大昔に描いてみたもの。
思い出してしんみりしたから供養。

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天体戦士サンレッド~知られざる過去!悪の将軍ヴァンプ・その青春

 

「おい、ヴァンプ。何してんだよ」

悪の組織フロシャイム・川崎支部。

そのアジトへメシをたかりにやって来た正義のヒーロー・天体戦士サンレッドは、 居間で佇むヴァンプ将軍を訝しげに問いただす。

「あ、レッドさんじゃないですか。いやね、押入れを掃除してたら、こんなのが出てきたもので」

ヴァンプ様は、一冊のアルバムを手にしていた。

「私の高校時代のなんですけど、懐かしくてついつい見入っちゃいました」

「ほー、お前の高校時代ね…なんか、想像できねーなー。ちょっと貸してみろよ」

「はい、どうぞ」

パラパラとページを捲り、レッドはブハっと吹き出す。

「おいおい、お前ってば本当に学生服着ちゃってるじゃねーか!ブレザーだし、ネクタイだし!」

「そりゃー私だって高校生だったんです。学生服くらい着ますよ」

「けど、今のお前を知ってる俺からすれば違和感がすげーよ…」

「ははは。おっ、この二人は私の親友だった匠と純です。懐かしいなー、今頃何してるんだろ…」

「ふーん。しかしお前、男友達はこいつらしかいなかったのかよ。他の男の写真が全然ねーぞ…いや、一枚はあるけど誰だよ、この江○島平八のパチモンみてーなジジイは」

「あ、校長です。ちなみに男友達はこの二人だけでした」

「どんな高校だよ!つーか結局友達ほとんどいなかったのな!」

「いやー、あの頃の私は友達は少ないくらいの方がカッコイイなんて思ってまして…若気の至りですよ」

ヴァンプ様は遠い目で、己の過去を見つめていた。

「ほんと、あの頃の私はガムシャラでしたね…修学旅行の沖縄で巨大ハブと死闘を演じたり、街を支配する番長達と拳で語り合ったり…」

「嘘くせーな、おい」

「ほんとですって」

「ま、どーでもいいよ、そんなん…おっ。何だよ、この女の子は。やたらお前と一緒に写ってるけど、まさか彼女か?すっげー可愛いじゃねーか。お前もスミに置けねーなー、このこの」

「あ…」

ヴァンプ様は一瞬、言葉に詰まる。

「おいおい、急に暗い顔すんなよ…もしかして悪い事訊いちまったか?」

「いえ…そんな事ないですよ」

コホン、と咳払いするヴァンプ様。その目は、写真の中の少女に釘付けになっていた。

赤い髪のショートカットがよく似合う、太陽のように眩しい笑顔を浮かべた少女。

「この子は、私の幼馴染だったんです…小さい頃から、ずっと一緒でした。けど…」

「けど、何だよ。フラれたのか?」

「いえ…そうじゃありません」

ヴァンプ様は、どこか後ろめたそうに顔を伏せた。

「私は彼女の想いに、応えてあげられなかったんです…私は恋より、夢を追いかける道を選んだから…」

「…そうか。よく分かんねーけど、蒸し返さない方がよかったな」

「いえ、いいんです…むしろ私は、誰かに話したかったのかもしれません」

「じゃあ話せよ。俺でよけりゃ、聞いてやるからよ。どうせヒマだしな」

いつになく優しいレッドさんである。明日は隕石が降って来るのかもしれない。それはともかく。

「それでは、お話ししましょう…私と、彼女の物語を…」

 

 

―――悪の将軍・ヴァンプ。彼の過去の一ページが、今紐解かれる…。

 

 

 

 

 

 

 

生まれた時から、その二人はずっと一緒だった。共に笑い、泣き、時にはケンカもして、共に育った。

 

 

「だけど、それは小学三年生に上がる前の春休み…私は親の仕事の都合で、引っ越す事になったんです」

 

 

泣きじゃくりながら、引越しのトラックを追いかける女の子。

遠ざかっていくトラックの中で、男の子もただ、泣いていた。

 

 

「そして高校生になると同時に、私はまた故郷に戻ってきたんです」

 

 

入学式の日。クラス分けの中に、お互いの名前を見つけた。偶然のような、運命のような、そんな再会。

それからまた、二人は一緒になった。

空白の時を埋めるかのように、少年と少女は惹かれあった。

幼い頃そうしたように、いつも一緒だった。

 

 

