pixivアカウントが1000フォロワー突破した記念SSです。

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#リプされたセリフ全部ぶっ込んだ1000フォロワー記念SS書く

#リプされたセリフ全部ぶっ込んだ1000フォロワー記念SS書く

 

 はい。

 この度、Pixivアカウントのフォロワー数が1000を超えた記念と感謝を込めて、タイトルのハッシュタグでリクエストを募集いたしました。

 告知から短い期間でさっそく遠慮のない素敵なリクエストを頂戴いたしました。

 ありがとうございます。

 

 はい。

 というわけで。

 1000フォロワー記念SSが始まりますので、お暇とご興味がおありの方はぜひお楽しみください。

 

 以下、リクエストいただいたセリフ一覧です。

 

・「本当にごめんなさい。悪いとは思ってるの。でも……、ちくわ大明神」

・「さあ全部飲み込んで僕のエクスカリバー」

・「桂ァ、今何キロ?!」

・「覚えてる? あの日のこと。って言った時に、君はどの日を思い出すんだろうね」

・「小エビちゃん、魔法少女ってナニ?」って言うフロイドリーチ

・「知らざあ言って聞かせやしょう」

 

 なお、読んでいなくても特に問題ありませんが、以前書いた「#自分の誕生日祝いにリプきたセリフ全部ぶっ込んだSSを書く(https://syosetu.org/novel/294555/1.html)」のキャラクター等を流用しております。

 お暇とご興味がありましたらそちらもぜひどうぞ。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 登場人物紹介

 

二重川(だぶりがわ) 二重(ふたえ)(二年生。留年三度目)

 私立異世界転生市杉(いせかいてんせいしすぎ)高等学校第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部の平部員。

 特技と趣味はバトル暴力。メンタルは弱いが人体を壊すのが得意。

 倫理観を小学生に預けている。

 座右の銘は「()られる前に()れ」。

 

超常院(ちょうじょういん) 遥迦(はるか)(三年生。十二歳飛び級生徒)

 十歳のころには異世界錬金術を学び()()()正真正銘の天才であり、ご近所さんからも三回くらい殴りたいクソ生意気な面だと有名なクソ生意気天才児。

 発明は常軌を逸しているが、校内では比較的邪悪でなく常識人。

 座右の銘は「Wi-Fiは基本的人権」。

 

左門(さもん) 悪魔公子(でびるぷりんす)(三年生)

 元悪魔召喚部部長。

 部長の座をかけたバトル暴力において、二重川に肩と二の腕と肋骨と内臓と両手両足と後頭部を折れるまで殴打され、ついでとばかりに全身の関節を外され、復帰後すぐに部室棟もろとも爆破された。

 座右の銘は「一日一善、三日で破綻」。

 本編には登場しない。

 

左門(さもん) 悪魔神官(でびるぷりーすと)(一年生)

 左門悪魔公子の妹。兄が無残にもぼろ雑巾にされたことは当然の結果だと思っている。

 悪魔召喚部の独立を求め、第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部に交渉に訪れた少女。

 マイデスソースを常備している頭と味覚がおかしい女。

 座右の銘は「辛さから逃げるな」。

 

(かつら) 大五郎(だいごろう)(教師)

 第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部の顧問。

 由緒正しきアーサー王の末裔を自称する、比較的温厚で話の分かる狂人。

 エクスカリバーと称して不自然に歪んだ金属バットをたずさえる優男風。

 座右の銘は「子どもはまだ半分獣」。

 

 フロイド・リーチ

 なんかページ変わったら急に出てきて縛られてる人。ウツボ。

 

 小エビちゃん

 「あなた」。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

「はあ……暇ですねえ」

「最近は活きのいい被験体もとい部室狙いのごろつきも来なくなったしねえ」

「やっぱり人体実験の噂が立つのはまずかったんですよ」

「君が何人か取り逃したから噂が立つんだろー?」

「とほほ……」

 

 うららかな午後のことである。

 午後にはひげが伸びてきてしまうことが最近の悩みである二重川二重(二年生。留年三回目)がぼやくと、部長の超常院遥迦(三年生。飛び級の12歳)がメスガキボイスでたしなめた。

