FGO二次 衛宮士郎みたいな藤丸立香 作:龍川芥/タツガワアクタ
数分前。
エリちゃんことエリザベート・バートリーは、そのサーヴァントと対峙していた。
「ようやく会えたわね、未来の
彼女が向き合うのは、白髪の女性の姿を取る英霊。その目元は仮面で隠されており、その傍らにはアイアンメイデンが控えている。
そんな彼女、カーミラに向けて、エリザベートはびしりと指を突き付けた。
「魔女の手先なんかに堕ちちゃった事、たっぷり後悔させて……ってアンタ聞いてるの!? さっきからボンヤリし過ぎじゃない!? 」
だが、カーミラは反応を見せない。ただ、無言でその場に立っている。
「……」
そんな彼女の体には、確たる変化が起こりつつあった。
どくん、どくん。
竜の細胞が喚き出す。
カーミラ──とある小説から取られた、大人になったエリザベート・バートリーの変名。残忍残虐なチェイテ城の女城主、少女の生き血を啜った吸血鬼。
だが、彼女にはもう1つ逸話が存在する。
それは──竜だったのではないか、という噂。
どくん、どくん。
竜の心臓が動き出す。
竜。
彼女にまつわる竜の逸話は、曰く──エリザベート・バートリーは竜であり、その頭には角が生えていてそれを王冠で隠している……なんて浅い噂話。しかしいかなる偶然の導きか、それは真実だったのである。
生前のエリザベートは僅かにではあるが竜の血を引いていた。角など無く、自身もその事実を知らなかったものの……彼女の体には、少しだけ竜の血が流れていて。
その"竜としての側面"、噂話と事実の数奇な組み合わせが英霊に成ったのが、エリちゃんことランサーのエリザベート・バートリー──少女時代のカーミラが無辜の怪物となったサーヴァントだ。
どくん、どくん。
竜の血液が回り出す。
けれど、そんな"竜と関わりがある"カーミラへの竜化は失敗した……と思われても仕方ないほど、竜化を受けた彼女の身に変化はなかった。強くもならずただ自我を喪失しただけだ、と。
だが、違うのだ。竜化は成功でも失敗でもなかった。どちらかに転ぶことすら出来なかった。
当然だ。カーミラことエリザベート・バートリーは、
どくん、どくん。
竜の息吹が溢れ出す。
カーミラに足りなかったのは『竜としての逸話』。
彼女は真に竜であっても、竜として暴威も伝説も為さなかった。ただ、『美しさを求め血に溺れた狂人』として、『夜な夜な人を攫う女吸血鬼』として、カーミラという存在は在った。
だから──竜化の術を受けた彼女は、
どくん、どくん。
騒ぐ。溢れる。
叫ぶ。焦れる。
カーミラではない。竜化英霊でもない。
それは無垢なる竜。指向性を持たぬ力の塊。
幼き自我は、ただ主人の命の言いなりになるのみで。
その身に得た力は、とんと使い方が分からなかった。
だが、彼女は見た。
若き己自身。竜混じりとして在る、少女のエリザベート・バートリーを。
どくん。鼓動する。
竜としての己が覚醒する。
どくん。共鳴する。
竜の力を持つ己と、竜である己が同化する。
「ああ──」
そうだ。私は竜である。
思い出した。私はカーミラである。
ならば。
「私は
美しくあるために。
若く瑞々しくあるために。
竜として、在るために。
どくん、どくん──!
