FGO二次 衛宮士郎みたいな藤丸立香   作:龍川芥/タツガワアクタ

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5.正しき心を胸に抱き

 

 

 マリー・アントワネットの犠牲により、カルデア陣営はゲオルギウスの助勢を得てジークフリートの呪いを解くことに成功した。

 そのうえ、新たに仲間となったサーヴァントが更に2騎。

 ランサー:エリザベート・バートリー。

 バーサーカー:清姫。

 ライダーであるゲオルギウスと合わせて、かなりの戦力増強となった。

 

「──ねえちょっと、なんか(アタシ)の扱い雑じゃない!? 紆余曲折あって子ジカに加勢してアゲルことになったのに! 抗議よ抗議、(アタシ)との超感動的な出会いの回想シーンとか出しなさいよ!」

「はぁ、やかましいですねこのドラゴンもどきは。感動的なシーン? 竜化サーヴァントと間違えられてドラゴンステーキにされかけたトラウマの間違いでしょう?」

「うぐ、アレはアンタが竜っぽいのも原因でしょ蛇女!」

「な、負けかけるまでノリノリで応戦してた癖にわたくしのせいにしないでください!」

「……ごほん。どうしましょうかマスター。あなたがこのやかましい小竜たちを悪竜と認定するなら斬りますが」

「そ、それは大丈夫ですゲオルギウスさん! ほら大人しくしてエリザベート、清姫!」

「「……」」

「……よろしい。ではあらためて、ライダー・ゲオルギウスです。聖人として竜の魔女を止めようとするあなた方に助勢します。……そこのお二方、名乗られますか?(ちゃき、と意味深に剣を鳴らす)」

「ピィ!? ……え、エリザベート・バートリーよ……です。クラスはランサー……もきゅ、目的はとあるサーヴァントを……ああもう、とにかくこの(アタシ)がアンタのこと手伝ってあげるんだから、感謝しなさいよね子ジカっ!」

「バーサーカー、清姫と申します。特に目的とかはないですけれど……そうですね。あなたが嘘をつかない限り、わたくしはあなたの味方です。よろしくお願いしますね、わたくしの旦那様(マスター)?」

「えーと、よろしくね3人とも」

 

 まあそんなこんなで戦力は揃った。

 

「よし。この戦力で竜の魔女に、彼女が根城にするオルレアンに攻め込もう。ここが勝負所、このメンバーで最終決戦だ」

 

 さて、ここで現在の状況を整理しよう。

 

 カルデア陣営は、

 [マスター]藤丸立香

 [シールダー]マシュ・キリエライト

 [ルーラー]ジャンヌ・ダルク(聖女)

 [キャスター]ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

 [セイバー]ジークフリート(解呪成功)

 [ライダー]ゲオルギウス

 [ランサー]エリザベート・バートリー

 [バーサーカー]清姫

 の1人と7騎。

 

 竜の魔女陣営は

 [マスター][ルーラー]ジャンヌ・ダルク(竜の魔女/ジャンヌ・オルタ)

 [キャスター]ジル・ド・レェ(反英雄)(カルデアに知られていない)

 [セイバー]竜騎兵デオン

 [ランサー]竜血公ヴラド3世

 [アサシン]竜化・チェイテの女城主(竜化失敗?)

 [アーチャー]竜化・ギリシャ神話の女狩人(カルデアに知られていない)

 そして真なる竜種ファヴニールと、ワイバーンなど大量のエネミー・モンスター

 の6騎プラスアルファである。

 ちなみにカルデア側はサンソンが消滅したことは知らない。

 

 それを踏まえて立香たちが立てた作戦、もとい「誰が誰と戦うか」というオーダーは以下の通り。

 

 

 立香&マシュは竜騎兵デオン。

 一度戦ったこともある彼(彼女)に連携で挑む。

 

 ジャンヌはジャンヌ・オルタ。

 魔女本人が参戦するかは分からないが、そうなったときはジャンヌが止めることに。

 

 アマデウスはサンソン。

 本人が希望。ただサンソンはこの世界線だと既に消滅しているので、彼は他の援護などに回ることになるだろうが。

 

 エリザベートは女のアサシン。

 なにやら因縁があるらしい。

 

 清姫は竜血公ヴラド三世。

 消去法だが、再生やすり抜けに炎が有効かもしれないという判断。

 

 ゲオルギウスは遊撃。

 ワイバーンの群れや想定外の敵が邪魔してきた場合、それを抑える重要な役目。

 

 そして、ジークフリートがファヴニールを相手取る。

 真の竜種たる怪物に勝機があるのは、この中ではジークフリートだけだ。

 

 

 そうして、様々な思いを胸に抱きながら、決戦前夜は過ぎていった──。

 

 

 

◆◇◇◆

 

 

 

 その静かな夜のこと。

 藤丸立香は目を覚ました。

 

 なんとなく、眠れない。

 明日は決戦だ。一つ目の特異点、その修正ができるかどうかが――世界を救うための一歩を踏み出せるかそれとも踏み外すかが、明日決まる。

 

「……」

 

 なんとなく、月に左手を翳して見た。親指を覆う肌の変色は、来たときよりも少し広がっただろうか。

 

「……大丈夫。きっとできる」

 

 明日の作戦において、立香は己のことを戦力として数えた。味方は増えたが敵は強大、出し惜しみなどしていられない。

 恐れはある。不安もある。それはこの先も消えないだろう。

 でも。戦うことを選んだのは、自分だ。

 

 ぎゅ、と手を握りしめ……なんとなく、上体を起こした。このままでは寝られないだろう。少し夜風にでもあたってみようと歩き出し──。

 

 金の光が、夜を舞っていた。

 

