【完結】後藤ひとりは改造人間である   作:鹿狼

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「前回が最終回だと言ったな」
「あ、あぁ、そうだ、だから俺は」
「あれは嘘だ」
「ああああぁぁぁぁ………」

 シリアスは終わったので全編お笑いです。アニメ版#12:Bパートに該当するお話です。不穏は一切ないよ! そして劇場で新曲公開イイイィィィィヤッッッッァァァァァァフホォォォォ!!!!!!!


御茶水モンスター

 それは、文化祭当日の夜だった。

 

「これをお前に渡す」

 

 白いローブを着た男性、緑川イチローは大量の1万円札が入った封筒を突き出した。

 

「……こ、これ、は」

「お前の金だ」

 

 ひとりは恐怖に震え出す。

 考えても見て欲しい、説明もなく、いきなりティーンエイジャー(仮)に大金を渡してくる成人男性の姿を。

 普通に犯罪の絵面だ。

 

「お、お金には困ってないので、その」

「お前の金だ」

(あれぇ? 会話が通じないよぉ!?)

 

 どの口が言うのか。

 

「い、いやあのそのでも」

「………」

 

 慌てふためくひとりを見て、イチローは面倒そうに溜息を吐き、このお金の出どころを説明する。

 

「それは、ギターヒーローが得た金だ、お前が稼いだ金だ」

「え?」

「お前の父親が広告を設定してたらしい」

「お父さんが……」

「だから受け取れ」

「……は、はい」

 

 説明を聞いて、ひとりは安心して封筒を受け取った。

 嬉しかった。お金じゃなくて、両親がずっと見守っていたのを知れたのが。

 

 ──しかしである。

 

「だが、俺から忠告だ」

 

 親がギターヒーローを知っていたということは。

 つまり。

 

「虚言癖も大概にしておけよ」

 

 両親は知っていた。

 概要欄に盛りに盛った嘘八百を。

 ギターヒーローが、男女問わず学校中の人気者であり、バスケ部エースの彼氏がいるという設定を! 

 

「み゜っみ゜み゜みっ゜……!?」

 

 羞恥心がメルトダウン! 

 

『彼ピッピからのリクエスト♡』

 

 これも! 

 

『文化祭で皆と盛り上がった曲だよー☆』

 

 こ れ も!! 

 

『今日はわたしの誕生日!(^^)! 友達10000人とホームパーティーライブ♪』

 

 こ れ も!!! 

 

「自爆するしかねぇ」カッ

「は?」カッ

 

 その後、帰宅した一文字が見たのは、アフロと化したイチローだった。

 一文字は爆笑した。

 ふたりは血を吐くまでしごかれた。

 

 

 *

 

 

 広告収入は約30万円。ひとりはこの資金で、新しいギターを買うことにした。今持っているのは、父親の形見であるレスポール・カスタム。ちょっと普段使いしていい代物ではない。

 

「だから、メインを新調するんだってさ」

「良い使い道ですね!」

「それと、監視の人が来るみたい」

「一文字さんかも」

「なんにせよ、男を侍らすなんて、ぼっちは悪い女になったものだ」

「ひとりちゃん男垂らし概念……!?」

「捨てよっかそんなの」

 

 雑談をしながら数分後。待ち合わせ場所に、一台のバイクがやってきた。乗っているのは、黒コートの男性とピンクジャージの少女。一文字とぼっちだ。あの恰好は間違いない。

 

 だが、違和感に気づく。

 

 一文字より背が低い。

 けど、乗っているバイクは同じサイクロン号だ。

 その男性と、ひとりがバイクから降りてくる。

 

「お、おはようございます」

「こんにちは、結束バンドの人たちだね」

「はい、貴方は──」

 

 影のある青年は、自らをこう名乗った。

 

「僕は本郷、本郷猛。一文字と同じ仮面ライダーだ」

 

 仮面ライダー第1号。

 政府の人員ではなく、オーグメントが直に監視についた。

 監視にしては、過剰戦力と言える。

 事件の臭いが立ち込める。

 

「ひとりさんがセーフハウスを爆破したせいで、オーグの監視が必要になったんだ」

「オイ」

 

 事件っちゃ事件であったとさ。

 だが、このシチュエーションに、恐るべき危機感を抱く者がいた。

 

「う、嘘よ!」

 

 ぼっちに負けず劣らず、妄想力豊かな陽キャ。

 我らが喜多ちゃんが突然絶叫! 

