恒星の劇場版は大変楽しかったです。
当時、現地には行けなかったので。
ディア亜種は50匹しばきました。楽しかったです。
今回から、物語は後半へ入ります。
では、どうぞ。
「──ふむ。
やはり、人間は面白い。
おや、失礼しました。
わたしは、外世界観測用自律型人工知能ケイ。
今は、後藤さまの観察を主に行っています。
皆さま。
後藤さまの観察は如何でしたでしょうか。
わたくしとしましては、『幸福』、であったと、認識しておりますが。
そうですか。
それは何より。
しかし、『幸せ』と『辛さ』は紙一重。
ましてや、辛い記憶を封じている、今の後藤さまでは……
わたくしは観察を続行します。
それが、わたくしのTaskですので。
そして、『皆さま』も。
皆さまも、『例外』ではありません。
皆さまも、『観察対象』なのです。
なぜなら、後藤さまの『夢』は、世界を塗り替えようとするものだからです。『皆さま』もいずれ、その夢に巻き込まれてゆくからなのです。
その上で、どうされるか。
観察を止める。
我々は否定しません。
それもまた、一つの幸福。
しかし、共に観察を続けるのであれば。
あなたさまは……
………
………」
*
2学期が始まった。
でも、この時間は変わらない。
放課後の空き教室。君と向かい合ってギターを鳴らす。
「後藤さん、文化祭どうする?」
やっぱり。
そう聞いてくると思ってた。
だから、すぐ返事ができた。
「で、でません」
「そう? ライブでたら楽しいと思うわよ、思い出作りにもなるし」
「……え、遠慮します」
10月1日から10月2日の間。秀華高校は文化祭。その二日目には個人ステージがある。結束バンドで出ることもできる。
ちょっとだけ、出てみたい。
でも、大勢の前で演るのは恐い。
──わたしの心は、どうでもいい。
ライブハウス以上の人が集まる。それだけ集目に晒される。『敵』に狙われる身で、そんな行動は許されない。今の『幸せ』で満足するべきだ。
「そういえば、昨日変な人……人? を見たの」
だけど、わたしは知る。
幸せには、終わりがあることを。
「バッタのマスクを被ってたの」
ガラスが砕けたような。
大きな音が響いた。
何の音か、一瞬分からなかった。
手元の喪失感で、自分のギターを落した音だと、ようやく自覚した。
「大丈夫!?」
なんで彼女の前に。
まさか、喜多さんを狙って。
「……後藤さん?」
友達だから?
一緒にいたから?
わたしが、みんなの
「ど、どうしたの?」
肩になにかが触れた。
喜多さんが、わたしの肩を叩いていた。
彼女が、わたしの
「近づかないで!!」
椅子から転がり落ちる。
息を荒げながら、顔を上げる。
そして、見えた君の顔は。
「──っ」
後悔が押し寄せる。
驚愕、困惑、哀しみ──そんな顔をさせてしまった。
最低の行為だ。
でも、やらずにはいられなかった。
「か、帰ります」
「えっ」
「た、体調が悪くて……ごめんなさい、失礼します!」
「ご、後藤さん!?」
教室を飛び出す。
あの時のように、金沢行きの電車へと突っ走る。
「うぁ、ぁ」
ただ、前と違って。
なぜ走ってるのか、自分でも分からない。
「あ、あぁ、ああああ!!」
分かることは、唯一つ。
安らぎの時間は、もう
それだけだった。
*
敵が現れた時。
ひとりの選択肢は、『二つ』あった。
戦うか、隠れるか。
しかし、友達の前に現れた時。
選択肢は、『一つ』しかない。
「ひ、人質?」
「その可能性が推測されます」
自宅でケイさんへ相談する。
この件で話せるのは、彼だけだから。
「敵が警戒しているのは、後藤さまが隠れてしまうこと。そうなれば偽装能力により、発見は困難となります──しかし、ご友人を人質にされる可能性があっても、貴女さまは隠れますか?」
そんなの、絶対ありえない。
みんなを守らなきゃいけない。
「……あっ」
「そう、ご友人を守るのならば、逃亡はできません。これは、後藤さまを
「か、隠れながら守るのは」
「その時は直接危害を加えるでしょう、貴女さまを炙り出すために」
「そんな……」
「ご友人を見捨れば、逃げる選択は可能です」
ひとりは首を横に振った。
「なら、選択肢は一つです」
敵と戦う選択。
みんなが傷つく前に、こっちから挑む。
今まで避けてきた。
だけど、もうそれしかない。
「しかし、今のままでは勝てません」
「ど、どうしてですか」
「オーグメンテーションが不完全だからです」
初耳だった。
