【完結】後藤ひとりは改造人間である   作:鹿狼

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 前回、あんな幕引きしてるので、カットすべきかもしれませんが。
 江の島回は、色々な意味で絶対やらなきゃならないのです。

 一話に纏めた結果、なんだかギャグ短編めいたアトモスフィアになりましたが……予想より早く書けたからヨシ!

 いつもの改造人間ギャグは控え目。
 珍しく原作寄りのギャグ中心ですが、ご賞味ください。


よみがえるセミ男(達)

 後藤ひとりは夢を抱いていた。

 みんなと遊びに行く夢を。

 

 けど、それは叶えて良いのだろうか。

 わたしは『鍵』を守る改造人間、狙われる立場。認識改変で安心してたけど……

 

「心配してもどうしようもないのでは?」

 

 ライブしてる時点で今更だ。

 それでも、これ以上目立たない方が良い気がする。なのに遊びに出かけたいなんて……

 

「も、もしも……だ、誰かが襲ってきたら」

 

 恐れているのはそれだ。

 みんなが巻き添えになったら。

 

「そのリスクは、誰かと一緒にいる以上、永久につきまといます」

 

 もしくは──

 

「敵を排除するか」

 

 一緒にいたいなら。

 誰も傷つかせたくないのなら。

 

「……が、我慢します」

 

 だから夢を諦めた。

 バンドを組めてる時点で奇跡。これ以上は我儘だ。

 

 みんな、何度か誘ってくれるだろう。

 断るのは心苦しいが、覚悟はできている。

 

「お誘いがなかった際の覚悟は?」

「え、そ、それはないかと」

 

 人、それを死亡フラグと言う。

 

 

 

 

8月31日

夏休み最後の日

 

 

 

 

 セミの寿命は短い。

 地上に出てから、約一週間の命。

 

「アスタキサンチン……カンタキサンチン……」

 

 なんて儚い命なんだろう。

 自分と重ね合わせて涙する。

 

「ドコサヘキサエン酸……エイコサペンタエン酸……」

 

 アスファルトで焼け死ぬのは哀れだ。

 土に埋めて供養する。どうか安らかに眠ってください。

 

 明日から、学校が始まる。

 登校した瞬間、絶命するだろう。

 

 だから大丈夫、わたしもすぐそっちへ行くから。

 

「さようなら」「さようなら」「さようなら」

 

 さようなら、全てのセミさんたち。

 

「限界過ぎる……!」

 

 虹夏は叫んだ。

 

 

 *

 

 

 想像いただきたい。

 ライダーヘルメット被ったジャージ女がセミの墓を増産している光景を。

 

「なぁ……なんとかしてくれよ……普通に恐いんだよ……」

 

 店長は震えている。

 一番トラウマを刻まれてるのは彼女だ、無理もない。

 

「最近、目元は虚ろで、身なりは汚くて……突然泣き出したり、サンバ踊ったりしてて、変だったけど……」

「その時点で気づけよ!」

「もっと早く、遊びに誘ってあげれば……!」

 

 何故誰も誘わなかったのか? 

 理由は以下の通り。

 ・虹夏:家事&バイト&バンド練習で多忙。

 ・喜多:他の友人が一緒なので、ぼっちが萎縮する。

 ・クズ:上2名が誘ってると思ってた。

 

「悲劇は、いつも些細なすれ違いで起きる……悲しいね、ニジーカ」

「今回は反論できない……!」

「とうとう板塔婆まで……」

「とりあえず声かけよっか」

「そうですね、後藤さn」

 

 ボコリ、とセミの墓が盛り上がった。

 

「   」

 

 頭がセミの怪人が現れた。

 しかも複数体。

 

「「ギャァァァァ!?」」

 

 だが驚く必要はない! 

 これもまたTオーグ26の秘密。

 祈りと共にプラーナが注がれたことで、彼らはセミオーグ(仮)として蘇ったのだ! ※外見は『セミ人間』で検索してください。

 

『大丈夫だよ、ここはブラックホールだから』

『時間は進まない、夏休みは終わらない』

『明日は8月32日だよ……』

「え、えへ、ふふぇ、そ、そうですよね……」

 

 セミオーグ(仮)と一緒に微笑むぼっち。

 SUN値直葬な光景を前に、通行人たちは次々発狂! 奇行に慣れ切った結束バンド一行も、流石に戦慄を禁じ得ない。

 

「恐い! 流石に絵面がヤバい!」

「リョウ先輩が気絶した!」

「ど、どうしよう!」

「そうだ! わたしに良い考えがあります!」

 

 筋肉モリモリマッチョマンっぽい幻聴?

