【完結】後藤ひとりは改造人間である   作:鹿狼

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不穏の極致みたいなタイトルしてますが、別にそんなことはないのでご安心ください。
前回から間が空いてる内にシン・仮面ライダー終劇。
色々評価は割れてますが、個人的には石ノ森先生の雰囲気も感じられて、良い作品だったと思います。
ではやっとこさですが、第7話です。
あと出オチです。どうぞ。


仮面越しの世界(マスカーワールド)

 それは、よくある風景。

 下北沢に限らず、どこでも見られる平凡な光景。

 ボールを蹴り上げ過ぎて、木に引っかかる……よくある光景。

 

「うーっ、うぅ……」

 

 ボールは数メートル上。

 子供はその木を登る。

 落ちれば大怪我は免れない。だが周りに大人はいない。

 そして──バランスが崩れる。

 

「あっ──」

「危ないですよ」

 

 しかし、()()が受け止めた。

 

「怪我でもしたら、ご両親が不幸になります」

 

 ()()は子供を優しく地面に下ろす。

 

「あのBallを取りたいのですか?」

「う、うん」

「その願い、受理いたしましょう」

 

 ()()は足裏からブースターを吹かし、直立したまま飛行。

 ボールを取って地面へ着地。

 そしてボールを渡す。

 子供はその時、初めて()()の顔を見た。

 

「お兄さんは、ロボットなの?」

「はい。実は実地試験中のペップー君のNew Modelでして。このことは内緒ですよ?」

「わかった!」

「感謝いたします。さあ日も暮れます。お気をつけてお帰りください」

「ありがとう!」

 

 子供へ手を振る。

 背中が見えなくなった後、振り返り、今いた公園を観察。

 スーツの内ポケットから、()()の写真を取り出す。

 その内1枚をアイカメラに収める。

 

「もうしばし、お待ちください」

 

 夕日が地平線へ消える。

 ()()の姿も掻き消えた。

 

 

 *

 

 

 結束バンドに加入して以降は、まさに激動の日々。

 バイト、バンド練習、喜多ちゃんへのギターレッスン。15年間の人生を軽く上回る、濃厚で充実した一か月間。

 

 だからやらかした。

 

「ぼっちちゃん、だいぶギター壊さなくなったねー」

「え、そ、そうですか?」

「うん、これもバイトや練習頑張ってるからだね、偉い偉い」

「うへへへ」

 

 虹夏に撫でられ、ふにゃふにゃにスライム化。

 だが誰も動じない。この一ヶ月で全員慣れきってしまったのだ。

 

「先輩! わたしはどうですか!」

「勿論上手になってるよ。この短期間でここまで成長するなんて、凄いことだよ」

「ふふ、先生の教え方が良いからですかね!」

「うぇへえぇへへえ……」

 

 立て続けに褒められ更に溶解、カオ〇シにヘルメットを取って付けたようなモンスターへ変貌。

 その姿は完全に化け物の類。

 改造人間でさえ恐れ戦くその様は、正に最終傑作の名に相応しい。誤作動が多いのは目を瞑ってください。

 

 だがこの直後ぼっちは気づく。

 既に己が大罪人だと!

 

「皆成長してるし、そろそろオリ曲の練習したいね……ぼっちちゃん、調子はどう?」

「え?」

「ほら、ぼっちちゃん作詞大臣じゃん」

「……あ゛っ」

 

 スタジオに沈黙が流れた。

 

「……まさかぼっちちゃん、忘れ」

「ままままさかそっっっsssそんなことないですないですじょじょじょ冗談ですってワハハハ」

(絶対忘れてた)

「あっ明日には完成予定かなぁーっ!」

(絶対嘘だ)

 

 そう、あまりの多忙さに彼女は忘れていたのだ。

 自分が作詞大臣であることを! 

 

 すぐさま己を罵倒し反省を促す。

 わたしのバカ! 改造人間! ハ虫人類! 今回は誤魔化せたけど、忘れてたなんてもし知られたら!? 

 

『貴女を作詞忘却罪と詐欺罪で訴えます! 理由は勿論お分かりですね! 覚悟の準備をしておいてください!!』

 

 裁判結果は死罪! 