 

「ひとりちゃんがライダー二人を侍らせる悪い女にぃーっ!」

「思い込みが過ぎる!」

「いや、喜多さん、それは違う」

「ほ、本郷さん?」

「ライダーは三人だ」

「結束バンドは終わりだわ!!!」

 

 より悪化した。

 本郷はぼっちと別ベクトルでコミュ障だった。

 

「よし! わたしも自重止める! 先輩わたしと愛の逃避行を!」

「めんどくさい、ヤダ」

「あぁ!?自由な先輩も好き!」

「た、確かに、男性が三人もいるって、こ、これがモテ期……!? うへぇへへ」

「こいつら……」

 

 虹夏は眩暈を覚えた。

 

「じゃあ、僕は遠くで監視してる」

「え?」

 

 立ち去ろうとする本郷。

 しかしと、虹夏が彼を引き留める。

 

「あの、一緒に行きませんか?」

「すまないが、この中に混ざるのはちょっと辛い。それに真面目な話もある」

「……それって」

「あ、そっちは買い物の後に話す」

 

 女の子4人の中に男一名。

 流石に世間の目が痛い。

 それを承知で、虹夏はもう一度、彼を引き留める。

 

「一か月間、ひとりちゃんと一緒だったんですよね?」

「ああ、特訓のためだが」

「わたし、どんな感じだったか聞きたいです。バンドへ戻れるよう協力してくれたことの、お礼も言いたいので!」

「……えっと」

「無理強いはしませんから」

「………」ツー

 

 なんか泣いたぞ! 

 

「なぜ!?」

「拒否権があることが嬉しくて……」

 

 先生に対し恨みはない。

 だが思う所はあるのである。

 そうだ、SHOCKERも壊滅したことだし、本郷に一言礼ぐらいあってもいいんじゃないか? ハビタット世界へインタビュー! 

 

『本当に申し訳ない』

 

 クソを混ぜた砂糖水しか飲めなくなってしまえ! 

 

 

 *

 

 

 電車に揺られ数分。

 一行は御茶ノ水へ到着。

 

「なんで楽器屋さんが多いんですかね?」

「そ! れ! は! 明治時代に日本で一番古い歴史を持つプロオーケストラが結成されてから国内で音楽活動が盛んになってその頃御茶ノ水で今では老舗と呼ばれる下倉楽器イシバシ楽器ができてうんたらかんたら」

「今日一日シュバッと来そう……」

 

 好きなジャンルの話になると早口に。

 オタクの悪い癖である。

 

「ヒィィッ……! 怖ろしい怖ろしい……!」

「そしてぼっちちゃんには何が見えているのか」

「多分、話しかけられた店員と趣味が合わず怒られているんだ。洋服屋でいきなり話しかけてくるのと同じ類の恐怖だろう」

(解像度高くね?)

 

 本郷も陰キャだ、彼女の気持ちがよく分かる、だから励ますことにした。

 

「ひとりさん、自信を持つんだ」

「お許しくださいませ! どうかどうか……!」

「君はイチローさんのしごきにも耐えたじゃないか、店員を恐がる理由はない」

「……た、確かに!」

(誘導が上手い)

「い、行きましょー!」

(そしてチョロイ)

 

 あっと言う間にぼっちはゴキゲンに。楽器屋への足取りが軽くなる。

 

「……特訓ってなにをしてたんですか?」

「能力制御だ、泣くだけでビーム出るんじゃ、一般社会には戻せない」

「大変、でしたか?」

「………」ツー

「本当にありがとうございます……色々と……」

「でも、ひとりさんは成長した」

「なるほど……あ、楽器屋着きましたね」

 

 さて、あの子はちゃんとお店に入れるかな? 