 気のせいでしょう。

 

「江の島行きましょう! 電車で一本ですし! 夏の思い出、今からでも作りましょう!」

「ナイスアイディア! レッツラゴー!」

「おー!」

 

 二人はそれぞれ、ぼっち&山田を引き摺って、急遽江の島観光へ向かうのであった。

 

『……』『……』『……』

「こいつらなんとかしていけよ! 恐えんだよぉぉぉぉ!」

 

 自動消滅まであと一週間。

 店舗前に放置もできない。

 仕方がないので、消えるまでSTARRYで働いて貰った。

 割と優秀だった。

 

 

~電車で移動TIME~

 

 

「ハッ!?」

「あ、やっと目が覚めた」

「ホントに今まで気絶してたんだね……」

 

 振り返ると、『片瀬江ノ島駅』の看板。

 ぼっちは絶句する。

 目立つ行動は危険って言っといて、思いっきり観光地じゃん!

 か、帰らないとヤバい!? 

 

「あ、あの!」

「ヘエィ! お姉ちゃん達ィ! 暇なら海の家で食べていきなYO!」

「ウェ!?」

 

 話の途中だが本物のリアルパリピだ! 

 

「お姉ちゃんたちJK? どこから来たの?」

「嘘!? ヘルメットの不審者に物怖じしないなんて!」

「これが本物のパリピ……!」

 

 虹夏は驚愕した。自分でさえ、初めて彼女へ声をかける時は、凄い躊躇したというのに! これがパリピの力なのか!

 

 だが、パリピの真の力はここからだった! 

 

「不審者? どこだYO?」

「いや、そこに」

「綺麗なお姉ちゃん達しか見えないZE!」

「あの、メット被ってるんですが……」

「見た目じゃない、大事なのはHeart……メット程度じゃ、俺の目は誤魔化せないZE☆」

「え……(トゥンク)」

 

 感動のあまり落涙。

 心が躍る……まさか、これが愛!? 

 驚きのチョロさを見せつけて、ぼっちはパリピの向かう方へ。 

 

「あっ、海の家寄っていきます!」

「HEY! 1名様ご案内ー!」

「そんなパリピの巣窟に行ったら消滅するに決まってるでしょダメ―ッ! 多分良い人だけど!!」

 

 でも申し訳ないので、塩ソフトだけ人数分買った。

 割引までして貰った。マジで良いパリピだった。

 

 

 

 

 江の島大橋を渡ると参道沿い。

 色々なお店が勢揃い。

 その分観光客も大勢……それらの目線が気になり、ぼっちは挙動不審になっていた。

 

「後藤さん、さっきからどうしたの?」

「そ、その……ひ、人が多くて、目線が……」

「……なら、メット取れば良いんじゃ?」

「え?」

「あ、そのね」

 

 喜多ちゃん慌てては言葉を付け足す。

 

「もう外見的には治ってそうだし、他に影響がないならってことだけど」

「そ、それは平気です、でも」

「でも?」

「ヘルメットの方が、ま、まだ目立たないかと……」

「それ冗談よね?」

 

 ぼっちは首を傾げた。

 わたしの顔が丸見えの方が、悪目立ちするのでは? 

 彼女(のセンス)は狂っていた。

 

「え? メットの方がマシですよね?」

「炎天下でヘルメットとジャージの方がヤバいよ」

「独自性の化身」

「……」

 

 まっとうな正論が、ぼっちを深く傷つけた。

 無言でヘルメットを外した。

 

「──嘘だ」

 

 そして、山田が膝から崩れ落ちた。

 

「リョ、リョウ、どうし」

「こんな顔が良いのなら物販で大儲けできたのに! 今からでも遅くないちょうど江の島だし水着に着替えてmy new gravure……を!」

「水着姿でリョウ先輩を誘惑ですって!? わたしも悩殺水着を調達しなきゃ!」

「アホしかいねぇ」

 

 養豚場のブタを見るように冷ややかな目付きだった。

 

「で、どう? 目線はマシになった?」

「……は、はい。でも、まだ少し気になります」

「まあ、ジャージも十分ヤバいし、しょうがないか」

(まだヤバいの!? 芋ジャージなのに!?)