「ふふ、あはははははははaaaaaaaaaaaaaaa──!!」
変貌する。骨が、肌が、肉が。
霊基ごと、その躰は竜と化す。
羽化。変身。転生。進化。誕生。
そして、その竜は世界に姿を現した。
其は白き竜。美しくしなやかな、仮面の竜。
其は赤き竜。血色の翼を纏う、吸血鬼の竜。
其は鉄の竜。鎖を鳴らし棘を揺らす、嗜虐の竜。
其は、真の竜。先祖返りした竜種の子孫——血狂いなる
「Kuoooooooooooooooooooooooooooo──!!」
「な──なんなのよコレェ~~~ッ!?」
エリザベートが悲鳴を上げる。さもありなん、彼女の前に現れたるは真の竜種。カーミラだった、否、カーミラという名の新たな
それを前にエリザベートは大いに狼狽え。
「
なんだか愉快な勘違いで声を荒げるエリザベートを前に、カーミラは動いた。
「──砕ケ、鋼鉄ノ牙ヨ!」
その全身から生える鉄の鎖──針付きの手枷、刺々しいペンチ、波打つ刃のナイフ、茨の鉄球等、様々な処刑・拷問器具を先端に付けたソレが唸った。まるで一本一本が生物のように──竜の尾のように動き、エリザベートに向けて殺到する。
「うわっ、ちょっ!」
ズガガガガ! と大地を抉る鎖の群れ。それを何とか回避するエリザベートだが。
「
カーミラが血色の翼を振る。空気が揺れ、赤い風圧が吹き荒れた。
「くぅうううっ!?」
風に混ざった血の水滴たちが、弾丸となってエリザベートの体を抉る。体中に刻まれる傷の痛みと風圧で動きが止まった所へ。
「Kuoooooooooooooooo──!!」
カーミラの口が開き、魔力の籠った超音波を叫ぶ。それはカーミラの
無色のブレスが、エリザベートを吹き飛ばした。
「キャア──!」
空を舞い地面に叩きつけられたエリザベートは、血と泥に塗れながら数十メートル転がってやっと停止した。それは奇しくも、離れた場所で戦っていた立香の近くで。
「エリちゃん!?」
転がって来た彼女を見て立香が驚愕の声を上げる。そんな彼女らのもとへ、仮面の白竜は一歩踏み出した。地面が揺れ、影が地を覆う。
「ウフフ、脆イ脆イ。
竜の口が動き、女の声に聴こえなくもない不気味な人語を吐き出す。元の知能・人格を有したままらしいカーミラは、倒れこんでいるエリザベートを嘲り笑う。
「ホラ立チ上ガリナサイ、半端者ノ
恐ろしい竜の笑い声が響き、周囲の人間を委縮させる。エリザベートは手を地面についたまま、悔しそうに顔を歪めた。
「これは──アサシン、なの……!?」
「身に着けている仮面や拷問器具のデザインは概ね一致しますが……サイズと魔力反応が桁違いに増大しています! 注意してください、先輩!」
と、槍を杖代わりにして起き上がったエリザベートが口を開いた。
「アレは、
『カーミラ……それはとある怪奇小説に登場する女吸血鬼の名だ。そのモデルは実在の貴族エリザベート・バートリー──彼女は己の美に固執し、"若い女の血を浴びれば若返る"と信じて女性の拉致・虐殺を行った「血の伯爵夫人」。
だが、アレはどう見ても竜そのものだ! 伯爵夫人でも吸血鬼でもない! そもそも竜化は失敗したんじゃなかったのかい!?』
「失敗するワケないでしょ……だって、
「──そう、いえば。最初出会った時に竜化英霊だと勘違いしたのは」
「エリザベートさんに角や尻尾があったから……」
そう。最初から答えは示されていた。
エリザベート・バートリーが竜の力を持つのなら。
その成長した姿であるカーミラにも、その力は備わっていて当然なのだ。
「でも
エリザベートは。
ぼろぼろの体を揺らしながら、それでも己の足で立つ。
彼女を支えているのは……怒りと、それ以上に大きな悲しみ。
「
……お願い子ジカ、力を貸して。
その声に、立香は深く頷いた。
「もちろん。私も丁度、この"竜化"は気に入らないと思ってた所だしね!」
そして、彼女の隣にサーヴァントたちが並び立つ。
「お供します、先輩!」
「悪竜退治なら私も協力します。宝具の再発動まで時間はかかりますが……我が剣の誇りに懸けて、あなた方を護りましょう」
「わたくしも。
「ちょっと蛇女!?
