魔法少女さんとサイボーグさん   作:カードは慎重に選ぶ男

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前回のおさらい

機械の身体にコンプレックスを持ってしまっているサイボーグさん、ついにメカバレしてしまうのであった。
そして、意味深なことばかり口にするあからさまに重要人物な魔法少女さんは一体何者なのか……?




第6話:昭和生まれのサイボーグさん

 

 

 

 

 

 

 

地球外知性体4号の騒動から2日後、あたしは無事に修理を終えていた。

一応、メインエンジン以外のパーツは丸々1体分以上の予備があるらしいんだよな。

あんまり頻繁に壊すと予備パーツの補充が間に合わなくなるらしいけど。

 

何はともあれ今日のあたしは、4号の出現地点だった小学校まで再び来た訳だ。

黒ずくめのパワードスーツ装備じゃなくて、一般人の恰好でな。

外見としては普通に生きてた頃の背格好を再現して母さんが作ってくれたんだ。

身長も当時のままではあるけど、元々結構高かったからそれはこれ以上は要らないかなぁ。

 

ともかくパッと見た程度じゃサイボーグだと見抜かれる心配はない……って母さんは言ってた。

と言っても、あんまり線が出る格好はしたくない。

下はガウチョパンツで、上はダボダボパーカーだ。

 

母さんのお墨付きとはいえ、やっぱり気になるんだよな……。

気にしすぎかもしれないけど、身体のシルエットが見えやすい恰好をするのはかなり抵抗を感じるんだ。

道行く誰かが、すれ違った瞬間に違和感を持つんじゃないか、って怖く思っちまう。

 

で、今回のあたしの目的は、落とし物探しだ。

この間胴体に大き目の傷を入れられた時に、懐に入れてた物を落としちまったんだよな。

20年前の夜明けの大火の時に行方知れずになった親友の形見だ。

4号の残骸を回収した警察組織に問い合わせてもダメだったから、たぶんまだ現場に落ちてるんだろ。

黄色いテープをくぐって、あたしは校門だった箇所から敷地内に侵入した。

 

 

「たとえ人々の心が枯れ果てようとも……」

 

そんな絶妙なタイミングで、聞き覚えのある口上が聞こえた。

思わず、あたしは周囲を見渡しちまった。

 

 

(わたくし)が最後の一華を咲かせてみせましょう!」

 

若干舌が回ってない口上の主は、すぐに見つかった。

瓦礫が積みあがって2メートルぐらいになってる上に、小学校の高学年ぐらいの女の子が立ってキュアチェリーの真似事をしてやがった。

こうして別人が真似てるのを聞くと、本物の声の通り方って本当に綺麗だったんだなって思っちまうな。

この小学校であいつが戦ったから目撃者が相当数いたせいで、マネするガキも出るんだろうな。

 

 

「夢の使者、キュアチェリー。とくと御覧あれ!」

 

あたしが言うのもなんだけど、ここは今は立ち入り禁止だし、瓦礫が散乱してるから危ないぞ。

ただ、この年頃のガキどもが注意して素直に聞くかね?

面倒だな。首根っこ掴んで放り出すか。

そう思ってると、強めの風が吹いて女の子は瓦礫の上でバランスを崩しちまった。

 

 

「あぶねぇな。ったくよ」

 

落下した女の子を、足を掴んで宙釣りスタイルで助けてやるのは間に合った。

こういう時は瞬発力と握力に感謝だな。

両腕を開いて抱き留めるみたいなのは、身体がカチコチなのがバレるからやりたくないけど。

つーか鋼の身体で抱き留めたら結局地面に衝突するのとダメージあんまり変わらねーよな。

 

 

「あ、ありがとう、ございます……」

「大丈夫か、姉ちゃん!」

 

大きめの瓦礫が多くて気付かなかったけど、もう一人ガキが居たみたいだ。

呼び名から察するに、二人は姉弟関係なんだろうな。

地面におろしてやって聞いてみると、姉の方はマナで弟はタイチだとさ。

5年生と4年生らしい。

 

