終わり良ければ総て良しなんて間違っているだろうか   作:できてな

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十三話 物語が進まん

 

 

「あれ・・・?」

 

 

 

 目の前の光景に処理が追いつかないでいる・・・

 

 

 

 私は現在、【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院にいた。

 

 紫苑さんの予定に同行させてもらって、先程は【ヘファイストス・ファミリア】で彼女の専用武器(オーダーメイド)の制作を依頼してきたところだ。元々、今日の目的は二つある様で一つ目がそれである。

 そして、二つ目はアミッドさんにアイテムの採取を依頼されていたものを昨日のダンジョン探索で入手出来たため、届けるといったものらしい。

 

 

 ・・・目的としては、既に完了している。

 

 誰とまでは言わないが、何処ぞのアマゾネスの様にギリギリまで値上げさせて売りつける事を紫苑さんはするはずも無いので、取り引きはすぐに済んだ。

 

 紫苑さんは取引を終えた後、「では、失礼しますね」と短く言葉を発し、治療院を出ようとした・・・が、

 

 

 

「・・・あ、あの。 もし、良かったら少しだけお話に付き合って頂けませんか?」

 

 

 

 との、アミッドさんの発言に出口へ向く足を止めた・・・

 

 

 

 そして三人でこれといった題もなく、暇つぶしほど程度ではあったのだが会話を楽しんでいた。

 

 

 

 

 

・・・のだが、

 

 

 現在、受付のカウンター机を間に、アミッドさんの頭を撫でる紫苑さんの姿・・・

 普段のアミッドさんは撫でられることを良しとしないイメージなのだが、今の彼女は顔を俯かせながらも満更ではない少し緩んだ表情が見て取れた。

 ・・・彼女よりも背の高い紫苑さんからはその表情は見られないだろう。

 

 

 完全に二人の世界に入り込んでいる・・・撫で始めてから暫く時間が経過したのだが、辞める気配もなく。最初は少し下がった位置に立っていたアミッドさんはカウンター机を乗り越えようとしそうなほど近づき、頭を撫でる手に引きつけられていた。

 

 

 

(・・・・・・いつまでそうしてるんですか・・・)

 

 

 

 永遠と続いてしまいそうな二人を見て、私の感情に靄がかかり始める。

 

 最近から稀にこの様な気分になる事がある。彼女が気を失って、声を漏らしながら悶える姿を見た時に、良く分からない思い(・・)が浮かんでしまった。それからであろうか・・・

 今までならば彼女と他の人が会話しているのを見ても特に思う事は無かったのだが、今は少しでもそんな光景を見てしまえば途端に胸が苦しくなってしまう・・・

 

 そんな今の私に見せつけられている光景をいつまでも黙って見ていられる訳もなく、未だ撫で続けている彼女に声をかける・・・

 

 

 

「あの、紫苑さん・・・・・・」

 

 

 

 声をかけると同時にアミッドさん向ける彼女の表情を捉える・・・

 

 優しさを含む微笑み。しかし、何かを思い出しているかの様な寂しさを感じさせる・・・そんな表情。

 彼女が笑みを向けるのはいつもの事・・・少し思うところはあるが抑えは効く。

 

 

 

 しかし、気づいてしまう・・・・・・

 

 

 

 

(ドクンッ)

 

 

 

 

 胸にずしりと重みを感じた・・・

 

 

 アミッドさんを撫でる彼女の笑み・・・『本物』かどうかは分からない・・・だが、『歪』さが感じられなかった。

 

 その事実に、より胸の締め付けが強くなる。私自身に向けられた事のない彼女のソレ・・・

 

 

 

 

(・・・・・・なんで・・・)

 

 

 

 

「あっ、ごめんなさい・・・つい」

 

「い・・・いえ、問題ありません・・・・」

 

 

 

 私の言葉で我に帰ったようで、アミッドさんの頭に置かれていた彼女は自身の手を引いた。

 撫でられていたアミッドさんは、少し崩れた髪を手櫛で整えている・・・普段と変化ない紫苑さんの表情に対して、彼女は照れているのか目線を揺らしながら顔を赤くしていた。

 

 そんな二人の様子にかけられる言葉もなく無言でそこに立ちつくす。

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

 ・・・すると、

 

 

 

