結ヶ丘高校が立ち上がってから初のオープンキャンパス。

スクールアイドル部の一員としてメンバーのサポートをしている少年、東 音羽(アズマ オトハ)は行事終了後の初めての休日として、クラスメイトである美少女の装いをした少年、西園寺 美麗(サイオンジ ミレイ)とお出かけをすることになった。


これは、そんな男子二人きりの休日のお話。




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初めましての方は初めまして。
いつも読んで下さってる方はありがとうございます。

この度、龍也さんのラブライブ! スーパースター!! 二次創作小説『星達のオーケストラ』の三次創作を書かせて頂きました。

話のシチュエーションとしては第39話「受け継がれる意志、結ばれる想い。」のアフターストーリーの位置付けです。
本小説の主人公、東 音羽(アズマ オトハ)くんとその友達、西園寺 美麗(サイオンジ ミレイ)くんが紡ぐお話となっています。

↓星達のオーケストラ、リンク先
https://syosetu.org/novel/264358/


ぜひお楽しみくださいませ。

それではどうぞ!



星達のオーケストラ 三次創作 〜アタシの大好きな音羽ちゃん〜

 

「ふぅ、少し早かったかしら?」

 

 原宿駅の改札を降りた直後、近くの柱に背を預け身体の力をふわっと抜く。秋になったといえども日が照らされる時間は相変わらず暑いからたまったものじゃない。

 

 でも、そんな情けないことも言っていられない。今日はアタシの大好きとある男の子とのお出かけだから。この言葉だけを第三者が聞けば誤解を生みそうだけれど、ここで言う大好きは恋情ではなく友情の意味合い。アタシはその格好や喋り方も相まって多くの人から誤解を受けるけれども、同性愛にはてんで興味はない。

 

「あっ! 美麗(みれい)さ〜ん! おはよう〜!」

 

 そんなことを考えていると、アタシのことを呼ぶ声が聞こえてきた。中性的だけれども芯の通った声。一声聴いただけでアタシの心は昂り始める。

 

「おはよう、音羽(おとは)ちゃん。随分と元気がいいわね?」

 

「えへへっ、だって今日は美麗さんとのお出かけなんだもん! 待たせちゃったみたいでごめんね?」

 

「あらっ、何言ってるの。まだ集合の20分前じゃない。むしろアタシが早く来すぎてるんだから貴方は何も気にしなくていいの」

 

 集合場所に遅れてしまったことで詫びる様子を見せる橙髪の少年。この子こそアタシの友人、(あずま) 音羽(おとは)。アタシの生きる意味を見出してくれた恩人、ウタ先生こと東 (うた)の孫であり、ウタ先生の息子夫婦、東 湊人(みなと)詩穂(しほ)の子ども。東家は代々音楽を生業とした音楽一家で、その類稀なる音楽センスにより業界ではその名を知らぬ者はいないほどの有名な家。

 

 その子息である音羽ちゃんもまた両親から受け継いだ音楽センスを用いて、結ヶ丘高校のスクールアイドル部でその才能を遺憾なく発揮している。

 

「そっか……分かったよ、美麗さん!」

 

「うん、素直な子がアタシは大好きよ。せっかくの休日だし二人でゆっくりデートと行きましょ」

 

「デート……かはわからないけど、久々のお休みだしたくさん遊ぼうね!」

 

 アタシの冗談に音羽ちゃんは返す言葉が見つからず、真に受けないようにしつつ言葉を返してくれる。

 

 この子の言う通り、こうしてゆっくりと時間を取れるのは久しいこと。先週までは結ヶ丘高校のオープンキャンパスのために学校全体が一丸となって準備に励んでいたこともあって休日も返上していた。しかし、その準備の甲斐もあってオープンキャンパスは大成功。そして、音羽ちゃんも所属するスクールアイドル部もまた、魅力あふれるステージで見に来てくれた人々へたくさんの元気を与えていた。

 

「そうね。今日はアタシがエスコートしてあげるから大船に乗ったつもりで付いてきなさい?」

 

「うん! 楽しみにしてるね!」

 

