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「えっ…めっちゃイケメン! ちょ、いにゅい羨ましい!」
「こ、この人がとこちゃんが言ってた始まりの猫さん…髪めっちゃ綺麗。」
地獄に在る喫茶店「地獄屋」の店内、そのカウンターの席にて。
原初の猫にして天国の住人「猫守糾祖」は、いつもの様に地獄屋で穏やかなティータイムを過ごそうとやってきたのだが、其処には店員であり友人である「戌亥とこ」だけではなく、赤髪の女と銀髪に水色のメッシュが入った気品な王女が居たのだ。
来るや否や、この二人が韋駄天の如き速さで駆け寄り、現在の様にじっとりと舐め回す様に見られているのだ。
「………………」
「あはっ、凄い顔しとるよー、猫さん?」
「舐め回される様に見られるのが好きな奴なんて居ないだろ……主に錬金術師、お前の視線だ。」
「え、何でうちが錬金術師だって知ってるの!?」
「現代でそんな衣装を纏ってる奴はそう居ない。何より…薬品の臭いがする。」
「えっ……」
嘘でしょ…と、何故かは分からないがショックを受ける錬金術師。そして、その様子をけらけらと戌亥は笑っている。
良い性格だよ、本当に。と、やや呆れながら、いつもの様に緑茶を頼むと注文する。
「その点、皇女は良い。視線も嫌にはならんし、匂いも気にならん。」
「あ、ありがとうございます。」
「そう畏まらなくて良い。此処では立場は誰であれ同じだ。客という一個人に過ぎない。まぁ、君が礼儀を気にするのであれば、言葉遣いも変えるが。」
「猫さんもだいぶ堅いと思んやけど。」はい、緑茶。
「ほっとけ。俺は元からコレだ。」ありがとう。
流れる様な会話、夫婦の様なやり取りに、錬金術師と皇女殿下は絶句した。
彼女と長い間一緒に居るが、あそこまで流れる様なやり取りは今まで一度も見た事がない。あんなにまで柔らかい表情の戌亥とこを、一度も見た事がない……!!!
「これが年の差ってやつか…」
「何言ってるの、アンジュ…」
「わたしと猫さんとじゃ、年の差なんて桁違いやわ。それこそ仙人と凡人くらい。」
「そんなにあんの!?」
「これでも、生物が誕生した時から生きてる身だからな。」
涼しげに流すが、二人は大いに驚いた。
生物が誕生した時から生きている。その言葉だけで衝撃が走る。
生物が誕生した時というのが、いったいどれだけ前の事なのかは二人には分からないが、目の前の彼が彼女等が思う以上の存在である事は理解した。
「あぁそういえば、先日に下界の妖怪と天国で出会ったぞ。」
「天国で妖怪と? 死んでもうた子かな」
「いや、迷い込んだだけだ。それに、妖怪とは言ったがほぼ人間だ。あれだ、下界で言うケモミミ? を持つ者だ。」
「もしかして環先輩じゃないよね…」
「そんなまさか…ちなみに聞くんですけど、その子の色は…?」
「紫」
「まさかのおかゆさん!?」
「後輩も驚いていたな」
「それ絶対に天音かなたさんじゃん!」
知り合いが多いようだな、と呟きながら、飲み干して空になった湯呑をテーブルに置き、椅子から立ち上がった。
「あら、もう行くん?」
「あぁ。あのクソめが……上司から仕事を押し付けられたからな。やらなければ」
(クソ女神って言おうとしたよね?)
(クソ女神って言いかけたね)
(クソ女神って言いたかったんやろね)
変な上司を持つって大変なんだなー。そう思った三人であった。
「っくしゅ…風でも引いちゃったかしら?」
ちなみに、その本人(もしくは本神)―――『モイラ』は仕事を全て彼に押し付けて現世を楽しんでいた。