【完結】後藤ひとりは改造人間である   作:鹿狼

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 4月中にもう1話間に合いました。褒めて。
 ぼっち・ざ・ろっく展は楽しかったです。
 映画公開は6月……楽しみです。
 ではどうぞ。


八景

「──ふむ。

 やはり、人間は面白い。

 

 おや、失礼しました。

 わたしは、()外世界観測用自律型人工知能ケイ。

 以前は、後藤さまの観察を主に行っていました。

 

 第27話『八景』は、短編集となります。尺の関係でカットされた一幕、1話内に組み込むには困難だったシーン、IFルート等を合計8話収録しています。

 

 配分はギャク4話、シリアス4話です。

 

 下に目次をつけてありますので、ご活用ください。

 なお、わたしの話は収録されていません、ご了承ください……」

 

「おい誰と喋ってる! なにか目論んでるのか!?」

 

「……失礼、おやじさんが呼んでいるので。

 では、またいつか」

 

 

 *

 

 

目次

 

 

 

 *

 

 

一景 Tsuchinoko Eater

 

 

 金沢にある海洋研究所──に偽装された、SHOCKERの研究基地。

 そこで、イワンは歓喜の声を上げた。

 

「ついに念願のツチノコを手に入れたぞ!!」

 

 彼の手には、ガラスケースに収められたツチノコが。

 キャラ崩壊の如くはしゃぎ倒すイワンだが、そうなってもおかしくない程、ツチノコの捕獲は過酷だった。

 

「旧ソ連のジャングルまでいった甲斐があった……諸君らもそう思うだろう!?」

「二度と行きたくないです」

「まあな」

 

 下級構成員も揃って頷く。

 なぜ、ジャングルで怪奇現象に遭う羽目に? エロイモアの恨みってなに? 仮死焼くってお前どんな死に方したの? 他奇々怪々なオバケに襲われ、結構な犠牲者がでた──それも今や些事! 

 

「すぐさま手術だ! わたしは準備をしてくるぞ!」

 

 イワンはツチノコを置き手術室へ。

 ……それが判断ミスだった。

 なぜなら、イワンが戻ってきた時、ツチノコがガラスケースから消えていたからだ。

 

「は?」

 

 下級構成員がツチノコを掴んでいた。

 なぜか、松明を掲げていた。

 

「………」

 

 それはおもむろに、ツチノコを食べ始めた。

 

「敵襲だぁぁぁッ!!」

 

 イワンは叫んだ。

 

「さっさとツチノコを取り戻せぇぇぇぇ!」

「ああ! 早い!」

「なんだあれはなんだあれはどうしてあんなド変態に気づかなかったんだ!」

「美味すぎる!」

「逃がすなぁぁぁぁ!!」

 

 しかし怪人はカモシカのような素晴らしいフォームで逃げた、追い駆ける下級構成員は未知の攻撃(三大秘術)により次々撃沈し、逃亡を許してしまう。

 幸い、ツチノコは取り戻せたが──ほぼ食い残しだった。

 

「………」

「………」

「よし、オーグメンテーションだ」

「喰いかけですよ!? 色々混じっていてもおかしくは」

「せっかくだ、色々混ぜるとしよう」

「正気ですか!!?」

「どっちにしろ混ぜるプラーナが足りない、化学には犠牲がつきものなのだ……!」

 

 これぞTオーグの誕生秘話。

 これを真実と見るか、もしくはギャク時空限定の超展開と見るか。全ては読者次第なのである。

 

 

 *

 

 

二景 脳漿鳥奪オーグ

 

 

 

「………」

「ひとりちゃん? なんでアー写を見てるの?」

「いえ……その、なぜか、この写真撮った記憶がなくて」

「あぁ……」「それは……」「当然か」

「な、なにがあったんですか?」

「えーっと、結論から言うと、

 

 ──ぼっちちゃん、怪人アイホン女になったんだ」

 