マシュ、ゲオルギウス、清姫。
3騎がエリザベートと立香の横に立つ。
「……でも、その。アリガト、あんたたち」
「うん。行こうエリちゃん、皆。私たちで竜退治だ!」
その様子を──己に歯向かう愚か者たちを見下ろし、カーミラは嗤った。
「アハハハハハハハハ! 血袋ガ群レテ滑稽ネ! 嬲リ犯シ啜ッテアゲルワ!」
竜となった彼女にとって、人間は敵ではなく餌。己のために血を貯めこんだ、憐れで可愛い血液タンク。
翼が空を覆うように広がり、風と共に世界が赤に染まる。
「精々良イ声デ
現れしは、血霧と夜闇纏う巨大古城。それがカーミラの立つ地面から轟音と共に出現、カーミラはその巨体を中央塔に巻きつけながら上へと登る。
『な──これは宝具、なのか!? 召喚された城の周囲がどんどん夜になって……月まで出てるぞ!? とんでもない魔力だ!』
それは世界を塗り替える幻想の顕現。昼は虚構の夜に侵食され、太陽の代わりに真紅の月が
これなるは、恐怖と絶望渦巻く鮮血の夜。
城の尖塔の上、月を背後に竜が蠢く。
「此処ハ我ガ城、我ガ領地……迷イ込ミシハ憐レナル娘タチ」
遥か眼下の立香たちを見つめ舌なめずりをしながら、城主であるカーミラは吠えた。
「誰一人トシテ逃ガシハシナイ──『
瞬間。城のありとあらゆる門、窓、小窓が開け放たれ、その中から鉄の鎖が怒涛となって立香たちに押し寄せる。
それは少女を繋ぐ棘付きの鎖。獲物を捕らえ逃がさぬ妄執と偏愛の拘束具。
「ッ、再現/投影開始!」
咄嗟に鎖を躱し、追いすがるそれを弾く立香たち。だが彼女らの中には、唯一その余裕がない者が。
「キャっ!?」
「エリちゃん!」
未だ治っていないダメージのせいで反応の遅れたエリザベートを、十数本の鎖が絡めとる。
そのまま鎖は物凄い力で城の方へと巻き戻り、捕らえた獲物を引きずり込もうとした。
鎖が獲物を運ぶ正面玄関──その開かれた大扉の内側には、血に濡れた黒鉄の棘がびっしりと生えていた。
「くそ、
立香が高速移動してエリザベートを捕らえている鎖を斬ろうとするが、
「な、斬れない!?」
鎖は硬く、打ち込んだ双剣は容易に弾かれてしまった。
その様子を見て、城の上の竜は獲物のささやかな抵抗を愉しむかのように首を揺らした。
「先ズハ一匹目──閉ザセ、『
その声と同時、城が変質する。中から血が零れ、隙間と言う隙間が紅く輝き、そこから少女の悲鳴が溢れ出す。
それは城に
「(アレは絶対にマズい!)」
変容した城を一目見た立香は直感し、咄嗟にエリザベートの体に抱き着いて踏ん張った。巻き付いている鎖に付いた棘が体を刺し、鋭い痛みが胸・腹・腕を襲う。
「
「な、子ジカ!?」
「先輩!」「
ギリギリ均衡し停止する鎖。だが他の鎖が彼女らを襲う。それらはなんとかマシュたちが弾いたが、立香の手が減った分先ほどよりも状況は悪かった。
徐々に鎖の群れに押し込まれる中、エリザベートは叫ぶ。
「何やってんのよバカ! 離しなさい、このままじゃ全滅よ!」
「でも……っ、離したら、エリちゃんが……っ!」
血が2人の足元にぼたぼたと落ちる。じりじりと、立香の足が地面を擦りながら城の入り口に引きずられている。
「絶対に、離さない……っ! 助けて、みせる……!」
息も絶え絶えに鎖と戦う立香。その足に遂に鎖が絡みつく。それでも、立香は諦めない。その瞳に宿っている光を、至近距離で見て。
「……バカね」
エリザベートは、拘束を逃れた尻尾で立香の手を弾いた。手が解け、立香とエリザベートの距離が離れる。
「え、エリちゃん!?」
「
鎖が巻き取られ、エリザベートの体が城に吸い込まれていく。
「そんな──」
足に巻き付いた鎖のせいで追うことも出来ず、立香は彼女に手を伸ばす。
それを見たエリザベートは、城に吸い込まれながらも微笑んだ。
「(子ジカ。アンタは
これでいいのだ、と彼女は思う。
助けてなんて言ってしまったが、ことこうなっては道連れにはしたくない。
何の罪もない正義の味方が、悪人を救うために傷つき血を流すなんて最悪だ。それどころか一緒に死ぬなど論外だろう。
そう、自分は悪人。今自分を殺そうとする城、それに人々を閉じ込めいたぶりながら殺したのは、間違いなくエリザベート・バートリーだ。
