本作品は実際に活動されているVtuber「華鏡よさり」様の二次創作であり、本人が知らない悪夢を描いております。
作中で登場する華鏡よさり様のチャンネルページ
https://www.youtube.com/@Kakyo_Yosari
ずんだ餅、ずんだ餅、ずんだ餅、おはぎ、ずんだ餅、ずんだ餅、枝豆、ずんだ餅。
一体ここはどこなんだろうと、華鏡よさりは思う。
回転寿司のシステムを再現しているのであれば、それらしいネタを並べればいいというのに、レーンの上を流れているのはずんだ餅だ。小ネタを挟むがごとく、やれ、おはぎやら、枝豆やら、冷ややっこやら、五目豆やら、大豆縛りの料理が流れている。
だから思うのだ。
ああ、夢だな、と。
華鏡よさり、真澄鏡系Vtuberの彼女はただ、真っ白い天を仰いだ。またこれか、と嘆いてしまった。付喪神ながら、ついつい「おお、神よ」とでも言いたげな状況に辟易した。
回転寿司ならぬ回転大豆など、聞いたことが無い。一体どういう訳なのだ、何故背景が真っ白で、イスとテーブルと出現位置が不明な空中浮遊しているレーンだけがあるのん。もう少し内装に手を加えろと思うほどに、殺風景だった。
そう、真っ白、イスとテーブルトレーン以外は真っ白な空間だ。
昨今問題になっている色々な問題など起きるはずもない程に、そこは殺風景で、人気もなく、唯々長々と続くレーンのみが存在を主張するだけだった。
ずんだ餅、ずんだ餅、皿の上でピチピチと跳ねるエビフライ……
「エビフライ⁉」
思わず二度見してしまった。
そこには皿の上で元気よく飛び跳ねる生きのいいエビフライが居た。豪快に、と表現すべきか、それとも健気に、と表現すべきかは定かではないにしても、それはもう必死に衣をまき散らしながら皿の上で跳ねるエビフライが居た。
レーンがゆっくりと動いていき、見えなくなるまで必死にエビフライは跳ねていたが、どうして流れていたのだろう。そんな疑問だけが心中に残ってしまった。
奇妙な空間だ。いや、そもそもずんだ餅が流れ続けている時点で奇妙と言うより、異常なのだが。
そして流れてくるのはずんだ餅、ずんだ餅、ずんだ餅、そしてスパチャが泳ぐ水槽。
華鏡よさりは唖然とした。スパチャで殴られることに関しては、ままある話なのだが、厚みのないペラッペラのスパチャ、と言うより、スパチャの柄をした紙が水中を泳いでいるようだ。しかも、ご丁寧に全色が泳いでいる。
これが現金でないだけ、まだ可愛げがあるし、生々しい話ではないのだが、なぜこうも奇妙な状況にあるのだろうか。
スパチャが泳ぐ水槽が通り過ぎて行った後に流れてきたのは、頭付きエビフライの握りだった。ついでに言えば、先ほどから流れてきている物がずんだ餅からずんだの握りに変わったことは全スルーしている。
無論、スルーしていいレベルの変化ではないのかもしれないのだが。
「え、えぇ……」
華鏡よさり、ドン引きである。
なにに引いているかと言うとエビフライの握りだ。
そこは天ぷらの握りではないの⁉ などと言う生易しい話ではない。そう、そんなレベルではないのだ。
このエビフライの握り、シャリの上にエビフライが乗せられており、海苔がたまごの握りの様にぐるりと巻かれている訳なのだが、このエビフライの握りは……いや、このエビフライは生きが良いのだ。
シャリの上で乗りに縛られ、頭と尾っぽを精一杯に振り回し、シャリの上で暴れまわっている。どういう訳か、シャリと海苔は固定されているかのように微動だにせず、頭付きのエビフライは精一杯と言う言葉が似合うレベルで飛び跳ねようとしていた。無論、実際に飛び跳ねることは出来ていあかったのだが。
そして、華鏡よさりのすぐ傍を通り過ぎようとしたとき、まるで捨てられた子犬の様な眼差しを彼女に向けてきたのだ。
尤も、子犬ではなくエビフライであるし、眼差しもちゃんと死んでいる為、彼女はもうしっかりと調理されたエビフライから視線を浴びせられるというこの上なく奇妙な状況にさらされる羽目になったのだが。
流石に気まずかったのか、思わず視線を逸らし、エビフライの握りが通り過ぎるのを待ったが、恐らく、通り過ぎた後もエビフライの握りは熱い視線を向けてくれることだろう。全く持って迷惑な話だが。
しばらくすると、ずんだの握りはずんだの軍艦を経て、ずんだ餅へと戻っていった。
一体どういう訳なのかは……いや、全く以て訳の分からない話なのだが、この空間はずんだ餅を食べない限りに出られないらしい。
なぜそんな事が分かったのか、それは単純にして明快、ずんだ餅と交互にそのような札が皿に乗って流れているからだ。ここ数分間。
流石に、こんな奇妙な空間に長いはしようと思えず、兎にも角にも、ずんだ餅を一皿取ってみることにした。
「……なんすか」
このずんだ餅、喋った。喋りやがったというべきか、喋りやがりましたよ、と言うべきかはさておき、よりにもよって今から食べようというこのずんだ餅は喋ってしまった。
「え、何って……」
「なんなんすか」
絶望的に口の悪いずんだ餅だった。ずんだ餅のくせになまいきだ、と言うのはある意味において当然なのだが、ずんだ餅が喋る事実に関してだけは不適切な言葉なのだろう。
「た、食べるんだけど」
「止めるのだ、僕はそこまで美味しくないのだ、多分ずんだのソーダみたいな味がするのだ」
ずんだ餅のくせしてずんだ味を再現したソーダの味を再現したずんだ餅とはこれ如何に。
と言うより、このずんだ餅、完全にアレの口調なのだが、感情に訴えかけて泣き落とししてくるかと思えば、味覚に訴えかけてきた。確かに、食料品の生存競争ともなれば味覚に訴えかける方が良いのかもしれないが、物理的に声を掛けてくるというのは斬新極まりないだろう。
(食べれば終われる、うん、食べれば)
「えい」
それは淀みない動きだった。
テーブルの脇にあった箸箱から割り箸を取り出し、パチリと割る。そして、がしりとずんだ餅を箸で掴むと、勢い任せにガブリとずんだ餅を食らった。
刹那、レーンとテーブルしかない殺風景な空間は辺り一面緑へと変貌した。
そして、ポツリ、ポツリと、空から降ってきたのだ。いや、降ってきてしまったのだ。
ずんだ餅が。
それは土砂降りだった。視界を覆いつくすようなずんだ餅の雨は瞬く間にその空間を埋め尽くし、華鏡よさりはずんだ餅に埋もれれしまうのだが、そこで夢から覚めた。