「!?」

 

~ 以下回想シーン ~

 

 ぼっちが作詞に悩んでいた時期、結束バンドはアー写撮影のため下北沢にきていた。

 そして撮影終了後、事件は起きた。

 

「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!!」

「急になに!?」

「イソスタ始めませんかって勧めたら、後藤さんが弾けて!」

「あ、ぼっちの魂が飛んでった」

「刺激が強すぎたか!」

「はやく回収しないと!」

 

 と、概ね原作通りの流れだ。

 このあとみんなの呼びかけで、復活するはずだった。

 そう、()さえ現れなければ! 

 

「ああ! コンドルだ!」

 

 なぜコンドルが日本に生息してるのか! 

 そんな疑問は置き去りに、コンドルが急降下! 

 そして、

 

「後藤さんの魂がコンドルに取られた!?」

「なんでー!?」

「と、とにかく追い駆けましょう!」

「待って二人共!」

「どうしたのリョウ、なにか作戦が!?」

「コンドル恐い」

「じゃぁかしいッ!」

 

 コンドルが飛ぶ、結束バンドは追い駆ける。

 なおも飛ぶコンドル! 必死に追いかける結束バンド! 

 だが、なんということだろう、反対側からもコンドルが! 

 

「向こうのコンドルは新型アイホンを掴んでます!」

「だからなんで日本にコンドルが!?」

「あ、離した」

「やった! これで拾え」

 

 空中で交差するコンドル、同時に解放された『魂』と『アイホン』は……トラックの往来する道路のど真ん中へ落ちた。

 

「あっ」

 

 

 ※しばらく音声のみでご想像ください。

 

 ブオォォォブォーン バキッ

 ギュルギュルギュルルル ボキッ

 ガタンゴトンガタンゴトン ベッキベキ

「さー穴ほっぺ」「おー」ドガガガガガガガガガガガガガガ

「おーい、穴掘るのそこじゃないぞー」

「あー、いっけねー」

 

 

「………」「………」「………」

 

 ぼっちの魂とアイホンは粉砕された。

 だがぼっちは運がよかった、通りすがりの天才博士が、彼女を治してくれたのだ。

 見よ、この輝くボディ! すらりとした四肢! 滑らかなタッチスクリーン! 

 正に、手足の生えた人面スマホであった。

 

「死ぬかと思いました」

「混ざってるぅーー!!」

 

 しかもこの外見で156cm。

 とりあえず子供は泣く。

 

「俺のアイホンどこやったボンバー!!」

「知りませんー!」

 

~ 回想シーンここまで ~

 

「──ってわけ」

「アイホンで思い出しました!!」

「うぉ!? どうしたの喜多ちゃん」

「わ、わたしが10月計画で買ったスマホ、なんかもう調子が悪いんです! 大幅割引だったのに……」

「安さには理由があるってことだね!」

「つまり奢り(0円)こそジャスティス……!」

「あ、いい加減お金返してください……」

 

 

 

『──ここで臨時ニュースをお伝えします。

 日ノ下電気所有の地下工場で、大規模な爆破事故が発生。

 また、この爆破事故に、テロ組織コンドルの嘴が関与しているとの情報があり、警察は捜査を進めています』

 

 

 *

 

 

三景 じごく基地

 

 

 Tオーグの能力はロクに制御されておらず、常に暴発の危険性を孕んでいる。そんな状態で一般社会に戻せるわけがない。

 よってひとりは、イチロー主導の元訓練を受けることになり、その結果、

 

「あっ、どうでしょう、このカッコイイ姿!」

 

 バイクになった。

 

「説明して」

「バイクを転がしていたんだが……」

「お嬢ちゃんが、カッコイイって言って……」

「女性のライダーは希少だ、故に俺たちはバイクの素晴らしさをレクチャーした」

「その結果がコレ?」

 

 頭の中にバイク知識を捻じ込まれた結果、ぼっちはバイクそのものと化したのである。

 