 感傷に浸るのもここまでにして、アタシは音羽ちゃんを連れて原宿の町へ繰り出していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「音羽ちゃん、こういう服はどう?」

 

 音羽ちゃんとのデートで最初に向かった場所はショッピングセンター内にある洋服屋。そこでこの子に似合う服をアタシが選別してあげていた。アタシが用意した服を見て、音羽ちゃんは何とも言えない表情をしながら不安がる。

 

「すごくかっこいいけど、僕に似合うかな~……」

 

「あらっ、音羽ちゃんは素材が良いんだからもっと攻めないとダメよ。今までのダボっとした服もすごく似合ってかわいいけど、たまにはピシッと男らしい格好も見てみたいわ」

 

 自分には勿体ないと謙遜する音羽ちゃんに、アタシはそれではいけないと喝を入れる。今日の服装も見て思ったことだけど、この子はパーカー系統などのふんわりとした服を好んで着ている。ここに入ってからも似たような服を物色していたから、少しは毛色の異なるモノも着させてあげないといけない。

 

「例えば……このセーターならこのTシャツと合わせれば音羽ちゃんの細い身体つきと相まって、よりスタイルが良く見えるわよ」

 

「……でも、こういうのは美麗さんの方が──」

 

「えぇ、もちろんアタシ自身も似合うことは自覚してるわ。でも、今は貴方の番よ」

 

 音羽ちゃんがアタシへ焦点を当てて話を逸らそうと試みたようだけど、それは全くの無意味。アタシも一人でショッピングをしてる時にどういった系統が似合うか、自分の身体と相性が良いかを熱心に研究している。だから、今のアタシはどんな服でも着こなせる自信がある。

 

「貴方は服屋に行ったとき、自分に似合う服を詩穂さんに選んでもらっているでしょう? こういうのは自分でチャレンジしないと新しい魅力に気づけないわ」

 

「そうなのかなぁ……」

 

「そうよ。それに、こういった服を着こなすことであの子たちとのお揃いの衣装だって躊躇なく着れるようになるのよ?」

 

 アタシが言うあの子たちという言葉に音羽ちゃんは誰の事か、と問うこともなくすぐにアタシの意図を理解する様子を見せる。

 

「……かのんちゃんと……?」

 

「そう、例えばあの子たちがドレス姿の衣装でパフォーマンスをするとなった時、貴方だけが制服でいるなんて場違いにも程があるわ」

 

 例え話として今後のライブであり得るであろうシチュエーションの話をする。スクールアイドルである澁谷(しぶや)ちゃん達が衣装として西洋の王女様のような麗しい格好で踊るとなった時にサポーターであるこの子が似た衣装を着ていなければ空気感が壊れてしまい、雰囲気が台無しになってしまう。

 

「でも、貴方が良いって言ってもあの子たちは有無を言わさず衣装を作るでしょうね。(たん)ちゃんならオトハも一緒にデス、なんて言ってタキシードあたりを気前良く作ると思うわ」

 

「……確かにくぅちゃんならやると思うな……」

 

「でしょ? そこまでして作ってくれたものを自分には似合わないから、って言って突っぱねること、音羽ちゃんにできる?」

 

「そ、そんなこと……」

 

 あまりにも非情な選択に音羽ちゃんは言葉を失う。でも、アタシの知ってる音羽ちゃんは絶対にこうなるとわかっていた。この子が大好きな人たちの頼みを断ることなんて天地がひっくり返ってもあり得ないことだから。

 

「ふふっ、冗談よ。少し意地悪な質問をしちゃったわね。でも、アタシの言いたいことはさっきも言った通りよ。せっかくこうして来たんだから、自分の新たな良さを見つけるために挑戦してみないと。その為なら、アタシは一肌でも二肌でも脱いであげる♡」

 

「ありがと、美麗さん。でも……二肌も脱いだら風邪ひいちゃうよ?」

 

「……ん~そういうことではないけれど……」

 

 アタシの悪ふざけとも取れる軽口に音羽ちゃんは動じる様子を見せない。それどころか持ち前の天然を発揮し上手く続いていた会話のキャッチボールが突拍子もなくホームランされてしまった気分になる。でも、これもまた音羽ちゃんの魅力だから、アタシも気に留めるつもりはない。

