「私」の青春   作:せんせい

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熱意と優しさと

 ミレニアムは多種多様な科学兵器……もとい、発明品に溢れている。

それらは全て学生たちの力作であり、大体何かしらの事件や事故を引き起こすトリガーだ。

広大なミレニアムを散歩していると、そういったモノに出くわすのは一度や二度ではない。

 そして、そういったモノを壊した際に持ち込む場所は限られている。

 

「おや、今日もかい?」

「はい。すいません、いつも」

「いやいや、私たちは機械いじりが主だった活動だからね。気にしなくていい」

「今日損壊させた(暴走していた)半分は、貴女達の作品なんだけどね」

「おっと、おもてなしを忘れていたね。冷たい麦茶なんていかがかな?」

 

 暴走しがちな作品を数多く作りがちなエンジニア部、その部長にジト目を向けると、わざとらしくお茶とお菓子で懐柔してくる。

何を言っても彼女たちの『熱情』は変わらないし、変えられないし、『私』が変えていいモノではない。

発明と開発は彼女たちの青春であり、掛け替えのない時間なのだから。

 

「あまり周囲に被害をもたらすようなモノを、取り付けないで欲しいなって……いつも言ってるね」

「ん~、しかしだね?必要だから、不必要だからと決めつけるのは良くないと思うわけだ」

 

 それはそれとして、注意はする。災害救助用のロボに銃火器を付けたり、自爆装置を仕込んでいたり、そういうところだぞ??

彼女たちにとって『ロマン(熱情)』だから、何度言っても意味は無いのだけど、それでもお茶の時間に軽く言いたいことだけ言うこの時間は、もはや通例の儀式みたいになっていた。

 

「余地があるのなら、手を加えたくなるものさ。そもそも――」

 

 お茶とお菓子を口元に運びながら、持ち込まれた発明品を弄りながら語られる、彼女の熱意を心地良く聴かせてもらう。

『私』が壊し、持ち込み、注意し、白石ウタハを始めとした面々が聴きながらもロマンを語る。

 

 

――『少女を美しくするのは、化粧ではなく熱情さ』

 

 

 彼女の、白石ウタハの口癖みたいな口上文。

事実として目の前の彼女はその熱意に瞳を輝かせ、飽きることの無い探求と発明に身を置いている。

素晴らしいことだし、凄いことだけど、誰かがそれで困ったことになるのは見過ごせない。

どうせ口煩いセミナーの誰か(みんなのおかん)さんが、後でしっかり叱ってくれるだろうから、『私』は一言くらいしかない。

その一言に、一時間以上も熱意で返せる彼女との時間を、暫く楽しんだ。

 

 

 時間はあっという間に経って、エンジニア部を後にした『私』は、全く想定していなかった相手と出くわした。

とても長い黒の長髪、青い瞳、青空の様なそのヘイロー。

小柄な身体に到底持ち運べると思えない巨砲、レールガンこと光の剣を背にした、その少女は――

 

「――アリス」

「はい?」

 

 思わず呟いてしまい、ハッと口元に手を当ててしまう。

『私』の思い出(記録)でも、沢山手助けしてくれた生徒の一人。

同時に、あの場所(箱舟)で観測されたある可能性(・・・)では……。

 

「えっと、アリスを呼びました、よね?」

「ぁ、ぇっと、」

 

 大事なキーパーソンであり、あらゆる意味で強烈な存在を前にして、記憶()がぐちゃぐちゃになり右往左往してしまう。

そんな『私』をのぞき込むその瞳と目が合ったその時、アリスのヘイローが一瞬点滅したように見えた次の瞬間。

 

「――理解しました」

「へ?」

「貴女は、アリスのパーティに入りたいのですね!」

「……え??」

仲間(パーティメンバー)大歓迎です!でも、そんな状態では一緒に冒険できません!」

「え、あ、うぇ???」

 

 唐突な宣言に疑問符が飛び交い、アリスの手に引かれるがままベンチへ移動する。

ストンとアリスが座り、『私』は彼女の膝に頭を導かれ……膝枕された。膝枕された!?

