終わり良ければ総て良しなんて間違っているだろうか 作:できてな
「・・・?」
職務である夜間の治療院の見回りを行っていた時であった。2階の窓から正門の方を見下ろしたところ、暗くはあったが人影を見えた。
現在の時刻でも治療に対応は出来るのだが、その人は正門付近から動かずにいた。此処を訪れている事から、目的としては治療関連であろうと思うのだが・・・
不自然に思ってその人の元へ行く・・・
辺りの街灯は少なく、注意して歩いていく。
正門に近づくにつれて暗くて良く見えていなかった姿が、明らかになってくる・・・
脱力する様に壁に寄りかかりながら立ち、顔を俯かせて長い髪を垂らしている。少し気味悪さを醸し出す彼女?に少し抵抗を覚えてしまう。
服装としては、極東の衣装を着ていた。黒い生地で衣装の下半身部分には白い花が咲いている。周りの暗さと同化してまるで、闇に咲いている様であった。
声を掛けようと彼女に近づく・・・
彼女の姿を、いま一度よく見てみると・・・服の有りとあらゆる所が切られている。そこから覗くのは肌の色ではなく赤黒い血であった。しかも、その殆どの傷が酷く深いものであると見られる。
ダランと下げた腕の先からは・・・ポタポタと血を垂らし続けている。
服の色と周りの暗さから目視するのに時間が掛かってしまった。傷の多さから判断するに相当量の出血量だ・・・明らかに致命傷であるだろう。
焦りを覚えるが冷静さを保ちながら彼女に声を掛ける・・・
「大丈夫ですか? 治療致しますので・・・っ!?・・・すぐに治療院へ」
「・・・・・・ぁ、あの・・・良いんですか? わたし・・・・」
彼女が渋っていたのは彼女の種族が原因である事はすぐに理解できた。
声を掛けた時に彼女の額から伸びている『角』が視認出来たからである。そして彼女の反応からも『鬼人』である事は間違い無いのだろう。
彼女は私が自身の種族に気づいても治療を行うという事に疑問に思ったのか、視線を外しながら絞り出す様に細い声で私に問うた。
その時の彼女の声色は・・・今からでも自殺するのかと感じてしまう程の絶望の色と何かを酷く憎む様な憎悪の色が含まれた・・・・負の感情が込められている気がした・・・が、
「関係ありません!」
「!?っぅ・・・・・・・」
彼女の負の感情を吹き飛ばす勢いでそう伝えた・・・
私自身も彼女の種族については当然知っている・・・が、目の前に生死に関わる怪我人がいるのだ。ならば私が行うべき事は決まっている・・・『癒す』ただ、その一つだけである。
その後急ぎつつ、身体を揺らさないようにと慎重にしながらも院内へ移動する。
「!? アミッドさん、そいつは!」
「治療を行います」
「っ! しかし!!」
「怪我人を殺すのですか!?」
「っ!!」
正面玄関から入った為、受付にいた団員に止められそうになる。
彼女の姿を見れば種族はすぐに判断が付く・・・焦る心情も理解出来ない訳ではない。しかし、躊躇う団員を押しのけて治療室へ入る。
「・・・・・・ょ、・・・よかったんですか?・・・・」
彼女はベッドに横にさせると、消えてしまいそうな声で話しかけてきたが、「余り喋らないように・・・」と返して私はすぐに
詠唱と共に光が生まれ彼女を優しく包む・・・
すると、感情を感じさせない彼女の表情が少し動いた・・・
「・・・・ぁ・・・ぅ」
・・・治療が行われたことにより安心したのか、意識を手放すように眠りに落ちた・・・
彼女の寝顔は血で汚れてしまっているがそれでも、整った顔立ちが目立って美しく見えた・・・
彼女が眠った間にも暫く治療は続いた・・・
「・・・失礼します」
傷は塞がっていても清潔に保つ必要があるので身体を綺麗にするのと、彼女の服を着替えさせる。本来ならば本人に確認を取ったほうがいいのだろうが、幸い私は彼女と同性であるのでさして問題はないであろう・・・・・・
「・・・? ・・・・・・・・・ぇ!?」
ー翌日ー
衝撃的であった・・・
彼女は・・・彼であったのだ。
結局、私が着替えさせたのだが・・・昨夜は驚きの余り睡眠が取れなかった。そんな訳で頭の回転が十分に出来ていない気もするが気力で堪えて職務に当たる。
