無いよりはマシ
■ ■
「猫さんってさ、人間さんどう思う?」
「また唐突だな。」
地獄に有る喫茶店『地獄屋』から遠く離れた幽谷の在る場所、所謂『無間地獄』と呼ばれる最悪の地獄への穴が有る場所で、戌亥とこと猫守糾祖は休んでいた。
互いに、背中を合わせる様にして地面に座り、休んでいた。
「人間をどう思う…か。それはまた、難しい質問だな。」
「難しい質問なんやね。愚かな生き物とか言いそうやのに。」
「失礼な物言いだな。…だが、それも正しいと言えば正しいな。」
地獄屋から持ってきた緑茶(戌亥が淹れたもの)が入った竹水筒に口を付け、中の美味い緑茶を飲みながら彼は考え込む。
人間。人類。神様の失敗作にして、同時に神を生み出した存在であるとも言える者達。
自分を第一に考え、自分の為に他者や物を利用し、善悪の何方かでしか考える事が出来ない愚かな生物。その認識は、正しいのかもしれない。
だが―――彼の知り合いである女神は、その人間達と仲良くしている。
外界に降りて、人間と仲良く遊んでいるという話しをよく聞かされていた。強制的に。
何でも、外界に存在するのは人間だけではないらしい。
…まぁ、それは兎も角。人間という生き物は、彼にとって――――――
『またいつか、歌ってあげる。』
あぁ、そういえば…彼女も、人間だったな。
「面白い生き物だ。何処までも、見ていて飽きない。」
柔らかく笑いながら、そう答える。
歳を取らず、死のうに死ねない、哀れな少女。とても、綺麗な声を持った不老不死の少女。
背中合せの為、戌亥には彼の表情を見る事は出来ないが、
「…そっか。あたしと同じやね。」
彼が、自分と同じ想いで答えたのだと、不思議と理解出来た。
「人間の友達でも出来たのか?」
「…え、怖っ。なんで分かったん?」
「突然、人間について聞いてきたんだ。理由があるとすれば、それくらいしか考えられないだろ。」
「すごー…。まぁ、合っとるよ。と言っても、結構前からやけどね。」
「そうか。」
「猫さんには居らんの? 人間のお友達。」
「人間と関わる事なんて、指で数える程度しかなかった。いや、そもそも…誰かと関わる事も、あまりなかった。」
「あー…つまり、あれやんな? ボッチってやつ。」
「それは違う。友達が居ないとは言っていないだろ。」
「じゃ、居るん?」
「居るよ。もう見る事も叶わない…遠い昔に出来た、人間の友達が一人。そして、此処に一人。」
「…………」
「驚いた顔をしてるな。嫌だったか?」
「いや、そういう訳あらへんけど…意外や思っただけ。」
「自然となるものなんだろ、友達というのは。俺はお前とは友達になれたと思っている。お前はどうだ、戌亥?」
「…あは。思っとるよ、可愛い猫さん。」
「それは良かった。」