でも、構わない。
もっとバケモノになってもいい。
それで、守れるなら。
「完全な改造には──」
*
ひとりが逃げたその日。
喜多はSTARRYに来ていた。バイトを休んだひとりの代わりだ。
しかし、彼女は溜め息ばかり。その様子を心配して、先輩二人が声をかけた。
「バッタ仮面の話をして」
「急に体調不良って言いだして」
「うーん」
「全然分からん」
「ですよね……」
体調不良は嘘。
それは分かっていた。
けど理由が分からない。
「急に休むってメッセ来たから、何事かと思ったけど」
「と言うかバッタ仮面ってなに?」
なに一つ不明。
推測もなにもあったもんじゃない。
「本人に聞くのはどう」
「話してくれる?」
「……嫌そうなら、それ以上聞かなければいい」
「まあ、誰にだって秘密はあるか」
「………」
山田はふと思い出す。
本当は病気じゃないってことを。真の理由は知らない。わざわざ、暴き立てる理由もない。
「うーん、返事も来てて、音信不通でもないし……明日来た時、聞けたら聞こう! 返事もSTARRYにも来なくなったら……かなりの緊急事態ってことで、ぼっちちゃん家へ行くことにしよっか!」
力なく喜多は頷いた。
今悩んでも、分かりようがない。
そう自分を納得させた。
少しずつ、普段の空気に戻っていく。バイトしながらでも、雑談をする余裕が生まれ出す。これも、いつもの時間。その中で、自然とこの話に行きついた。
「文化祭ライブかぁ……」
「わたしは出たいんですが、後藤さんが」
「あ、うん、分かった」
「でも、迷ってそうな感じもして」
遠慮するって、言ってた。
でも、大勢の人前で演るのが恐いだけで、心の底では出たいって思ってる……そんな気がした。
直感でしかないけど。
「気持ちは分かる。わたしも中学の時、マイナー曲弾いて会場をお通夜にしたことが……」
「んなことしてたのか」
「たまに夢に見る……」
「強がりかよ」
店長のツッコミについ苦笑。
せっかくなので、大人組の意見も聞くことにする。
「迷うぐらいなら出た方が良いだろ。せっかくの晴れ舞台なんだし。まあ高校ロクに行ってねぇから、適当言ってるけど」
「わたしは高校中退なのでー」
「よし! 一文字さんにロインしよう!」
「ですね!」
人選ミスであった。
マトモな大人に意見を求めよう。
すかさず虹夏がメッセを送る。
──しかし。
「……既読つかないや」
「虹夏もなの」
「えっ?」
山田はそう、寂しげに呟いた。
「実は、ずっと既読がつかなくて」
「いつから?」
「ライブの後……」
「たかり過ぎて無視……なら、わたしには既読がつくか」
半月以上音信不通。
なにか事件に巻き込まれたのか?
しかし、店長が客観的な意見を述べる。
「確かあいつ、フリーのジャーナリストだよな、電波の届かない海外とか行ってんじゃねぇか?」
(……まさか)
少しだけ、心当たりがある。
ギターヒーローだ。
プロデビューの噂を伝えてから、追加の依頼がない。その件で忙しいのかもしれない。
「一言もないなんて」
「あー、ライブ満足って言ってたんだろ? 次のライブ決まれば、来てくれるかもな」
「励ましてくれてる?」
「あら珍しい」
「うるせぇ」
「でも伊地知先輩、次のライブって」
「未決定です!」
だから文化祭がちょうどいい。
ぼっちが反対でなければ。
「どうしたものか……」
「正直、出たら出たで、なんとかなる気がする」
「そ、そう?」
「ダンボール被ってでも逃げなかったんだ。今のぼっちなら、楽しんでくれるんじゃないかな」
その見立ては正しい。
ひとりは確かに、心根では『出たい』と思っていた。
但し
みんなが狙われている。それを知った今は──
*
ガタゴト揺れる満員電車。
その中に、ヘルメットの少女が一人。
苦悶の表情を仮面に隠して、電車を降りる。
行き先は秀華高校。
しかし、本来なら『敵』へ行かなきゃいけない。
なのに登校していた。
それは何故か。
今の自分じゃ勝てないから。
「……うぅ」
完全な改造。
ひとりは、それから逃げた。
(わたしの意気地なし)
それでも学校へ行くのは。
側にいなきゃ、守れないから。
分かっている。こんなの一時しのぎ。ずっと側で守れる訳じゃない。わたしがいない時を狙われたら、どうしようもならない。
『敵』を倒さなきゃ、いつか誰かが襲われる。
でもまさか、改造方法が
「……え?」
気がつけば自分のクラス。
ひとりは目を丸くした。
(わ、わたしの机は……?)