 

 目線は気になるが我慢だ。

 一応、『敵意』の篭った目線は感じない。多分大丈夫。

 それに──

 

「じゃあどう回りましょう!」

「たこせん旨い」

「何時の間に買った?」

 

 みんな、この時間を楽しもうとしてる。

 『帰ります』なんて言ったら、心配するに決まってる。

 

 それに、ここまで来たのはわたしの為だ。

 その気持ちを無碍にできる訳がない。

 

 こうなったらしょうがない。

 下手にキョロキョロしてる方が目立つ、普通にみんなと楽しんだ方がまだマシかもしれない。

 

「まずこの階段を登りましょう!」

「「「ゑ?」」」

 

 目の前を見上げる。

 254段の階段が立ち塞がった。

 

 よし帰ろう! 

 ぼっちの手の平が大回転! 

 しかしこれは不可抗力、この炎天下で登ったら死ぬ! 

 展望台ではなくあの世の階段昇ってしまう! 

 

「わたし急用が」

「後藤さん急用とかないでしょ」

「はぐぁ!」

 

 オイオイオイ、死んだわわたし。

 

「自力で登って見る景色ほど、ステキなものはないと思いませんか!」

「嫌だ!」

「伊地知先輩!」

「わ、わたしもちょっと……うぁ!? なんの光ィ!?」

「ま、まさか、ひ、陽の光を浴びて、抑えられてた陽の気が……」

「リミッター解除されたのか……!?」

 

 キタタタタタタタタタターン!!!! 

 普段の十倍増しで放たれる『キターン』が三人を圧倒。

 その日、彼女たちは思い出した。

 喜多ちゃんが陽キャである恐怖を、普段は自重してくれてた現実を……

 

 

 

「先輩たちも早くー!」

「あ、が、頑張ってください……」

「この流れでぼっちちゃんあっち側なの!? 馬鹿力は知ってたけど……」

「フィジカルもあったなんて……裏切りマンゴーめ!」

 

 腐ってもSHOCKER最凶のオーグメント。

 その辺りのスペックは最上級なのだ。

 不確定要素が多すぎ? それはきっとイワンがロマンを求めたせいです。

 

「もう、ムリ、わたしたちエスカー使う!」

「仕方ないですね……後藤さん、一緒に登りましょう!」

「あ、わたしもエスカーで」

「なんでー!?」

 

 だからと言って、身体を動かすのはくたびれる。

 改造されようが陰キャは陰キャなのだ。

 

 

 

 

「あの、エスカー代、来月返してくださいね……」

「わたしは約束破ったことない」

「……カレー代、まだです」

「ごめんねぼっちちゃん! 給料から引いとくから!」

「しみったれ! ケチ! 守銭奴! 強欲者! 悪徳金融業者!」

「概ねリョウのことじゃん」

「や、や、止めるでゲスー!」

 

 それはもう見事なタンコブができたそうな。

 とか言ってる間に、展望台のあるサムエルコッキング苑へ到着。

 

 しかし、移動にも時間がかかった。

 一行(喜多ちゃん除く)の顔には疲労が浮かんでいる。

 

「……でも、いざ頂上まで来てみると、開放的な気分になってきた」

「た、確かに、ポジティブな気持ちになるような……」

「最高の眺めと空気だね!」

「しゃ、写真でも撮っちゃいますゥ!?」

 

 いきなり笑顔と化す山田。ぼっちに至っては自撮りを提案。エスカーで階段地獄から救われ、普段見ないような良い景色。インドア人たちには全てが劇物、結果壊れてしまったのだ。

 

「へいちーず!」

「急にハイテンションになった……」

 

 虹夏まで壊れて自撮りへ参加。

 ちなみに、ぼっちも乗り気だから惨劇(自宅回)の心配はご無用だ。

 

 その時、背後から声がした。

 

 

 

「ちょっとぉ、何ぼうっとしてんの?」

「ああ、ごめん。みーたん綺麗だから見惚れちゃってぇ……」

「もうっ、ばか♡」

「みーたん♡」

「たっくん♡」

 

 

 

「「「……」」」

 

 無言で写真を削除した。なにも語ることはなかった。幸せオーラが彼女達を正気に治した。ただそれだけの話だった。

 

「急にどうしたんですか?」

「喜多ちゃんには分からないか……」

「あ、喜多さんはそのままでいてください……」

「さよなら、郁代」

 

 陽キャにこの気持ちは分かるまい。でもしょうがない、

 誰も悪くない、あの青い春と西の空がいけないのだ。

 

「……なにかしら、この疎外感」

 

 釈然としないまま、喜多ちゃんも後を追った。

 

 

 

 

 展望台からエレベーターで最上階へ。

 喜多ちゃんは目を輝かせて、窓ガラスの方へ。

 