 

「まあいいわ。アタシが音羽ちゃんに似合うモノをたんと選んであげるから覚悟しなさいね?」

 

「お、お手柔らかにお願いします……」

 

 こうして、アタシ厳選の音羽ちゃんコーディネートショーが幕を開けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、色々と動き回ったしこのカフェで食事でも取りましょ」

 

 ショッピングセンターでのコーディネートも終了し、音羽ちゃんに似合う洋服を収めた買い物袋を持ちながらアタシたちは小腹もすいてきたことだし近くの喫茶店で休憩することにした。アタシのマネキンにされていたこともあって、音羽ちゃんは早速疲労の色が見える。

 

「なんだか、慣れないことをして疲れてきちゃったかも……」

 

「ごめんね、音羽ちゃん。音羽ちゃんを良く見せるためにインスピレーションが止まらなくなっちゃって……アタシも少しやりすぎたわ」

 

「そんな、美麗さんは気にしないで! むしろ、僕のためにここまでやってくれたんだもん、美麗さんに感謝しないとだよ!」

 

 音羽ちゃんの事を気にせずに振り回してしまい、罪悪感に駆られてしまったけど音羽ちゃんはむしろ感謝の念を抱いてくれる。ここまで良い子でいられるのは東の血やあの子たちと一緒にいたことが大きいのかしらね。

 

「そう言ってくれるなら私も気合を入れた甲斐があったわ。あっ、音羽ちゃんは何を食べる?」

 

「じゃあ、この半熟オムライスとみかんタルトにしようかな。美麗さんはどうする?」

 

「アタシは……ペペロンチーノでも頂こうかしら。それとバスクチーズケーキにするわね」

 

 それぞれ手に取って眺めていたメニュー表から食べたいものをチョイスする。そして、料理が運ばれてくるまでの間、スクールアイドルの事で話題を振ってみることにした。

 

「そういえば、スクールアイドル部はどうなの? ついに葉月ちゃんも同じ部活に所属することになったじゃない」

 

「うん、やっと恋ちゃんとも仲直りできたし、一緒に学校生活を過ごすことができて凄く楽しいよ!」

 

「そう……。にしても葉月ちゃんまでスクールアイドルになるとはね……勉強もできて運動もできてアイドルもこなせるなんて才色兼備にも程があり過ぎない?」

 

「恋ちゃんは誰よりも努力家だからね。人一倍頑張った結果が実を結んだから本当によかった……」

 

 音羽ちゃんはそう言って、感慨深げに葉月ちゃんの事を語る。少し前まで仲違いしていた二人なのに、今では誰よりも距離が近いためそのギャップには相変わらず置いていかれる自分がいる。

 

「でも、アタシとしては二人が仲直りしてくれてそこが一番安心したわ。貴方たちの張りつめた空気がこっちにまでビシビシ伝わってきて背筋が伸びちゃうからね。もう背筋が伸びすぎて肩が凝っちゃってたわ」

 

「あははっ……その点はお騒がせしました……」

 

 冗談で言ったつもりだったが音羽ちゃんはアタシの言葉に真摯に受け止めてしまい困り顔を見せる。すぐに音羽ちゃんを困らせちゃうのはアタシの悪い癖ね、そんなアタシも好きだけど。

 

「まぁ、それが今じゃずっと一緒にいるんだもん。それが二人の本来あるべき姿ってことかしらね」

 

「そうなのかな……自分じゃよくわからないけど……」

 

「わからないのも無理はないわ。貴方たちからしたら、それが当たり前なんだから。それを変わらず貫いていけばいいのよ」

 

 仲睦まじい様子の葉月ちゃんと音羽ちゃん。決して恋情で結ばれているわけではない二人の関係はどこか熟年夫婦のような安心感さえも覚える。

 

「うん、ありがとう美麗さん。でも、僕と恋ちゃんがこうして手を取り合えるようになったのも美麗さんのおかげなんだよ?」

 

「あらっ、そうなの?」

 