 

「大丈夫です、アリスは勇者なので!安心して任せて下さい!」

「いや、なにがどうして……?」

「アリスは回復魔法が使えませんし、ポーションも持っていません。ですが、ひと眠りすればHPは回復します!最近は宿屋でなくとも大丈夫だと、アリスは学んでます(ゲーム知識)!」

「???」

 

 まったくもって何を言っているのか分からなかった。

回復と言われても、今日は特に怪我を負っていない。

さっきウタハとの時間を過ごして、休憩もした、のに……。

 

(……アリスは、優しい、ね)

 

 優しく撫でてくれるその手の感触と温かさに、段々とまぶたが下りていく。

気付けば、意識が無くなっていった……。

 

「何故でしょう? 知らない人のはずなのに、アリスは貴女に言いたいのです」

 

――お疲れ様です、と。

 

 

 もう一度まぶたが開いた頃には、すっかり夕暮れになっていた。

ずっと『私』を膝に乗せていたアリスも、寝落ちしていて……可愛いけど、起きなければ。

そう思い身を起こそうとして、パチっとアリスの目が開いた。

その瞳は、ヘイローも赤く(・・)なっていて。

 

「――起きましたか、イレギュラー」

「ぁ、えっと、おはよう?アリス、じゃないよね」

「えぇ」

 

 身を起こし、隣に座り直す。

彼女はアリスの中にいる、王女の補佐として存在する侍女だ。

あちらと『私』は初対面だし、『私』はどうしてこうなったのか、さっぱりなのだ。

何も言えずに暫く隣り合っていると、彼女はこちらへ顔を向けた。

 

「一応、忠告しておきます」

「?」

「何時までもはもちませんよ(・・・・・・)。貴女には荷が勝ちすぎています」

 

 真っすぐな視線でとても真剣に告げられる言葉。

しかし、肝心の『私』はその意味がよく分からない(いけない)、だから感謝を告げるしかなくて。

 

「えっと、うん??忠告、ありがとう?」

「なにも分かっていないのに感謝しないでください」

「えー、忠告って善意ってことでしょ?だったら感謝しないと!」

 

 優しさと善意には笑顔で応える、素晴らしいことだと思う。

素直に伝えるとジト目を向けた彼女はそっぽを向いてしまった。

 

「王女が、貴女を気にしているようなので。それだけです」

「素直じゃないなぁ」

「一言余計です……全く、そんな状態で口の減らない人ですね」

「? よく分かんないけど、心配してくれてるんだよね?」

「あーもぅっ、ハァ。王女(アリス)が目覚めます。私とはもう会うこともないでしょうし、余計なことは言わないでくださいね」

 

 言いたいことを言って、彼女は目を瞑った。

ヘイローが一瞬消えた後、もう一度目覚めた彼女は青色で。

 

「あれ、アリスは……って起きたんですか?!」

「え、あぁ、ありがとう。よく眠れたよ」

「むぅぅ……おかしいですね、あまり回復してません」

 

 やっぱり宿屋じゃないとダメなんでしょうか?と訳の分からないアリスの様子に、もう深く考えることを止めて立ち上がる。

心なしか軽くなった身体で伸びをして、アリスへ振り向く。

 

「もう遅いから、アリスも早く帰りなね」

「帰る……そうです!帰りましょう!」

「ふぇ?」

 

 勢いよく立ち上がったアリスにガシっと掴まれ、引きずられ始めた。

知っていたけれど、力が強くてまるで敵わないっ!

 

「えっと、なになになに??」

宿屋(部室)で一泊すれば回復するはずです!それにパーティメンバーとして、モモイ達にも紹介したいです!」

「え、えぇぇぇぇ!?」

 

 その日、『私』はアリスの友達としてゲーム開発部に連れ込まれ、一晩過ごすのだった。

回復、と言いつつ結局徹夜で一緒にゲームで遊んでしまうことに。

随分久しぶりのコントローラーの感触と、彼女たちのゲームをプレイするハイテンションに巻き込まれながらも楽しい時間を過ごせた。

 

 先に眠ったモモイ達を置いて、こっそり抜け出すようにゲーム開発部を後にしたのは、余談である。

 




「アリス、ただいま帰りました!」
「おかえり~って誰その子?!」
「っ!?」(ロッカー隠れるユズ)
「新しいパーティメンバーです!宿屋で回復が必要なんです!」
「宿屋って、ここ部室なんだけど……というか、回復?怪我でもしてるの?」
「いや、私は元気なんだけど…」
「よく分かんないけど、ここで過ごすっていうなら――今日はパーティだね!ミドリ、お菓子の備蓄あったよね?!」
「お姉ちゃん?!」
「………パーティゲームなら、そっち」(そっと指差しだけしてロッカーへ)
「さっすが部長!」

ワチャワチャワチャワチャ



 ゲーム開発部みんな可愛いみんな好き。
みなさんも好きな所属やこの子好き!っていますよね、私気になります!(ナンテネ)
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