Doll's FrontLine -Armored Outsiders- 作:天羽々矢
突然ヒロ達と少女の間に藍澤 カズマが割り込んできたかと思いきや、カズマの放った光の粒子に巻き込まれた。
しかしそのお陰か、ヒロ達は口を割る事の無かった少女の声と内に秘める思いを知る事が出来た。
・・・あの時ヒロがニュージーランドで感じていた、少女から来る苦しむような悲しむような気配に間違いは無かったのだ。
少女は救われる事を望んでおらず唯1人で朽ちていく事を望んでいたというのだが、だからと言ってはいそうですかと言える訳がない。
それに彼女は自分の足で立って歩く事も出来ないと言ったが、それはアイヴィス達と全く同じだ。
彼女達は生まれて間も無く機械の肉体に替えられ、役立たずの烙印を押されて放り出され、痛みと苦しみに苛まれながら生きる意味もなく彷徨い続けた。
しかしそんな彼女達を見ていられずヒロやフェンリル、アナトリアの人々が手を差し伸べた。
その結果はどうだろうか、彼女達は自分の生きる理由を見出し以前より生き生きとしている。
アイヴィス達は自分達で立ち上がるチャンスを掴み取り、そして見事にものにして見せたのだ。
カズマが律者と呼んでいた少女にもいつかチャンスは来るのだろうか・・・否、カズマは彼女に自分で立ち上がるチャンスを与えたのだ。
やがて粒子は晴れヒロ達は先程までいた基地入り口付近へ戻ってくる。
カズマの方を見ると再び意識を失ったのであろう律者の少女がカズマの腕の中にいたが、その寝息は穏やかそうだ。
しかしこれで一件落着とはいかない、ヒロ達にはまだ止めるべき相手がいる。
脳震盪から漸く回復したヒロが立ち上がり、チカゲとアイヴィスを引き連れて基地内部へ向かう。
「・・・その子を、頼んだ」
カズマとすれ違う際、ヒロはカズマにそれだけ伝えた。
少女をカズマに任せ、ヒロ達はひたすらに基地の地下区画へと向かう。
もしヒロの予想が当たっているなら、そこに
道中に構える敵には弾丸を1発撃ち込むだけで目もくれず地下へと続く階段をひたすらに駆け下りていく。
地下格納区画を抜け遂に最深部と思われるフロアに辿り着いた。
「・・・来たな。俺の前に立つのはやはりお前だとお前だと思っていたよ、
「了賢・・・!!」
そこで待っていたのはやはりと言うべきだろうか、白狼 了賢その人であった。
すぐさまヒロ達は了賢に銃を向け臨戦態勢を取るが、当の了賢は随分と余裕と言うべきか、非常に落ち着いている。
「まぁ待て。お前たちとすぐにでも始めてもいいんだが折角ここへ来たんだ、1つ昔話と行こうか」
「?」
「優、お前は
「・・・ご存知じゃないな」
了賢が突然切り出したのは何かの話、少なくともこの基地の巨大な地下区画や新型ミサイルと新型無人攻撃機の開発資金に迫る話なのだろう。
ヒロは一先ず了賢の話に耳を傾ける。
「話は100年以上前にまで遡る。アメリカ、旧ソ連、中国、3つの大国を束ねる陰の組織があった」
了賢は天井を見つめながら思いに耽るように話を続ける。
「“賢人会議”と呼ばれる秘密結社だ。第一次世界大戦と第二次世界大戦、2つの大戦の最中に根を張り急成長した。大戦後にバラバラになった賢者たちは彼らが遺した莫大な資金を巡って争いを始めた。“賢者の遺産”と呼ばれる莫大な額のカネだ」
了賢が“賢者の遺産”と呼ぶ単語にはヒロの記憶の中にある。
あるゲーム内での世界線での話だが、あるソ連の将校がその資金を利用して強大が軍備を整えたとか。
そこまで思い出した時にヒロの頭の中でパズルが組み上がった。
「まさか、さっきの無人機たちとこの地下区画を作った資金って・・・!!」
「ご名答。将軍閣下・・・足利 正義議員がその“賢者の遺産”を相続していたからだ。どうやって手に入れたのかまでは知らないがな」
了賢は将軍が“賢人会議”と呼ばれる秘密結社の遺産を相続していたと告げる。
そして、この基地の資金も賢者の遺産から出ているとも・・・。
ヒロの予想は当たっていた。
だが、まだ謎が残る。
なぜ将軍閣下・・・足利 正義がその遺産を相続できたのか? そして何故それを了賢が知っているのか? 疑問は尽きない。
しかし、今はそれどころではないとヒロは頭を切り替える。
了賢もそれを理解しているのだろう、話を続ける。
この基地の地下区画を作った資金源の話はまだ終わっていないようだ。
ただ、この話はヒロ達にとっても非常に興味深いものだった。
“賢人会議”と呼ばれる秘密結社が世界中に根を張り、その資金源で強大になった。
だが、それは“賢人会議”の構成員にとってだけではなかった。
この地下区画を作るために資金を出資した世界中の企業や投資家も潤うことになった。
そして、世界経済は急激に成長していったのだ。
