突然、博多から訪ねてきた実弦に琴音は驚いた、てっきり東京には数日の滞在と思ったが、すぐに夜行バスで帰るという。
だが、京都に行くと聞いて、不思議に思う。


映画の後日談です。

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実弦と見守る刀剣

 「これね、お土産だよ」

 にっこりと笑いながら手渡された紙袋、その中には色々なものが入っている、地元のゆるきゃらだという明太子をモデルにしたキーホルダー、せんべいやクッキーなど、たくさんだ。

 「琴音ちゃんはもうすぐ卒業だね、進路は決まった」

 初めて会ったときは自分のことをネッシーと呼んでいたのに、今は琴音ちゃんだ、人ってこんなにも変わるんだ、それが成長だとわかっているが、少し寂しいと感じてしまう。

 「どうしたの、あっ」

 不意にいたずらっぽい表情になり、ネッシー、小さな呼びかけに琴音は、ぽかんとした表情になった。

 「いや、ちょっと気をつけないといけないと思って、色々あるのよ」

 そういえば、彼女は一度東京に出て働き始めたが、しばらくして地元の博多に戻ったのだ。

 東京で働くというのは大変だったのだろうか、それを聞くと色々あってねと言われて、それ以上は聞けなかった。

 

「でも、驚きました、突然、東京に来るっていうから、お仕事でしょうか」

ラインやメールのやりとりをしている琴音にとって、突然、東京に行くから会いたいと言われた時は驚いた。

 喫茶店で抹茶ラテマキアートを頼むと、実弦はにっこりと笑いながら、美味しいと屈託のない笑顔を向ける、そんな彼女を見ていると、琴音は嬉しくなった。

 「今日は、どこかホテルに泊まるんですか、よかったら案内します、色々なお店ができてるから、きっと」

 すると実弦は首を振り、夜行バスのチケットを取っているからと答えた。

 「えっ、もう帰るんですか」

 「んーっ、その、京都に行こうと思って」

 琴音は不思議そうに京都ですかと呟いた。

 だが、あっと小さな声をあげた、そういえば東京駅のホームで彼女が色々な東京の菓子、土産を買っていたのを思い出したのだ。

 「もしかして、倉橋さんに会いに行くんですか」

 「そ、そうなんだ」

 あれっ、なんだか、琴音は不思議に思った。

 

 時間はあっという間にたってしまう、夜行バスの乗り場まで送る琴音を前にやっぱり、駄目だと実弦は叫んだ。

 「ど、どうしたんです」

 「やっぱり、話しておかなくちゃ、黙ってられない」

 「な、何をです」

 

 えっ、ええーっっ、琴音はバスを見送りながら、しばらくの間、その場所から離れることができなかった。

 驚きすぎて、思考が追いつかなかったのだ。

 で、でも、そういえばと思い出した。

 あの事件の後、自分もだが実弦は刀剣や歴史について知りたいと奈良や京都などに旅行と称して出かけていたのを思い出した。

 写真が送られてきたではないか、それで。

 

 それはとんでもないニュースとして世間を騒がせた。

 天災、気象変動、何かのとんでもないことが起こる前触れなのかもしれないとテレビの取材だけでなく、スマホや動画撮影をするために大勢の人々が京都のある神社を訪れた。

 

 季節外れの桜が咲いたのだ。

 

 昼間も、だが、夜になると恋人達が訪れた桜の下で撮影する姿に呆れていたのは二人の青年だ。

 「いや、あんた達の為じゃないから、これは俺たちの主の、兄じゃ」

 「んーっ、弟よ」

 また自分の名前を忘れていると思いながら、これは少しやり過ぎではないかと青年は思った。

 だが、祝い事だ、できるだけ派手にいこうと兄に言われては逆らえる筈がない。

 それに相手は長谷部の主というだけではないのだ、だから、こうして祝っているのだ。

 

 それにしても。

 桜の木の陰から、群衆の中にいる男女を陰から見ている大男の姿に兄弟は呆れてしまった。

 声をかけてやれはいいではないかと思うのだが、それができないのは、あのとき、別れのときの事をひきずっているからだろう。

 「しかし、俺たちの主がなあ、以外だ」

 「人の縁とは不思議なものだ、兄よ」

 「いや、最初は驚いたが」

 兄の言葉に、納得いくようないかないような、だが、寄り添い、桜を見上げている二人の男女の姿を見るとそうかなと思ってしまう。

 そして弟は気づいた。

 女が、ある一本の桜の木を見て嬉しそうに微笑んだことを。

 

 なんだ、余計なお節介をする必要はなかったか。

 おや、気づかなかったのか。

 言われて兄には叶わぬと弟は微笑んだ。

 桜の花のように綺麗な笑顔でだ。

 

 そして、後に驚く事が起きた、審神者が現れたのだが、それは刀剣達にとっても驚きだった。

 何故なら、審神者は双子だったからだ。

 




映画の後日談です。

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