 

「あたしは……木原マコトだ」

「姉ちゃんを助けてくれてありがとな、マコト姉ちゃん!」

 

……あたしも、これぐらいの子供がいてもおかしくない年齢なんだよな。

サイボーグボディの外見は事故当時の中坊のまんまだけど、生まれは昭和末期だし。

もっとも、身体のサイズを変えるって話になると追加装備まで含めて構成パーツの規格を全面的に見直す必要が出てくるし、そんな贅沢は死んでも言えないけどな。

あたしは、母さんが創ってくれた人類最強のサイボーグだ。それだけで十分だ。

まあキュアチェリーの奴が居る状況で人類最強は名乗りにくいけど、あのスカシ面もいつか必ずブン殴る。

 

そういや、チェリーの奴は妙な包容力があったな。

中坊には出せない母性みてぇなのがあった気がする。

やっぱ、実年齢はもっと上だろうなアイツ。*1

下手したらマナやタイチよりデカいガキが居てもおかしくない。

 

 

「さっきのは、キュアチェリーって奴のマネか?」

「マコトさんもキュアチェリー様のファンなんですか!?」

 

「お、おう……?」

 

物怖じしていたマナが、急にキラキラした目でこっちを見てきやがった!

アイツみたいに曖昧な微笑で誤魔化すような技能の無いあたしは、気圧されて頷いちまった。

今、「様」付けでキュアチェリーを呼んだか?

首ったけって感じだな。

……そんなに、アイツがいいのかよ。

 

桜の花のように可憐だの、雨風にも負けない大樹みたいに力強いだの。

美辞麗句が雨あられみてーに続いて、あたしは聞きに徹した。

 

 

「キュアチェリー様こそ、まさに夢の使者! この世界に現れた本物のプリキュアなんです!!」

 

そう結んだマナは、若干息が上がっていた。

興奮しすぎたのか、顔が少し赤くなってるな。

でも、あたしは聞きなれない単語が混じっていることに疑問を抱いた。

 

 

「ぷり、きゅあ……?」

 

なんだそれ。

英単語なのか?

固有名詞みたいな雰囲気だった気もするけど、何なんだろ?

 

 

「マコト姉ちゃん、プリキュア知らないのか? 見たことないとかじゃなくて、名前自体を聞いたことないの?」

「あたしは流行には疎いんだ」

 

よく考えたら流行に疎いって次元じゃないな。

昏睡状態の期間が長かったし、そのあともリハビリで忙しかったし、流行り廃りは殆ど分かんねーや。

 

 

「私達が生まれる前からの長寿アニメシリーズですよ! 今年で20年目なんです!」

 

今年で20年目……ってことは19年前に始まったのか。

なるほど、絶妙にあたしの知らない時代の話だな。

話を聞いてみると、なんか魔法少女ものっぽい雰囲気だ。

 

実はあたし、その手の魔法少女ものには絶妙に縁が無い年代の人間なんだよな。

あたしよりもう少し上の世代だとセーラームーンを見てた人ばっかりらしいんだけどさ。

幼少期に見ていたものだと……たぶん、一番イメージに近いのが『赤ずきんチャチャ』かなぁ。

あとは『とんでぶーりん』とか『怪盗セイント・テール』とか?

 

原作版のチャチャはマジカルプリンセスに変身しないって知って衝撃を受けたのは良い思い出だ。

セイント・テールは魔法じゃなくて手品を使うっていう設定だった気がするけど、雰囲気としては近いんじゃねーか?

何となく、ぶーりんはその手の魔法少女系列の中ではイロモノなのは察してたけど、なんでか小さい頃はテープが擦り切れるまで見てたな……。

なんで女の子の主人公がヒーローになるのに、変身後がブタなんだよ??

 

 

「こりゃ驚いたな……。あのキュアチェリーが、アニメのキャラクターだったとは……」

 

浮世離れしてる奴だとは思ってたけど、創作上のキャラクターだってのは予想できねぇよ。

それが現実に存在してるとか、理不尽にも程があるぞ。

アニメキャラを模倣して作られたアンドロイドか何かってことなのか?

