FGO二次 衛宮士郎みたいな藤丸立香   作:龍川芥/タツガワアクタ

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A.D.1431 邪竜百年戦争 オルレアン「聖女の祈り、魔女の夢」
1.壊れた歴史の欠片より


 

 

 そこは荘厳な聖堂だった。

 天使の像に見守られるそこで、蝋燭の明かりが揺れる室内に声が響く。

 

「──告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 それは女性の声だった。美しく、艶のある声。

 だが、もしもこの場にそれを聴くものが居たならば震えあがっただろう。

 何故ならその声は、地獄の底から沸き立つ様な憤怒と憎悪に塗れていたのだから。

 

「誓いを此処に。

 我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

 

 床が輝き、暗かった部屋を照らす。

 室内に立つはふたつの影。

 ひとつは異貌の男。不気味な革張りの本を持ち、高い背丈を黒い法衣で包んでいる。その血色は悪く、顔はやつれて大きな目が殆ど飛び出していた。だが何よりも恐ろしいのは、儀式を見守るその表情にはありありと狂気が浮かんでいること。

 

 そしてもうひとつは、黒い鎧を身に纏った女性。

 その髪は灰のような色をしていて、その肌は死蝋のように色がない。

 ただその口元は獰猛な笑みの形に歪められ、瞳はありありと妄執の色を映していた。

 そんな彼女は、獣のような笑みでその不気味なる美貌を汚しながら唱える。

 

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 部屋を満たす光、聖光を表すように黄金色だったそれがやにわに黒に染まる。

 まるで闇が輝いているかのようなその光に呑まれながら、彼女は高々と言い放った。

 

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ──!」

 

 そして、召喚は成立する。

 暗き光を放っていた床、そこに描かれた魔法陣から複数の人型が現れ出でた。

 

 そこで、女性が嗜虐的に笑い。

 

 異常は、訪れた。

 

 獣の雄たけびにも似た悲鳴が、拷問を受けているかのような絶叫が、聖堂内にこだまする。

 肉が弾け血が飛び散る音が連続して響く。

 それは禁忌と冒涜に満ちた饗宴。強制的に英霊の在り方を歪め、主の望み通りに生まれ変わらせる最悪の秘術。

 

 この世のものとは思えない耳を塞ぎたくなる怪音の羅列と、女の狂ったような笑い声が聖堂を満たした。

 

 そして、変貌は完了する。

 

「クク、アハハ──良く来ました、我が同胞(サーヴァント)たち。私が貴方たちの飼い主(マスター)です」

 

 そう言って彼女が眺めるのは……異形たる5体の怪物。

 

 元・セイバー。フランスの白百合の騎士。

 

 元・アーチャー。ギリシャ神話の女狩人。

 

 元・ランサー。吸血鬼と呼ばれたワラキア公主。

 

 元・ライダー。竜を手懐けたとされる聖書の聖女。

 

 元・アサシン。美貌の為に生き血を啜ったチェイテ城の女貴族。

 

 それら()()()怪物が、召喚主である女性に傅いていた。

 それらには共通点があった。それは。

 

「いえ、こう呼ぶべきでしょうね。我が忠実で残忍なる下僕──竜化英霊(サーヴァント・ドラグニカ)

 

 5体の怪物、それは「(ドラゴン)」の姿を取っていた。

 

 竜と人を行き来する者。

 

 その半身を竜と化した者。

 

 辛うじて人型を保つ者。

 

 完全に竜の姿に成った者。

 

 それら多様なる異形の竜、それこそが彼女とその側近が求めし下僕であり。

 

「命令をあげましょう、私の可愛い邪竜たち。

 ──塵殺なさい。蹂躙なさい。それが、私が下す唯一の尊命(オーダー)

 

 邪悪は嗤う。手を広げ、旗を掲げながら。

 

「笑う人が居たならば喰らいなさい。

 泣く者を見つけたなら引き裂きなさい。

 抗う兵士は灰にして、その妻子も探し出し縊り殺して。

 村を焼き、街を破壊し、国を滅ぼし──あらゆる邪悪を為すのです」

 

 それはまるで、民を導く聖女のように。

 

「神は全てを許すでしょう。今までのように、これからのように。

 神罰が下るなら、それは僥倖。だって、それは神の存在の証明ですから」

 

 ただ、その貌に燃え盛るような悪意を滾らせて。

 

「貴方たちのマスター、ジャンヌ・ダルクが裁定者(ルーラー)として宣言します。

 この世は主の御名の元、等しく有罪。等しく無価値。等しく全てが、ひとかけらも残さず灰と成るべき(ごみ)の山。

 だって、それが神意なのですから。違うのなら神は罰を下す筈ですから!

 さあ、往きましょうジル、我が復讐の聖戦へ!

 まずは懐かしきオルレアン、次にフランスという国そのものを、果てはこの地平の全てを滅ぼします……ああ、ああ! 想像しただけで愉しくって仕方がないわ!」

 

 ──あは、あはは、あはははははははは!!!

 

 狂ったように嗤うその声を聞きながら。

 傍らに立つ大男は、司祭のように静かに呟く。

 

「ええ、それがよろしい、我が聖女ジャンヌ。貴女の正当なる怒り、当然たる憎悪、ジル・ド・レェめは大いに肯定致します。なれば私も見届けましょう。貴女が心の底から望んだ、貴女の為の復讐劇を──」

 

 

 

◆◇◇◆

 

 

 

 そうして、舞台の幕は上がる。

 

 元一般人、今は抑止力との契約を果たした()()──マスター藤丸立香。

 彼女は己の相棒(サーヴァント)であるマシュ・キリエライトと共に、百年戦争時代のオルレアンへとレイシフトする。

 

 そこに在るは新たなる出会い。救国の聖処女を始めとする、悪に抗う英霊たち。

 待ち受けるは過酷なる運命。竜の魔女ジャンヌ・ダルクと、その傀儡たる竜の軍。

 御旗は直ぐにぶつかるだろう。

 救済と滅亡、守護と殺戮、献身と復讐。真逆の信念を掲げる者たちに、闘争以外の道はない。

 

 訪れるは希望を繋げる勝利か、はたまた絶望に囚われた敗北か──。

 

 

 

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第一特異点

 

A.D.1431 邪竜百年戦争 オルレアン

「聖女の祈り、魔女の夢」

 

──────────────────

 

 

 

「さあ、戦いを始めましょう──」

 

 オルレアンの地にて、救国(破国)聖女(魔女)はそう言った。

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