 なんの変哲もない、平和な放課後であった。

 

 私立異世界転生市杉(いせかいてんせいしすぎ)高等学校の文化部棟三階中程に所在するのが、第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部の部室であった。

 この複雑骨折してそのまま歪に癒着してしまったような、玉突き事故のごとき部名は、部員不足から廃部を余儀なくされかけていた複数のクラブが合併を果たしたことによる。

 なお合併の結果として部長の座をかけた醜い争いが発生し、最終的に現部長と平部員の二名しか残っていないあたり本末転倒ではある。

 

 総クラブ数公称100オーバーをうたう私立異世界転生市杉高等学校において、部員数二名の弱小部は本来であれば存続を認められない所であったが、部長の超常院が特許料などで稼いだ中から学校に多額の献金(ゲンナマ)を握らせているのでおとがめなしなのである。

 

 

「とはいえ、やっぱりモルモットなしだと私も研究意欲がイマイチだね」

「財布が歩いてきてくれたから臨時収入にもなったんですけどね」

「君は相変わらず小市民だなあ。学生の財布なんてたかが知れてるだろ?」

「意外と個人情報入ってるんで叔父が買い取ってくれるんですよ」

「さすがプロの暴力バトラーだなあ」

 

 青春。

 そこにはまさしく高校生らしい青春があった。

 気だるく、もてあまし、なんとなく退屈を享受し、暇つぶしのために過ごすような、そんなだらだらとしたモラトリアム時空が広がっていた。

 大人になってからはどうやっても手の届かない、神聖にして閉ざされた学び舎の空気。

 

 そんなセンシティブな空気に頓着せずがらがらと戸を開けて入ってきたのは顧問の桂大五郎だった。

 

「やあ僕の君たち。元気にやってるかな」

「あれ、どうしたんですか?」

「桂が来るなんて珍しいな」

 

 桂は定年間際の老紳士である。

 いつもボタンは一番上まで閉め、ネクタイもしっかり締めて「きちんとした」格好を心掛けている、けれど温厚で話の分かる優しい教師として、校内でも人気の高い教師だった。

 担当学科は歴史で、カリキュラムにない中世暗黒ニンジャ史を朗々と語ることでしばしばPTAともめる、比較的危険性の少ない狂人でもある。

 

 自身をアーサー王の末裔だと信じていて、何か硬いものを殴りつけたように不自然に歪んで錆びた金属バットをエクスカリバーと称していつも持ち歩いているが、少なくとも出合い頭に世界人類の幸福を祈りながら殴り掛かってくるような実害のある狂人ではない。

 

 この気のいい狂人を超常院部長が呼び捨てにするのは、彼女が桂を小ばかにしているわけではなく、単にこの天才児は誰に対しても敬語を使うということがないのである。

 それは超常院遥迦が全人類を見下しているからでは決してなく、あまりにも天才過ぎる自分がへりくだってしまうと凡人に気を遣わせてしまうだろうというクソみたいな配慮のためであった。

 

「うん、今日はね。君たちに会いたいって子がいてね」

「えっ正気ですか」

「その子がかい? それともその子を連れてきた僕がかい?」

「どっちもですね」

「どっちも保証しかねるなあ」

「うーん、自分が狂ってることを自覚してる間はまだ狂ってないアレ」

 

 第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部は私立異世界転生市杉高等学校においては比較的邪悪でないほうだが、それでもいたずら気分で顔を出したアホの財布を臨時収入にしたり、部室を奪い取ろうと挑んできたノマド的クラブ連中をモルモットにしたりすることに躊躇も良心の呵責も覚えない程度には倫理観を縮小営業しているのだ。

 

 その第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部を正規のルートで訪ねてくるのはとても正気とは思えないし、そんな正気とは思えない生徒を正規のルートで案内してくる桂もとても正気とは思えない狂人である。

 

 しかしまあ多少狂ってる程度は、今日日のライトノベルでは一般的な範囲と言っていい。

 むしろ多少狂っていないとキャラが弱いと感じる読者の方も多いのではないだろうか。

 もしそんなことないよとおっしゃる方がいらっしゃれば、試しに好きなライトノベルの好きなキャラクターがあなたのクラスとか職場にいるのを想像してほしい。はたから見てる分にはよくても実生活に絡まれるのは割とノーセンキューなやつが多いと思う。

