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「猫さんって敬語使ったりするん?」
「今日も唐突だな」
今日も晴れ空な(真っ黒だけど)地獄、その喫茶店の中で猫と犬はのんびりとしていた。
猫はいつも通り、犬が煎れたお茶を優雅に飲んでいて、犬もいつも通り、猫がお茶を飲む姿を飲みながら唐突に質問をする。
いつも通りの平和な日常である。地獄に平和とか無縁も良いところではあるけれど、まぁ、とにかく平和である。
「あまりないな。俺より上の存在は創造主か最高神くらいのものだから」
「やっぱ、そっかー。猫さんは偉い人やもんね」
「別に偉いと言われる程の立場にも就いてないがな。猫らしく、ただ自由気ままにしているだけだ」
「やから地獄まで来るんやもんねー」
「天国は退屈にも程があるからな。それに、友人の所に来る事は普通だろ」
「毎日は来ん思うけどね」
「そうか。まぁ、変えるつもりはないがな」
猫は自由気ままなのだ。だから地獄にも遊びに行くものなのだ、そうなのだ。
故に、それを変えるつもりも一切ないのだ。
ちなみに、戌亥とこは猫の発言にまんざらでもなかったりする。
「ところで、何故、いきなり敬語の話しを? 使えないのか?」
「いや、そんな事はあらへんよ? 単に気になっただけ」
「そうか。使えなかったら従業員としてどうなんだ、と言おうとしたが、そういう訳ではないんだな」
「そらね。私も、普通に敬語くらいは使えますー」
「そういうものか?」
「そういうもんよ」
「ふむ……なら暇潰しに、互いに敬語で話してみるか?」
「おぉ、ええね。思えば、私と猫さんってお互いに敬語使った事ないもんね」
「そうですね。私の場合、そういった性格でしたので」
「うわぁ…」
「おい、うわぁとは何だ、うわぁとは。その反応はないだろ」
あからさまに顔を顰める戌亥。どうやらお気に召さなかったらしい。
だが、それもそうか。それなりに長い間タメ口で話していた友人が、敬語を話し始めれば違和感を覚えるのも無理はない。
もしくは、彼が自分に対して他人行儀なのが気に食わないのか。
どっちにしたって、彼が敬語なのは嫌らしい。
「敬語にして数分も経たずで終わったぞ。どうするんだ」
「知らへん。わたし悪くないもん。悪いのは敬語使った猫さんやもん」
「お前は偶に子供の様になるな。素か、それとも戯れか…どちらにせよ、随分と愛い面じゃないか」
「あんま難しい言葉は分からんのやけど、褒めてる?」
「あぁ、褒めている。」
「ふーん…そ。でも、何も出ぇへんよ?」
「お前が淹れてくれた茶の一つで間に合っているから、問題ない」
必要なものは、既にこの手の中にある。
涼しげに言う可愛げのない猫に、犬は不満そうでまんざらでもないような、複雑な表情を浮かべていた。