「どうしたんです?・・・あ! レフィーヤちゃんも撫でほしいんですか?」

 

「・・・・・・え? えっ!!」

 

「いいですよ〜 はい、よしよし」

 

「あぅ・・・」

 

 

 

 まるで、拗ねる子供をあやす親の様に彼女は私の頭を優しく撫でる・・・

 いきなりの事で、驚きながらも彼女の手の感覚にフワフワした心地良さを感じている・・・

 

 

 少しの期待を抱きながら。

 

 

 ・・・せっかくのこの気持ち良さを崩してしまうかもしれない。しかし、確かめたかった。

 

 

 

 

(・・・怖い、けど)

 

 

 

 

 わざと彼女の顔から視線を外している。目を合わせるのが恥ずかしいと言ったこともあるが、また別の理由で・・・

 

 

 

 下方向からゆっくりと上に視線を移動させる・・・

 

 

 

 

(あぁ・・・やっぱり)

 

 

 

 

 なんとなく予想は出来ていた。

 

 それでも、「もしかしたら・・・」と思ってしまったのだ。

 

 

 

 

 

(『歪』んでる・・・)

 

 

 

 

 

(・・・ちょっとキツイな・・・・・・)

 

 

 

 

 

「・・・つっ・・・・・・。ぁ、あの・・・ごめんなさい・・・」

 

「えっ? あっ!レフィーヤちゃん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 現実に耐え切れず、紫苑さんから逃げる様に外へと走り出してしまった・・・

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

「は、はっはぁ、はっ・・・」

 

 

 

 行き先もなくただひたすらに走り続けていたところ、いつの間にか通りから外れていた。

 

 ふと視界に入ったベンチに腰を下ろす・・・

 

 荒れる息を鎮めながら徐々に冷静さを取り戻していく・・・。耐え切れずに勢いで逃げ出してしまったため、いきなりの事で紫苑さんとアミッドさんの二人には心配をかけてしまったかもしれない。

 自分の感情に任せての行動への後悔が、冷静さと共に湧いてくる・・・

 

 

 

「・・・はぁ・・・・・・」

 

 

 

 紫苑さんの性格を考えると、今頃は私を探して街を走っていると思う。

 私を撫でていた時に逃げ出してしまった状況からも、もしかしたら非を感じているかも知れない・・・そうでは無いのだが・・・・

 

 戻った方が良い・・・そう思って腰を上げようとするが、先程の彼女の私に向けての「笑顔」が脳裏に浮かんでくる・・・

 

 

 

 

 

(・・・会いたくない)

 

 

 

 

 まるで嫌なことから逃げる幼い子供の様だと自分自身に嫌気がしてしまう。

 それでも、どうしても体が動いてくれない。

 

 もし今の状況の私が彼女と会ってしまったら・・・胸の痛みに耐え切れずに崩れてしまうかも知れない。

 

 

 

 少し俯きながらこれからどうしようかと考えていたところ・・・

 

 

 

 

 

「やあ、エルフちゃん。どうしたんだい?そんなに(◾️)い顔して♪」

 

 

 

 

 

「ぇ?」

 

 

 

 花弁が舞った・・・耳を撫でた声色にはそう感じられた。

 

 意識を刈り取る様な魅惑な音に引きつけられて俯く顔を上げる・・・

 

 

 

「・・・・・・!!」

 

 

 

 互いに鼻が付いてしまいそうな程に声の主であろう女性の顔があった。

 

 視線が交差する・・・

 

 整った顔立ちで、透き通り不純のない黄色の瞳、少し青みがかった艶やかな白い髪・・・

 一目見ただけで魅了されてしまう程に美しいいものであった。

 

 私は至近距離で目の前に現れた彼女に驚きの、身を引いた。すると、彼女は人を溶かすような魅惑さを孕んだ微笑みを私に向け・・・また、あの花の様な声音を紡ぐ。

 

 

 

「やっぱり・・・可愛いエルフっ子♪」

 

「・・・あ、貴女は?」

 

「ん?・・・あぁ、すまないね。初めまして、私は・・・・【ピロテース】。まぁ、女神様さ♪」 

 

「・・・っ!!・・・ピロテース様・・・・・・?」

 

 

 