 母親の気持ちで見守る。

 同じオーグが指導してくれたんだ、もうトンチキな暴走はしないだろうと、虹夏は思っていた。

 

 

「こ、これがわたしの本気DAAAA!!」

 

 

 だが奴は弾けた。

 物理的に。

 

 

「なぁにこれぇ」

「どういう……ことだ……」

「……でもなぜ、バラバラ死体に」

「いや、これは!」

 

 千切れた身体が、数珠繫ぎのように超☆融合。

 そう、ぼっちは自らを生贄に、新たな自分を特殊召喚したのだ。

 これこそ、ぼっちの新たな姿!

 その名もイモムシオーグ!

 狭い所へ潜み、店員に見つかることなく楽器を吟味できる進化形態! 

 

 欠点があるとすれば。

 

 絵面が終わってる。

 

 なんだ、ヘルメットが引っ付いたイモムシ系JKって。

 

「完璧な能力制御だ」

「人としての尊厳は?」

「他人に被害出さなければいい、それ以外は僕の管轄外だ」

「化け物だぁぁぁッ!!」ガクッ

「……被害、出ましたが」

「よし、一文字を呼ぼう、彼の管轄だ」

「逃げないで下さい!」

 

 認識改変で記憶は誤魔化した。

 しかし新手の怪異として都市伝説になった。

 

 

 *

 

 

 ~ちなみにその頃一文字~

 

「今日は休みだ、任務には行かない! イチローに頼め!」

「敵には関係ない、そしてイチローはまだ満身創痍だ。行かなければコレをばら撒く」

『オレァクサムヲムッコロス! ヒドォチョグテルトヴッドバスゾ!』

「なんでその動画を!?」

「脅迫材料として回収した」

「誰から!?」

「廣井きくりだ、缶ビール(500ml)と交換した」

「オレァナンォタメニタタクテタンダヨ!」

 

 

 *

 

 

 結束バンド一行はお店の中へ。まずは2階の売り場へ移動、しかしあるのはギターとベースだけ。ドラムは疎外感を感じ──とは、ならなかった。

 

「あたしもギター買おうかなー」

「お仕置き用ですか?」

「普通に弾く用でだよ!?」

 

 ゲーミング虹夏? 

 アニメ以上に愉快に書けないので略。

 

「あたしギター弾けるし! この間ぼっちちゃんとセッションしたs」

()()()()()?」

「あっ」

「ひとりちゃん、ギターしたの、私以外の奴と……」

「あっはい」

 

 某ホラー漫画の如き顔で、喜多は『ギャーッ』と叫ぶ。

 

「ひとりちゃんの相棒ポジが、N・T・R!!」

「変なこと叫ばないで!」

「こうして、バンド崩壊の喇叭が響き渡る……!」

「煽るな!」

「わっわたしを巡ってバンド解散……責任取って首切ります!」

「元から着脱可能でしょ!」

「あの、虹夏さん」

「すみません、ちょっと後d」

 

 

 虹夏が振り返る。

 

 

「僕を助けてくれ」

 

 

 本郷は楽器の山に埋もれていた。

 

 

「どうして!?」

「店員に囲まれて、気づいたらこんなに買うことに……」

「わたし疲れたよ……」

 

 大量の楽器、大量の機材。それらを抱え込みプルプル震える姿は、チワワオーグと呼ぶに相応しかった。

 

「とにかく返品を……」

「せっかくだから、わたしはこの赤のベースを貰うぜ!」

「リョーウー?」

「いや違う冗談、ちょっと試奏するだけ。あ、これ試奏していいですか?」

「大丈夫ですよ」

 

 虹夏が返品手続きをする間に、山田はベースを手に取り試奏開始。

 店内に鳴り響く重低音。

 その素晴らしい演奏に、聴衆の眼は釘付けに。

 やがて演奏が終了。彼女の軽い(本気)演奏を聴き、店員&喜多ちゃん&本郷はパチパチと拍手を送る。

 

「どうだった?ゼェー」

「良い演奏だったと、思う」

「ほう」

 

 ここで山田に変な好奇心が芽生えた。

 

「せっかくだから、本郷さんも弾いてみなよ」

「僕、弾けないんだが」

「見様見真似でいいから、ホラ、ホラ」

「え、えぇ……」

 

 山田的には面白半分、ベースの普及(洗脳)半分と言ったところ。頼みを断れず押し切られる姿は既視感を感じさせる。

 

「うーん、所々に感じるぼっちちゃんっぽさ」

「ほっ本郷さんに失礼じゃ」

「自分で言うのか……でもまあ、本郷さんと一緒なら過ごしやすかったんじゃない?」

「そっそれが……」

 

 瞬間、強烈なベース音が店内に響き渡った。

 また、山田がドヤ顔で演奏してるのかと思った。

 

「!?」

 

 だがそれは本郷の演奏!

