「星野アイ。私の好きなアイドルです」 作:ネオマフティー
side ルビー
前世の私はいつも演じていた。天童寺さりなという役を。
私の存在から目を背けたいかのように遠くの地で仕事に励む両親にさも理解があるような健気で可哀想な少女を演じていた。
そうしなければ、ひ弱で人の助けがなければ何一つできない私は、生きていけない事を理解していたから。
本当の私を隠して……
……りなちゃん!さりなちゃん!!
声が聞こえる。大好きなゴローせんせの声だ。
私が演じ続ける事ができたのも、せんせがいてくれたからだ。
もう末期の私の身体には全然力が入らない。それでもがんばって、私はせんせに手を伸ばした。
「せんせぇ…これ、あげるよ」
「体調良い時……一回だけ「B小町」のライブに行った事があって、その時のガチャで出たんだぁ」
「私だと思って大切にしてね」
「分かった。ずっと大事にする」
「ずっとだ……」
そう言ってキーホルダーを受け取ってくれたせんせの顔はとってもかっこよかった。
「えへへ…せんせ、だぁいすき…」
せんせの頬に私の手が触れる。あったかい。せんせの温もりを感じる。
「もし、生まれ変わってもきっと…」
『愛してるよ』せんせ……
それが、前世の私の最期の記憶。
身体の感覚とせんせの温もりが消えていくのを感じながら、私の前世、天童寺さりなとしての人生はそこで幕を閉じた。
「いらっしゃい、高千穂へ」
運命の地宮崎。
星野アクアと星野ルビーが生まれた地であり、雨宮吾郎と天童寺さりなが命を失った地でもある。
ルビーら新生「B小町」は、更なる飛躍のためMV撮影の為この地にある映像Dのアネモネの会社に訪れていた。
そして、アクアとあかねも2.5次元舞台の慰安を兼ねてついて来ていた。
「ここ宮崎県高千穂は芸能の神様が祀られている事でも有名なんだよ。確か名前は……」
「
前世でこの地で医者をしていたアクアにとって、その神の名前は馴染みのある名前だった。
「あっ知ってる?歌や芸能の神様でね。芸能界の人もしょっちゅう東京から参拝に来るワケさ。縁起も良いっちゅう事で意外と商談に困らない」
「えー参拝行こ!話には聞いてたけど私、来た事なかったのよね」
「うんうん。是非行ってみてね」
「本当はママも一緒に来て欲しかったなぁ……」
「仕方ないだろ。スケジュールの問題がある」
思い出すのは一緒に家族旅行に行こうとするも、詰め込まれたスケジュールの都合で社長に引きずられて行ったアイの姿だった。
『行くぞ、クソ女優!』
『このケチ社長〜』
壱護社長と言えば、外星人との繋がりも少し話してくれた。
「いいかアクア。うちのアイは今や地球という星の命運を握っていると言っていい。俺の見込んだアイドルは、宇宙人すら虜にしやがった。おかげでアイとその子供であるお前達に何かあったら、めでたく全人類が心中する事になるからな。
それと、くれぐれも復讐なんて考えるなよ。アイを殺そうとした容疑者候補は、全員本腰を入れた日本政府と
最も真相に近かった壱護社長が、何も行動を起こさなかった理由もはっきりとわかった。
まあ、俺たちの父親をぶん殴れなかったことは少し残念だが、アイやルビーに危害が及ばないならそれでいい。
これからは、役者の道を進むことを優先して考えよう。
「今回はMVの撮影が2本ありますんでね!スケジュール詰め詰めなんですわ!早く衣装に着替えてスタジオに入ってもらいましょう!」
「私達はどうする?近くに日本神話の天岩戸が有るんだって!ほら、アマテラスが引き篭もって周りで神様達が宴会して外に出させたアレ!」
「神様……か」
「アクアくん結構オカルト好き?」
「好きというかまぁ……中には真実もあると思ってる」
(俺は転生したし、地球を滅ぼせる宇宙人は役者をやってドルオタになってるんだ。神様ぐらいいてもおかしくないだろう)
「うんうん!面白いよね!」
「……せっかくだ。久しぶりに色々見て回るか」
そして、映像DのアネモネとB小町のメンバーは撮影に向かい、残されたあかねとアクアは街を回る事になった。
アイが生きているこの世界線では、アクアは特に前世に未練はなかった。
不器用ながらも、精一杯の愛を注いでくれるかつて推しのアイドルだった母親がいて、時々さりなちゃんの姿が重なる大切な妹もいる。
そして、役者として憧れの星を目指す第二の人生にアクアはとても満足していた。
「まあ、一度前世の家に顔ぐらいは出すか」
ただ、ほんの僅かに心残りがあるとすれば、前世の遺体を弔ってやれていないのと、さりなちゃんからもらった、肌身離さず持っていたキーホルダーを遺体に残したままだという事だった。
「ごめんな、さりなちゃん……」
結局、風化したグロテスクな遺体をあかねに見せる訳にはいかないと考えたアクアは、普通にあかねとデートをしたついでに少し前世を過ごした家を訪れるだけで終わった。
一方で、ルビーは違った。
『せんせ…私、16歳になったよ』