「わぁー! 見て下さい、展望台から見る景色は更に綺麗ですね!」

「あ、た、確かに」

「目に焼き付けておかないと!」

「で、ですね」

 

 さっきは半ば暴走だったが、楽しみたい気持ちはある。

 改造人間故に炎天下のダメージも少ない為、ある程度喜多ちゃんのノリに追従できていた。

 

 つまりダメージが致命傷の方々は。

 

「あー、冷房最高」

「極楽……」

「せ、先輩?」

「昔、人は神と対等になろうと高い塔を建てた。それに怒った神は人の言葉をバラバラにし、地上を混乱させた」

「バベルの塔だねー」

「あの、け、景色を」

 

 景色よりも冷房に意識を持っていかれている。

 そしてさっさとUターンしていった。

 

「喜多ちゃん満足したみたいだし降りよっか」

「えっ!?」

「エアコンは最高だった」

 

 瞬く間に消える先輩二人。

 なお、エスカーとセットだが展望台も有料。元を取ろうと言う気が一切感じられないあたり、よっぽど疲れていたのだろう。

 

「……インドア人たちめ!」

「ご、ご愁傷様、です」

 

 喜多ちゃんの虚しい叫びが響いた。

 

 

 

 

 展望台から降りた後、休憩がてらソフトクリームを購入。近くのベンチで一休み。

 

「次どこへ行きましょうか!」

「ごめん、も、もう体力が」

「むー、それじゃあ、あと1イベントくらい……」

 

 ピーヒョロロロロロ……

 

「な、なんの音でしょうか」

「トンビだね。人間の食べ物狙ってるんだ」

「上から来るぞ! 気をつけろ!」

 

 だいたい背後から襲撃してくるので、察知は困難。

 だが改造人間なら話は別。

 

「……ッ!」

 

 ギュルン! 

 首が180度大回転! 

 背後のトンビを睨みつける! 

 

「!!?」

 

 トンビは野生の本能で理解する。『コレ』は人ではない、手を出すのは危険な行為だと。

 

「トンビが逃げてった!?」

「あ、が、頑張りました……」

「集団リンチにあって爆散するオチかと思ったのに」

「あ、安心して食べましょう」

 

 ちょっと良い気分だ、自尊心が満たされる。

 ──む、また飛んで来る音が! 

 

 再び振り向くぼっち。

 だがその正体は! 

 

「おい! なんだあの鳥は!?」

 

 トンビではなくコンドル。

 鉄製のコンドルが現れた! 

 

「コ、コンドルだ!」

「早く止めて!」

 

 カセットめいたコンドルがレーザーを発射! 

 油断しきっていたぼっちに直撃! 

 体内電算機がショート、一気に煙が吹き上がる! 

 

「大変だ! ぼっちちゃんは中枢部をやられた! きっと爆発してしまうよ!」

「みんな下がれ! 早く! ぼっちが爆発する!」

 

 速やかに逃げ出す三人。

 そして、断末魔が轟いた。

 

「ほあああああっ!!」

 

 有能そうなコンドルの一撃は、ぼっちの中枢部を貫いた。

 

 視界を埋め尽くす爆炎。

 飛び去るコンドル。

 

「えぇ……」

「郁代」

「せ、先輩……」

 

 愕然とする喜多ちゃんの肩を、山田が叩いた。

 

「1イベントあって良かったね」

「こんなの嫌ですよ!?」

「だって、すぐ再生するだろうし……ほら」

「あ、無事です」「あ、無事です」

「作画崩壊して二人になってるじゃないですかッ!」

 

 あのコンドルは何だったのか? 

 アンチSHOCKER同盟の新兵器だったのか? 

 真相は割とどうでもいいのである。 

 

 

 デーデーデーデーデンッ! 

 (Tオーグのクレストが回る音)

 

 

 江の島観光もここでラスト。

 訪れたのは奉安殿。

 妙音弁財天という女性の神様が祭られており、音楽、芸能の神様とされている。

 

「結束バンドのみんなで江の島来たら、絶対ここ来たいって思ってたんです!」

「なら、今後の成功お祈りしないとね!」

 

 各々5円玉を財布から取り出しお賽銭箱へ。

 目を閉じて、両手を合わせて、お祈りをする。

 

 だが、ぼっちは違った。

 

(……神様なんて、いるのかな)

 

 神様がいるのなら。

 なんでわたしは、こうなってるんだろう。

 

 祈る気がおきない。

 お礼を言う気もしない。

 

 それでも、なにか言うのなら──

 

 

 そうして、夏の思い出作りは、終わりを告げた。

 