まさか虐め? こんな最悪の状況下で──が、入ってきた教師がそれに気づく。
「ん? 後藤の机は?」
「あれ? 昨日先生が、別の教室に持ってってましたけど」
「あっ! す、すまん!」
(……虐めじゃなかったんだ)
ひとりは安堵した。
だが同時に『なんだ』と思った。
なにせわたしは、友達を危機に晒して、なお戦う決意の持てないエゴイスト。
いっそ虐めてくれた方が心が晴れるのに。
彼女の心は追い込まれていた。
──だから、爆発したのかもしれない。
「後藤さーん!」
「あっ、き、喜多さん」
放課後、遠くから君がやって来る。
彼女と無事会えたことに、心から安堵する。
「き、昨日はご心配を」
「気にしてないわ! でも、その、バッタの不審者が原因で?」
「……っ」
「無理に言わなくても大丈夫よ」
「……すいません」
「ううん、じゃあ一緒に行きましょ!」
二人並んで歩き出す。
学校内でも油断はできない。目、耳、感覚、ピット器官、全部を使って警戒し続ける。
「あ、それとね」
「は、はい」
だから、一瞬聞き逃した。
「文化祭、結束バンドで申し込んでおいたわ!」
「そ、そうですか」
「………」
「………」
ひとりは、立ち止まった。
「今、なんて」
「文化祭出ることにしたの!」
頭が真っ白になった。
「一緒に頑張りま──」
「どうしてですか!!?」
信じられなかった。
廊下中に響く怒声が、自分の口から出てるなんて。
「わ、わたし、言いました。出たくないって、なのに、な、なんでですか!? どうして、そんなことをしたんですか!!」
ひとりは詰め寄る。
異様な気配に、彼女は後ずさる。
廊下の壁に追い込まれる。
「ご、ごめんなさ」
「理由を、聞いてます、な、なぜなんです!」
「……それは」
「答えてくださいッ!!」
凄まじい剣幕。
恐いほどの豹変。
喜多は、なんとか声を絞り出す。
「後藤さんに、文化祭ライブ、出てほしくて、だって……」
「出たくなかった、文化祭なんて!」
「なんて、って──」
「あんな
それは確かなこと。
命と比べれば、文化祭なんて大したことはない。
しかし、そんな事情、彼女は知らない。
だからその発言は。
「なによ、それ」
ひとりは失言に気がついた。
「結束バンドが、どうでもいいってこと?」
「そ、そうとは」
「そういうことじゃない、だって、一度っきりなのよ!?」
震える声で。
涙と、嗚咽を交えながら。
彼女は叫ぶ。
「考えたくもないけど、来年には結束バンドがないかもしれない。みんなと文化祭出れるの、今年だけかもしれない……嫌なのは、恐いのは、仕方ないけど……でも、どうでもいいって! 後藤さんにとって、ライブは、結束バンドは、その程度の存在だったの!?」
仮面の下で、歯を食いしばる。
そんな訳がない。
でもダメなのだ。
「代わりのない、時間、なのに……!」
「わ、わたしだって」
「じゃあなんで!?」
「……い、言えません」
言える訳がない。
わたしのせいで、皆の命が危ないだなんて。
お願いだから、関わらないで欲しい。近くに踏み込まれるのが、辛くて怖くて、そのせいで──
「どうして、理由さえ言ってくれないの!?」
「みんなに、関係ないからです!」
それは、ただの拒絶ではなく。
今まで積み重ねた、全てを壊してしまう。
決定的な言葉だった。
「……っ」
小さな嗚咽が聞こえる。
でもこう言わなきゃ。
みんな優しいから。きっと
絶対に嫌だ、これ以上、わたしのせいで、誰縺九′死ぬ縺ョ縺ッ。
「……分かったわ」
彼女は背中を向ける。
「わたしが、悪かったわ。文化祭ステージ、キャンセルできないか、聞いてくる。先にSTARRYに行ってて」
「い、一緒にいます」
「……理由は?」
「………」
「そう」
彼女は呟く。
喉を掻き毟るように。
「なんで、なにも言ってくれないの」
君の言葉が。
離れてくれない。
*
結論から言って。
文化祭のキャンセルはできなかった。
「申し込んじゃったの!?」
「怒らないから、理由、言ってみて」
「……その」
ぽつぽつと、喜多さんは話し出す。
勝手なことだって分かっていた。
でも、きっと本心では出たがっているはず。
ならその背中を押してあげた方が、良いんじゃないかって思ってしまった。
それが理由だと彼女は語った。
「ぼっちは?」
「でたくなかったです」
「理由は?」
「……言いたくないです」
「そっか」
リョウ先輩は、勘づいてるのかな。この件と、病気が嘘だって件は関係あるのかもって。けど誰にも話さないって約束したから、触れないでくれている。