 彼女は私の問いに豊富な胸を突き出してそれに手を当てて上機嫌に自身の名前を答えた。

 女神、即ち・・・超越存在《デウスデア》。見た目はヒューマンと全く大差は無いのだが、明らかに人とは異なったプレッシャーを感じる。

 気分を落としていた事で頭が回っていなかった私へ急に当てられた神威は、私の心臓を少し締め上げた。

 

 予期せぬ事で驚き硬直してしまったが、脈を落ち着かせながら、自身の名を彼女に伝える。

 

 

 

「・・・私は、【レフィーヤ・ウィリディス】です」

 

「レフィーヤちゃん・・・うん、君とはとても()い関係になれそうだよ。どうぞ宜しく」

 

「は、はい。よろしくお願いします」

 

 

 

 先程までの彼女の少し抜けた様な明るい声色ではなく、冷静さを思わせるものに聞こえた・・・

 

 

 

「それで、それで?どうしてレフィーヤちゃんはそんなに辛そうにしているのかな?」

 

「・・・・・えっ?・・・」

 

「うん、出会ったばかりだけど困っている子供を見過ごす訳にはいかない!話してくれたら力になるさ」

 

「そ、そうですね・・・」

 

 

 

 私は初対面の(ひと)に心配される程に酷い顔をしていた様だ。確かに、今の自分では紫苑さんの顔を見れる気は全く湧かない。

 しかし、そうだからと言ってその事を知り合いの誰かに相談するにも気が引けてしまう。そういった状況で初対面の彼女を相談相手とするのであれば気楽に行えるかも知れない。

 しかし、少し妙なのだが彼女に対して自身の警戒心が薄い様に感じている・・・。彼女の超越存在としてのものなのだろうか?

 違和感は感じるが、彼女が私に対して善意での聞いてくれたことは間違いないと思う。

 

 

 

「・・・ちょっと、人間関係といいますか・・・・」

 

「・・・うん」

 

「憧れの人がいるんです。同じファミリアで、綺麗で優しくて・・・とても強いんです」

 

「へぇ〜好きなんだ?」

 

「え!?・・・ぁ・・・す、好きですが、そういう意味のでは無い・・・です・・・・・たぶん」

 

「んふふ、ごめんね。続けて続けて?」

 

「は、はい・・・。そのですねーーーーー」

 

 

 

 自分自身、何故これほどまでに胸が痛み苦しくなるのかが理解出来ていなかった。

 

 我慢できなかった原因(きっかけ)は紫苑さんが私に向けた『歪んだ笑顔』であろう。

 私はどうしてか、彼女の歪さに特に敏感になってしまう。私以外の人の目にどの様に映っているのか分からないが、綺麗な彼女の顔を無理やりに、無遠慮に笑顔へ『変形』させた様に私には映っていた。

 何故そんな表情を作るのか理解しがたかった・・・

 

 

 

「ふ〜ん。そうだな〜、嫉妬?」

 

「し、嫉妬ですか!?」

 

「・・・それよりもすこーし深いものかもしれないけどね。まぁ、レフィーヤちゃんは多分自分以外の子に『歪み』?の無い笑顔を向けられたのが我慢出来なかったのかもね?」

 

「・・・そ、そうかもですね」

 

「うん、嫉妬と言っても色々あるんだけど・・・レフィーヤちゃんは、その人に笑顔を向けられてどう思ったのかい?」

 

「・・・えっと・・・・・・」

 

「あぁ、ごめんね。聞き方を変えようか? じゃあ、君は何に劣等感を覚えたのかな?」

 

 

 

 『劣等感』・・・とても嫌な響きだ。初対面なのにも関わらず棘のある言葉を彼女は理解した上で選んだのだろう。

 実際、その言葉はきっと当てはまっている・・・私が今まで何度も感じていたものであるのだから。

 

 

 

「・・・彼女が・・・・・・私よりも、あの人に必要とされている気がしたんです」

 

「必要?」

 

「・・・はい。とても、安心して笑っていた気がするんです。まるで彼女があの人の居場所である様に・・・」

 

「・・・君ではなれないのかい?」

 

「っ・・・・分からないです。私は・・・いつも『あの人の為に』って考えてるんです・・・・・・でも・・・」

 

「でも?」

 

「分からないんです・・・」

 