「イチロー兄さんの責任ね、ハーゲン4人分買って来て」

「なぜ俺だけが」

「 行 け 」

「………」

 

 怒り狂う妹に勝てる兄なぞ、この世にいないのである。

 イチローがコンビニへ行ってる間、一同は休憩することにした。その間に、なんとかぼっちを復活させる。

 

「す、すいません、またご迷惑を」

「いえ、ひとりちゃんは頑張ってるわ、そこの天才共と同じレベルで考えちゃダメ、もっと自信を持って良いのよ」

「で、ですが、中々うまくいかなくて……」

「いや、こんなに僕たちと話せてる時点で、大きく成長している。僕も陰キャだから気持ちがわかる」

「ほ、本郷さん……!」

 

 陰キャの先輩故か、本郷は上手くひとりの自己肯定感を高め、良い方向へと誘導していく。

 

「流石ね」

「あいつがコミュ障でなければ、俺は死んでいた……」

「オーグが過労死とか、父が泣くわね……」

 

 ともかく、ひとりを本郷に任せ二人は休みだす。

 多分、それが不味かった。

 

「本当に、どうして、グループを組ませるんですかね」

「人が群れで生きる生き物だからだろう」

「わたしたちは人間未満の珍獣……あ、本当に人外だし……」

「社会には、二度と戻れないか……」

「あっあ、み、未来永劫ぼっち……!?」

 

 互いのトラウマが互いを刺激し、プラーナが共鳴&増幅。溢れ出たプラーナ(陰)が、瞬く間に体育館を呑み込んでいく。気づいた時にはとっくに遅れ。

 

「「あっ」」

 

 そして数分後。

 イチローがコンビニ袋を片手に帰還。

 

「おい、買ってきたぞ──」

 

 体育館は腐海に呑まれていた。

 

 瘴気ぼっち、チンアナゴぼっちの群体、王な蟲的サイズのツチノコぼっちの群れ、壁一面に張り付くメンダコぼっち、その他多種多様なぼっちの生態系に、一文字とルリ子も取り込まれ──

 

「………」ピシャ

 

 イチローは無言で扉を閉めた。

 

「フゥー」

 

 背筋を伸ばし、屈伸運動、手をほぐす。

 更に軽く瞑想、プラーナの巡りを整え、彼は眼を開く。

 

「まさか、これ、俺がなんとかしなきゃならんのか」

 

 イチローは腐海へ突入。

 全部吹き飛ばしてなんとかした。

 瀕死になった。当分の間、本郷とぼっちには接触禁止令が出た。

 

 

 *

 

 

四景 ShootingStar

 

 

 ひとりが新しいギターを買った数日後。

 彼女は虹夏の家にお邪魔していた。

 

「おぉおおじゃzyましましまsuッ」

「そんな緊張しなくても……」

「アガガガガガ(人様の家の物品を壊したが最後、わたしは弁償のため研究機関へ自主的にGO!!)」

「はい、ここがわたしの部屋!」

(一品も壊してはならない! きっと貴重な機材がてんこ盛り……)

 

 そう思ったが、機材や楽器はまったく置かれておらず、あるのは漫画にドローン、センスの高そうな服etc……こういうのはアレだが、彼女らしくない部屋だと、ひとりは眼を丸くする。

 

「オ、オシャレな部屋ですね?」

「あ、全部リョウの!」

「にっ虹夏ちゃんのスペースは?」

「ベッドの上だけだね!」

「……い、いいんですか、それで?」

「むしろこんなに頂いております」

「………」

 

 変じゃないかと思ったが、15歳に至るまでミドリムシ未満の交友関係しかなかったひとりに、その辺りの判別がつくはずもなく。幼馴染ってこんな感じなんだと、納得するのだった。

 