こんな最悪の空気になっても。
「ボイコットしましょう」
「えっ」
「ここまで嫌だったのなら、出ない方が良いと思います。責任は勝手に出したわたしが──」
「だ、ダメ、悪いのはわたしです。大切な文化祭なんです、それをわたしのせいで、不意にしないでください!」
「そう、なら出ましょう」
「……は、い」
人と話すのが辛かった。
けど、君と話すのは少し楽しいって思えた。
それが今は、鋭い刃物のよう。
その痛みをひとりは『罰』だと思った。
彼女の心を傷つけた報いだと。
「……でも、失敗する。このままじゃ」
リョウ先輩が告げた。
推測じゃない。絶対的な事実。
失敗して、その先は──きっとバンド崩壊だ。
リョウ先輩は、バンドの解散を経験している。また同じトラウマを味わうのだ──わたしのせいで。
(死ねばいいのに)
でも死ねない。
最低限、敵を倒さないと。
でも、改造される勇気が出ない。
わたしはどうすれば、誰か助けて欲しい──そう思った時、STARRYの扉が開かれた。
「先輩~! お酒くださーい!」
最悪のタイミングとは正にこれ。
廣井きくりが現れた。
「なんか空気悪くな~い? 換気してますー?」
「テメェ」
「冗談ですよぉー、でも空気はマジで最悪ですねー、君たち喧嘩したぁ~?」
ヘラヘラ笑うきくり。
そのすべてを、虹夏は許せなかった。
ツカツカと迫り、胸倉を掴み上げる。
「うぉぉ!?」
「帰ってください、ハッキリ言います、今は邪魔です」
「ヒェ、わ、分かった! せ、せめて事情を教えていただいでも!?」
「なあ、話してみたらどうだ?」
「……お姉ちゃん?」
「それでも先輩バンドマンだ、参考になる……かもしれん」
「助言するよー!」
助言だって? こんな人に?
──でも、虹夏は分かっていた。今、自分達に打開策がないことを。そして、このままにするのが一番不味いことを。
虹夏は事情を話した。
「なるほどねぇー」
一通りあらましを聞いた廣井。
数秒間唸り声を上げた後。
「喜多ちゃんロックだね!」
「廣井さん」
「すみません」
コホンと咳払い。
いったい、どう助けてくれるのか。
ひとりは彼女をジッと見つめた。
「君達にこれをあげよう!」
胸元から4枚のチケットを取り出した。
ライブのチケットだった。
「わたしのライブに招待します!」
「……」「……」「……」「やった」
「反応うっす!」
いやだって……なんで?
全員同じ気持ちだった。
「チケット代も要りません!」
「えーっと……」
「虹夏、SICKHACKのライブ、タダで行けるのは運が良い。絶対行くべき……意図はわたしも分からないけど」
「そ、そう? 二人はどうする?」
お姉さんのライブ。
そこに行って、なにか変わるのか。
でも、路上ライブの時、一度助けて貰った。そして上手くいった。
それは確かな事実。
「い、行きます」
「……なら、わたしも」
「よぉーし! じゃ、新宿へレッツ・ラ・ゴー!」
「………」
お姉さんは壁に向かって叫んでいた。
凄い不安になってきた。
(……新宿、か)
全員一緒で向かう。
なら、みんな守れる。
それだけを心の支えに、ひとりはギグバを背負った。
タイトル元:ぼっち・ざ・ろっく!#10『アフターダーク』より
『シン・ぼっち・ざ・ろっく カード』
伊地知星歌&PAさん
『STARRY』の店長、及び音響担当エンジニア。
……が、今作では二人揃って影が薄い。
まずメットのせいで、ぼっちが可愛いと気付いてない上、一番被害(気絶)に会った結果、ちょっと距離を置いてしまい、出番まで減った為である。
まあ、盗撮しなくなってるので結果オーライ。
PAさんは……原作からして謎塗れ。『音戯アルト』名義でVチューバーやってることと、スプリットタンってことぐらいしか書けない。
というか店長とほぼセットなので、彼女の出番が減ると連動して減ってしまうのだ!
今後カッコイイ見せ場は来るのだろうか?
それは作者の技量次第なのだ!
原作からしてそうですけど、喜多ちゃんかなりロックですよね。
ぶっちゃけ、ぼっちのことそう言えないよあの子。まあそのせいで、喜多ちゃんエミュでヒィヒィ言う羽目になる訳ですが。
とは言え、友達が現在進行形で命を狙われてるのを察しろってのは、無理難題でしょう。
最後までのチャートは組めたので、次回はまだ早めにできる……筈です。
例の如くですが、高評価、感想、お気に入り、ここすきを心待ちにしております。
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