「もう一度、会いたいよ…」
前世への深い未練。大好きだった人にもう一度会いたいという強い想いがあった。
『なら、導いてあげましょう。あなたが会いたい愛する者の所へ』
まるでナニカに導かれるように撮影の終わったルビーは、宿の鍵をパクった烏を追いかけて、やがて見つけた祠の裏の洞窟へと入ってしまった。
「ルビーちゃん戻って」
死体だよ。これ……
その祠の裏の空間でルビーが目にしたのは、大好きだった人の変わり果てた姿だった。
遺体の所持品からクレジットカードが。
被害者氏名ーーーアマミヤゴロウ
『そんな……ゴロー先生が……ルビーは大丈夫?』
「うん、大丈夫だよママ。心配しないで……」
電話の先でママの狼狽した声が聞こえた。
ママもショックだっただろう。私たちを産んでくれた時に担当してくれた、頼りになったお医者さんが殺されていたんだから。
私はママを安心させるため、無事にショックから立ち直ったように
「おやすみ、ママ……」
私の名前は星野ルビー。
偉大なアイドルの母親に憧れてアイドルを目指す、明るく天真爛漫な女の子。
でも、前世と違って演じるのはとても楽しかった。大好きなアイドルだったママはとっても私を愛してくれて、前世では叶わなかった事もたくさんできた。まるで天国のようだった。
何より、大好きな人が推してくれると言った……アイドルにやっとなれたから……
「大丈夫か、ルビー」
「お兄ちゃん……」
私にはお兄ちゃんがいる。名前は星野アクアマリン。
私と同じ前世の記憶を持つ転生者。
前世のほとんどを病院で過ごした私と違い、アクアには前世で生きたアドバンテージがあったから、よく私が学校で困っていた時助けてもらっていた。
思わせぶりな事ばかりして、女の子を誑かしてばっかりの残念な兄。
でも、そんな所がどこかゴロー先生を思い出させてくれる、とても頼りになる私の自慢のお兄ちゃん。
「お前がアイに相談しないのは珍しいからな。何があった」
「言えないよ…ママに言える訳ない!」
私の中の醜い感情が溢れ出てくる。
憎い、つらい、許せない、酷い、苦しい……
どうして死んじゃったの……ゴローせんせ……
「だって、あの遺体は……あの人は……」
私がずっと会いたかった人だったのに……
前世の俺を知っているのか?
まさか、あの毒舌看護師……いや、ないな。
一方、この時ルビーの言葉を聞いて最初にアクアの脳裏に浮かんだのは、前世の自分をロリコン呼ばわりした毒舌看護師の姿だった。
まさかとは思ったが、天真爛漫な可愛い妹の前世が流石にそれはあり得ないと思いつつ、とりあえずはルビーを落ち着かせる事に集中した。
「なあ、ルビー。話したくないなら今はそれでいい。でも、もし耐えられなくなったら俺を頼れ」
幸い、前世は医者の身だ。
「お兄ちゃん……」
「ルビーの前世がある秘密を知っているのは俺だけだ。そして、俺の秘密を知っているのもルビー……お前だけだ。だから、俺たちだけは前世の秘密を共有できる」
「……ねえ、お兄ちゃんは私の前から絶対にいなくならないよね」
「当たり前だろ。俺たちは家族だ。アイも俺も絶対にルビーの前からいなくならない。ずっと一緒だ」
「ずっと一緒………そうだよね……今だけは、お兄ちゃんに甘えるね」
「ああ。少し待ってろ。今、温かいお茶でも持ってくるから」
落ち着いたルビーの様子を見て、アクアはルビーをリラックスさせる為の飲み物を取りに向かった。
あの毒舌看護師以外で考えるなら、まさかな……。
ほんの一瞬、アクアは期待してしまった。
「ねえ、お兄ちゃんは私と同じだから知ってるよね。私にも前世の記憶があるの」
もしも……
「あの病院で生涯を終えた患者としての記憶。あの遺体はね、その時私のずっと側にいてくれた、私の大好きな人だったの」
傍に居てやる事しかできなかったあの娘が……
「許せない……!ママを傷つけて、ゴロー先生を殺して、私から大切な人をみんな……!」
ルビーの中の激情が溢れ出し、瞳が復讐の炎で黒く染まろうとした時だった。
「さりな……ちゃん……?」
アクアの口から零れたその言葉を聞いて、ルビーの復讐の炎は一瞬で鎮火した。
『さりなちゃん』
そう呼んでくれた人をルビーはよく覚えている。
前世の最期の時も、傍で私の大好きな人がそう呼んでくれた。
ルビーにはすぐにわかった。
その言葉を口にしたアクアの前世が誰だったのか。
嗚呼……
そっか。そうだったんだ。
生まれ変わっても、先生はずっと私の側にいてくれたんだ。
その日、運命の地で神に導かれた二人は遂に再会を果たした。
『やっと会えた』
ルビーの手がアクアに触れる。
前世の死の間際、最後に吾郎から感じた温もりを今世でもう一度アクアから感じ取る。
「あったかいね、お兄ちゃん」
「そうだな……」
ルビーの前世を知って驚いたアクアだったが、一度は死に別れたさりなとの再会に喜びを感じていた。
こうして、これからも愛する家族として幸せなハッピーエンド!
