魔法少女さんとサイボーグさん   作:カードは慎重に選ぶ男

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前回のあらすじ

サイボーグさん、親友の形見のポケベルを探すも達成ならず。
それどころかポケベルという言葉すら知らない小学生らの言葉にダメージを負ってしまう……。
キュアチェリーの人気ぶりも気に食わん。
昭和の女はつらいよ。





第7話:魔法少女さんと恋心の卵

 

 

 

 

 

 

 

あの巨大狼との戦いから1週間が経過して、僕たちの生活もようやく落ち着いてきた。

小学校の校舎はメチャクチャになってしまったけど、近くに廃校になった高校があったから、そこを使って授業を再開できることになったんだ。

あと、変わったことと言えば……キュアチェリーの存在が公然のものになったことかな。

この間は小学校の校庭で戦ったから、目撃者も多かった。

街の中の至るところで、噂話が聞こえてくる。

 

ネットにもキュアチェリーの名乗りや戦闘風景がアップされてるけど、それだけを見た人は怪しい合成映像だと思ってることが多いみたいだ。

でも僕が気になったのは、あのパワードスーツさん……もといサイボーグさんの情報が無いことなんだ。

SNSに流れている動画なんかにも、何故かあの黒いサイボーグさんの情報は全く無い。

あのロマンの塊としか思えないドラゴン頭のビーム砲を、もっと色々な人に見て欲しいんだけど、どうして無いんだろう。

というか僕が見たい。(本音)

瓦礫の隙間から遠目に見ただけだったけど、カッコイイという概念を詰め込んだみたいなビーム砲だよねアレ。

 

それに……お姉さんの身体の中身が機械だったのは驚いたよ。

ライダースーツ風の防護服が裂けて、左腕とお腹の中身が見えちゃってたんだ。

金属製の基盤とか電気コードとかが一杯に詰まってたんだけど、地球外知性体のと違って未来科学っぽいものに見えたんだよ。

なんだか、いけない物を見ているような、ワクワクするみたいな、不思議な気分になってさ。

キュアチェリーのキャラ的に微笑はキープしたけど、ちょっと目が泳いでしまっていたかもしれない。

ジロジロ見たら怒られるかもしれない、って思ったのもあるけど。

 

放課後の教室で頬杖をついてサイボーグさんへの想いを馳せていると、同じ教室の隅で女子たちがキュアチェリー様の噂話をしているのが耳に入ってくる。

その中にはマナちゃんの姿もあって、とても幸せそうで情熱にあふれているように見えた。

キュアチェリーの中の人として僕も嬉しいよ。

 

でも……サイボーグのお姉さんだって格好良かったと思うんだ。

それを知る人間が殆ど居ないのは、何だか寂しく思えてしまうよ。

同時に、それを知る数少ない人間の中に僕が入っているというのが、ちょっとだけ嬉しく思えたりもするんだけどさ。

 

次の地球外知性体が現れたら、また会えるよね。

僕の溜息は、放課後の教室に溶けて消えていった。

 

 

 

結局、次の地球外知性体が現れたのはそれから更に4日後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駅前の広場に現れた地球外知性体5号は、2メートルぐらいの青いカブトムシだった。

低空飛行しながら、カブトムシは時折放電して周囲に火災を引き起こしているみたいだ。

僕が先に到着したけど、すぐにサイボーグさんも来てくれた。

 

 

「待たせたな! 状況は?」

(わたくし)も到着して間もないので、何とも」

 

……なんか、デートに来たカップルみたいな会話だった気もする。

サイドカー付きのバイクから飛び降りたサイボーグさんは、黒銃による射撃で青カブトムシの出方を窺い始めた。

青カブトムシの丸味を帯びた装甲の前では、甲高い音を立てて弾丸は弾かれるばかりだった。

射線に入ったら悪いかな、と思った僕はサイボーグさんの近くに寄って少しだけ様子見に入った。

放電攻撃が来たら球体バリアで守ってあげよう。

 

でも、僕の読みは外れて、巨大な青カブトムシは鋭利な刃物のように真っすぐなツノを構えて突進してきた。

防御か、回避か、迎撃か。

一瞬だけ迷ったけど、サイボーグさんが拳を握ったのを見て僕も方針を固めた。

 

 

「どっせいっ!!」

「はっ!」

 

サイボーグさんの右拳と僕の左拳が、同時に青カブトムシの装甲を真正面から殴りつけた。

ちょっと僕たちは後ずさってしまったけど、殴られた青カブトムシの方が大きく弾き返されていた。

衝撃で大きく後退した青カブトムシは、御自慢の装甲のお陰でダメージは少なそうだ。

でも、自慢の一本ヅノが硬そうなアスファルトに突き刺さって、動きが止まっちゃってる!

 

 

「さーて、お立ち台だ! リミット解除!!」

 

サイボーグさんは、バイクのサイドカーに積んであったドラゴン頭のビーム砲を取り出して左手に填めた。

真っ黒なパワードスーツの装甲の隙間から、桜色の光が漏れ出している。

それに、空気が歪んでいるのが分かるぐらいに、身体全体が発熱しているみたいだ。

 

おお……!