「それよりほら、今日は撮影なんだよね?」

「あっはい、す、すいません、手伝って貰っちゃって」

「いいのいいの! むしろ、憧れのギターヒーローの撮影が見れるなんて、嬉しいよ!」

 

 今日は、遊びに来たわけじゃない。

 3月から止まっていた、ギターヒーロー動画の撮影だ。ひとりの家は使えない。困っていたところに、虹夏が声をかけてくれたのだ。

 

「………」

「………」

 

 準備は黙々と進む、ほぼ半年ぶりとは言え慣れた作業。問題も特に起きず、あっという間にいざ撮影──

 

「本当に大丈夫なの?」

 

 ひとりは返事を詰まらせる。

 惨劇の一因はギターヒーローにある。

 なのになぜ、トラウマを抉るような真似をするのか、虹夏には不安しかなかった。

 

「顔色も悪いし、無理にやらなくても」

「それでも、弾きます」

 

 マスクを脱ぎ、ギターヒーローが顕れる。

 

「ギ、ギターを続けられたのは、ギターヒーローのおかげだから。ギターヒーローがいなかったら、わたし、結束バンドに会えなかった。だからこれ以上、応援してくれたみんなを、待たせたくない」

 

 ギターヒーローは絶望だった、しかし希望でもあった。

 いつかバンドと出会える。

 そう信じ続けるための道標だったからこそ、なかったことにはしたくない。止まっていた時間を進めなきゃいけないのだと、エピフォンを握る手に力が入る。

 あと、もう一つ。

 

「け、結束バンドのためにも、いつか必要だと思うので……」

「今は内緒にしておくの?」

「い、今の技量じゃ、アンチが殺到します、多分」

「あぁ……」

 

 そうして、演奏が始まる。

 蘇るヒーローを見つめながら、虹夏は昔を思い出す。

 

(……あたしもだよ)

 

 STARRYをもっと大きくする。

 そんな未来を夢見れたのは、同世代なのにあんな凄い演奏をする、君を知ったおかげ。ギターヒーローは、あたしにとっても道標だった、それが再び動き出したのなら──心から応援しよう、一人のオーディエンスとして。

 

「──じゃあ、投稿します」

「うん!」

 

 

 *

 

 

五景 「Reset」

 

 

 これは、文化祭までの間の出来事。

 ある日、後藤ひとりと、緑川ルリ子は喫茶店にいた。

 二人の席の向こう側には、大学生のお姉さん二人組。ファン1号と2号が座っていた。

 

「それで、今日はどうしたの?」

「大事な話があるってことだけど……」

 

 話すことがある。

 1号、2号はそう呼ばれたのだ。

 

「……そ、その、体調はいかがでしょうか」

「体調?」

「貴女たち、集団昏倒事件の被害者よね、そのことよ」

「あ、心配してくれたんだ。全然元気だよ!」

「もしかして、不安にさせちゃってた……?」

「ち、違うんです!」

 

 ひとりがいきなり叫んだことに、二人は少し驚いた。

 そして、彼女がスカートを握り、震えるのを見て口を紡む。

 ルリ子も話を挟まない。

 ひとり自身が語り出すのを待つ。

 

「犯人は、わたしです」

 

 ドリンクが冷めた頃、彼女はようやく語り出した。

 

「ご……ごめん、な、さい」

 

 ひとりは──話して良い部分のみだが──説明した。

 自分の惨劇を、暴走を、顛末を。

 やがて語り終えた時、1号と2号は、黙り込むことしかできなかった。頭ごなしに糾弾するには、あまりにも惨たらし過ぎたのだ。

 

「気を遣わないで」

 

 ルリ子はそのために同席していた。

 

「自分の行為の結果を知らない限り、この子は前へ進めない、ファンなら言ってあげて」

 

 優しい人だからこそ、相手を傷つけるような気持ちは、例えそれが本心でも隠そうとする。その気持ちを吐きだせと迫るために、ルリ子がいた。

 

「……わたしは、恐い」

 

