惜しいけど。

本当に本当に本当に名残惜しいけど。

そろそろ、このフォーメーションも終わりの時間だ。

お姉さんの都合がいいタイミングで、僕のことは放り投げてもらおう。

放り投げられる花っぽい言い回しといえば……。

 

 

「ブーケトスの御日柄は、お好みで!」

「リミット解除っ! うおりゃあっ!!」

 

いやそんな力一杯に放らないでよ。(豹変)

お姉さんの、いけず!!

 

何はともあれ、サイボーグさんが最後の大ジャンプで巨大カブトムシに掴みかかるのは成功した。

あとは、サイボーグさんが7号の羽を破壊して地面に落としてくれる。

それまでに、先に地上に降りた僕がドラゴン頭のビーム砲をバイクから回収してきて地面で合流する作戦だ。

 

なんだけど……ふんわり着地を決めた僕は、予想外の問題に気付いて戦慄した。

 

 

 

……ここ、どこだ?

空中ジャンプの旅が結構長かったせいもあって、本当に土地勘の全くない場所に着地してしまった!

サイボーグさんのバイクがどっちの方向に停車してあるのか、全く分からない!

よくファンタジーとかで「この街は俺の庭みたいなもんだ! 何でも知ってるぜ!」みたいな台詞ってあるけど、アレってウソだよね!

自分がよく使う道以外は普通に知らない道だよ! ここどこだよ!?

お姉さんのバイクどこ!??

 

 

ちらっと空中の7号とサイボーグさんを見ると、あっちも作戦が難航しているみたいだ。

7号の羽が予想外に硬くて部位破壊が捗らないっぽい?

子機カブトムシの断続的な爆発にさらされているサイボーグさんも、いつまでも装甲がもつ訳じゃないだろうし、リミット解除の時間的な問題もあるよね……。

と思っていたら、サイボーグさんは方針を転換したみたいで、巨大カブトムシの背中に抱き着いて羽の動きを制限しはじめた。

 

なるほど。

確かに背中を両腕で抱えられたら、羽を広げられないから巨大カブトムシは地面に落ちるしかない。

ドラゴン頭のビーム砲を回収できなかった僕は、ともかく落下予想地点へと駆け寄った。

 

 

「ごめんなさい、お姉さーん!! バイクが遠すぎて往復は無理でしたー!!」

 

走りながらでも、とにかく叫んで連絡だけはしないと。

まだ結構距離があるけど、サイボーグさんなら聞き取れるんじゃないかな。

 

 

「それなら……コイツにはこのまま地獄に落ちてもらうっ!!」

 

そしてサイボーグさんの判断は即決だった。

サイボーグさんが手を離したら7号が羽を広げて飛行能力をとりもどしてしまう、という事情もあるんだろう。

地表に迫っても……サイボーグさんは7号に抱き着いたまま両腕を離さなかった。

 

 

重い物が落下するときに特有の、腹の底まで響くような音が木霊した。

その後に10秒ほど遅れて、僕は墜落現場へと辿り着いた。

落下地点で粉塵に紛れて、羽が捥げてボロボロの7号の姿が見えた。

 

僕は現場に駆け寄った勢いをそのままに、7号へと飛び蹴りをぶちかました!

既に相当のダメージを受けていた7号は僕の飛び蹴りの直撃によって残った外装をも砕かれ、ひっくり返って動かなくなった!

 

 

「ハート……キャッチ!!」

 

あとは、紫色の心臓部を力ずくで引っこ抜いて、7号を完全に沈黙させて。

心臓部を浄化して素体の人間を確保してから……僕は、ようやく大きく息を吐くことができたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一仕事を終えた僕は、辺りを見回してサイボーグさんを探した。

すると、ちょっと離れたところで座り込んでいるサイボーグさんの姿を見つけることが出来た。

遠目には7号と一緒に墜落したように見えたけど、ギリギリのところで離脱していたみたいで、特に中身が見えるようなことは無かった。

お姉さん自身もリミット解除状態での戦闘に慣れてきたお陰で、墜落ギリギリの離脱が成功したみたいなところもあるのかも?

 

座り込んでいるサイボーグさんの背中側にゆっくり回り込んで、掌をあててあげた。

今回は結構出力が不安定になっているように感じる……。

全体的にサイボーグさんのスペックは上がってきていると思うんだけど、今回はリミット解除して戦う時間が長めだったから負担が大きかったのかもしれない。

どさくさに紛れて抱き着いても何も言われなかったりしないかな……?

 

 

「……なぁ。お前は、何のために戦ってんだ?」

 

シリアスの波動を感じた。

さっき僕が怒鳴られたのと関係あるのかもしれない。

とはいえ、戦う理由か。

サイボーグさんの背中に手を当てながら、僕は思い返してみた。

マナちゃんと二人で作ったキュアチェリーの存在を体現したい、っていうのが始まりだったけど、それをそのまま言うとマナちゃんに迷惑がかかってしまう。

 

 

(わたくし)を愛でてくださる方がいて、(わたくし)が愛おしく思う方が居ます。それだけでは……足りませんか?」

「優等生みてぇな御回答、どうもよ」

 

……これは、信じてない人の反応だ。

一緒に戦い続けて、結構打ち解けてきたと思うんだけどなぁ。

キャラ的に、あからさまに膨れっ面とかは見せないけどさ……。

 

あ、もしかして!

このやりとり、「お前こそどうなんだよ!」って聞き返して欲しいのかな?

本当に不信感だけの相手だったら、背中のエンジンをそう何度も易々と触らせない気がするし、そういうフリなのでは?

奥ゆかしいパーフェクト美少女のキュアチェリー様は察しの良さも一流なんだ。間違いない。

まぁそんなに声は荒らげずに聞くけどね。

 

 

「お姉さんは……どうして、戦いに身を投じるのですか?」

 

 

 

 

 

 

 




純情な小学生男子の心をダイナマイトボディ(死語)で誘惑して弄ぶ悪いお姉さんがいるのでおねショタです(濁り目)
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