魔法少女さんとサイボーグさん   作:カードは慎重に選ぶ男

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前回のあらすじ

サイボーグさん、決死の最終形態。
上空にて芥子粒になる太陽の子。
ついに決着はついたが、魔法少女さんの腕に抱かれてサイボーグさんは息絶えてしまう……。


太陽の子「そのとき不思議なことが起こった!」
サイボーグさん「冗談でもやめろ!」




最終話:魔法少女さんとサイボーグさん

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと、あたしは生き延びた。

0号との戦いの後で、チェリーの奴がまた何か奇跡を起こしたんだとは思うけど、詳しい事は何も分からねぇ。

なんでか生き延びたあたしは、チェリーの奴に担がれてラボまで返却されたそうだ。

母さんの身に何かあった時のために事情を聞いていた科学者チームの人たちの元で、あたしは無事に修理を終えて目覚めたってワケ。

 

あの戦いのときの雰囲気だと、チェリーの方にも隠し玉がある感じじゃなかったんだけどな。

……いや、でも大事なことは何も教えてくれないチェリーの奴なら、奥の手の一つや二つはあってもおかしくないかもしれねぇ。

まったく、どこまであの女の掌の上なんだか。

そう思う一方で、なんだかあたしはそれが不服じゃなくなっちまってた。

あの得体の知れない女でも、最後の泣き顔は本物だったと思うし、怪しいところは追い追い問い詰めてやればいいんだ。

 

 

――今までも、そしてこれからも。一緒に戦いましょう

 

 

また、いつでも会える。

そうだよな、チェリー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……と思ったんだが、0号との決戦から半年経ってもチェリーの奴は姿を見せなかった。

その間にも地球外知性体の出現頻度は少しずつ上がってるってのによ。

また会えるってお前が言ったんだろうに。

 

けど、地球外知性体の心臓部の浄化は何とかなっちまってるんだよな。コレが。

 

 

「姉御! コアの浄化終わったッス!」

「おう、お疲れ」

 

もう誰も番号を数えていない地球外知性体を倒し終わったあたしの隣に居るのは、チェリーの奴じゃなかった。

今回あたしと一緒に地球外知性体と戦った子は、この街に住む伊上アキっていう女子中学生だ。

キュアチェリー以上にピンク多めなドレスを纏った金髪ツインの姿に変身してるが、前に見せてもらった素顔は本当に普通の子供としか言えねぇ感じだったな。

変身後の名前は……なんだったっけ。

みんな似たような横文字だから覚えられねぇんだよな……。

 

あの0号との戦いの後、世界各地で変身能力と浄化の力に目覚める子供たちが発見されたんだ。

便宜上、その子らはプリキュアと呼ばれちまってる。

間違いなく、キュアチェリーの影響だろうな。

元々動画なんかで拡散されてた奴だし、第二世代の奴等もみんなキュアチェリーに憧れてる節があるみてぇだ。

 

 

――この20年で進化の因子もまた地球人に適応を始めた。そして因子は宿主の認識にも影響される。

――地球人たちは進化出来ることを知ってしまった。あとは加速度的に進化するだろう。

 

かつて、地球外知性体10号が過去の様々な怪物に姿を変えるのを見たことがある。

それと同様のことが起こっているんだとしたら……一応、説明はつくんだよな。

現実世界で活躍するキュアチェリーに強い憧れを持ったガキどもが、因子によって変貌する際に進化の方向性を歪められた結果が、世界各地のプリキュアたちなんだろう。

浄化の奇跡を強く信じることが、次世代の浄化能力者が目覚めるカギ……なのかもしれねぇ。

 

これは、チェリーが想い描いた未来なのか?

……どうして、その未来にお前が居ないんだよ。

 

 

「また考え事ッスかー? チェリー先輩のことなら教えてほしいッス!」

「いや、あいつは色々な意味で規格外だったんだな、って改めて思っただけだ」

 

あたしの周りをチョロチョロついてくる第二世代の奴等は、なんていうか……色々な意味でキュアチェリーとは違い過ぎた。

 

第二世代は怪我をすればすぐに泣くし、恐怖で足がすくむことだって日常茶飯事なんだよなぁ。

背中をドロドロに焼かれても気丈に振舞っていたチェリーの顔が頭に浮かんだ。

というか、そもそもチェリーの奴は謎の見切り技能をもってやがったから、まともに被弾したのも0号の時ぐらいかもしれねぇ。

 

あたしが見てる限りの印象だと第二世代は調子がいいとすぐに勢い任せに空回るし、何でもないような失敗も繰り返す。

超人的とすら言えたチェリーの奴と比べてみちまう部分は、どうしてもあった。

でも冷静に思い返してみると、中坊だった頃のあたしに近いのは、むしろ第二世代の奴らの方なんだよな。

ちょっとしたことで落ち込んだり調子づいたりして、イケメンの先輩に夢中になったりして。

良く言えば、等身大の中学生って感じの子ばっかりだ。

まぁ姪っ子みたいな感覚で可愛いっちゃ可愛いんだけどよ。

 

 

「プリキュア続けてればチェリー先輩に会えると思ったのにー! 姉御、マジで連絡先知らないッスか?」

「知ってても教える訳ねぇだろ。逆にお前の連絡先も他のプリキュアにはバラさねぇ。そういうもんだ」

 

チェリーの微笑や流し目から溢れる謎の色気ってマジで何だったんだ……??

最近の中坊って皆あんな感じなのかと密かに恐れてたんだけどさ、第二世代の奴らを見てたらチェリーの奴が特殊だったんだって思い直したわ。

絶対に見た目通りの年齢じゃねぇだろアイツ。

下手したら母さんより年上なんじゃねえの?