 落ち着いて聞いてほしいのだが、あなたはそのラノベの主要登場人物ではないので、そのキャラクターがあなたに好意や殺意を抱いてくれることはないのだ。

 いやそれでもあの子はよくしてくれるはずだ、という熱心なファンの方は、まあ、ええ、信仰は自由ですから……。

 

 閑話休題。

 

 狂人が案内してきた狂人は、一般的な女子高校生に見えた。

 黒いセーラー服を着た、一見して普通の女子高生である。

 私立異世界転生市杉高等学校の制服がブレザーであることを思えば妙と言えば妙だが、生徒の八割が改造制服を着ている当校においてはむしろおとなしいほうであった。

 

「はじめまして。左門(さもん) 悪魔神官(でびるぷりーすと)です」

 

 一見して普通の女子高生は、一読して普通ではないキラキラ?ネームを堂々と名乗った。

 そしてその普通ではないネーミングセンスには、記憶力がハダカデバネズミと肩を並べるほどの二重川にも覚えがあった。

 

「確か……あのあれ………いや覚えてるよ。マジで。ここまできてるから」

 

 二重川の視線が超常院部長をチラ見する!

 部長の的確なジェスチャー!

 

「あー……あれ。元悪魔召喚部部長、の……?」

 

 二重川の視線が超常院部長をチラ見する!

 部長の的確なジェスチャー!

 

左門(さもん) 悪魔公子(でびるぷりんす)……だったっけ?」

 

 外付け記憶容量から的確に記憶を掘り起こした二重川は、その奇妙な名前をつぶやいた。

 左門 悪魔公子は元悪魔召喚部であり、クラブ合併の際に部長の座を争って逃げ出した敗北者である。その後報復にも来たが、結局爆発四散する羽目になった愉快な男であった。

 

 この少女はあのケヒャリストと関係があるのか……?

 

 二重川はいぶかしんだ。

 校則規定に存在しない黒セーラー服を自弁で着てはいるが、先述の通りこの学校ではその程度はやんちゃともいえないおしゃれの類でしかない。

 姿勢もよく、変に猫背だったりのけぞったり斜めにかしいでいたりしないし、オリジナル笑顔で笑いかけたりオリジナル言語で語りかけてきたりもしない、いたって普通の女子高生に見える。

 

 しかし、危うく普通認定しかけた二重川のウカツさを、超常院部長がたしなめた。

 

「待て待て二重川君。君の愚かで鈍間でウミウシといい勝負をしているクソザコ観察力でも、よく見ればわかるはずだ」

「引き合いに出されたウミウシも心外だと思いますよ」

「よく見たまえ、あの鞄にぶら下がった平成JKのケータイストラップじみた無数のドクロキーホルダーを」

「まあじゃらじゃらしてますけど……中二病をこじらせたのかデスメタルに目覚めただけじゃないんすか」

「あれはデスソースについてるドクロだ。あれ束にしてるってのは味覚か頭がおかしいぞ」

「おうふ……もしくはどっちもっすね」

 

 いぶかしむ二人に、左門 悪魔神官は兄によく似たキワキワの目で言い放った。

 

「知らざあ言って聞かせやしょう」

 

 べべん、と三味線の音を口で奏でて、悪魔神官はふたりに紙束を突き付けた。

 受け取ってみればそれにはこう書いてある。

 

『 左門悪魔神官プレゼンテーション資料 』

 

「えー、ではまず資料の一ページ目をご覧ください」

「思ったよりがっつり言って聞かせるやつだった」

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 一方そのころ、照明も灯さぬ薄暗い密室で、ひとりの青年が画面に流れ続けているアニメーションを眺めていた。

 視線にはこれといった熱もない。熱心に内容に気を向けているわけではない。多少の興味はあれど、それはほかの物事にたやすく移ろってしまうような些末なものに過ぎなかった。

 

 長い脚が無造作に組み替えられ、牙を思わせる鋭い歯並びがあくびを文字通りにかみ殺した。

 その表情からうかがえるのは、退屈、あるいはただひたすらの無感動。

 