……と思われたが、実は、アクアはルビーの抱えていた特大の爆弾を核爆発させていた。
「もう絶対に離さないからね。
ルビーの両目の瞳に一番星のように輝く星が宿り、ギュッとアクアの手を握りしめた。しかし、アクアにだけは、向けられたルビーの瞳がほんの刹那の間だけ瞳が黒く染まったように見えた。
『せんせ、好き!結婚して!』
『残念だったな。
……前世の約束を真面目に考える時がついに訪れてしまったのだ。
次の日
ルビーのところへ向かおうとしていた、烏達を従えている謎の少女は、目の前に立ち塞がる謎の黒いスーツの男と対峙していた。
「なんでいつも邪魔するのかな、
他所の星から来た存在にあまり関わってほしくないのだけど」
「私はね、彼女達の幸せを何よりも願っているのだよ」
「なら、真実を教えてあげるのが彼女のためじゃない?」
そう言って烏達と飛び去ろうとしたが、外星人の男から放たれたグリップビームによって焼き払われかける。
かのスペシウム光線と互角、あるいは凌駕する可能性もある破壊エネルギーを秘めたグリップビームによって、危うく烏諸共焼き鳥にされかけた少女は目の前の存在を忌々しそうに睨みつけた。
「話はまだ終わっていませんよ」
「……魂を選ばれた二人には使命があるのよ」
「たかが惑星一つの上位存在の視点で語らないでもらいたいものだ。
使命があるとしたら、それは無限に広がるマルチバースで輝き続けることだろう」
「どこまでも傲慢ね。これだから宇宙から来る侵略者は……!」
そうして再び睨み合っているうちに、泊まっていた宿からルビーとアクアの兄妹が出てきた。
「あら……?」
すると、少女は兄妹の様子を見て意外そうな表情を見せた。
その二人の姿は一見すると、とても仲睦まじい兄妹のように見える。
しかし、妹が兄に向ける目は兄に対してとは思えない程の情欲を孕んでいた。
「おはよう!お兄ちゃん!」
「……くっつき過ぎだルビー」
「大丈夫だよお兄ちゃん」
「だって私とお兄ちゃんはずーっと一緒にいるんだから!」
それにね、私16歳になったよ。
「………いいか、ルビー。
今は18歳に変わっているし、そもそも実の兄妹では……」
「大丈夫!ママもきっと、幸せならオッケーだって言ってくれるよ!」
そう言ったルビーの両目に宿った瞳の星は、今までよりさらに煌めきが増しているように見える。しかし、一瞬だけアクアに見せたドロリとした瞳の星は、心なしか復讐の炎なんかよりも遥かに混沌とした闇の光で黒く染まっているように見えた。
「いや、社会的にマズいだろ……」
「公表なんてしないよ」
今ならわかるよ。『嘘吐き』だったママの気持ちも。
それでも、今の私ならファンのみんなに……この世界のみんなにだって愛を届けられると思えるぐらい『愛』が溢れ出してくるの。
「ねえ、お兄ちゃん。
生まれ変わっても、ずっと側にいてくれた大切な人へと捧げる『愛』。
心の底から湧き上がる正真正銘の本当の気持ち。
この『愛』の為なら、私、どんな嘘だって吐いてみせる。
それに、もう綺麗にまっすぐアイドルを目指すのは無理だよ。
だって私、アイドルとしての幸せも、お兄ちゃんと
だからね、お兄ちゃん。責任とってね☆
「ずっと、一緒だよ✴︎」
その日、星野アイの光を継いだ星は輝きを増して、新たな一番星として再誕した。
あの日、雨宮吾郎が病院の屋上で見た、一番星の輝きと瓜二つの輝きを宿した少女は、輝く未来へ向けて足を踏み出す。
超新星の如く現れた『アイ』に並ぶ究極の星。
星野ルビー。
その覚醒によって物語は大きく動き出した。
「僕は、俺は……一体どうすればいいんだ……?」
流石のアクアでも、この事態は完全に予想外である。
こうして、アクアと妹ルビーとその他女性陣を巻き込んだ芸能界を舞台にした恋愛頭脳戦が幕を開けることになった。
