桜並木を歩きながら寒い作品を考えるのは、我ながら季節感がないと思った次第。
ほのかなホラー要素あります。

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薄氷

一面の銀世界。唯々白が広がり、空は鈍色。

北からの風が吹き荒れ、氷の上に薄く積もる雪を飛ばす。

その中に私は何故かライスといた。

 

どこに向かうとも知れず、刺すような北風のなか、ただひたすらに。

彼女の手を引いて歩き続ける。

「お姉さま……」

彼女が心配そうな瞳で訴えかけてくる。

 

「もういいよ……!」

“でも……!”

 

「そんなにボロボロになってまで……!」

 

“……ボロボロ?”

 

 

もしかして、

歩み続けたいのは私だけだったのか

 

 

そう考えて、それでもまだと、進まなければと足を踏み出した瞬間、足元が割れた。

冷水だと思ったら何もない。

文字通りの無。

 

「お姉さま!?手を!」

 

ライスが手を伸ばす。

普段なら絶対に手を伸ばす。

でも、不思議とそれをする気にはなれなかった。

 

「お姉さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

奈落の底まで落ち続ける。いや、底など無いのかもしれない。

氷上とはまた違う、一段と強い凍るような寒さ

私の脚はとっくに凍り付き、頭も回らなくなってきた

 

そして、ただの虚無は冷たいだけではなかった。

暗い。

文字通りの暗闇に、自分の身体すら見えなくなる。

 

あの子は無事だろうか。

崩落に巻き込まれていないだろうか。

あの子はまだ走れる。いや、走らなければならない。

 

あの子は……あの子は…………

 

 

 

………あの子って……誰?

 

何も映さなかった視界にいきなり、眩い一本の閃光が走る。

 

その閃光は短く、またただ一本であった。

 

その光に不思議と惹かれ、手を伸ばす。

 

 

 

“そうだ……私は……私は………!”

 

“私はあの子の……ライスのトレーナーなんだ!!”

 

 

 

“ん………うぅ………”

 

暖かい日差し、宙を舞う花びら。いつもの河川敷の公園。

先ほどまでの(極寒の奈落)とは打って変わって、本当に穏やかな春の陽気。

ライスは隣で穏やかに寝息を立てている。二人していつの間にか眠っていた。

 

“夢……か……”

 

ライスの頬を、優しく指で押してみる。

 

「……………んにゅう………」

 

私の指が吸い込まれるかと思ったくらいには、お餅のごとくモチモチな頬。

またさらに彼女の隣には猫が1匹。丸くなって寝ていた。首輪があるから、きっとどこかの飼い猫だろう。

 

“よかった……”

 

本当に夢でよかったと安堵した。

 

と同時に、ある種の不安も抱いた。

 

この子の未来は大丈夫なんだろうか……。

この子が意図せず墜ちるなら、私は喜んで手を差し伸べる。

この子が意図して墜ちるなら、私は喜んでその地獄を共に往く。

 

けれど、私から墜ちるような事態はいけない。

それだけは、絶対に。


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