 ゴールド・虹夏ちゃんが繰り出す122連発の殴打を喰らいゴミ収集車へ──しかし彼女は改造人間、プラーナが尽きなければ決して死なない。

 圧死→プラーナ補充→再生→圧死の無限ループ。

 そしてぼっちは、燃えるゴミとして余生を過ごすのだった……

 

「後藤さんが生物と鉱物の中間の生命体に!」

「新素材……貴重価値……お金!」

「ツルハシを構えるな!」

「あっあのッ!」

「うわぁ!? その状態で喋れるの!?」

 

 このままではカビ同然の末路。

 生き残る方法は一つしかない! 

 

「あ、明日持ってきますから! 期待してください!」

「そ、そう?」

 

 有言実行! 

 一日で完成させる! 

 でなければ死ぬッ! 

 

「先輩の曲に後藤さんの歌詞……わたし、楽しみだわ!」

「あっ世界チャート4位間違いなしの新曲をお届けします!」

 

 だからと言ってハードル上げる必要はなかったでしょわたしのバカァァァッ! 

 なお喜多ちゃんは純粋に期待してるだけ。

 何とも罪な女である。

 

 

 *

 

 

 自殺宣言をかましたぼっち。

 一刻も早く家に帰り作詞作業をしなければ……そう思っていたのに、彼女はまだ下北沢の、とある公園で項垂れていた。

 

 何故だろう? 

 帰ればお母さんにお父さん、○○○にジミヘンもいる。

 安住が約束されてるのに。

 

 いや、()()だからだ。

 ゆったりできたら作詞に集中できない。プロという人たちは適度な集中状態になってパフォーマンスを高めるという。わたしも本能でそれを……

 

 ん? つまりわたしはプロバンドマン? 

 

 気づいてしまったぼっち。

 脳裏に溢れ出す存在しない記憶。

 始まるはテレビ・インタビュー。アナウンサーがマイクを向ける。そして語られる伝説の一夜歌詞の誕生秘話。

 

 『超高校生級ギタリスト 後藤ひとりに迫る』

 

 かつてないほど湧き上がる自信。

 生きる伝説、無敵のギ鄂ェ鄂ーロー、そんなわたしにできないことはない。もちろん陽キャな歌詞だってちょちょいのちょい! 

 燃え上がるぼっちは鉛筆を取る! 

 

「うぉぉぉぉおおお!」

「ママー、人が燃えてるー」

「こら! 見ちゃいけません!」

 

 他人も気にせず作詞へ邁進。陽キャワードもなんのその。はいそこ深夜テンションって言わない。

 

──5分後──

 

「で、できた……!」

 

 エネルギーを使い切るも、確かな達成感があった。

 間違いなく傑作ができた……念の為、誤字とかないか見ておこう。

 

 

 

 

~下北キラ喜多☆『ラブ』ソディ~

 

作詞:女怪人ギターメット

 

二度目のアラーム無駄にした 迫る遅刻のタイムリミット

でも大丈夫! だって今日も声がする

窓の外からきみの声(急がなきゃ!) ドキドキハートが鳴りだせば 眠気なんてさようなら

 

二人だけのバス停 心が密着満員電車 お昼休みは屋上で

ああもうわたしは我慢の限界 

キスの味は甘いデザート?(はぁと)←艶めかしく

 

下北沢のラプソディ

きみとわたしの()()ソディ

高鳴る心臓同じだね 下北沢(ここ)が君との青春(アオハル)だ!(キターン!)

 

↓以下サビ

下北キラキラ 大好きだよ? 

下北キタキタ イソスタ一緒に! 

ここに来たこと 忘れないでね

そして明日も! キラキラ下北イ・ク・ヨー!←シメにウインクを! 

 

 

 

 

「目がぁぁぁぁ!!」

 

 なんだこれは! 

 そう、べらぼうな歌詞が生まれていた!! 

 

 歌詞ノートから溢れ出す青春、その光の中へ呑まれたぼっちは、拒絶反応にのたうち回る。

 なんと惨めな姿であろうか。 

 しかし、まだだ、この程度では許されない!

 そう怒りに震える者がいた。

 

『…………』

(どちらさま!?)

 

 ギターの頭部を持つ銀色のヒーロー。

 そう、イマジナリーフレンドの頂点に立つ巨人、ギターマンである。

 唖然とするぼっち。

 ギターマンは色とりどりの光を放つ! 