 2号が口火を切る。

 

「家族が凄い心配してたらしいの、死んじゃうかもしれないって。結束バンドと関わったら、またそんな目に遭うんじゃないかって考えが、頭から離れない」

「……わたしは許せない」

 

 1号の声色には同情と怒りがあった。

 

「可哀想だとは思った、洗脳とかの影響もあるって聞いた、でも大勢の人が死にかけた、信じられない、ひとりちゃんが、そんなことをする人だったなんて」

「………ッ」

「だから、ごめん」

「わたしたちファン辞めます」

 

 唇を噛み締め、涙が流れるのを堪える。

 覚悟はしていたつもりだった、それでも、よりにもよって、初めてのファンから拒絶されるのは、胸の奥が潰れそうになる。

 だけどそれで良い。

 

「……い、今まで、ありがとうございました」

「………」「………」

「し、失礼します」

 

 これで終わり。

 もう用はないと席を立ち、帰ろうとする。

 だが、

 

「それで、次のライブは?」

「……え? あの、ファン辞めるんじゃ」

 

 理解ができず立ち尽くすひとり。

 そんな彼女へと、()ファン1号と2号は、できる限りの笑顔を向けた。

 これまでの言葉に嘘はない。

 でも──

 

「ひとりちゃんなら、この気持ちをひっくり返すような、カッコいいギターを聞かせてくれるでしょ?」

「信じてる、それでもひとりちゃんは、好きにさせてくれるって!」

 

 まだ、()()()()()()()

 こんな最後は嫌だ、でも次があるなら、また好きになる未来があるかもしれない。

 だから、ファンを一度辞めよう。

 これは「Reset」なんだ。

 

「ぶ、文化祭で……また!」

 

 涙を拭い、ひとりは告げる。

 そしていつか、彼女たちは……ファンになる。

 

 

 *

 

 

六景 テノヒラ

 

 

 後藤ひとりと、後藤ふたり。

 少し前に殺し合った姉妹は、自宅の前に来ていた。

 数か月放置され、荒れ果てた我が家だが、今日ここへ来たのは、大掃除やリフォームのためじゃない。

 

「もう一度聞く、見届けるんだな」

「は、はい」

「………」

 

 政府の男は眼鏡を押し、作業員へと合図を送った。

 

「解体を始めろ」

 

 今日、後藤家は解体される。

 ひとりとふたりが来たのは、その最後を見届けるためだった。

 

「………」

 

 この家は、認識改変に晒され続けた結果、高濃度のプラーナで汚染されていた。人間が装備なしに立ち入れば、即プラーナへ還元されてしまう危険地帯だ、解体は止むを得ない。

 

 しかし、それでも。

 自分たちの家が消えていく光景を見るのは……だが、今日、ひとりは泣かないと決めた。

 ふたり()の前だから。

 

「……ぁ、ぅ」

 

 嗚咽だ。分からない。

 なぜ、こんな幼子が、ここまで辛い目に遭わなきゃいけないの。

 自分と同じくらいの背中が、酷く小さく見えて、ひとりは無自覚に妹の手を握ろうとする。

 

「──っ」

 

 それを、ふたりは払いのけた。

 

「嫌だ」

「……ごめん」

 

 碌な会話もせず、(思い出)がなくなっていくのを、漫然と見つめる。湧き上がるぐちゃぐちゃな感情を、吐き零さないよう、息を継ぎながら。

 

「……あの世って、あるのかな」

 

 正面を向いたまま、ふたりが口を開いた。

 ひとりは一瞬だけ驚いて、少し考える。

 

「ハビタット世界、っていうのが、あるらしい。あの世なんだって」

「……信じるの?」

「うん、だって、そう思ってた方が、行き辛いから」

「行き辛い?」

 

 青空を見上げる。あの先にあるのだろうか。偶に手を伸ばしたくなる、あっちへ行きたくなる。だからこそ、その存在を信じなきゃいけない。

 

