魔法少女さんとサイボーグさん   作:カードは慎重に選ぶ男

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前回のあらすじ

妖精も居ないのに野性のプリキュアになった11歳の百木テツヤ少年。
アギト履修者の皆様は、元ネタは御存知のはず。(平成感)

でも性癖全開でリイマジネーションしまくったこの作品を仮面ライダーアギトの二次創作だと言い張る勇気は無かった……。
ゼロの使い魔を三銃士の二次創作とは呼ばないのと同じ感覚かもしれません。





第2話:何も知らない魔法少女さん(11♂)

 

 

 

 

 

 

戦場に辿り着いた僕は、予想外の事態に直面した。

なんと、2メートル級の巨大クワガタは既にボロボロの姿になっていたんだ。

 

それを為したのは……たぶん、巨大クワガタの視線の先に倒れている黒い人影だろう。

厳ついパワードスーツのようなものを纏っているけど、遠目にも装着者が人間であることが分かるシルエットだと思った。

倒れて動く気配が無いのが気になるところだけど、今は生きていると信じるしかない。

巨大クワガタの方は外殻がところどころ割れて足も半数がもげてしまっているとはいえ活動中なんだから、コイツから目を離したらダメだ。

 

 

「ふっ!」

「ギャアアアッ!!」

 

駆け寄った僕は、渾身の飛び蹴りを巨大クワガタの背中へと直撃させた。

足の裏に返ってきた感触は、デタラメに硬かった。

たぶん、さっきのパワードスーツの人が巨大クワガタに与えたダメージが無かったら、僕の攻撃もまともに通らなかっただろう。

 

それでも、既にボロボロの巨大クワガタにとっては、十分に脅威となる跳び蹴りだったらしい。

近くの建物に激突させられた巨大クワガタは、すぐに起き上がって僕へと敵意を返し始めた。

二本の角を構えて、巨大クワガタが僕へと突撃してきた。

その強靭な角で挟まれたら、謎の人外パワーを発揮している僕でもひとたまりも無いだろう。

 

ピンクの長髪を靡かせながら小さめのジャンプで突撃を回避した僕は、そのまま巨大クワガタの背に着地した。

そのヒビだらけの外殻の隙間から……毒々しく紫色に輝く直系30センチ程度と思しき球状の物体が見えた。

さっき飛び蹴りを食らわせた時にチラっと見えた気がしたんだけど、近くで見るとやっぱり何だか異質な雰囲気の球体だった。

怪物の心臓部っぽい雰囲気があるし、この紫の球体を何とかすれば怪物も行動不能になってくれないかな?

 

僕は怪物クワガタの背に乗ったまま、外殻に入ったヒビの隙間から両手の指を突っ込んで、紫の球体を掴んだ。

外殻の内側は電気コードみたいなのがグチャグチャに押し込まれていて、生物的な体液は無いので手が滑る心配は無さそうだった。

そのまま紫の球体を力任せに引っ張り出そうとしたんだけど、怪物クワガタも暴れ馬みたいに動き回って抵抗している。

掛け声でも叫んで一気に引っ張り出そう。

とはいえ、マナちゃんが折角可愛くデザインしてくれたこの姿で、あんまり雄々しい叫び声をあげるのも良くないような……。

でも、敵の心臓部を掴み出そうとしている時に使えて、適度に可愛い掛け声なんてあるか??

 

 

「ハート……キャッチ!!」(物理)

 

あった。

直径30センチ程度の球体を、僕は力任せに怪物クワガタから引っこ抜いた。

と同時に、怪物クワガタは完全に沈黙して地に伏した。

街にこれ以上の被害が出る心配は無くなった。

 

そして、僕の手元には怪物クワガタの心臓部っぽい球体が残っている訳だけれど。

毒々しい紫色の球体は、規則正しいパターンで明滅していた。

脈動……というか、鼓動なのかな。

甲虫って、人間みたいな丸い心臓を持ってない気がするんだけど、まぁそれは良いとして。

 

自分でも上手く説明できない感覚なんだけど、この心臓部の正体が何なのか僕は察していた。

球体を優しく抱きしめてやって、僕自身の身体を巡る謎のエナジーを分け与えるようなイメージで球体に流してやった。

そうして暫く経つと……紫の球体はそのサイズを変えて、前期高齢者ぐらいの男性へと変貌していった。

というか、元に戻ったというのが正確なところなんだろう。

原因までは分からないけど、この老人が変貌させられた姿がさっきの巨大クワガタだったんだと思う。

意識の無い老人をそっと道端に寝かせてやって、ようやく僕は緊張を解くことが出来たのだった。

 

 

……そういえば、さっきの黒いパワードスーツの人って生きてるよね?