 

『ロックは爆発だ』

 

 ロックとは反逆の象徴。

 それを流行、ましてや聞き齧った青春で固めるなんて侮辱をギターマンは許さない。

 

『ミ゛ミ゛ミ゛!?』

 

 ぼっちは音符となって大爆発。カランとヘルメットが落っこちる。

 だが、これでいいのだ。

 これでぼっちのプラーナは解放された。抑圧からの爆発。それこそロックに他ならない。精神を開き切ること、それが若さと健康のもとなのだ。

 そうO・T氏も言っていた。

 

 そうして芸術と化したぼっち。

 身体は爆散。ヘルメットだけが残された。

 だが、こんなぼっちへ声を掛ける人がいた。

 

「……もしかして、ぼっち?」

 

 その声にぼっちの意識が覚醒。

 ヘルメットのバイザーが目の代わりに。上から山田が見下ろしていた。

 

『リョ、リョウ先輩?』

「うお、喋れたんだ」

『あ、ヘルメットにスピーカーがあるみたいです』

「多機能だね」

 

 それで済ませて良いのだろうか? 

 真実を知るのはハビタット在住のイワンのみ。

 

『リョ、リョウ先輩どうしてここに』

「ぼっちを探してた。作詞の進捗が心配だったんだ。だけど」

『だけど?』

「一曲書けてたんだね」

 

 なんということか。彼女の手には作詞ノート! 

 しかも中身を読んでいる! 

 こんな早く見られるのは想定外。否定されたら心が折れる! そしたら二度と立ち上がれない! 立つ足爆散してるけど! 

 

『あ、あの、そっそれはまだ未完成で』

「ぼっち」

『あっはい』

「ゆっくり読みたいから、場所移すね」

『え!? あ、あの、どこへぇぇぇぇ……』

 

 突如攫われるぼっち。

 だが、誰も助けようとはしてくれない。

 今の見た目がただのヘルメットだから? いや違う、ここが都会だからに決まってる。

 

 これが東京、下北沢に人の心はないのか!

 そうぼっちは惨めに泣き叫ぶ。

 

 だが、空から見下ろすギターマンは助けない。

 人に心を説くのなら、まず自分から動かなければ響かない。そう、先に人の身体を再生させてから言え。

 そうO・T氏も言っていた!

 

 

 *

 

 

 山田に連れられた先は喫茶店。

 その頃にはボディも無事再生。

 まあ、オシャレカフェという陰キャにアウェーな空間にすっかり萎縮し、プルプルと震えているが。

 

「なにもいらないの?」

「あっはい、お腹は空いてないので」

「そう」

 

 やがてカレーが届き、山田が食べ始める。

 それを見ても、別にお腹は減らない。食指も湧かない。そもそも数カ月間、空腹を感じてない。

 

 多分、改造された影響だ。

 一応、味覚はあるから食事は楽しめる。

 どっちにしたってこの場じゃダメ。外でヘルメットは外せない……それに。

 

「うめうめ……」

 

 もし、リョウ先輩にこの顔を見られたら。

 本当の化け物だと知られて、拒絶されたら……

 

 皮肉な話だ。

 前までは人との繋がりが怖かったのに、今は切れる方が恐い。

 わたしはなんて面倒なんだろう。

 

「ごちそうさまでした」

 

 悩んでいる内に山田は完食。再び歌詞ノートを開く。

 彼女はジッと、真剣に曲を見続けている。

 却下か、採用か……ぼっちはギロチンへの階段を登る罪人の気持ちで感想を待つ。

 そして、山田が顔を上げた。

 

「ぼっち」

「……は、はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぼっちって、本当に病気なの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 唐突過ぎて。

 致命的過ぎて。

 世界が崩れたような。

 そんな音が聞こえた。

 

 沈黙が、一分にも、一時間にも感じられる。

 

「……なっなんで」

 

 脂汗を流しながら、やっと絞り出せたのはその一言。

 

「わたし、医者の娘なんだ」

「お、お医者さん……」

「親に聞いたけど、今のぼっちみたいな病気は、聞いたことがないって言ってた」

 

 その可能性を、考えなかったわけじゃない

 病気と偽ってる以上、医者に診られたら嘘だとバレる。だけどまさか、こんな近くに医療関係者がいるなんて。

 