だから自分が死ぬのは、罪のないマスターが死ぬよりかは正しいハズだ。
そう思い、エリザベートは目を閉じて──。
「──そんな訳、無いでしょうが──っ!!」
立香の叫び声にびっくりして目を開けた。そこには、左手を掲げる彼女の姿が。
「
立香の周囲に半透明な剣が現れる。それは投影待ちの剣にして、不可視の弓に番えられた発射寸前の矢。
「エリちゃんと
その剣たちの切っ先は、エリザベートの方を向いていて。
「とりあえず助けるから歯ぁ食いしばって!」
「え子ジカちょっと待──」
余裕もないのに待つはずもなく。
剣が投影され色を持つ実体となり……エリザベートに向かって射出。
否、それが狙ったのは彼女の背後、鎖を巻き取っている棘だらけの正面玄関。剣は思わず目を瞑ったエリザベートの横を通り直ぎ、鎖で埋まった玄関内に突き刺さって──。
──直後、大爆発。
「わきゃああああああ!?」
爆風で鎖を断ち切られ、空中に吹き飛ばされるエリザベート。
訳も分からず落下する彼女は……しかし、地面に激突する前に誰かの腕に抱きとめられた。
それは、傷つき血で濡れた──けれど怯まず少女を受け止める優しい腕。
その手の主は。
「大丈夫? エリちゃん」
見上げたエリザベートは、至近距離で立香と目が合った。
ぼっ、と頬が真っ赤に染まる。
わたわたと慌てるも、何故か文句の一つも出ては来なくて。
最終的には、へにょりと目を逸らせて弱弱しく一言、
「……ぁ、りがと」
というのが限界だった。
と、立香の膝が落ちる。
「子ジカっ」
「……大丈夫、ちょっと一気に魔力を使いすぎただけ」
瞬間、周囲の音が戻る。
鎖の音とそれを弾く金属音。
「先輩、救助お見事です!」
「それはいいのですが、先程から鎖の勢いが増して……というかいつまでくっついているんですかドラ娘! 早く
「な、くっついてなんかないわよ!」
犬猿ならぬ竜蛇コンビによって弛緩しかけた空気をゲオルギウスが鎖を弾きながら締める。
「しかし実際問題、この鎖に押し潰される前にあの竜をどうにかするしかありませんが……ああも頭上に構えられては」
見上げる先はチェイテ城の尖塔の上、足掻くこちらを眺め嘲笑しているカーミラ。城から鎖が出ている以上、下手に城に近づいて登るということも出来ず、けれどあそこまで辿り着かなければカーミラの余裕は崩れない。
全員が思索を巡らすも良案が出ず消耗していく中、ふと立香はエリザベートの異常に気が付いた。
「あれ。エリちゃん、傷が……」
「え?」
彼女の傷が治っているのだ。最初に受けた傷だけでなく、棘付きの鎖に刺された傷穴すら消えている。
「このカンジ、もしかして……」
エリザベートは自分の手を開いて眺めると……拳を握って力を入れた。すると。
「わっ!?」
ばさ、と彼女の背から竜の翼が生えた。
「やっぱり。チェイテ城の
サーヴァントの中には、特定の場所でのみステータス強化される者たちが居る。生前海で武勲を上げたものは英霊になったとき海フィールドで強化補正を貰ったり、という感じだ。
それと同じことがエリザベートの身にも起きていた。彼女が惨劇を起こした場所はチェイテ城。つまりチェイテ城は文字通り彼女の城であり、『エリザベート・バートリー』はチェイテ城にて真の力を発揮する。
「翼……ってことは!」
立香は上を見上げた。エリザベートなら、尖塔の上で余裕ぶるカーミラの喉元に届くかもしれない。
「子ジカ、
「エリちゃん、行ける?」
立香の問いに、エリザベートは強く頷いた。
「やるわ。
「よし、皆!」
エリザベートの答えに、立香は全員に作戦を共有する。
「了解です、先輩!」
「わたくしがそこの色情ドラゴンの援護役と言うのは業腹ですが……ま、
「成程。案外分の悪い賭けでは無いかもしれませんね。少なくともこのままジリ貧になるよりはましでしょう」
全員の賛成を得て……立香は礼装を起動した。
「えーと、こうかな。『瞬間強化』っ」
エリザベートの体に力が漲る。
「子ジカ、これ──」
「やろうエリちゃん。頼んだよ!」
全員が彼女の方を向き、思いを託すように頷く。それを前に……エリザベートは自棄になったように叫びながら、敵の方を向くことで赤くなった頬を隠した。
「あーもう分かったわよっ!