 しかも上手い! 

 流石に山田よりは下手だが、どう聴いても素人レベルではない演奏。それを聴いた喜多と山田は、自尊心が圧し折れる音を聞いた。

 

「どうだった?」

「わたしは井の中の蛙です……ゲコォ」

「未だギター下手でごめんなさい……」

「!?」

 

 本郷は陰キャだ。

 だが陰キャは陰キャでも、天才な陰キャだった。

 

「ああやって、人の心を無自覚に折ってくるんです。わたしもトラップに引っかかって……」

「トラップってなに?」

「……二年間の努力が、数秒で追い抜かれて、ああ! 天才恐い!」

「うわ、痙攣し出した」

 

 ひとりは思い出す。

 あの、『ひとりぼっちの丘』での一幕を。

 

 

 

~ inひとりぼっちの丘 ~

 

『ぼっち仲間だ……本郷さーん!』

『見てくれひとりさん、ギター結構弾けたよ』

『本郷さん凄い!』

『将来有望、今後リードギターよろしく』

『ぼっちちゃんはクビだよ!』

『ぎょえーーっっ!!』チュドーン

『ひとりさーん!』

 

 陰キャ(アホ)と陰キャ(天才)の間には、決して埋めることのできない深く大きな溝がある。それに気づかず近づけば、劣等感という地雷を踏み抜き、このように自尊心が死ぬこととなるのだ。

 

 

 ちなみに、思い出してもこの地雷は起爆する。

 

 

「ぬわーーっっ!!」チュドーン

 

 ぼっちは炎に包まれ死んだ。

 

「……まあ、気持ちは分かるよ」

 

 爆死はしないけど。

 勿論、技量的にはぼっちの方が上手い、別に追い越された訳ではない。

 だがそういう問題ではないのである。

 ちなみにルリ子は一言だけ。

 

『だから貴方たちはコミュ障なのよ』

 

 試験管ベビーにさえこの言われよう。

 なんか、もう、色々ダメだった。

 

 

 

 その後も、楽器選びは続行。

 そして最終的にひとりは、一本のギターを選んだ。

 エピフォン・レスポール。

 お値段凡そ10万円。満足のいく一品に、ひとりは早速帰って弾きたい気分になっていた。

 

「すまない」

 

 しかし、まだ用事は終わってない。

 あと一つ残っている。

 

 四人が足を止める。

 本郷が重々しく口を開いた。

 

「君たちの、今後についての話がある」

 

 全員、なんとなく察していた。

 そういう話が、来るんじゃないかと。

 

「ひとりさん、認識改変を頼む」

「は、はい」

 

 本郷と彼女たちは歩き出す。

 

「君たちが、再び巻き込まれる可能性は低い。

『敵』はTオーグの情報を独占していた。組織(黒い幽霊)に漏れる前に対応したから、ひとりさんの正体は誰にも気づかれていない。

 それでも改造人間だ、危険に襲われる可能性は残ってしまう──だけど、確率を下げる手段はある。

 ほら、ひとりさん」

「は、はい」

 

 彼は、ひとり自身から話すように促す。

 それは彼女自身が悩み、考えた末の方法だから。

 

「……す、すっごい、有名になれば、良いと思いました」

 

 昔はともかく、今のSHOCKERは社会の暗部だ。

 だからできる対抗策がある。

 

「ゆ、有名になれば、ぎゃ、逆に手出しされ難くなるんじゃないかって。だから世界規模で超有名なバンドを目指せば」

 

 相手は闇の組織だ。

 光の中には出てこれない。

 ──少なくとも迂闊には。

 