 誤魔化したい。

 けど頭が真っ白で、なにも浮かばない。

 ただ、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 

「……ご、ごめんなさい」

 

 今まで騙していたこと。

 優しさを利用したも同然なこと。

 罵詈雑言を浴びせられても仕方がない。

 

 ところがである。

 

「えっ」

「……えっ?」

 

 なぜか、聞いた側の彼女が目を丸くしていた。

 その反応にぼっちは困惑。しかし実は、山田も相当困惑していた。

 

「い、いや……世間に知られてない稀な病状かもしれないし。確証はなにもないから、もしかしたらって思っただけで……まさか本当だったなんて」

 

 彼女にそんな気はなかった。

 怪しいけど、実際は病気だろう……その程度の気持ちだった。それがまさかの特大地雷。流石の彼女も罪悪感がマックス。気まずさ全開で脂汗を流していた。

 

「つ、つまり、カマをかけただけ……?」

「……その、ごめん」

 

 だが、山田は何も、興味本位で聞いたのではない。

 ちゃんと理由がある。

 

「ちょっと、昔話をするね」

 

 その為に、彼女は自分の『トラウマ』を語り始めた。

 

 

 

 

 それは、結束バンドに入る前の話。

 山田は別のバンドに所属していた。青臭いけど、心に真っ直ぐな音楽で、それが好きだったことを。

 

 けど、次第に売れることに必死になって、売れ線に似た曲ばかりになった。

 それが嫌になり、喧嘩別れ同然でバンドを辞めた。

 そのトラウマで、バンドどころか音楽そのものが嫌になってしまった。

 

 ──だけど、虹夏に誘われて、もう一度やることにした。

 今度は自分の音楽をやり切るために。

 彼女とならそれができると思ったから。

 

 

 

 

「個性を捨てたらバンドは死んだも同じだよ。わたしは結束バンドに死んでほしくない」

 

 歌詞を見た時、山田は気づいた。

 ぼっちは結束バンドを思うあまり、メジャーな歌詞にしようとして、無理をしていると。

 

「だからぼっちも、自分を殺さないで。好きに作詞してほしい」

「け、けど、それだと暗い歌詞に」

「平気、わたしはぼっちを尊敬してるから」

「……へっ?」

 

 ぼっちは文字通り固まった。

 彼女にとって、もっともあり得ない言葉だから。

 

「そ、尊敬?」

「うん」

「な、なんで?」

「なんでって、どうしてそう思うの?」

「だ、だって、この身体のせいでド下手ですし、そ、それ抜きにしても人見知りで、人前で演奏すると緊張で、更に下手に……」

「だからだよ」

 

 それが山田の理由。

 結束バンドに入って欲しいと思った一番の理由。

 

「それを自覚してて、あの時助けてくれた。

 だから尊敬してる。もし……わたしがぼっちと同じ状況だったら……ベースを続けられるか分からない」

「そ、それは、わたしにはギターしかないからで」

 

 自信のないぼっちはあくまで否定。

 だが、山田は首を横に振る。

 

「凄いのは変わらない。それに……そんなぼっちだからこそ、書ける歌詞があると思う」

「わたし、だからこそ?」

「バラバラな個性が集まって、一つの音楽になって、それが結束バンドの色になるんだ」

 

 山田は、歌詞ノートをひとりへ返した。

 もう一度、今度は心からの(うた)を見たいから。

 

「アレな言い方だけど、苦しんで、藻掻いてきたこれまでだって、ぼっちの個性だよ。自信を持ってほしい」

 

 ──自信だって?

 そんなのは少しもなかった。

 持てるはずがなかった。だって、この身体の全部がずっと忌々しかったから。

 

「………」

「………」

 

 だからこそ、彼女の心は震えた。

 人間じゃなくなったこと──それを肯定して良いだなんて。ましてや()()()()()を認めて貰えるなんて……思いもしなかったのだ。

 

 ぼっちは顔を上げる。

 余計な考えは、もうない。

 

「……リョウ先輩」

「うん」

「もう少し時間を下さい。わたし頑張ります」

 

 このままで良いのなら。

 わたしだけの世界が、皆の音楽になる。

 それは確かに……嬉しいことだって、心から思える。

 

「もっと、ここからしか見えない……仮面越しの世界を、歌詞に、してみせます!」

 

 叫んでから、ぼっちは思った。

 いや、仮面の世界ってなに? 