「そっか・・・それなら、まずは『あの人』の事をもっと知ることから始めてみるのはどうかな?」

 

「もっと知る?」

 

「そうさ、君は『あの人』についてどれくらい知っているのかな?」

 

「!?」

 

 

 

 核心を突かれた・・・。

 気づいていなかったのでは無い。自分を誤魔化し続けて、考えない様にしていたんだ。

 確かに私は紫苑さんの事を詳しく知らない。力になりたいと思っているのに本人の事を余り知らないなど矛盾が過ぎるのかもしれない。

 だからと言って、知りたく無い訳では無い。

 

 ただ、少しだけ

 

 

『怖かった』

 

 

 紫苑さんは余り自身の事を話さない・・・頑なに避けていた。そんな彼女に無理に聞いたりしたら嫌な気分にさせてしまいそうで。

 

 ・・・それに、きっと彼女は何かを

 

 

『抱えている』

 

 

 何をかは分からない・・・だけどソレはとても重い(・・)ものな気がした。

 私がソレを知ればきっと、彼女に少しでも近づくことはできるのであろう。でも、知ることで私の彼女に対する気持ちが変わってしまうかも知れない・・・そんな不確定な不安が、

 

 

『怖かった』

 

 

 

「ふーん、どうやら自分でも気づいているんだね?」

 

「・・・はい」

 

「ふむふむ、どうやら君は何かを恐れているのかな?」

 

「は、はい」

 

「まぁ、私にはその『何か』は分からないが・・・・・・うん、なんか難しい話になってしまったな・・・」

 

「え?」

 

「よし、簡潔に行こう♪ じゃあ、君は『あの人』に必要とされたい?」

 

 

 

 当たり前だ、いつもそう思っている・・・そうありたいと思っている。

 

 

 

「・・・はい」

 

「でも君は『あの人』について知るのが怖い?」

 

 

 

 あの日だって・・・角を隠さずに街に出て、蔑む様な視線を・・・聞くに耐えない悪口雑言を受けても笑顔を崩さなかった。

 ・・・・・・どうしてなのか?

 

 

 

「・・・・はい」

 

「最後に、それを知れば君は彼女(・・)を救えるのかな?」

 

 

 

 また・・・分からない・・・・・でも紫苑さんのことを知ることで、少しでも彼女に近づけると思う。

 ・・・なによりーーー

 

 

 

「・・・救いたい・・・です」

 

 

 

 いつかの決意をまた、噛み締める様に口にする。

 

 

 

「!!・・・そっか、そうなんだね♪ ・・・・なら進まないとね?」

 

「はい!」

 

 

 

 

 私は彼女を救いたいと決めておいて、それから『何も』していなかった。何をすれば良いのか分からずに唯々行動を先延ばしにしていた。

 耐えられず逃げた原因のもう一つとして、そんな自分に対して嫌気が刺していたのかも知れない。

 本当に自分が彼女を救えることができるのか?そもそも、彼女は救いを求めているのか?

 

 それも・・・分からない

 

 ーーーでも、

 

 

 苦しそうだった。

 

 辛そうだった。

 

 

 なによりも、私が彼女のそんな顔を見て・・・

 

 

 

 

 

 

『気持ち悪かった』

 

 

 

 

 

 

「・・・ぁ」

 

「どうかしたかい?」

 

「ぇ、いや・・・」

 

「・・・?」

 

 

 

 ハッとした。

 

 いつもいつも、『彼女の為に』って考えて何かしようとしていた。それで、彼女が笑ってくれれば私も嬉しかった。

 

 でも、それは・・・・・

 

 

 

「ピロテース様・・・でも、それって私の自己満足?なのでしょうか?」

 

「え?・・・あぁ、それはそう。でも、そんなものだよ?人間はそれで十分さ♪」

 

「十分?」

 

「うん、何かを与える役割なんて神がすれば良いんだからね。君たちは自分自身を満足させれば良いのさ♪」

 

「そうなんですか?」

 

「そうなの〜。・・・あ! 神以外にもいるとすればーーー」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『英雄かな?』




まじで申し訳ないです。
色々あって書けずにこれ程期間が空いてしまいました・・・
さぁーせん(スミマセん)
完結するまでは書くつもりでいますのでよろしくお願いします


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