「きっと、今行ったら、凄い怒られる。そう思うと、こっちで頑張らなきゃって思える」

「そう、じゃあ、ふたりは信じない」

「へ、へー」

「お父さんもお母さんも、どこにもいないの」

 

 それは、少し寂しくないか。

 そう思った時、ふたりは少しだけ笑う。

 

「だから、ふたりがお姉ちゃんを見るの、お父さんとお母さんの代わりに」

「……そっか、それは、大役だね」

「どれだけ色んな人に迷惑かけるか分からないもん。能力制御もできてないし」

「ウ!」

 

 がっくりと肩を落とすひとり。

 だがその時、ふと、妹の指先が寂しげに動いているのに気がついた。

 

「………」

 

 もう一度、ふたりの手を握り込む。

 一瞬びくっと震えたが、今度は跳ねのけられず、向こうからも握り返す。

 

「次のライブ、決まってるの」

「い、一応」

「じゃあ聞きに行く、恥ずかしい行動しないでね?」

「ぜ、善処します……」

「頼むからね」

 

 多分、今はこれで良い。少しずつで良い、二人一緒に進んでいきたい。わたしたちの根っこには、変わらない気持ちがあるはずだ。だから、お母さんお父さん。

 

 今は、さようなら。

 

 

 *

 

 

七景 ドナドナぽーい

 

 

 以前の戦いで、大きな被害を受けたSTARRYだが、アンチSHOCKER同盟の援助を受け、11月下旬に再オープン。久方振りのライブに、多くの客が集まった──だが。

 

 

「貴女! ギターヒーローさんですよね!」

 

 

 その中に、不審者が紛れ込んでいた。

 しかし、政府の面々は『備え』を用意していた。

 壁が引っくり返る。

 そこから……なんとセミオーグの軍勢がエントリーだ! 

 

「「イーッ!」」

「バケモノー!?」

 

 セミオーグが不審者を確保! 

 ドナドナドーナーと、隠し部屋に強制連行。

 

「……お姉ちゃん、アレ確か」

「警備員にちょうどいいって、イチローが延命させた」

「今の隠し部屋は……?」

「前の戦いで店壊れただろ、修理ついでに色々防衛装置が増設された、必要だろうって」

「STARRYがますます魔窟になる……」

「元から定期」

「あ゛?」

 

 そして、場所は隠し部屋へ。

 件の不審者は、恐怖のあまり涙すら流していた。

 

「う、訴えるわよ!?」

「ぽいずん♡やみ、職業ライター、自称14歳実年齢23歳、本名佐藤愛子、携帯番号は04××-△△-〇〇〇〇、出身校、住所、本籍地、趣味はそれぞれ……」

「お願いします許して下さい」

「なにも気にすることはない、わたしはただお前のことを話しているだけだ」

「ヒュッ」

 

 淡々と詰め寄る政府の男の姿は、まさに絶望そのものだ。

 え? ぽいずん♡やみの出番はもうないと第10話に書かれていたって? 今回はおまけ回なのでカウント外。

 

「わ、わたしは負けない! ギターヒーローさん、なんでこんな酷いバンドで、ギターしてるんですか?」

「え、えっと」

 

 ぼっちの返事を待たず、彼女は言葉を畳み掛ける。

 

「だって、この結束……なんとか? 高校生にしてはレベル高いですけど、全然()()じゃないですし~、こんなところでうだうだやってたら、ギターヒーローさんの才能腐っちゃいますよ?」

 

 誰も反論しない、事実だから。

 しかし実のところ、その現状は結束バンド全員が理解していた。そして彼女たちは、実力を証明するための目標を決めていた──『夢』へ進むために。

 

「じ、自覚はあります」

「ですよね! さっそくソロデビューの紹介を──」

「な、なので、これでグランプリ目指します」

「『未確認ライオット』……これよりソロデビューの方が早いですよ~?」

「え、遠慮します、このバンドでデビューしたいので」

「……そーですか、でもわたしの話も、頭の片隅に」

「それと」

 