 彼の名はフロイド・リーチ。

 ここではない遠い世界「ツイステッドワンダーランド」は名門魔法士養成学校、「ナイトレイブンカレッジ」に所属する、海の魔女の慈悲を掲げるオクタヴィネル寮の寮生である。

 

「小エビちゃん、魔法少女ってナニ?」

 

 魔法少女。

 画面に映し出された、カラフルな衣装を身にまとって戦う少女たち。

 ぼんやりと眺めているだけでも、その物語のおおよその流れは把握した。彼女たちの戦い、彼女たちの日常、輝かしい希望と、おぞましい絶望、それらも理解した。

 

 そのうえで彼は問いかける。

 魔法少女とは、なにかと。

 

 小エビちゃん……「あなた」は答える。答えようとする。

 しかしそれは明瞭な言葉にはならず、ただくぐもったうめき声になって漏れ出るばかりだった。

 なぜなら「あなた」の口は手荒に詰め込まれたさるぐつわによってふさがれているからだ。

 

 封じられているのは、その無駄に回る口ばかりではない。

 「あなた」の目はふさがれて一切の光を許されず、「あなた」の手足は荒縄で縛り上げられ、わずかに身じろぐことさえも節々に引き連れた痛みを誘った。

 

 そして、そんな「あなた」はいま、フロイド・リーチの足元にいる。

 訂正。

 正確には尻の下にいる。

 長く伸びたしなやかな足が組まれた、その尻の下に「あなた」は敷かれていた。

 

 「あなた」がフロイド・リーチの椅子になって、アニメ鑑賞会を文字通り「支えて」からすでにかなりの時間が経過していた。

 画面に映る物語はすでに終盤に至っており、結末へと至ろうとしている。

 

 そのタイミングでの、問いかけだ。

 

「ねえ」

 

 呼びかけ。そして振り子のように振り下ろされたかかとが、あなたの脇腹に軽く打ち付けられる。蹴りつけたわけではない。けれど光を奪われた「あなた」はその刺激に身を震わせる。

 

「小エビちゃん」

 

 声に優しさはない。甘さもない。しかし厳しさも冷たさもない。ただフラットな、いつも通りの、気だるい午後を過ごすような声。

 

「魔法少女って、ナニ? 好きなんでしょ?」

 

 「あなた」は答える。答えようとする。

 「あなた」は答えを持っている。

 

 薄暗い部屋の中で、しかしその答えは、ただただくぐもったうめき声としてこぼれるばかりなのであった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 十二ページに及ぶ資料とグラフを活用し、軽妙な漫談めいたコミカルな進行で聞きやすく、聴者としても集中しやすい実に理想的なプレゼンテーションは紙幅の都合から丸っと割愛するが、おおむね中身は空虚で特に意味もなかったので気になさらなくとも何の問題もなかった。

 

「大体そのような次第で、私は亡き兄の遺した悪魔召喚部の独立を求めるものです。わかってもらえたかしら?」

「ああ……よくわかったぜ。大腸の仕組みとか、悪魔の序列とか……」

「大腸菌の悪魔のイラストかわいかったね。あれ君が描いたの?」

「ぶい」

「あっ、無表情クール系の子が無表情でドヤ顔ピースするやつだ」

「表情ないのにドヤ感が強いのいいっすよね」

 

 元悪魔召喚部左門悪魔公子の妹、左門悪魔神官の望みは、第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部に吸収合併された悪魔召喚部の独立であった。

 

「まあ、言い分はわかったよ。でもダメ」

「そんな……!」

 

 部員数制限も金の力で解決し、元部長連中も物理的に黙らせたいまとなっては、中身のない名前程度どうでもいいといえばどうでもいい。

 しかし、ことが悪魔召喚部となると、これは認められなかった。

 

「当時、部員不足で廃部の危機に迫られていた悪魔召喚部、オカルト研究会、UFO同好会、闇に葬られし残虐デス指スマ部、そしてうまいことこいつらを名目上だけ取り込もうとした私たち錬金術部が合併して、いまの第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部になったのはわかってるね」