彼は暫くの間、入院するという意向となった。当然、入院患者には担当として団員が付くのだが・・・案の定、彼に快く付きたいと受けてくれる者などいるはずもなく、引き入れた本人である私が彼の担当になった。
私自身は彼に対して特段大きな抵抗を持ち合わせていないので問題はない。元々、私が彼の担当になるのだろうと予想も出来ていた。
そして、担当の職務として朝食を持っていくのと診察を行う為に彼の病室へと向かった・・・が、
「・・・居ません・・・・・」
人がいた痕跡が感じられない・・・昨夜、彼を寝かしていたベッドはシワのひとつもない綺麗な状態であった。治療院である事もあり、その部屋はより無機質さが際立っていた。
そして、部屋の備え付けのテーブルには治療費だろうか、それも必要以上の大金が置かれていた・・・
ーーー
彼を治療してから約半年が経過した頃ー
その日は急ぎの患者などは今現在は居らず、治療院の受付で職務を行なっていた・・・
「・・・くっ」
少し高い位置にあるポーションに手を伸ばす・・・踏み台に乗って入るが、高さが十分に足りておらず背伸びをしてプルプルと震えながらそれを取る。
「・・・アミッドさん、【ロキ・ファミリア】の【
「!?・・・すぐに行きます」
【ロキ・ファミリア】・・・第一級冒険者と第二級冒険者が多数所属しており、現在のオラリオで最強ファミリアの一角である団体である。
しかも私を呼んだのは、Lv.6であり【ロキ・ファミリア】の副団長である『リヴェリア・リヨス・アールヴ』らしい・・・治療院に来たという事はそれ程の負傷を負ってしまったのだろうか?しかし、団員の私への伝え方から感じるにその様な雰囲気では無い気もする・・・
もしもそんな状況であれば焦りが伝わってくると思う。
少し不穏に感じる所もあるが取り敢えず急ぎ彼女のいる応接室に向かう・・・
周りの部屋に比べて凝った造りになっている応接室の扉を叩くと「あぁ、入ってくれ」と返事が聞こえ、入室する。
部屋の中にはリヴェリアさんが座しており、彼女は私の入室と同時に立ち上がった。同時に彼女の美貌を引き立てるかのように長い髪が揺れる・・・ここまでも美しいものを見ると誰もが目を奪われてしまうのでは無いだろうか。
少しの間が生まれてしまったが私は彼女を再び座るようにと促す・・・
「急な訪問、申し訳なかった」
「いえ、全く問題はありません・・・ですが、貴女本人が来たという事はご自身に何か?」
「・・・いきなり本題というわけか・・・・」
「・・・すみません、貴女に呼ばれてから気になっていたものでして・・・・」
殆どの冒険者達は市販されているポーションで傷を回復させる。値段によってポーションの質は変化するのだが、【ロキ・ファミリア】であればその中で最高峰の『
それでも、直接此処に来ているともなればそれ程の重症なのかも知れないと予想していた。
しかし、部屋に入ってから見た彼女の姿は目視で負傷している箇所はなく、雰囲気からもその様なことは全く感じられていない。
もしも、私の予想が合っていたのであれば、これからの対応に目処が付くのだが・・・
「いや、大丈夫だ。それなら本題に移ろう・・・」
「はい」
「・・・【ディアンケヒト・ファミリア】に、ある団員の治療をお願いしたい・・・のだが、負傷している訳では無いのだ」
「・・・というと」
「あぁ、順を追って説明しよう、〜〜〜」
それから固い表情をするリヴェリアさんからの説明を聞いた・・・
内容の第一印象は、『良くある話』に思ったのが正直なところであった。
その団員は・・・自殺未遂であるらしい。
数日前から、その者が自傷行為を行なっているところが目撃されていたこともあり最悪の状況になる事を想定して注意していた事が大事に至る前に阻止出来たみたいだ。
自身の首を得物で貫こうとしたところをリヴェリアさん本人が抑えたのだそう・・・
私が『良くある話』と感想を抱いたのはソレに至るまでの経緯である。
経緯としては、その団員の親しい友人達がある事件が理由で亡くなってしまったらしい。