 それはオーグメント故の凶暴性の発露か。

 

「いつか、ギャフンと言わせます、そのつもりで」

「ッ!」

 

 髪の毛を逆立てて。

 Tオーグは佐藤愛子へ詰め寄った。

 やべ、地雷を踏んだ──と、佐藤愛子はそそくさと笑顔を張り付け立ち去ろうとし……立ち止まる。

 

「……出口は?」

「我々案内する、それと自宅まで送迎しよう」

「えっ遠慮するわ」

「いいや、ギターヒーローの正体を知った以上、色々と話したいことがある……連れて行け」

「「イーッ!」」

「嫌だぁーッ!」

 

 ドナドナぽいずん運ばれてくよ。

 セミの瞳が見つめているよ──……

 

 佐藤愛子は知らない、今後、一文字と同じ常識人枠として、奇人怪人変人共に振り回されることを、プロデビューのため政府関係者にこき使われることを! 頑張れ佐藤愛子! 負けるな佐藤愛子! 

 

 

 *

 

 

八景 Malformation of "G"

 

 

 ── "G"ルート分岐条件 ──

 ・血液凝固剤(タピオカ)の摂取

 ・背部に地殻貫通爆弾(MOPⅡ)又は強力な衝撃(ライダーキック)を受ける

 ・核兵器による被爆

 

『既に因子は二つ揃っていた』

『最後の一つ、核兵器による被爆』

『そう、後藤ふたりの体内に仕込まれた核爆弾、それが作動するか否かで、運命は分岐する──』

 

 STARRYが消えた。

 下北沢の街が、炎に包まれている

 東京の全てが、真っ赤な炎で覆い尽くされている。止まらない火災と粉塵で、空は薄暗く染め上げられた──そして、崩れかけたビルの壁面に。

 

 

『やぁ! 僕はギタ男!』

 

 

 イマジナリーフレンドが写っていた。

 

『ギタ男ってのはアナグラム的なものでさ』

『つまり『"G"・オーグ』、略してギタ(G)()!』

 

 喜多と山田は立ち尽くす。

 虹夏は死んだ、後藤ふたりの核爆弾に巻き込まれ死んだ。そして今、世界が死のうとしている。後藤ひとり──Gオーグの手によって。

 

「オオオオオオオオオ!!!!!!」

 

 約120メートルの巨体となった彼女は、口から放射線流をばら撒き進み続ける。

 

 だが、絶望はそれだけじゃない。

 

 絶望は()()()

 

…ピ…

 

 上を見上げる。

 

…ポポポ…

 

 遥か大空彼方。

 地球の衛星軌道上に。

 

 

…ピポポポポポポポポポポ…

 

 

 天体制圧用最終兵器が、12体(1ダース)浮かんでいた。

 

 

「どうして、こんなことに」

「あは、あはは、ひとりちゃん、なんで?」

 

 絶望する彼女たち。

 『執行者』が語る。

 

『後藤ひとりの意思は消滅した、アレは"G"そのものだ』

「………」

『プラーナ変換細胞膜は、プラーナからあらゆる元素を生成するだけでなく、それ自体がプラーナ生成機構を兼ねる。Gオーグは時空と同義の存在として膨張し、やがて宇宙空間(マルチバース)を呑み込むだろう。そうなる前に、物理対応が可能な段階で排除する』

「理解している」

 

 しかし、『タキ』は歩き出す。

 

『それでも、君は行くのか』

「そうだ」

『………』

 

 執行者は沈黙する。

 一人、死地へ向かう『タキ』だったが、彼に核爆発でボロボロになった仮面ライダー第2号が近づいてきた。

 

「つきあう」

「必要ない」

「俺たちにも責任はある」

「……感謝する」

「お前から礼か、鳥肌立ってきた」

 

 彼らは去っていく。

 山田と喜多は、その背中を見つめるだけ。

 もうそれしかできない。

 ……本当に? 