 葉月ちゃんとの仲直りにアタシも一端を担っていたことが不思議でつい聞き返してしまう。

 

「うん、周りの人から否定されて……恋ちゃんと離ればなれになって……これから先、僕は独りで生きていくんだって思い知らされて絶望に苛まれていた時に、僕の事を正面から向き合ってくれる人が現れたんだもん」

 

「……それは澁谷ちゃんのことじゃ──」

 

「ううん、美麗さんもだよ」

 

 音羽ちゃんが再起するきっかけを与えたのは、最初にこの子と関わることになった澁谷ちゃんだから音羽ちゃんが言う人物もそうだと思った。けれど、アタシの返事を待たずに音羽ちゃんは自分もその一人であると教えてくれる。

 

「もちろん、かのんちゃんはこの学校で初めてできた友達で、僕が変わるきっかけをくれた大切な人だよ。でも、美麗さんだって()()()()()()()()()()()()()()って教えてくれたんだよ?」

 

「……!」

 

「どんなに女々しくても、どんなに優柔不断になっても、どんなに自分が弱くても、美麗さんはそんな僕を受け入れてくれる。美麗さんと一緒にいると僕の心の荒みが和らいでいく感じがするんだ」

 

 音羽ちゃんは自分の胸に手を当てながら、しみじみとそう話す。確かにこの学校で初めて会った頃の音羽ちゃんはどこか危なっかしかったり、周囲の人の目をやたらと気にしていた。無論、それは産まれた時からそうなったわけではないことを知っている。中学の頃に音楽教室の同級生から中傷されて、人の本心が分からなくなってしまって、それが今もこうして癖という形でこの子の心に爪痕を残している。

 

「美麗さんといるおかげで、こんな僕でも頼ってくれたり好いてくれる人がいるんだって自分のことを見つめ直すことができるの」

 

 そう言って音羽ちゃんはまっすぐにこちらを見据える。橙色の瞳がいつにも増して輝きに満ち溢れているように見える。

 

「だから、僕と友達になってくれて、本当にありがとう、美麗さん」

 

 この子の本心からの感謝にアタシは思わず涙が出そうになっちゃった。この子は詭弁でモノを語ることは苦手。だからこそ、こういった素直な言葉にアタシも変に勘繰ることもなく──勿論、アタシの大好きな音羽ちゃんだからそんなことをするつもりは毛頭ないが──まっすぐに受け取る。

 

「もう……急にそんなこと言わないでよ。嬉しくて涙が出ちゃうじゃない」

 

「えっ!? べ、別に美麗さんを泣かせるつもりはなかったんだけど……!」

 

「ふふっ、これも冗談よ。まったく、音羽ちゃんは本当にからかい甲斐があって可愛いわね」

 

「も、もう〜ひどいよ美麗さ〜ん!」

 

 泣く演技から突然意地悪な笑みに変わるアタシを見て、また振り回されたと音羽ちゃんはムスッと頬を膨らます。

 

「でも、音羽ちゃんがそう言ってくれるならアタシも本望だわ。ウタ先生の愛孫(あいそん)がずっと暗いままでいるのはアタシも落ち着かないから」

 

「美麗さん……」

 

「これからも音羽ちゃんの一友人として頑張っていくから、よろしくね?」

 

「うん、こちらこそよろしくね、美麗さん!」

 

 二人でこれからの関係も約束し、その後すぐに届いた食事を音羽ちゃんと楽しむのだった。

 

 音羽ちゃんと一緒にいる時間はすごく楽しい。アタシの言葉を素直に受け止めてくれるこの子だからこそアタシは着いていくと決めた。

 

 そしてもう一つ、音羽ちゃんの内にある秘密についても掴まなければいけない。今日のデートはそれも目的の一つ。これを知っているのと知らないのでは今後のあの子達との関係にも大きく影響をする。少しでも音羽ちゃんにとっての心の拠り所となるようにアタシ自身も邁進しなくてはいけない。

 

 

 だけど、今だけはこの子と過ごすこの時間は大切にしていきたい。

 

 だってこの子は、アタシの憧れだから。

 






アタシにとって、この子は太陽。



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