残念であるが、冒険者であったらしいので常に危険と隣り合わせである環境に身を置いていたのでそうなってしまっても特段違和感は覚えない。
私自身も職業柄、人の死に関しては多くの経験を得ている・・・それも、その団員と同じ症状に陥った冒険者も数多く見てきた。
それでも、私が見てきたのはその中でも一部に過ぎないだろう。そう思えてしまう程にはオラリオに浸透したものである。
しかし、話を聞く限りでは些か過剰に過ぎる行動に思えてしまうが・・・
冒険者の中でも特に優秀な者が集まっている印象を受ける【ロキ・ファミリア】の団員にもそれに陥ってしまう人がいる事に少し意外に感じてしまった。
「・・・私は時間の経過で落ち着いてくれると予想していたのだが、想定以上に傷は深かったらしくな」
「そのようですね・・・自殺未遂ともなると相応な対応が必要となる場合が多いですから、治療院へ来て頂いたのは最適な判断です」
「あぁ・・・それで、頼まれてくれるか?」
「はい、善処させて頂きます」
「よろしく頼む・・・・それと、その団員なのだが・・・治療以外に少し問題があってな」
「問題とは?」
治療を行うと了承してからリヴェリアさんの表情が緩くなったと思ってからすぐに難しいものと変わってしまった。
彼女から新たに問題がある事を伝えられて私自身も身構えてしまう。
「周知されてしまうと色々と面倒事が起きるかもしれなくてな、治療を行う上でその団員に関して他言無用にして貰いたい・・・勿論、その分の金は支払おう。そちらの主神にもそう伝えておいて欲しい」
「はい、患者の情報を故意に晒す事は致しませんので問題ないと思われますが・・・」
「あぁ、なら大丈夫だろうな・・・であれば、別室で待機させているのだが今から連れて来る」
そう言って彼女は席を立つ・・・確かに本人がいる場でこの様な話をする訳には行かないと思うが、連れて来ているとは思っていなかった。
彼女が部屋から出たところから何やら胸が騒つく感覚を覚え始めた。
先ほど伝えられた問題がある事に関して詳細を何も伝えてられていないので緊張が生まれてしまったのかもしれない。
僅かな時間が経過した時、重みを感じさせる扉がゆっくりと開いていく・・・
リヴェリアさんの後に入室して来た女性・・・
顔を覆う被り物をしていて詳しくは見れなかったが、流れる様な仕草でそれを取る・・・
現れたのは美しく妖艶な雰囲気を感じさせる整った顔・・・その中で一番に目を引いたのは特徴的な額の・・・『角』。そして、見覚えのある顔立ちが『彼』である事を瞬間的に私の脳が記憶と結びつける。
彼が抜け出した日に
しかし多忙な事もあって時間を作る事も出来なかった為、直接行動に移る事は出来無かったのだが、治療院を訪れた冒険者などに『鬼人』を見かけた事はあるかと聞いたりしていたのだが殆ど確かな情報は得られなかった。
・・・あったとすれば噂程度で、確か・・・『鬼の仮面』をつけた何者かがいる、といったものだ。
約半年間全く情報の得られなかった彼が目の前いる・・・そして【ロキ・ファミリア】所属であった事など、頭の中で爆発的に驚きが侵食し始める・・・が、
それを払拭するほどの何かが胸を叩いた・・・・・・
視線と意識を奪ったのは、
「こんにちは、アミッドさん♪」
何重にも重ねて貼り付けたかの様な生気を感じさせない・・・歪な『笑顔』
(・・・あぁ・・・
ーーー
扉が開く・・・
入って来たのは2人。一人はエルフの少女・・・もう一人は顔を隠してはいるが雰囲気から美しさを感じてしまう・・・・・・彼
「こんにちは、アミッドさん」
「はい、いらっしゃいませ」
いかがでしたでしょうか?
いきなりなんの話やねん!と混乱してしまったら申し訳ないっすw
まぁ、今回は「紫苑きゅん&アミッドちゃんの過去回」でした!!
今回の続きを書きたいと思っております。どこで入れるかはまだ決まってないんですけど・・・
いやぁ、結構〜紫苑きゅんについて書いて来ましたが・・・まだまだ一部でございます!!
う、うぉーーーー読者様を、飽きさせないぞーーー!!
いい意味で予想を裏切れれば良いなと考えております。
うっし!寝よ。