「──きれい」

 

 思わず声が出た。

 

 月が輝く空の下。闇の中、風に揺れる金の髪がきらきらと輝く。それはまるで、星の(またた)きのように。

 しばらく呆然とその後ろ姿を眺めていると──立香の存在に気付いたのか、彼女は髪を揺らしながらこちらを振り向いた。

 

「マスター? 何故ここに?」

「なんか眠れなくて。そっちは見張り? ありがとね、ジャンヌ」

「いえ、サーヴァントに睡眠は不要ですから」

 

 そう言って見張りに戻るジャンヌ。

 立香は、なんとなしに彼女の傍に腰を下ろした。

 

 しばらく無言が続き、何となくそれに耐えかねて立香が口を開く。

 

「いよいよ、明日だね」

「はい。マスターには感謝しています。あなたが居なければ、私はあの"竜の魔女"にとっくに破れていたでしょう。私たちのどうしようもない敗北の運命が動いたのは間違いなく、あなたの英霊を纏める力と、窮地に物怖じしない強い勇気のおかげです」

「……なんか夢みたい。()()ジャンヌ・ダルクにそう言われるなんて」

「え? な、なんですかそれ」

「いや、だってすっごい偉人じゃんジャンヌって。超有名だし、日本人の私でも知ってるし。そんな人に感謝されてるんだなあ、って思うとさ」

「う、その尊敬のまなざしはやめてくださいっ。なんだかとっても居心地が悪いですソレ!」

 

 分かりやすく狼狽えだした聖女さまが可愛くて、立香は思わず噴き出した。

 朗らかな笑い声が夜に溶けていく。

 気付けば、緊張も気まずさもどこかに消えて、立香はジャンヌの隣で黙って夜空を見ていた。白い輪に汚された、己が直すべき夜空を。

 

 ふと、今度はジャンヌが口を開いた。

 

「……私は、そんなに大した人間ではありません」

 

 それはまるで、"自分は尊敬されるような人間では無い"と言いたげな声で。

 でも、なんだか茶化すことは出来なくて。立香は続きを黙って待った。

 ジャンヌは続ける。

 

「もしも私に人よりも特別な所があるとすれば、それは主が力を貸してくれたということくらいです。私の為したことは、その全てが主の恩寵なしには不可能だったものばかり。救国の聖女なんて、私には過剰な肩書です」

 

 夜風が、その髪と一緒に旗を靡かせた。

 その横顔は鋼のように美しく。けれどどこか寂しげでもあって。

 

 気付けば、疑問が立香の口をついて出た。

 

「ジャンヌはさ。この国のこと、恨んでないの?」

 

 それは、ずっと気になっていたこと。

 虐殺を行う竜の魔女、聖女ではないジャンヌ・ダルクという存在を立香が驚きながらも受け入れたのは、そこに僅かな納得があったからだ。

 つまり……不当な罪で殺された聖女が復活し、世界を呪うという物語(ストーリー)への納得が。

 

「例え神様のおかげであれ、あなたは確かにフランスを救ったのに……それなのに、誰もあなたを救わなかった。あなたは(おとし)められて火刑にされて……そんなの酷いって私は思っちゃうよ。だから、あの黒いジャンヌの気持ちも、ほんのちょっとなら理解できるつもり」

 

 それを聞き……ジャンヌ・ダルクは静かに微笑んだ。

 それは。告白ではなく。強がりでもない。

 とても純粋な、新雪の如く美しい感謝の笑み。

 

「ありがとうございます、マスター。私のために怒ってくれて。でも、私には本当に恨みなどないのです」

 

 ジャンヌはかしゃりと鎧を鳴らしながら立ち上がった。金の髪が月光を帯びて静かに流れる。

 彼女は胸に手を当てて、目を閉じ静かに愛を語る。

 

「この国には、沢山の思い出があります。

 家族との何気ない団欒の記憶。

 母が歌ってくれた子守歌。

 小麦畑を彩る夕日に感動した日のこと。

 主の声を聴いたとき、私の身を焦がした使命感。

 戦場で私を支え、共に立ってくれた兵士たち。

 街に溢れる、人々の笑顔と息遣い。

 その全てが、壊すどころか傷ひとつ付けることも耐えられない、大切な宝物。何度裏切られようと、それは絶対に変わらないでしょう

 そうですね。あえて言うなら──私は、この国を愛しているのです。

 だからこそ、かつて私が選んだように⋯⋯この国を脅かす竜の魔女から、私はこの国を守りたい」

 

 月を背に。

 旗を片手に、彼女は誓う。

 

 その姿に、藤丸立香はどうしようもないほど納得させられた。

 

「(──ああ)」

 

 彼女の表情には一点の曇りもない。

 彼女の言葉には一握の欺瞞もない。

 彼女の意志には一瞬の迷いもない。

 

「(これが、"聖女"か──)」

 

 ジャンヌ・ダルクという女性は、どうしようもなく聖人だった。

 それはまるで、地上に舞い降りた天の光。

 誰もが煤け、汚れながら生きる世界の中、ただひとり無垢で在り続ける高潔なる魂。

 

 その姿に、藤丸立香は。

 赤い外套の背中に見たような、余りにも眩しい(もの)を見た。

 

 

 

 そして、決戦は始まる。

 歴史を歪めるは復讐の呪い。7匹の邪竜を率い、世界を滅ぼさんとする竜の魔女。

 対するは人類最後のマスターと、救国の聖女を筆頭とする7騎のサーヴァント。

 待ち受ける運命(Fate)は、救済か破滅か。

 

 決戦の地はフランス・オルレアン。

 最後であり最初の決戦──『邪竜百年戦争』が、開幕する。

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