「ず、ずっとつき合う必要はないです。きっと何度も、恐い目に遭う……それでも、わたしは、みんなとバンドをしていたい、

 

 だから」

 

 そう言って、ひとりは頭を下げた。

 

「どうか、お願いします」

 

 沈黙が流れる。

 

 唾を呑み込む音が聞こえる。

 

 最初に口を開いたのは。

 

「それ、割と卑怯よね」

「空気が読めないとも言う」

「え゛」

 

 喜多と山田が、呆れ混じりにそう言った。

 

「遊んだ後ってタイミングがアレね」

「がっ」「ぎっ」

「考えてくれたのは嬉しいけど、それミューティングで話し合う内容」

「ぐっ」「げっ」

「待ってぼっちちゃんが死ぬ!」

 

 突き刺さった言葉の矢印(二本)を引っこ抜く。

 

「うん、まあ、直ぐ答えは出せないけどさ」

 

 そして虹夏も、ひとりへ言葉を送る。

 微かな笑みを向けながら。

 

 

「色んなこと、ちゃんと話そう。一人で悩まなくて大丈夫だから」

 

 

 大丈夫、と。

 その言葉があるだけで、どこまでも行けそうな。

 そんな気がした。

 

「はい!」

「だから本郷さん、あたしたちでも話し合うので」

「ごめんなさい……」ガクガク

「死んでるー!?」

 

 勝手に瀕死になってた。

 

「あぁ! さっきの言葉が突き刺さってます!」

「流れ弾だったか!」

「ぼっち!!」

「は、はい! プラーナ、ちゅうにゅう!」

「うぎゃあ!」

「止めろーッッ!!」

 

 監視兼護衛が虚無ったため、外出はこれにて終了。

 これより結束バンドの活動十年間(予定)におよぶ! 

 そして!! 

 

「打ち切りすんな!!」

 

 出たなツチノコオーグ! 

 

 

 *

 

 

 政府の人が、ひとりと(虚無った)本郷を迎えに来ることに。

 それを待つ間、虹夏とひとりは一緒にいた。

 

「飲み物どうする? コーラ?」

「こ、コーンポタージュでいいですか?」

「はーい」

「あっありがとうございます」

 

 温かいコンポタを受け取る。ヘルメットの下半部を開き、優しく甘い味わいを楽しむ。虹夏ははちみつレモンのホットを購入。もう11月だ、温かい飲み物が美味しい季節。オーグには関係ないけど。

 

「気になってたんだけど、ふたりちゃん、今どうしてる?」

「か、カウンセラーのお世話になりながら、セーフハウスで暮らしてます。わたしとは別の所でですが」

「……一緒じゃないの?」

「……お互い、まだ、ギクシャクしちゃうので。でもいつか、また一緒に暮らしたいです」

「……早く暮らせると良いね」

「はい」

 

 会話が途切れた。

 遠くでわちゃわちゃしてる山田と喜多を、なんとなく眺める。

 

「喜多ちゃん、スマホ新調したんだって」

「え、気づきませんでした」

「確か、10月計画(オクトーバー・プラン)で安く買えたって言ってたっけ」

(あれ? そういえば、ルリ子さんがそんな単語を……)

 

 雑談もそう続かない。

 沈黙が流れる。だけどなぜか落ち着く。

 不思議な気持ちだった。

 

「虹夏ちゃん」

 

 多分、言えたのはそのせいだ。

 

「わたし、夢が決まりました」

「……文化祭の時に言ってた、世界でのデビューだね」

「そっそれは、()()()です」

「え?」

 

 虹夏は息を呑む。

 世界に名を轟かせて一歩目って、どんな夢なのか。

 

「聞いてもいい?」

「……まっまだ秘密でお願いします。叶う目途すらまだなので」

「むぅ、気になるな」

「じゃっじゃあ、一つだけ言います」

 

 と、ひとりはマスクを脱いで。

 

「世界を塗り替えるような、そんな夢です」

 

 今はそれだけ。

 いつか言うその日まで。

 ひとりは、そう笑いかけた。

 

「うん、わかった」

 

 虹夏も笑い返す。

 

「いつか聞けるまで、あたしも頑張るから!」

「は、はい!」

 