「まあ、俺もその時に千円やるからって雇われたんで知ってますけど」

「その時、公式に部室を保有していたのは悪魔召喚部だけだったんだ。合併後も、名義上部室の所有権は悪魔召喚部にあるんだ」

「はあ……でも今の部長は超常院部長っすよね」

「所有権を譲渡させる前に君がバトル暴力で黙らせちゃったし、復帰後も即爆散しちゃったからね」

 

 死体は権利を求めない、という理屈でそのまま放置してしまったが、そのために部室所有権を誰も動かせない状態になってしまっているのである。

 しかしここで、先代悪魔召喚部部長の遺志を注ぐ正式な後継者が名乗りを上げてしまったとなれば、話は別だ。もしも悪魔召喚部が独立すれば、第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部改め第三オカルトUFO錬金術研究同好会部は部室を失い、有象無象の零細部活動よろしくノマド的クラブとしてさまよう羽目になる。

 せっかく錬金器具や大型の炉を安定して設置できる部室を入手したのだ、いまさら手放す気などない。

 

「君が部室を譲渡してくれるんなら考えるけどね」

「もちろん答えはノーです。悪魔召喚部にとっても安全で快適、継続可能な悪魔召喚をするには部室が必須」

「じゃあダメだ、って断るとなれば……」

「ええ、決闘を。暫定悪魔召喚部は、第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部に独立を求めて決闘を申し込みます」

 

 決闘。

 それは私立異世界転生市杉(いせかいてんせいしすぎ)高等学校のすべての生徒に許された、公平にして公正な裁定方法である。

 知力・体力・時の運、そして賄賂……己の持てるすべてを用いて、生徒は権利を勝ち取る。命、金、権利、名声、学食の食券、あるいは花嫁……生徒が持ちうるすべては、決闘の賞品になる。

 

「構わんよ。二重川君、仕事の時間だ!」

「俺がバトル暴力の楽しさってやつを教えてやりますよ!」

 

 倫理観の欠如した主従が快諾すれば、その瞬間から決闘は始まる。

 決闘に特別な準備も審判もいらない。

 ただ己の名誉と「勝ったのは自分だ」と言い張る面の皮の厚さだけが勝敗を分けるのだ。

 

 超常院部長のGOサインに、二重川は男女平等に配慮した遠慮のない暴力を振るわんとさっそく突進した。

 悪魔召喚者は悪魔を召喚してなんぼ。そして悪魔召喚には生贄や儀式など時間がかかるもの。ならば準備が整う前に迅速に叩き潰すのがマスト。

 などという文明人のような理屈を考えたわけではなく、とりあえず殴るのが速いというバトル暴力にのっとった蛮族スタイルである。

 

 しかし、その二重川の野蛮で凶悪な拳は、不思議な感触に受け止められていた。

 柔らかく、しなやかで、しかし恐ろしく分厚い感触。

 まるで真綿でできた壁につき込んだような、衝撃をすべて飲み込まれてしまったような、そんな。

 

「な、なにっ!?」

「本当にごめんなさい。悪いとは思ってるの。でも……」

 

 無防備に突っ立っているように見えた左門悪魔神官、彼女をかばうようにそびえたったのは、一本のサンドバッグ……いや、それは。それこそは。

 

「──ちくわ大明神」

「ち、ちくわだ! 巨大なちくわに俺の拳が受け止められている!?」

 

 悪魔召喚者は召喚に時間がかかる。

 そんな前提を無視しての即時の召喚と防御。

 超常院部長はその秘密を一拍遅れて理解した。

 

「さっきのプレゼンテーションに召喚の呪文と儀式をちりばめていたのか!」

「ええ、そのとおり。参加型の楽しい鶏断頭レクリエーションも全てはこの布石!」

「一緒に簡単な呪文を唱えてみようのコーナーも全て仕込みのうちだったというわけか!」

「くそっ、あんなに楽しく鶏の血で魔法陣を描いたのも罠だったってのかよ!」

 

 おお、なんたることか!

 全てはこの時、この瞬間のために仕込まれた巧妙な罠!