近くで見ると、思った以上にカッコイイなコレは。

前回は遠目だったせいで分からなかったけど、よく見たら第3号の頭部を改造して作られた物みたいだ!

 

 

「ファイアッ!!」

 

ドラゴン頭の目が光って、ビーム砲が火を噴いた。

サイボーグさんは砲撃の途中で踏ん張り切れずにひっくり返ってしまったけど、この間よりは反動に耐えられてるみたいだった。

地味に少しずつスペックアップしているのかもしれない。

僕がサイボーグさんに駆け寄って安否を確認してみると、背中の小窓から見える光は前回よりも多少強く見えた。

すぐに生死にかかわるような状態じゃなさそうだ。

やっぱり、実践データが増えるにしたがって反動技の制御技術も進歩しているんだろう。

 

なんだけど……(すんで)のところで体勢を立て直した青カブトムシは、ビーム砲撃を正面から受け止めていたんだ。

流石に無傷とはいかなくて、青かった装甲が焼け焦げてしまっていたけど、それでも継戦可能な様子だった。

熱で真っ赤になった一本ヅノを構えて、カブトムシが再度突撃をかましてきた。

 

倒れているサイボーグさんは、回避は難しそうかも?

サイボーグさんを抱えて回避行動をとるっていう選択肢もあったんだけど……。

僕は一瞬の葛藤の末に、地面に転がってしまっていたドラゴン頭を手に取った。

 

やっぱり、見れば見るほどカッコイイぞ!

真っ赤なドラゴン頭の砲身!

キュアチェリーが使うのはキャラ的に大丈夫なのかという疑問が一瞬だけ浮かんだけど、まぁ一時的な借り物だし緊急措置だから許して!

一直線に突進してくる青カブトムシを正面から見据えて、僕は背筋をピンと張ってドラゴン頭の砲身を構えた。

 

 

「よせ!! そいつはマニピュレータからの給電が必よ……」

「チェリーブロッサム・ハリケーン!」

 

桜吹雪ならハリケーンよりもブリザードの方が一般的らしいんだけど、僕は語感でハリケーンを選択した。

砲撃の反動でひっくり返るのはキャラ的に良くないから、反動は気合で耐えなきゃ……。

先程の第一射よりも心なしか高威力に見えたビーム砲撃は、青カブトムシの装甲を打ち破ることに成功していた。

御自慢の一本ヅノも根本から折れてしまって、ゴキブリみたいなシルエットになって地へ伏している。

 

やった、僕にも出来たよ! お姉さん!

あんまり大はしゃぎするのはキャラ的にダメだけど、つい嬉しくなった僕はクールダウン中のサイボーグさんの方に流し目を落としてしまった。

顔が全面的に隠れているサイボーグさんは特に何も反応を返してくれなかったけど……たぶん、まだ戦闘中だから気を抜くなって言いたかったのかも。

ドラゴン頭のビーム砲を放り出して、僕は接敵した。

 

ツノを失って装甲もボロボロな巨大カブトムシの上に立った僕は、ぐちゃぐちゃに詰め込まれた電気コードの奥にある紫色の心臓部を見つけ出して、長手袋装備の両手を差し込んだ。

弱っている巨大カブトムシは、最後の足掻きに放電攻撃でこっちを妨害しようとしているみたいだった。

でも、既に致命的なダメージを受けてしまっている巨大カブトムシの電撃は、はっきり言って大したことなかった。

 

 

「ハート……キャッチ!!」

 

あえなく、巨大カブトムシは紫色の心臓部を引き抜かれて機能停止した。

そしていつも通りに直系30センチぐらいの心臓部を抱きしめて謎パワーを供給してやると、元に戻って人間の姿が現れた。

今回は成人男性だった。

やっぱり共通点なんて見当たらないな。

救出した一般人を適当な路肩に寝かせて、僕は悠然とサイボーグさんの元まで戻ってきた。

 

サイボーグさんは上半身だけを起こして座り込んだまま休んでいる様子だった。

今回は中身の機械類が見えるようなことにならなくて残念……じゃなくて、ダメージが少なくて良かったね、うん。

前回までは地に倒れ伏したまま全く動けなかったみたいだったから、比べたらやっぱり反動技によるダメージが少しずつ減っているんだろう。

それでも念のため、背中の小窓から見える桜色の何かに少しだけ給電(?)してあげよっと。

この給電(?)も、そのうち要らなくなる日が来るのかも?

 

 

 

ああ、あと忘れてたけど、このまえ拾ったものがあったっけ。

マナちゃんたちと小学校の跡地で遊んでた時に拾ったんだけど、たぶんお姉さんのだよね。

細長い液晶画面が付いている、古いゲーム機を小さくしたみたいな青いプラスチック外装の小物だ。

用途は分からないけど、サイボーグの部品かもしれない。

 

 

(わたくし)、失念しておりましたけれど、お姉さんの落とし物を預かっておりました。お返ししますね」

「……ありがとよ。嫌になるぐらい、借りばっかり増えていきやがる。まったくよ……!」

 

あのドラゴン頭のビーム砲ってしばらく借りられないかな、なんて言葉を飲み込みながら。

僕は、光の花びらを撒き散らして迷彩にしながら現場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

サイボーグさん、今日も格好良かったな。

次はいつ会えるかな。

 

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