「へー。そりゃまた、お前にもドラマみてーな青春があったもんだな」

「ええ。楽しかったですよ。彼女といると、嫌な事なんて何もかも吹っ飛びました」

 

 

少年の高校時代は、彼女と共にあった。

ずっとこのままでいられたらいいと、二人とも、そう思っていた。

 

 

「だけど…私には、夢がありました。そして私は、夢と恋と、二つとも抱えられるほど強くなかったんです」

 

 

時はあっという間に過ぎ去り、卒業の日。

 

 

「私は…夢を選んだんです」

 

 

―――卒業式が終わり。

少年と少女は、中庭で向かい合う。

頭上には、この学校のシンボルである時計台。

 

その鐘が鳴り響く中で結ばれた二人は、永遠に幸せになれる…。

 

そんな言い伝えから、その鐘は<伝説の鐘>と呼ばれていた。

けれど二人は、悲しげな顔でお互いを見つめていた。

「聞いたよ、ヴァンプ君…東京に行くんだって」

「…うん」

「ダメ…行っちゃ、やだよ」

少女の声は、震えていた。

「また…私の前からいなくなるの…?」

「…………」

少年は、答えることができない。

「どうして…ずっと、この街にいればいいじゃない!そんなに、夢が大事なの!?私よりも…」

「…捨てられないんだ。小さい頃からの、夢だったから…」

やっとの事で、少年はそう言った。少女を傷つけると知りながら。

「分かってくれとか許してくれなんてムシのいい事は言わない。でも俺は…どうしても、この夢を追いかけたい」

「じゃあ…じゃあ、私も一緒に連れていってよ。私が、君に付いていくから」

「それは出来ないよ…俺は、ダメな奴だから。そんな事をしても、きっとどちらも中途半端になって、余計にお前を傷つけるだけだよ」

「…そっか」

少女は、泣いていた。

「私ね…ヴァンプ君のこと、ずっと見てた。ずっと、好きだったよ。子供の頃から」

「俺も、好きだよ。でも…ごめん。俺は…俺は…」

 

 

「俺は、絶対に世界を征服してみせる。世界征服に俺の全てを捧げる。もう、決めたんだ」

 

 

「そっか…今までありがとう、ヴァンプ君。私、君に会えて、本当に幸せだった」

 

 

泣きながら走り去る少女を、少年もまた涙しながら見送っていた。そして、気付いた。

自分は夢と同じくらいに大切な存在を、失ってしまったということに。

「俺は…酷い男だよな」

少年はそう呟く。

「でも、俺はもう決めたんだ…世界征服に命を懸けるって…」

懐から、一枚のチラシを取り出す。

<来たれ怪人!目指せ世界征服!フロシャイムはキミを待っている!詳しくは面接にて!>

「これを見た時、ビビッと来てしまったんだ…フロシャイムこそ、俺の骨を埋めるべき場所だと!」

少年はチラシを仕舞い、ゆっくりと歩き出す。

彼は今、大きな犠牲を払いながら、夢への階段を一歩踏み出したのだった―――

 

 

 

「…後悔してるか?夢を選んじまった事…」

話を聞き終えたレッドは、ぽつりと呟く。

「未練はないと言ったら嘘になるけど、後悔はしてませんよ。私は自分の意志で、夢を選んだんです」

対してヴァンプ様は少し寂しげな、けれど迷いのない笑顔で答えた。

「それに私はまだまだ、夢の途中です。後悔なんてしてられませんよ。そんな事じゃ、それこそ彼女に申し訳ないじゃないですか」

きっぱりと語るヴァンプ様の顔には、もう翳りはない。

「だから私は世界征服を諦めたりしません!勿論レッドさんの抹殺もね。これからもバンバン命を狙っていきますから、覚悟しといてくださいよー、ははは…いたっ!もー、そんなに頭を叩かないでくださいよ」

「うるせー!珍しくいい話だと思ったら最後はそれかよ!台無しにしやがって!」

 

 

いつものように馴れ合う正義と悪を尻目に、秋の風が吹き抜けていく。

やがて季節は巡り、冬が過ぎれば春が来る。

その度にきっと、我らがヴァンプ様は思い出すのだろう。

少年時代の、煌くような思い出を―――

 

 

―――フロシャイム川崎支部所属・ヴァンプ将軍。

彼にも彼だけの青春があり、そして彼だけの恋があった…。




ヴァンプ様、未だに好き。こんな上司がいてほしかった。

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