 プレゼンをした時から、挨拶をした時から、この部室に入った時から、いや、いや、それよりもずっと以前から、時間をかけて構築された綿密にして周到な罠が、いま発動したのだった!

 

「う、うぉおおおおっ! それでも、それでも俺のバトル暴力はこんなちくわに負けない! 暴力はそんな姑息な罠になんて負けないってことを、教えてやる!」

 

 まるでホビー漫画のようなことを叫びながらえげつないヤクザキックを繰り出す二重川だが、その衝撃もすべて、ちくわ大明神に吸収されてしまう!

 なぜなら────ちくわは、やわらかいから!

 

「兄は無能だった。無力で無才で、無意味で無価値で、でも、無駄じゃなかった。無駄なんかじゃなかった。───貴様のデータを取るいいモルモットになってくれたからねェーー!! ヒャア!」

 

 それは紛れもなく兄妹の絆!

 血のつながりを思わせるケヒャリストの片鱗!

 亡き兄の遺した二重川のスペックをもとに、このちくわ大明神は召喚されているのだ!

 

 自慢の暴力を完全に受け止められ、二重川はうろたえた。

 二重川二重は行動コマンドの最上位に「暴力」が来るどこに出しても恥ずかしくない蛮族であった。

 その暴力が通じない相手に、二重川は弱いのである。

 

「くっ、暴力で黙らせられないなんて……!」

「落ちつくんだ二重川君! いくら召喚術でも、無敵の存在など呼び出せるわけがない!」

「弱点を探す暇を与えるとでも!? やっておしまいなさい、ちくわ大明神!」

 

 サンドバッグよろしく二重川の攻撃を受け止め続けてきたちくわ大明神は、左門悪魔神官の命令に従い、ぐいんとそのなまめかしいボディをまげて二重川を覗き込んでくる。

 そこにあるのは、穴だ。ちくわの──穴!

 底知れぬ穴が、二重川に向けられる。

 

「くっ……なにかわからんがなにかやばいッ!」

 

 二重川がとっさに回避を選んだのは、暴力バトラーとしての勘であった。

 その勘が、二重川の命を救った。

 

「ば、バカな……! 床に穴が開いちまった!」

「下手によけないでほしいですねえ……部室を穴あきチーズみたいにはしたくないんですから!」

 

 ちくわ大明神は再び穴を二重川に向ける。

 

「ちくわの穴は実在しますが、しかし穴そのものは『存在しない』によって構成されている……ちくわを食べることはできても、ちくわの穴を食べることはできない。これは『存在しない』を押し付ける、虚無の攻撃! 削り取ったものがどこに行くのかは私にもわかりませんが……天国に行けるといいですねえ!」

 

 左門悪魔神官の恐るべき概念刻印によって、ちくわ大明神は防御不可能の攻撃手段を得ているようだった。

 そしてちくわ大明神の体を構成するちくわの原材料にはサメが含まれている。

 賢明なる読者諸君にはもうその恐ろしさが察して取れたことだろう。

 そう、すり身となったサメ細胞が、大地を駆け空を飛び、海からさえ襲撃する恐るべき不死身のモンスターの力を与えているのだ!

 

 サメの獰猛さに防御不可能の攻撃……!

 二重川二重(留年三度目)、ついに卒業に至らずここでデッドエンドか……!?

 

「おっとぉ……それ以上は見過ごせないな」

「か、桂先生!?」

 

 ちくわ大明神の猛攻をさばくのは、いびつな金属バット!

 意外! それは決闘を静観していた桂大五郎!

 

「大事な生徒の生死がかかわるのなら、手出しくらいはするさ」

「今更教師ぶったところで!」

「そ、そうだぜ桂先生! そいつは危険だ!」

「大丈夫だよ二重川君。見ていたまえ……さあ全部飲み込んで僕のエクスカリバー」

 

 不穏なセリフとともに、おもむろに金属バットをちくわ大明神の穴にねじ込んでいく桂。

 『存在しない』に満たされたちくわ大明神の穴にそのようなことをすれば瞬時に虚無へと帰され……ない!