しかし、賢者たちは長くは続かなかった。
第一次世界大戦と第二次世界大戦という2つの大戦が終結し、冷戦が始まった時に賢者たちは袂を分かつことになる。
2つの大国に根を張った賢者たちはそれぞれの陣営に与し、世界中から資金と技術を集め、世界大戦を未然に防ぐための研究を開始した。
その研究は極秘裏に進められたが、ある時を境に急激に進むことになる。
それは“賢人会議”の構成員が1人残らず姿を消したことに起因する。
そして、世界中に散らばっていた構成員も忽然と姿を消していったのだ。
“賢人会議”という秘密結社の存在そのものが歴史の中から消えてしまったのである。
しかし、この地下区画を作った資金源である“賢人会議”の遺産は残り、今に至る。
この地下区画を作った資金は世界中から集められたものであり、その原資となったものこそ賢者たちの残した遺産、“賢者の遺産”なのだ。
“賢人会議”という秘密結社が世界経済に大きな影響を及ぼしていたことも事実であり、それは今もなお続いているのだ。
ヒロ達は了賢の話に聞き入っていたが、ふと我に返り再び銃を構えると了賢に向かって構える。
今まで話をしてきたという事は、今の了賢はその“賢者の遺産”の在処を知っているのだろう。
つまり、了賢を倒せば世界の何処かに眠る“賢者の遺産”も手に入る可能性があるという事だ。
しかしそんな事はつゆ知らず了賢は再び口を開く。
「生憎だが、今の俺はその“遺産”の在処を示す物なんて持っていない」
「何!?」
「森谷 闘真に踏み込まれた時は流石に焦ったが、優、お前が来る前に俺の妹に渡して既に輸送機で逃がした。今頃はこの国の領有圏の外だろうよ」
了賢から放たれた言葉はヒロ達の予想を裏切る物だった。
了賢は“遺産”の在処を示す物を持っていない。つまり、その“遺産”を手に入れる事は出来ないという事だ。
では何故そんな話をしたのか?ヒロ達にわざわざ手の内を明かしたのか? それは、この地下区画が無人機と新型ミサイルの開発施設であり、制御施設でもあるからだ。
“賢人会議”のメンバーが1人残らず消えた事によって世界中に散らばっていた構成員も姿を消した。
しかし、世界各地に散らばった構成員の子孫たちや関係者たちは世界中に散らばり今もなお活動を続けている。
そして、彼らが持つ“賢人会議”の遺産は子孫たちに引き継がれていくが、その数は非常に少なく世界経済に大きな影響を及ぼす程のものではなかった。
しかし、この地下区画にある技術や知識を生み出した資金は世界中からかき集めた物であり、その一部をヒロ達は目にしてきたのだ。
“賢人会議”という秘密結社が残した莫大な資金と技術力によって世界経済は大きく成長した。
それは世界に革命を起こしかねない程だった。
だが、了賢は“遺産”を妹に渡して既に輸送機で逃がしたと言う。
つまり、了賢にとって
そして了賢はヒロ達に向き直り、口を開く。
「お前たちに妹を追わせる訳にも、
そう言って了賢が右手で指をパチンと鳴らすと、先程ヒロ達が入ってきた扉の隔壁が閉まる。
完全に逃げられなくなった訳だが、
「望むところだ!!」
ヒロは力強く声を上げ、それに応えるかのようにチカゲがスカートから大鎌状マニピュレーターアームを展開、アイヴィスも腰に差す鞘から日本刀を抜く。
それに了賢はフッと不敵な笑みを浮かべると再度右手の指をパチンと鳴らす。
すると区画の奥から何か金属質な音を響かせながら何かが歩いてくる音が聞こえてくる。
やがて暗闇の中から姿を見せたのは黒い鋼の巨人。
「なッ・・・」
チカゲが愕然とし思わず口を開くがそれ程の物だったのだ。
大きさでは
やがてその異形が了賢のすぐ後ろまで歩いてくると、頭部の複眼型カメラアイが点灯する。
それに合わせるかのように了賢も自分が着ているトレンチコートの左上腕を掴み一気に脱ぎ捨てる。
そこにあったのは先程まで穏やかそうに話していた了賢ではなく好戦的な眼光でヒロ達を見る、まさに獲物を視界に捉えた
それに先程まであったはずの了賢の左腕は、6銃身タイプのガトリングガンへ替わっていた。
「さぁ・・・・・・始めようか!!!!」
了賢が左腕のガトリングガンを構えて声高らかに宣言すると当時に後ろの黒い異形も左腕のレーザーキャノンを床に叩きつける。さながら戦闘開始のゴングかのように。
ED2:HORIZON/TEAM SHACHI
コレが多分今年最後の投稿かな・・・( ̄▽ ̄;)
コラボ先の作品はこちらになります!↓
[https://syosetu.org/novel/294168/]
この回とリンクしておりますので是非!↓
[https://syosetu.org/novel/294168/19.html]