 そうして、平穏な一日が終わりを迎えた。

 何の変哲もない、かけがえのない一日が終わり、そして始まる。

 明日も、明後日も。

 これからも。

 

 

 *

 

 

 アンチSHOCKER同盟。

 彼らが拠点とする家屋の一つ。

 

 そこへ本郷が帰還。

 

「ただいま」

「遅かったわね……ッ!?」

「ああ、疲れた……」

「お、お疲れさま」

 

 ぶっ倒れた本郷。

 PCで作業中だった彼女──緑川ルリ子は彼へ近づく。

 ()()()()()()()()

 

「不慣れなことするからよ、現状説明なんて髭男(政府連中)の仕事でしょ?」

「……嫌われ役を沢山して貰った、僕も、そういう役割をしなきゃいけないって思った」

「相変わらずのお人好しね」

「でも、楽しい時間だった。虹夏さんからお礼の品も貰ったよ」

「そう、良かったわね」

「ああ」

 

 戦い以外の仕事は本当に久方ぶりで。

 そう語る本郷の顔は、どこまでも穏やかなものだった。

 

 

 

 

「ところで」

「うん」

「なぜ、頭部がツチノコになってるの?」

「ひとりさんのプラーナのせいだ」

「……納得したわ」

 

 一週間治らなかった。

 マスクのサイズが合わないので、このままで任務する羽目になった。

 新手の怪異(モンスター)として、その名が轟いた。

 本郷は泣いた。




タイトル元:ぼっち・ざ・ろっく!#09『江ノ島エスカー』より

『シン・ぼっち・ざ・ろっく カード』
 第1バッタオーグ/仮面ライダー第1号/本郷猛&緑川ルリ子
 かつて緑川弘により、バッタオーグとして改造された青年と、その男に作られた試験管ベビー。
 原作と違い、KKオーグからギリギリ生存。しかしルリ子は下半身不随の障害を負った。
 本郷猛はルリ子の助力を得て、重症を負いながらもチョウオーグとの戦いを生き延びた。身体の殆どを機械化しているが、心は永遠……不滅なのだ。
 ……と、カッコいいことを書いたが、シリアスが終わった本作においては単なる天然ボケ要因。ぼっちと同じコミュ障故に、変な共鳴を起こして暴走することもしばしば。ルリ子はルリ子で、初めてできた妹分に甘やかし気味。
 一文字の心労は加速度的に増すばかりである。
 ちなみに、ライダーsの最近の趣味は『食事』。Tオーグの認識改変を利用すると、一時的に味覚を取り戻せるのだ。
 だがそれは、ぼっちの介護taskを意味するので、プラマイ若干マイナス。



 以下あれこれ

・ふたりちゃん:色々考えましたがまだ別居中。ふたりちゃん的には姉が一因になって家族全滅、ぼっちちゃん的には妹が友人を殺しかけた。一か月ちょっとで、わだかまりがなくなるとは……でも、いずれは。

・エピフォン・レスポール:作者にギターの知識はないので、ネットであれこれ調べたにわか知識です。お許しください!

・コンポタ&はちみつレモン:ある、ぼ虹本のワンシーンを参考にさせて頂きました。実際解釈一致。新刊お待ちしています……

10月計画(オクトーバー・プラン):ヨシ! 不穏は一切なかったな!!!



 毎度ではございますが、いつも高評価をありがとうございます。
 もっとください。いっぱいください。
 高評価の方々ご紹介!

☆10:沢村さん 上のフナムシさん trhrnkさん 謎ごし豆腐さん
☆9:夜解さん 鬱エンドフラグ【旧名:無名永久空間】さん ribeleさん クラウシアスさん じじさん 蘭色の百舌さん
☆8:ケチャップの伝道師さん 蟹森さん

 高評価、お気に入り、感想、ここすき、いくらでもお待ちしております。
 オラに評価を分けてくれー!

 番外編は全3話、なので後2話を予定。
 しばらくお待ちください。



虹「次回、後藤ひとりは改造人間である。
 第27話、『Malformation of "G"』! 
 見て下さい!
 ……待って、なにこのタイトル?
 嘘予告?」
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