 

「バカな! ありえない!」

「言葉は正しく使うべきだね。あり得ないことはあり得ない。つまり、」

「くっ、バカな! あり得る!」

 

 左門悪魔神官は瞬時に理解した。

 確かにちくわの穴に触れることはできず、ちくわの穴は存在を否定する自己矛盾のブラックホール。しかしそこに棒状のものが、例えばキュウリやらが差し込まれたらどうなるだろうか。穴は埋められ、満たされ、もはやそこに虚無はない。ふさがれた穴は、もはや穴ではない!

 

「かつての王にして未来の王であるアーサー王の末裔たる僕のエクスカリバーにとって、過去はいまであり、いまは明日だ」

「『貫通する未来』が『存在しない』の領域に対抗している……! しかし、所詮はそこまで! 『存在しない』は空間も時間もが無! 虚無! 幻想を帯びたとはいえただの物理実体がその空隙を埋めることなど!」

「伸びろエクスカリバー!」

「伸びろエクスカリバー!?」

 

 なぜ伸びるのか。エクスカリバーってそういうものじゃないだろ。

 そういうツッコミをはるか彼方に置き去りに、桂大五郎は湖の貴婦人から下賜されたと自称するエクスカリバーをちくわ大明神にねじ込み続ける。

 エクスカリバーは勝利を約束された剣。ならばいかなる不条理を前にしても、挑んだからには必ず勝利が達成される。

 そんなトンチキは本来であれば許されない。しかし、先にトンチキを始めたのは左門悪魔神官なのだ。トンチキで現実を希釈し、上書きする悪魔召喚の場は、期せずしてナチュラルに狂を発している桂大五郎の精神性に打ち砕かれんとしていた!

 

「まさか本当に伸びるの!? 金属バットが!?」

「伸びるさ! 僕のエクスカリバーが! 何メートルでも! 何キロメートルでも!」

「桂ァ、今何キロ?!」

 

 幻想が殺し合う超常の場。削れていく幻想の欠片が吹き荒れる、その嵐にあらがいながら、超常院部長が問いかける。

 答えは端的で、決定的だった。

 

「──── 13㎞だ」

「ぐ、く、ぅ……『無限』の『存在しない』は描画しきれない……!」

 

 みしり──、と。

 世界がきしむような音が、した。

 過去からいま、いまから明日へと貫く幻想の剣が、狂人の妄想が、ちくわ大明神をいままさに貫通せんとしていた。

 『存在しない』によって形成された『空隙』がエクスカリバーによって貫かれた時、その幻想は失われる。満たされてしまえば、穴は存在を維持できない。

 

「さ、せ、るかぁああああッ!」

「これ以上無理をするな! 幻想崩壊に巻き込まれるぞ!」

「幻想崩壊ってなんすか?」

「知らん。なんかこいつらの間でだけ通じてる用語」

「ここが勝負の天王山! ちくわ大明神“リバース”!」

 

 左門悪魔神官の最後の悪あがきか!?

 いままさに桂のエクスカリバーによって貫かれかけていたちくわ大明神が、端から音を立てて裏返っていく。

 ちくわが裏返るとどうなるというのか!?

 それはつまり、ちくわの穴が表側にむき出しになるということ!

 

「し、しまった! 穴が露出するということか!?」

「その通り! ちくわの穴はちくわのうちにあるからこそ安定して『存在しない』でいることができる……それを裏返せば! むき出しの特異点が三次空間のただなかに顕現するということ!」

「あるいはちくわの反転によって、世界のすべてをちくわの内側とみなして『存在しない』を押し付けるというのか!」

「そうそれ!」

「そうそれじゃねえよ」

「その場のノリで会話してるなあ、さては」

 

 ちくわの内側こそが『ちくわの穴』。

 ではそのちくわが裏返り、『内側』がむき出しになってしまえばどうなるのか!? どうもならんやろという極めて真っ当で常識的な考え方は捨てていただきたい! ここがすでにトンチキ理論が支配する奇跡論的攻防のただなかにあるのだ!

 『内』が『外』に、『外』が『内』に裏返った結果、世界のすべてがちくわの内側と認識される! つまり、『存在しない』に成り果てる!

