俺様はゾンゲである   作:花河相

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最終話になります。


美食屋ゾンゲ

 

 

 フグ鯨はトリコとココの二人で合計10匹捕獲していた。

 だが、大変なのはここからだ。

 

 フグ鯨は1匹1億で取引される。

 毒袋を取り除けば5億に、失敗すれば価値は0になる。

 ここからは料理人の領域だ。

 

 俺は傍から光景を黙って見守る。

 

 ティナも邪魔してはいけないので、そばでカメラに映している。

 

 後は捌いて食べるだけなのだが、難しいのはここからだ。

 ココはフグ鯨を捌けるのだが、1匹捌いた時に毒化してしまう。どうやら今日の戦闘による疲労で手元がブレてしまい、捌くことができない。そこで小松が捌くことになった。

 小松はフグ鯨を捌いたことがない。

 

 初めは困惑していた小松であったが、ココが自信を持てと言う言葉で覚悟を決めた。

 

 細かい指示はココがするとのことで了承した。

 

「小松がやるならもっと取って来ないと!何匹あっても足りないぜ!」

 

 トリコの意見もあったが、もうここにフグ鯨はいない。

 産卵を終えてしまったのだ。

 

 チャンスは残り9匹。

 

 小松とココの作業が始まった。

 

 小松は見事な包丁さばきをするものの、コンマ一ミリずれてしまい、毒化をしてしまうなど8匹連続で失敗。

 

 だが、残り1匹で捌くのを成功させた。

 後は毒袋を抜くだけとなり、丁寧に毒袋に触れていく……そして。

 

「よし…成功だ!」

 

 小松は見事はフグ鯨を捌いて見せた。

 フグ鯨は金色へ変化した。

 

「「「「「よっしゃぁぁ!」」」」」

 

 成功した瞬間思わず見ていた俺も飛び跳ねてしまった。

 

 

 

 

 

 それからフグ鯨は刺身に、後は食べるのみとなったのだが。

 

「さぁ、一体どんな味なのかしら」

 

 だが、忘れてはいけない。

 俺とティナは捕獲も調理もただ見ていただけだ。

 何も貢献していないので、食べる権利はない。

 

 それなのにティナはカメラを構え箸も用意して。

 図々しいにも程がある。

 

 俺はため息をしながらもティナの肩に手を置く。

 

「ティナ、俺たちに食べる権利はないぞ」

「え?…何言ってるのか一ミリグラムもわからないんだけど」

 

 こいつ、マジで言ってるのかよ。

 

「今日、俺たちは何もやってない。働かざるもの食うべからず。捕獲も調理もトリコたちがやった。俺たちは見てただけじゃねぇか。図々しいとか、思わないのかよ?」

「う……でも、すぐそこにフグ鯨が」

 

 気持ちはわかる。

 だが、考えてもみてほしい。何もしてないその場にいただけのやつがでしゃばって食事に混ざるのはどうかと思う。

 

 悔しそうにしているティナ。

 ……しょうがない。

 

「今度俺の奢りで食いに行こう。多少のコネもある」

「えぇ……ああ、もうわかったわよ」

 

 折衷案で了承してもらう。

 ガクッと腰が折れるほどショックなのかよ。

 ああ、俺の貯金全部消えるなぁ。

 

 そう思いながら俺とティナはその場から離れようとーー。

 

「おい、お前たち何やってんだよ。早く一緒に食うぞ?」

「そうですよ。早く座ってください」

 

 だが、トリコと小松が声をかけてくる。

 ……本当に人が良すぎだ。

 

「ええ!いいの…ふごむ」

「残念だが、俺たちは遠慮させてもらうぜ。俺も美食屋だ。何もしてねぇのに食材を恵んでもらうなんざ、プライドが許さねぇ」

 

 俺はティナの口を無理やり塞ぎながら返答した。

 

「は?お前何言ってんだよ。充分働いたっての。さっさと座れよ」

「……だが」

「はぁ!もうめんどくさいやつだな!俺が座れって言ってんだ」

 

 いや、しかしなぁ。

 ここで了承するのも……うーん。

 トリコは今だに悩んでいる俺を見て、その場から立ち上がり詰め寄ってくる。

 

「いいか、フグ鯨を捌いたのは小松で、その小松を守ったのは他でもないお前だ。お前にも食う権利はある!それにだ。美味ぇもんはみんなで食べたほうが美味いに決まってるからな」

「そうですよ。ゾンビさんがいなかったら今頃僕はどうなっていたか」

「僕もトリコと小松君と同意見だよ」

 

 トリコ、小松、ココからそう言われた。

 まぁ、そう考えれば権利はあるのかもしれない。

 それに、ここまで言われて断るなんて男としてできない。

 

「そこまでこの俺様にも、食べて欲しいってんなら断る訳にはいかねぇな」

 

 ああ、こんな時素直に礼を言えないのは悪い癖だ。

 

「ああ!何て神々しいのかしら。見ただけで涎が止まらない」

「クルッポー」

 

 気がつくとティナは座って食べる準備をしていた。いつの間にか出てきていたクルッポーも早く食べたいとばかりに見つめている。

 こいつらは少しは遠慮というものを覚えたほうがいいのだが……もう細かいことは気にしないでおこう。

 

 だが、一つだけ訂正をしておく。

 俺はゆっくりと小松のそばにいく。

 

「いいか小松、俺様はゾンゲだ……よろしくな」

「ひぃぃ!ごめんなさいぃ!」

 

 俺は怯える小松を笑顔を向けるとフグ鯨の前に座る。

 

「さ、食おうぜ。……この世の全ての食材に感謝を込めて」

「「「「「いただきます」」」」」

 

 そして、みんなでフグ鯨を実食する。

 

 ああ、美味すぎる。

 一口、甘みが口に広がりそこから脂の旨みが広がる。

 噛めば噛むほど味が出続けるからやめられない。

 ……ゴクリ。

 

 ーーずきん!

 

 飲み込んだ瞬間、全身に雷が落ちたような感覚が広がる。

 筋肉が痙攣を引き起こす。

 

 滋養強壮効果があるのか、今までの疲れが一気に吹き飛ぶ。

 何より。

 

「……全身から力が込み上げる」

 

 この感覚は久しぶりだ。細胞が進化している。

 

「皆さーん!ヒレ酒ができました!」

 

 すると、小松がヒレ酒作ってくれたので、それも飲み始める。

 

「……ああ……美味い」

「だろう!やっぱみんなで食ったほうが美味いよな!」

「ああ。最高だ」

 

 思わずこぼれた感想にトリコにそう言われる。

 本当にその通りだ。

 

 本当に素晴らしい世界だ。

 いつの間にか俺に警戒していたトリコも共に食卓を囲めば仲良くなれていた。

 

 食事は人を幸せにする。

 ああ、本当に素晴らしい世界だ。

 この食材に出会えたことに感謝をしなければ。

 

 

 ああ、これからどんな食材に出会えるのだろう。

 食べたことのない未知の食材……ああ、想像しただけで武者震いがしてくる……楽しみだ。

 

 

 これだから、未知を求める美食屋はやめられない。

 

 

〜完〜

 

 

 

 

 

 

 

 




予告してた通りこれで完結扱いにしたいと思います。

予定していた話数より7話増えてしまいました。
プロットの構成では16話だったんです。でも、予定通りに進まないのが小説というものだと思います(言い訳)

もともと、思いつきで投稿したものになりますが、ここまで高評価いただき日間総合ランキング、週間ランキング1位に入るとは思ってもみませんでした。

続きを投稿してほしいと多数のご意見頂きましたが、投稿するかはまだ未定になります。申し訳ありません。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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