 

「……リョウ先輩」

「……郁代」

 

 二人は見つめ合う。

 そして、ギグバを片手に歩き出す。

 なにもかもが手遅れだとしても、身体が勝手に動く──それに世界の終わりにやるライブなんて、こんなにロックなことはない。

 ついでに、虹夏にも聴かせてあげよう。

 世界のどこかにいる彼女へと。

 

 

『待て一文字、『タキ』! 

 鎌倉方面から巨大不明生物が上陸した! 

 Gオーグの存在が、刺激になったのか……? 

 オリジナル(シン)が、こちらに向かって──』

 

 

G End(BAD END)




タイトル元:ぼっち・ざ・ろっく!#06『八景』より

『シン・ぼっち・ざ・ろっく カード』
 チョウオーグ/仮面ライダー第0号/緑川イチロー
 かつてハビタット計画により、全人類の解脱を画策したSHOCKER上級構成員。ダブルライダーに敗れた後、彼らと共にSHOCKERと戦うこととなる。元よりSHOCKERすらも滅ぼすつもりだったため、共同戦線に異論はない――のだが、その扱いは杜撰の極致。
 特に妹からの扱いは酷い、しかし残念ながら、イチローのしでかしを思えば仕方がない。具体的には大量発生型案件。小学生拉致って大人に強制成長&洗脳したら、ネ……
 なお、ぼっちも同じだが、人的被害を出したオーグとして、DSSチョーカー(首輪)を嵌められている。



 各サブタイは全て楽曲ネタです。全部作者の趣味です。いくつ分かったでしょうか?

 一景:サルオーグは相手が悪すぎた。
 二景:10月計画は頓挫しました。
 三景:前々回のフリ回収。
 四景:ギターヒーローへのケジメが必要だった。
 五景:事件に巻き込んだ以上、ケジメは必要という話。
 六景:妹との絡みをもう少し書きたかったので。
 七景:ぽいずんの出番最後って言ったの若干嘘に、ソーリー。
 八景:ギタ男の野望成就=ゼッ〇ンダース派遣って確かに書いたよ。

 まだ没ネタ、書いてないネタはありますが、これ以上書くと文字数がヤバいのでこれぐらいに。


 
 高評価の方々をご紹介します。

 ☆10:トゥールさん サーズデイさん あんこ区大魔王さん
 ☆9:黒鏡水さん 革なめしさん
 ☆8:Aitoyukiさん

 いつもありがとうございます。
 評価、感想、お気に入り、ここすき等お待ちしております。
 次が、本当に最後です。
 今暫く、お待ちいただければ、幸いです。



 虹「次回!」
 リョ「後藤ひとりは」
 喜「改造人間である!」
 1号「シン」
 0号「最終回」
 ぼ「『かえってくるライダー」
 2号「君に朝が降る』!」
 ルリ「いくわよ? せーの!」

 全員「是非「見「て」ろ」いってね」欲しい」く」れよな!」ださい!」てね~!」

 虹「……だーめだ、こりゃ」




* * *




『シン・ぼっち・ざ・ろっく カード』
 "G"オーグ(隠しボス)
 一定の条件を満たし、変異を遂げたTオーグ。
 ひとり自身のプラーナは、"G"プラーナに変換され、彼女の意思は消滅している。
 プラーナ変換細胞膜は、"G"プラーナに備わる機能であり、あらゆる元素をプラーナ化、又、プラーナからあらゆる元素を生成できる。また、その崩壊熱による熱核エネルギー変換生体器官もプラーナ自体が有する。
 つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……これは即ち、"G"プラーナは意思を持つ空間そのものという証明である。
 初期対応が遅れれば、天体制圧用最終兵器でも滅却不可となる。
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