 勢いで言ったけど意味不明では?

 もしも『はぁ? なに言ってんの? キモ』って思われてたら……と、発作が起こしかけた時、山田がいきなりテーブルに突っ伏した。

 

「せ、先輩?」

「……よかったぁ」

 

 深い、ふかーい溜息を吐く山田。

 それは安堵の溜息だった。

 

「凄い、不安で……」

「ふ、不安?」

「ぼっちのデリケートなところに触れちゃって、傷ついて、バンド辞めちゃうんじゃないかって……それに作詞がプレッシャーで、気を病んでるかもって、ずっと思ってて……」

「や、辞めませんよ? こんなド陰キャの行き場ないですし……」

 

 そっか、この人も不安だったんだ。

 それを表に出さないようにしてただけ……なんだか急に親近感がわいてきた。

 

「このこと、虹夏たちには言わないから安心して」

「あっはい、ありがとうございます」

「あと、ぼっちがなんであっても、大事なメンバーだから」

「はっはい!」

 

 本当に、どこまで良い人なんだろう。

 喜多ちゃんじゃないけど惚れちゃいそうだ。陰キャ同士のシンパシーも感じるし。

 と、ポワポワしながら会計へ。 

 

 ここから問題のシーンである。

 

「……ん? リョ、リョウ先輩?」

「なに?」

「あの、お、お会計」

「今手持ちない」

 

 ……!? 

 なんで!? 

 このカフェ連れてきたのリョウ先輩じゃ!? この人、お金持ってないのにカレーまで注文してたの!? そもそも何でお金ないの!? 

 

「ずっと草ばかり食べててお腹が限界で……」

(冗談じゃなかったの!?)

「お願いぼっち。奢って。先輩を無銭飲食の犯罪者にしないで。あと虹夏にも言わないで。シメられるから。一生のお願いだから」

 

 涙目で懇願するリョウ先輩。

 だけど、申し訳なさが微塵も感じられない。

 身体のことは気に病むのに、お金を借りるのは平気ってどういう? ダメだ先輩の心がまったく分からない……

 

 第1クズベーシスト誕生の瞬間である。

 

 

 

 

 お店の外へ出ると、辺りはすっかり真っ暗。

 そろそろ終電の時間も迫る。二人はここで別れることになった。

 

「じゃあ、また明日。作詞頑張ってね」

「は、はい……お金返してくださいね」

「必ず返す」

 

 だが期限は言わない。

 ぼっちからの評価は更に下がった。

 

「──それと、最後に良い?」

「あっはい」

「ぼっちがそうなったのって、いつからなの?」

「えっと……3月下旬からです」

 

 幾ら何でも詳細は言えない。謎の組織に攫われて、改造人間にされたとか、言って信じて貰えるのかな……  

 

「………」

「リョ、リョウ先輩?」

「ぼっち、この人知ってる? 動画サイトに投稿してる人なんだけど」

「動画サイト?」

「うん、ギターヒー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー鄂ェ鄂ー────




タイトル元:仮面ライダー(萬画版)第6話『仮面の世界(マスカーワールド)』より

『シン・ぼっち・ざ・ろっく カード』
山田リョウ
結束バンドのベーシスト、兼作曲担当。
ぼっちが色々重たいものを背負っているのに気づいている。その上でバンドに加入して貰ったので、ほとんど表に出さないが、原作以上に気を遣っているところも。
なのだが、それと金銭感覚が全く一致せず、躊躇なくお金を借りにいく天性のクズ。
実はバンド内で一番のビビり。後藤ひとりに気絶させられた回数も、メンバー中最多だったりする。

二度と作詞なんてするもんか!
書いてる最中作者自身が吐きそうになったぞ!

作詞回、兼リョウ先輩主役回。
これ以降は本当に株が下がってく一方ですからね。ここで限界まで評価を上げなきゃいけません。
ちなみに、オーグぼっちがなにを作詞するのか、作中に結構露骨なヒントがあります。

では高評価をくださった方々です。
☆9:ハチスナさん 七枝八重道灌さん 林檎飴玉さん ライム酒さん  Aitoyukiさん 柚男さん 
☆8:柚子乃葉さん 100xさん サーズデイさん
次回も頑張って書きます!


……次回一文字メインにしたいなぁ。
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