……と思ったんだけど、何だかマナの表情が曇ったのが分かった。

 

 

「キュアチェリー様は……本家に登場している訳ではないんです」

「どういうこった? ゲーム版のキャラ……とかって訳でも無さそうだな?」

 

もう少し掘り下げて聞いてみると。

どうも名前的にもデザイン的にもプリキュアシリーズを意識したキャラっぽいんだけど、そのものがアニメシリーズに居る訳では無いんだとさ。

まさか、未来から来たとか言い出さねぇだろうな?

 

というか、よく考えたらキュアチェリーそのものズバリのキャラクターが既にアニメに登場してるって線は初めから無いんだよな。

そんなのが居るなら母さんたちが調べをつけて情報を回してくれるはずだし。

 

 

「姿形は似てるが、キャベツとレタスみたいに全く別の物が偶然似ちまったみたいな可能性もあるし、何とも言えねぇな……」

 

そもそも本人がキュアチェリーと名乗ったことはあるが、そのものずばりプリキュアと名乗ったことは一度も無いからな。

偶然名前が似てるだけの別物かもしれねぇ。

 

 

「キャベツとレタスってそんなに違うのか? マコト姉ちゃん、もしかして頭いい……?」

「あたしってそんなに頭ピーマンに見えるか??」

 

――あの。念のために口にしておきますけれど、『お天道様』は物の例えです。本当に宇宙に行ったりしないでくださいね?

 

ちくしょう!

思い出したら、また怒りがぶり返してきやがった!

天然ボケみたいなノリで平然とこっちをバカにしてきやがったあのスカシ面、やっぱりいつかブン殴る!!

落ち着け、落ち着け。

アドレナリン量がモニタの片隅に数値で見えるの、こういう時には便利だな。

 

遠い昔に死に別れた親友の言葉を思い出して落ち着こう。

今日あたしが探しに来た形見も、その親友の持ち物だったんだ。

あたしの親友だった北條トウコなら、こんなとき何て言ってたかな。

 

 

――マコトは見た目の5割増しぐらいで頭良いんですから、あとはその性格を何とすれば良いんじゃないですかね?

 

そうだ、トウコはあたしのことを確り認めて……あれ?

冷静に思い出してみると、トウコも結構あたしのことバカにしてたか??

結構嫌味っぽい喋り方をすることも多い奴だった気がするな。

でもなんでか気が合ったんだよな。

……同じ男を、好きになっちまうぐらいには。

 

 

「そうだ。あたし実は落とし物を探しに来たんだよ。この辺で、青いポケベル見なかったか?」

「「ぽけ……べる……??」」

 

え……?

確かに20年前の夜明けの大火の当時でも、ちょっとブームは下火かなって思ってたけどさ。

まさか最近の小学生は、名前すら知らないのか……??

夜に勉強机に向かうフリして、解読表を見ながら数字を打ち込むみたいなの、今のガキどもは全然無いのか?

 

これが、ジェネレーションギャップか……。

浦島太郎も、こんな気分だったのかもな。

あたしももうオバタリアンの仲間入りなのかもしれねぇ。

 

その後、マナとタイチに手伝ってもらって一緒に探したけど、結局トウコの形見のポケベルは見つからなかった。

こりゃぁ、戦闘中に落とした後にドラゴンヘッドの粒子砲で蒸発しちまった感じか……?

手伝ってくれた礼に缶ジュースを1本ずつ買ってやって、あんまり危険な場所で遊ぶんじゃねぇぞ、なんて一応注意してやって。

あたしは、何とも言えない感傷に浸りながら懐かしの母校跡地を後にする羽目になった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
ハイパー節穴アイ





サイボーグさんの思い出のアニメのラインナップにレイアースを入れるかどうか迷った作者なのであった……。
いわゆる魔法少女ものと言われて連想する候補に入るかと言われると怪しめだったので結局ボツに。
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