 

 *

 

 

 帰りの電車が揺れる。

 虹夏ちゃんとリョウさんは、頭を寄せ合いながら熟睡している。

 窓から外の景色を見つめる。

 

 何時の間にか、西の空がフラミンゴ色に染まっていた。

 楽しい時間は早く過ぎる、つまり、そういうことだ。

 

「はーあ、残念、鎌倉も行きたかったし、みんなで晩御飯食べたかったのに」

「……」

 

 今日は楽しかった。

 目立っちゃダメだったのに。

 

 結局、目線はずっと感じてた。

 やっぱジャージが目立ってたのかな……『敵意』は全く感じなかったから、大丈夫だろうけど。

 

 何にせよ、なかったことにする気はない。

 神様にもそう告げた。

 

 だから、これは言わなきゃいけない。

 今日の日がなかったら、ずっと悶々としてたから。

 

「き、喜多さん」

「どうしたの?」

「きょ、今日のことは、絶対忘れません」

 

 この日々も、今も、明日も。

 無意味にしたくない。

 今は価値を見出せなくても、忘れなければ、いつか意味にできるかもしれない。

 ──その時、わたしはここにいなくても。

 

「と、とても楽しかった、です。あ、ありがとう、ございました」

 

 そしたら何故か、喜多ちゃんが微笑んだ。

 

「初めて見たわ、後藤さんの笑顔」

「え? わ、笑ったことは何度か……」

「ヘルメット被ってたじゃない、素顔は初めてよ、多分」

 

 そういえば流れで外しっぱなしだった。

 今更被り直す空気でもない……もう暫くこのままでいよう。

 

「でもね、忘れても大丈夫!」

「?」

「これから、覚えきれないぐらい、楽しいをみんなで作っていくんだから!」

「……は、はい!」

 

 星のように光る目には、一抹の疑いもない。

 いつまでも結束バンドが続くと、信じてやまない光があった。

 

 

 *

 

 

「じゃあね喜多ちゃん!」

「はい! また明日」

「じゃ」

 

 下北沢駅についた三人。

 喜多は二人と別れ自宅へ向かう。

 

 今日は本当に楽しかった。

 

 後藤さんも楽しんでくれたし、これからは結束バンドで遊びに行く機会を作っていこう。

 

 そして、踏切を渡ろうとする。

 

 

 ──警報機の音がする。

 

 

 タイミング悪く遮断器が降りる。

 

 夜空を見上げて、思いを馳せる。

 一際輝く一番星と、それを囲む外の星々。

 

「……いいな」

 

 わたしは一番星を知っている。

 それには成れないことも、知っている。

 

 けど、一緒になれるなら。

 繋がる事で、この夜空を照らせるのなら。

 

 

 ──列車が迫る音がする。

 

 

 明日から、また練習頑張ろう。

 そう思い、目の前を向いた。

 

 

 

「──えっ」

 

 

 

 列車が視界を遮る。

 やがて通り過ぎ、遮断器が上がる。

 

 踏切の向こうには、()()()()()()()()()

 

「……コスプレかしら?」

 

 気にしないことにして帰路につく。

 

 それにしても珍しい。

 なんであんなコスプレなんだろう。

 

 見えたのは一瞬だったけど。

 踏切の向こうの、あの人影は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バッタの仮面をつけていた。




タイトル元:仮面ライダー第10話『よみがえるコブラ男』より


 ちょっと先にこちらから。

 高評価投票してくださった、
 ☆10:しゅーマ゜ッハさん
 応援ありがとうございます!

 最後ので息がつまりそうになったら評価ください。
 お気に入り、ここすき、感想も嬉しいです!
 総合評価3000まで行きたいのです……

 
 今後は言える空気じゃなくなるので……言い忘れてたこと2点をここで纏めときます。

 ①:ライブ時変身しかけた件です。
 あれはちゃんと、意味のある行為です。
 変身すればTオーグの全能力が解放されて、ライブは大成功します、が、同時に一文字が臨戦態勢に突入し……あとはご察しください。

 ②:ぼっちちゃんの夢についてです。
 原作では高校中退&人気バンドという夢ですが、今作の場合、その夢さえ抱けていません。
 今作のぼっちちゃんがどんな夢を抱くのか?
 それは既に決めてあるのです。


 最後ので察しているかと思いますが。
 次回から、終盤へ突入します。
 文化祭までを予定しています。
 そこまでのチャートをちゃんと作らなければならないので、更新に間が開くと思われます。
 申し訳ありませんが、今暫くお待ちいただければと思います。
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