『
エリザベートは槍を構え、全身から魔力を迸らせながら飛んだ。
「アイツに吠え面かかせてやるんだからっ! 『
槍に腰掛けたエリザベートが、まるで絵本の魔女のように飛行、月夜に構えるカーミラへと真っすぐに突撃していく。
「フン、ワザワザ蜘蛛ノ巣ニ突ッ込ムナンテ馬鹿ナ虫ネ!」
カーミラが叫び、鎖の半分ほどが一斉にエリザベート向かって伸びる。主に歯向かう愚か者を捕らえ、城の中に引きずり込むために。
だが。
「わたくしが援護するのです、失敗したら承知しませんからね! 『
清姫が宝具を発動し、その身は青炎の蛇となる。
そのまま彼女は宙へと飛び上がり、エリザベートに迫る鎖を撃ち落とした。
「ナンダト!?」
「行きなさいエリザベート!」
「アンタに言われなくても!」
エリザベートは翼をはためかせ、軌道を変えながら加速する。
「──コノ、調子ニ乗ルナ! 『
カーミラの叫びと同時、彼女の巨体が居座る尖塔の窓から複数のアイアンメイデンが飛び出してきた。それは鉾であり盾。獲物を迎え撃つ網であり、捕らえた獲物を串刺しにして処刑する悪夢の器具。
「
目の前で口を開ける処刑器具たちに。
エリザベートは怯まない。
「突っ切るわ、しっかりサポートしなさいよね──子ジカ!」
瞬間。
地表より飛来した鋼鉄の
「
「ナ──」
カーミラは地表を見る。そこには黒い矢を構えた赤い外套の少女と、彼女を護る2騎の英霊。
「鎖は私たちが引き受けましょう! 宝具限定解放──
「先輩は援護に集中してください!」
「ありがとう2人とも!」
鎖を払う2人に礼を言った彼女は、再び投影した矢を番え。
「
カーミラの仮面の隙間、その奥の眼球目掛けて矢を放つ。
「生意気ナ!」
それを翼で払った竜は──今更ながら思い出した。本命は別にいることを。
「ッ、
そして……竜がその目に映したのは。
尖塔の屋根の上、城の頂上に居座る自分より更に上。
赤い月を背に槍を構える、角と尻尾と翼の生えた半竜の少女。
「覚悟なさい、
その姿に、思わずカーミラは牙を剥きだして吠える。
「貴様ニ何ガ出来ル! 半端者ノ小娘風情ガ何カシタ所デ、私ノ城ハ崩レナイワ!」
だが。
エリザベートは自信に満ちた顔で叫んだ。
「いいえ、アンタの負けよ!
叫ぶ。叫ぶ。
たとえ相手が強大なる竜でも。己の完成形である未来の自分でも。
決して負けるワケがないと。
なぜならば。
「だって──恋する
そうして彼女は槍を突き出し、それに全力で魔力を込めた。
その槍はチェイテ城の塔の先端。夜空を衝く恐ろしいそれがカタチとなったもの。
──なればこそ、彼女がソレを触媒に呼び出すのは。
「
城が。
もうひとつのチェイテ城が、一城まるごとエリザベートの居る空中に出現した。
その尖塔は、まるで槍の穂先のように下を向いていて。
空中に召喚された城が、重力に則って大地に立つ城に──その頂上に居るカーミラに迫る。
「エリザベートォooooooooooo──!!」
悲鳴を上げようが、もう落下は止まらない。
「イッけえええええええええ──!!」
それは破壊そのもの。全てを圧し潰す規格外の槍。
大質量が、隕石の如く衝突した。
実質ラムセウム・テンティリス
城テイェチ/チェイテ城
これが新しいハロウィンイベか
チェイテ城にはチェイテ城をぶつけんだよ