そして、アクアが葛藤する中、早速ほぼ全ての事態を察した人物もいた。
「兄妹仲良くて羨ましいなぁ」
(アクアくんに向ける視線……アクアくんへの接触の仕方……声の弾み具合い……全部変わったねルビーちゃん。
まるで、ルビーちゃんが
「……私、ほとんど何もしてないんだけど……なんでやる気になってくれたのかしら」
「きっと、『愛』の力ですよ。次のライブが楽しみですね」
「あなた……こうなるってわかってたのね」
「さあ、何の事やら」
「……一応聞いておくけど、アイドルとして以前に、倫理観的に色々とまずいんじゃないの?」
「地球の倫理観など関係ありませんよ。
私はただ、あの輝きに溢れた星を見ることができればそれでいいのです」
「あら、外星人なんてロクでもないと思っていたれど、意外と面白いことも言うのね」
「幸せの形は人それぞれですから。
それに、多少この星では優れている程度の『神』を名乗る傲慢な存在も大概だと思いますがね」
「……やっぱり、あなたとは相容れないようね。でも、運命に導かれたあの兄妹の恋路には、ちょっと興味が湧いたかも」
超越者達が見守る中、アクアの新たな苦難?の物語が始まった。
「いずれ導かれた兄妹には使命を果たす時が必ず来る。でも、それまでの間は邪魔な外星人もいる以上、手を出すの一旦やめておくことにするわ」
「賢明です。私は争いを好みませんから」
「よくもぬけぬけと……その手で一体どれほどの生命を手に掛けてきたのかしら」
「わかりかねますね。
Q 前世で家族もほとんど見舞いに来てくれない中、最期の時までずっと傍にいて寄り添ってくれた大好きな人がいて、転生してやっと会えると思っていたら、大好きな人は既に殺されているとわかり、もう二度と会えないと思って絶望したら、大好きな兄が大好きな人の生まれ変わりであり、前世の約束を守って生まれ変わってもずっと側にいてくれた事が判明した時の星野ルビーの心情を答えよ。
A 「結婚しよ☆」
(アクア限定で病みの)一番星を宿す完璧で究極のアイドル妹。
アルティメット・ルビー爆誕!
ちなみに、この作品のオカルト的存在は、少女(推定神)、宇宙から来た外星人、そして黒川あかねちゃんです……人間なら大体トレースできる上、ほぼ確実に大体の真相に近づいてしまいます。加えて、流石に外星人の思考はトレース不可ですが、トレースできない存在を逆説的に人外判定できてしまうという完全にバグ仕様ですね。一回でもオカルトを観測してしまうと、察知能力までとんでもないことになりそうですねこの娘(白目)
それと、ウルトマン世界基準での少女(推定神)がどれぐらいの存在なのか考えるの難しいですね……
ノアがマジもんの神と崇められてたりしてるから、人類視点だとウルトラマンは全能の神ではないけれど神の如き力は持ってる存在って感じかな〜?とは思いました。とはいえ、ウルトラマンは完璧な存在ではない。ウルトラマンは神ではない。と作中で実際に言われていますからね。(キングとか一部例外を除く)
とりあえず、別作品ですが宇宙からの来訪者と地球産の神様の基準がはっきりしている型月基準で考えて…
メフィラス、ウルトラマン=ORT、セファール枠
(宇宙から来た神霊諸共地球という星を滅ぼす事が可能な存在)
少女(推定神)=地球の神霊枠
ぐらいかな?って感じで書きました。
上位存在どうしで戦闘することはないですが、色々考察とかしてもらえると嬉しいです!
もしもアクアが恋愛相談するとしたら、誰が一番ベストだと思いますか?
-
姫川(異母兄)
-
メルトくん(ある意味先輩)
-
不知火フリル(妹の友達)
-
???(頭外星人枠)
-
???(頭日本神話枠)
-
その他