念のために生死の確認に戻ってみると、厳ついパワードスーツに包まれた人物は俯せのままで倒れっぱなしだった。

脈を取ろうにも重装備すぎて色々と大変だな。

しゃがみ込んで、倒れたままの黒ずくめさんを観察してみると……背中の肩甲骨あたりの装甲に厚みがあって、その中に丸いガラス窓のような部分が目についた。

ビー玉よりは大きいぐらいのサイズの小窓からは淡い桜色の光が漏れ出しているけど、何だか今にも消えてしまいそうなほど弱弱しいように思った。

 

効果があるかどうか分からないと思いつつ、一応手を当てた僕は、さっきの老人の時と同じように謎エナジーを分け与えてみた。

魔法少女系列の謎エナジーとパワードスーツって互換が皆無どころか相性が悪そうですらあるけど、どうなるかな……?

なんて僕の不安をよそに、パワードスーツの背中の小窓から見える光は先程よりは大分安定したように感じた。

思ったより魔法少女エナジーが万能なのか、もしくは僕と関係ない理由でシステムが復旧したのか。

分からないことだらけだな。

 

まぁでも、やれるだけのことは終わったと思う。

警察や消防車両のサイレンも聞こえるし、僕はこの辺りで撤収させてもらおう。

こうして、謎の魔法少女ことキュアチェリーの初陣は幕を引いたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例の巨大クワガタの騒動から2日後、小学校の授業は無事に再開した。

僕としては、嫌に長く思えた空白期だった。

テレビを見てもあの巨大クワガタに関しては地球外知性体って通称が付いたことぐらいしか報道されないし、あのパワードスーツの人の情報もゼロだ。

キュアチェリーに関する報道も無いのは、まぁ目撃者が少なかったからだとしても、あの場に倒れたまま放置されたパワードスーツは警察や消防に見つかっているはずなんだけどなぁ。

 

……それはともかく。

僕は風杉マナちゃんとの距離を測りかねていた。

それとなく観察してみた限り、マナちゃんに不自然なところは無いようだった。

5年前よりも大分物静かになったけど、ごく普通の女の子だ。

休み時間には他の女子たちと一緒に、ネット番組の内容だとか宿題が面倒だとか、何でもない会話をしている様子だった。

 

キュアチェリーに関して口外する気配は無さそうな気はしたけど……一応釘は刺しておいた方が良いかもしれない。

僕が身バレすると厄介事が色々出てくるだろうし、その果てにマナちゃんの夢を壊してしまう危険もある。

それが原因でマナちゃんに更なるトラウマを植え付けてしまったら、僕は死んでも死にきれない。

 

 

――(わたくし)を好きで居てくれて、ありがとう。

 

今度こそ、マナちゃんは夢を好きで居られなくなる日が来るかもしれないんだ。

そう思うだけで、心が痛む。

だから、僕の正体だけはバレちゃいけない。

 

 

そう決意を新たにした僕は、放課後の教室でマナちゃんに話を持ち掛けた。

一昨日はゴメン、なんて謝罪を皮切りにして。

5年間の空白が一気に埋まるはずもないけど、それでも話さなきゃいけない。

 

 

「一昨日の騒動の時にさ……なんていうか、プリキュアみたいなお姉さんが居たんだけど、マナちゃんも見なかった?」

 

僕の言葉を聞いて、マナちゃんが驚愕に目を見開いた。

何かを飲んでいる最中だったら噴き出していたんだろうな、と思わせるぐらいだった。

 