 

 

「じゃぁ年齢とかは? 何歳ぐらいだと思うッス?」

「68歳」

 

「目ぇ腐ってんじゃないッスか??」

 

考え事をしてたせいで、つい母さんの享年を口にだしちまった。

しかしその突っ込みは流石に辛辣すぎじゃねぇか?

まぁ第二世代の奴らは大体チェリーのファンだからな。

それを悪く言われたら怒るのは仕方ないだろうさ。

 

 

「例の御姫様抱っこの動画の時のチェリー先輩、どう見ても恋する乙女の顔してたじゃないッスか! そのぐらいの年頃ッスよ!」

「恋?? あいつが? あたしに?? 無い無い、ねーよ。恋愛脳も程々にな」

 

まったく、第二世代の奴らの恋愛脳にも困ったもんだ。

あたしもそういう年頃だったことはあるから、そんなに強く言えねぇけどさ。

あいつとあたしの関係は、「不思議な御縁」があったってだけだろ。

チェリーの奴がそう言ってたんだから、間違いない。

恋する乙女云々にしても、チェリーの奴が謎に色気を持ってる奴だからそう見えちまうだけに決まってる。

 

……でも、あいつに会いたいと思っちまってるのも正直なところだった。

毎週のように会っていた日々が唐突に終わって、もう半年だ。

新手の地球外知性体が現れるたびに、現れない影を探しちまってる自分がいる。

まぁ第二世代も身体能力は人間以上だし、浄化の力もあるから居たら助かるのは事実なんだけどな。

 

それに、世界中に第二世代が現れてるっていうのは、0号が危惧した危機への回答に成り得るんだ。

このまま怪物になる人間が増えても、それに対処できるだけの第二世代覚醒者がいれば何とかなる。

できることなら、オリジンであるキュアチェリー様に音頭をとってほしいところなんだがな。

 

 

「私にも御姫様抱っこしてくれたら、チェリー先輩も嫉妬して現れるかもしれないッス!」

「まぁそれぐらい、いつでもしてやるけどよ。よっと」

 

鬱陶しく絡んでくる伊上アキを軽く抱き上げてやりながら。

そんなことでチェリーの奴が現れてくれるなら御の字だ、なんて本音は呑み込んだ。

 

 

「……なんかクッションが無いパイプ椅子で寝てる気分ッス。忌憚のない意見ってやつッス」

「雰囲気アマアマじゃなくて悪かったな。安全基準ならアマアマだぞ」

 

失礼な文句を垂れ流してきたガキは、その場で手を離して地面に落としてやった。

全く色気のない悲鳴と抗議が足元から聞こえてきたが、そんなもんは無視だ。

こちとら全身が黒鉄のサイボーグだからな。

硬いに決まってんだろうがよ。

 

……チェリーの奴は、この硬い身体と両腕で抱き上げても文句ひとつ言わなかったな。

あたしの首へと両腕を回して、安全確保もバッチリだった。

でもアキの反応の方が、どっちかっていうと普通な気もするんだよな。

 

 

 

 

 

 

 

そんな緩んだ空気の中で……警察から連絡が入った。

山間部にある工場から腕時計みたいな顔した新手の地球外知性体が現れて、そいつが増殖して大変なことになってる、って。

 

周囲を見回して、頭部カメラを望遠モードにしてみると……確かに、腕時計みたいとしか言えねぇ怪物が遠くの山間部に居るな。

しかも20種類ぐらいの地球外知性体を引き連れてやがる!

赤い巨大クワガタとか、紫色の牛鬼とか、過去に見たことがある奴ばっかりだ!

7号の時みたいなノリで子機を召喚してるくせに、その子機の一つ一つが普通に強いとかってことか??

 

 

「姉御、早退したいッス! 私には病気の妹が……!」

「うるせぇ、お前も来るんだよ。連絡がつくプリキュアも全員招集する」

 

「昭和のパワハラ絶対駄目ッス!」

 

チェリーの奴なら、無理して戦わなくて良いっていうところなんだろうけどな。

やっぱ、あたしはこういう奴なんだ。

でも何だか……そんな自分自身のことも気にならなくなっていた。

考えの古さの問題だけじゃなく、さっきだって機械の両腕で誰かを抱き上げることに忌避感は殆ど無かった。

最近、日常的に出歩くときでも、正体がバレることもあんまり怖くなくなった。

 

 

 

しかし総力戦でも20体は流石にキツイか……?

この街のプリキュアは多いけど、それでも合計6人とかだし、一人頭二体倒させると見積もってもあたしが相当頑張らねぇと。

 

だがな。

キツいけど、そんなもんは根性でカバーしろ。

昭和上等じゃねぇか。

こちとら、お前らのカリスマのお墨付きで「進化した人類」って呼ばれちまった身なんでな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たとえ人々の心が枯れ果てようとも……」

 

けど、そんな決死の戦いに挑もうとするあたしらの耳に、透き通るような声が聞こえた。

穏やかで、凛としていて、でも力強さを秘めた声だ。

そんなに大声じゃないのに、不思議とよく通る音色なんだよな。

 

 

(わたくし)が最後の一華を咲かせてみせましょう!」

 

この半年間、あたしがずっと聞きたかった声だった。

第二世代の奴らが真似してるのを聞くたびに、胸の中がザワついた口上だ。

お前に憧れる奴ばっかりだったから、みんな空で言えるんだよソレ。

 

 

「夢の使者、キュアチェリー。とくと御覧あれ!」

 

その余裕ぶった微笑も、あたしの記憶通りで。

白とピンクのドレスを風に靡かせて、綺麗な長髪もそのままで。

流し目から垣間見える妖しい雰囲気なんて、見間違えるはずもねぇよ。

 

 

 

 

 

おかえり、キュアチェリー。

 

 

 

 

 






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