火の時代を終わらせた不死人がダンジョンに居るのは間違っているだろうか 作:エドアルド
剣戟がロキファミリアの中庭に響く。
「我武者羅に振るのではなく数手先まで考えて剣を振るえ!」
私はアイズの攻撃を全て受け流しながらそう叫ぶ。
アイズは子供にしては能力は高い。これも恩恵の影響か。
しかし、その反面基礎の技術かなっていない。全てがステイタス任せの力任せ。昔の私のようだな。
リヴェリアに色々と聞いた時もただ我武者羅にモンスターを倒していて剣もすぐダメにすると聞いたな。単純な強さの前に色々と叩き込む必要があるな。
私はアイズの剣を巻き上げ弾き飛ばすと私の剣をアイズの首に添える。
「力も大切だが技も大切だ。力のみで解決出来るのは格下までだ」
自分よりも強い存在に立ち向かう時には時に小細工すら必要になる。私も何度も色んな小細工を使ったか。マイブームは背後からの強襲だったな、あとパリィ。
「もう一回お願いします」
アイズはそう言うと弾き飛ばされた剣を手に取る。
「その意気やよし」
根性はある。むしろ異常と言っても良い。これ程の熱量がモンスターへの憎しみで出来ているのは何とも勿体無い気がするが解決すべきは本人だからな。
怒りや憎しみは視野を狭くする。私もロードランでは色々とあったからな。許さんぞ車輪骸骨め。あの追尾性能と削り性能には怒りしか覚えなかった。
まあ最終的に大盾で凌いで殺す方法で突破したがな。あれは嫌な思い出だ。
そんな事を頭の片隅で考えながらアイズに稽古をつけていく。
にしてもフィン達は倒れるのが早かったな。基礎は出来ていたし第一級冒険者だからと言って実戦形式で手ほどきしたのは失敗だったか?
庭の隅っこで撃沈しているガレス、フィン、リヴェリアをみてそう思う。
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「己を知り敵を知れば百戦危うからず。という訳で座学だ」
不満顔をしながらこちらを睨むアイズを見ながら私はそう言う。他にもリヴェリアやロキもいる。
「自分のできること、敵ができる事を明確に知る事が出来れば飛躍的に生存率も勝率も効率も上がる」
敵によって攻撃の効きずらさとか色々あるからな。ロードランで相性を無視して敵を攻撃すれば瞬く間に殺されるのが日常茶飯事である。まあ、頑張れば死ななくは無いがやりたくないな。
「力だけでなく知も活かして戦えばより高みへ登れる。だからそんな顔をするな。アイズから強くして欲しいと頼んだのだぞ?」
「……ほんとに強くなれるの?」
典型的なあれだな、力信者。力こそパワー的な発想の住人なのかアイズは、全て正面突破なんだろうな。
「学ぶ事は戦う上での選択肢を増やす事だ。戦いの選択肢を増やせればそこから最適解を見つけられる」
非効率は周回の天敵故な。効率こそが正義。真正面から敵とやり合うだけでは疲れる。
「それにアイズには知識が足りなすぎる。武器の扱いはぞんざいで手入れも出来ないらしいな。そんなんではいつか死ぬぞ」
武器が無くなれば人の殺傷能力などたかがしれている。同じ人ならともかくモンスター相手にそれはダメだ。
「何故、人間という非力な生き物がこの世界で生き残り繁栄を手にしたか、それは知恵が人の武器だからだ。神による恩恵のおかげで今や力ある人、冒険者がいるがそれまでは特別な力やモンスターのような鋭い爪、鋭い牙なんてものもなく人は生きてきた。家を建て壁を作り武器を鍛造し畑を耕す。全て人にしか出来ない行為だ。知恵は人を強くし豊かにする。知恵というのは人間という非力な生き物の最大の武器なんだ。故に学べ、アイズ。お前が求める力には必ず知恵が必要だ」
本当の強さに必要なのは知恵、力そして勇気。この三つがあれば大抵の事は何とかなる。知恵と力があっても勇気が無ければ実行出来ず。知恵が無ければ進めず。力が無ければ死ぬだけだ。
今のアイズに必要なのは知恵だ。知恵による可能性は無限大だ。まあ、14万人もの人間を一瞬で殺せる兵器を作り出す存在だからな。
「そういう訳でしっかりと学べアイズ。リヴェリアに叱られるのは嫌だろう?」
「うっ……」
「おい、なぜ最後に私を引き合いに出す。普通にいい話だったろうに」
……こっちの方がアイズに効きそうだったのでな。
「とりあえず座学を始める」
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「さて、座学その2。ソウルの魔術だ」
そういう私の目の前にはリヴェリアがいる。魔術を覚えられる程の理力を持つのがリヴェリアしかいなかったからな。
「よろしく頼む」
リヴェリアは真面目だから要点を解説して実践に移った方が良さそうだな。
「まずソウルの魔術とはソウルそのものを媒介として放出する技術だ。まずソウルとはこの世の全てを構成している存在だ。今私達がたっている床の木材や机、椅子。私達の肉体、魂までもが全てソウルによって構成される。そのソウルを媒介にするのが特徴だ」
ソウルの魔術については分からない事も多いがな。
「ソウルの魔術に必要なのは理力。貴殿にも分かりやすく言うと魔法適正値とでも言おうか。それが高い程ソウルの魔術の威力は上がり、行使できる種類も増える」
魔術には大変世話になった。特に闇系統の魔術の威力には助けられたな。
「ソウルの魔術は貴殿らが言う詠唱は必要無く杖を構え使いたいと思った魔術を行使するだけで良い。ただし魔術の出にはそれぞれ時間がかかる故に注意が必要だそれでも魔法に比べれば圧倒的に早いがな。それと貴殿の魔法に比べ広範囲への攻撃などは得意では無い。どちらかと言うと個人への攻撃に向いているな」
魔術と魔法。それぞれに利点と欠点がある訳だ。
魔術はどちらかと言うと個人というか暗殺向きとでも言うべきか。実際にヴィンハイムの竜の学院では暗殺業があると聞いた。
「そして魔法とは違い学べば誰でも扱える論理的な学問体系の技術である事だ。理力は必要だがな。他にも色々と教えるべき事はあるがまずは実践してみてからだ。これ以上は様々な考察入り交じる研究の領域に突入しかねんのでな」
ソウルの魔術は奥が深くてな。今でも全てを理解出来てはいない。
ソウル、この世全てを構築するそれは一体何なのであろうな。