 

「テツくんも、見たの!? やっぱり、夢じゃなかったんだ!!」

 

食いつき具合が凄まじい。

その熱量は……僕が覚えている5年前のマナちゃんのそれだった。

たぶんマナちゃんがキュアチェリーのことを他言しなかったのは、マナちゃん自身も見たものを信じられなかったからだったんだろう。

それを他人の目から肯定されることで、喜びが確信を得て表面化した感じなのかな。

 

 

「マナちゃんは、あのプリキュアが出現した理由に心当たりってある?」

「怪物が現れて、困っている人たちが居たからじゃないの?」

 

マナちゃんの解答はヒーロー番組としては正しいんだけど、僕が期待したのとは微妙に違う内容だった。

僕としては、マナちゃんの想像した姿が具現化された理由が知りたかったんだ。

僕自身は今まで何の変哲もない地球人男子として生きてきたから、マナちゃんの方に何かしらの超常的な要素があるのかと思ったんだけど。

どうもマナちゃんの方にも心当たりが無いみたいだ。

本当に、あの力はどこから湧いてきたんだ……?

あと考えられるとしたら、あの廃神社が怪しげなパワースポットだった可能性ぐらいか……?

太古の神々とか龍脈とかみたいな得体の知れないオカルト要素が眠る場所だったのかも?

 

 

「あのプリキュアは……マナちゃんからは、どう見えた?」

「あの御方は、キュアチェリー様は、私の想像通り……想像以上に素敵だった!」

 

曰く、桜の花のように可憐で。

曰く、雨風にも負けぬ大樹の如く力強く。

曰く、立ち姿だけでも見惚れるほどに美しくて。

曰く、透き通るような微笑みは綺麗で幻想的ですらあり。

 

何というか、マナちゃんの熱量に僕は圧倒されてしまっていた。

あのノートを見た時から気付いていたけど、やっぱり情熱は消えていなかったんだ。

 

お陰で、キュアチェリーのキャラも固まってきた気がする。

軽口で皮肉を返したりニヤリと笑ったりみたいなのは、しない方が良さそうだ。

キュアアースみたいなミステリアス路線の美人さんって大まかに思っておけば良さそう。

そういうキャラの担当色ってピンクじゃない気がするけど……似た路線のフェリーチェはピンクと緑多めだし、そっちをイメージした方が良いのかも。

 

あとは花に関する言い回しを多用するんだよね。

それは5年前に二人で決めたのを覚えているよ。

 

 

「僕は本人を目撃しちゃったから手遅れだけど、あまり他の人には言わない方が良いかもね。大体そういうのって情報が広まると、一緒に居る妖精が困るものだしさ」

「確かに……そうだよね」

 

いや、そんな妖精ポジションの説明役は影も形も無いんだけどさ。

誰か僕に状況を説明して欲しい。

謎エナジーの由来とか、敵の目的とか、色々説明してくれるプリキュア妖精の役回りって本当に重要だったんだ。

自分の身に非常事態が降りかかってみると実感するよ。

何も知らない犬塚翼さん(25)を全く笑えないぐらいに、手持ちの情報が乏しすぎる……。

 

 

今の僕が持っている情報をまとめると……?

 

・マナちゃんの理想の姿であるキュアチェリーに変身できる。

・怪物クワガタの心臓部には人間が使われていて、キュアチェリーはそれを浄化して元に戻せる。

・黒ずくめのパワードスーツに給電(?)できた。

 

1つ目と2つ目はプリキュア的な文法で考えるとそんなにおかしくないけど、3つ目だけは冷静に考えて意味が分からない。

別に電気属性のプリキュアじゃなさそうなんだけど、なんでパワードスーツに給電できたんだ?

考えるにしても思考材料が少なすぎて八方塞がりであることは否めない。

 

次にあのパワードスーツの人に会ったら、何とか情報を引き出せないものか。

まぁまた怪物が現れでもしない限り、会う機会なんて無いんだけど……こういうのは二度三度と起こってしまうのが御約束だ。

 

 

そんな僕の悪い予感は……その僅か1週間後に的中することとなるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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