 

「幻想第四次実体の単層転写体では『無限』が描画しきれないように、世界全てを巻き込むことはできない……けれど! この部室程度ならば! ちくわ大明神の『射程範囲』に収まる!」

「やらせる、ものかぁ! 僕の生徒は、僕が守る!」

 

 裏返ろうとするちくわ大明神!

 なんかこう上手いことバットをひねってそれを阻止せんとする桂!

 トンチキ奇跡論を唱え続ける左門悪魔神官!

 

 混沌とした幻想攻防戦に、二重川二重は膝をついた。

 悔しさが、彼の胸中を占めていた。

 

「どうしたんだいクソザコナメクジ川君」

「訂正するならきっちり訂正してほしかったっすけど……俺は悔しいんです。俺には暴力しかないのに、その暴力が通じないだけで、なんの役にも立たないと思っていた頭のおかしい定年間際の先公に守られてるだけなんて……! 俺は無力だ! 無様だ!」

「おまけに馬鹿で間抜けでワイシャツの襟首がおじさんのにおいがしているね」

「そこまでは言ってない……えっ俺おじさんのにおいするんすか」

「いいかい二重川君。君は確かにダチョウといい勝負するくらいに記憶力も判断力も思考能力も死んでるかもしれない」

「慰めるつもりでも十分打点高いんですよそれ」

「でも二重川君。君にだってできることがあるじゃあないか。ほら、ごらんよ」

「そんな、俺に何ができるってんですか……あっ」

 

 超常院部長に指さされて、二重川はようやく気付いた。

 当たり前の、そう、本当に当たり前のことに気づかなかったのだから、バチクソ頭の悪いダチョウと比べられても、それは仕方のないことだった。

 

 部長の指さす先。

 裏返ろうとするちくわ大明神!

 なんかこう上手いことバットをひねってそれを阻止せんとする桂!

 トンチキ奇跡論を唱え続ける左門悪魔神官!

 

 あ、隙だらけ。

 

「────男女平等パンチ!」

 

 実質的には攻防になにひとつ寄与するところのない、ぶっちゃけ無防備になんか唱えてるだけの左門悪魔神官の顔面に、二重川二重の人権と刑法と倫理観を無視した拳が突き立ったのだった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 左門悪魔神官は薄れゆく景色の中で、遠い日の記憶を垣間見た。

 

 ちらちらとまばゆい五月の木漏れ日。

 無性に懐かしい木と草と土のにおい。

 悪戯に頬をなでていく風の柔らかさ。

 

 そして、光の中でささやきかける少女の声。

 

「覚えてる? あの日のこと。って言った時に、君はどの日を思い出すんだろうね」

 

 左門悪魔神官は答えた。

 答えようとした。

 手を伸ばし、彼女の顔を確かに見つめようとした。

 

 けれど、ああ、けれど、全てが薄れていく。

 光の中へと、白い白い光の中へと、全てが消えていく。

 

 左門悪魔神官はもどかしさの中、遠ざかるその背中につぶやいた。

 

 

 

 え……知らん……誰このひと…………こわ……。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

「君のパンチってどこら辺が男女平等なんだい?」

「死は平等っすからね」

「まあ平均寿命に関係なく当たれば死ぬからなあ」

 

 特に何ということもなく頬骨を砕かれて部室の床に転がった左門悪魔神官を放置して、第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部の部長と平部員は普通に下校した。

 完全下校時間だったからである。

 

 召喚者である左門悪魔神官の意識が失われてもちくわ大明神は別に消えることもなくそのまま裏返ろうとしており、自身を由緒正しきアーサー王の末裔と語る優しい狂人桂大五郎は突っ込んだエクスカリバットをなんかいい感じにひねりながらそれを阻止し続けている。

 

 西日に目を細めながら、成人年齢を超えた高校二年生と第二次成長期迎えたばかりの高校三年生は、そんな惨状をあとに、颯爽と家路を急ぐのだった。

 なんかあの……このいい感じにできた時間でちょっと掃除機かけたりしたかったから……結局やる気が出ずにかけずじまいで、着替えもせずソファでだらだらとスマホいじったりするだろうから……。

 

 こうして、第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部をめぐる物語は、いったん幕を閉じるのであった。

 

 とっぴんぱらりのぷう。

 

 


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