「星野アイ。私の好きなアイドルです」 作:ネオマフティー
今回は原作のネタバレ要素を含んでいるので、もしネタバレが苦手な方は原作の7巻を読んでから読んでもらえると嬉しいです!
その2 『星を追いかけて』
sideアクア
役者として、僕には大きな欠点があった。
感情表現ができないという致命的な欠点だ。
そして、無理やり演じようとすると、僕はトラウマに苛まれてしまう。
いつもこうだ。演技を楽しもうとすると、あの日、アイが刺された日の光景が脳裏にフラッシュバックする。
「おい、しっかりしろ!気を確かにもて!」
うっすらと監督の声が聞こえたような気がした。
けれど僕は限界で、意識が深く深く沈んでいった。
鼻を突く、錆びた金物のような血の匂いがどうしても忘れられない。
少しずつ冷たくなっていく、アイの手の感覚がいつまでも頭から離れない。
「お前がもっと注意していれば……身を張って守っていれば……」
復讐の炎が形造った前世の俺が呪詛のような言葉を紡ぐ。
僕は反論する。アイは生きている。あの日確かに奇跡は起きたと。
「その奇跡がまた起きる保障はどこにある?」
それは……
「1秒でも早く、アイを死に追いやろうとした奴を細切れにすり潰して、心も体も痛めつけて死よりも苦しい地獄を味わわせなければならない。お前に演技を楽しむ時間も権利はねぇんだよ」
「お前がアイのためにすべき事は『復讐』だ。演じる事はそのための……」
そう言って、復讐の黒い炎が燃え上がった時だった。
『ここが君の分岐点ですよ』
その炎を遮って、
『”演技を楽しむな”ですか……私の苦手な言葉です』
『そんな君でも、
『しかし、君が真の意味で共演したいと、君が星の隣で輝きたいと願うなら別の道を進みたまえ』
『その苦しみも、悔しさも、悲しみも、全て糧にする道を』
『その先にこそ彼女の笑顔があるのだから』
そして、悪魔は僕に問いかける。
『君は、アイの為に星に何を願う?』
それは、アイを傷つけた奴をこの手で殺すこと……
『その選択の結果、彼女が悲しむとしても?』
それでも……
そう言おうとした時、ふと、僕はアイの言葉を思い出した。
『いつか、親子みんなで共演しようね』
そう言って、アイは僕とルビーの頭を撫でてくれた。
アイは、きっと芸能界の頂点で輝き続けるだろう。
ルビーは、きっとアイと同じ輝きを見せる凄いアイドルになるだろう。
二人のためなら、僕はなんだってできる。
でも、もし僕が罪を犯したら。
僕がいなくなったら、アイの願いは叶わない。
なら、優先すべきはアイの望みだ。
僕はアイを傷つけた奴を許せない。けれど、復讐の為にアイが悲しむというのなら、僕はその選択をする訳にはいかない。
……僕が星に願うこと。それは、アイの生きているこの世界で、アイと同じ舞台に立つこと。
「アイの輝きに相応しい、最高の役者になる事だ」
僕のその言葉を聞いて、悪魔はニヤリと胡散臭い笑みを見せた。
『それでいい。アイを愛し、アイに愛される今の君に、その感情は似合わないとも。今はしまって置くといい。いつの日か、役として演じるその時まで』
復讐の炎が消えていく。そして、あの日の光景の続き。アイの生き返った世界へと続いていく。
「なあ、お前は一体何者なんだ……?」
『それは、君自身の手で探りたまえ。だが、これだけは言えるとも』
『
その言葉を聞いて、ふと、前世の記憶が蘇る。
『君の幸せがそれだって言うなら従おう。だって、君はどうしようもないほどアイドルで、僕はどうしようもないほど君の
アイの幸せを願い、子供を産ませる事を決めた雨宮吾郎としての記憶。
未だ
『私は何度だって彼女を護ろう。何度だって彼女を救ってみせよう。だから、君は君にできる事をやりたまえ』
その言葉を最後に悪魔は姿を消し、僕の意識は覚醒した。
……そうだったな。やっと和解したよ。前世の俺と、今世の僕が。
アイが望むなら復讐に手を染めるのも構わない。
だけど、今、アイが望んでいる事はきっと違うものだろう。
今を生きる
「もう一回、お願いします」
「でもな……」
「大丈夫です。絶対にできます」
その時、心配そうにアクアを見守っていた監督は、確かにその光景を目撃した。
アクアの瞳から黒い復讐の炎が消えていく。
そして、溢れ出した輝きは片目だけに留まらず、その両目に星の輝きを宿した。
役者として第一歩を踏み出した、アクアの覚醒の瞬間を。
早熟の雰囲気が変わった……
あまり無理をさせたくなかった監督だったが、その瞬間を目にしたことですっかり気が変わってしまう。
「今なら面白い場面が撮れる」
その衝動を抑えきれなかった監督は、カメラを回す事を決断した。
かくして、幕は上がった。
今の僕にできること、それは、
たとえ、アイやルビーのように生まれつきの演技の才能が無かろうと関係ない。僕は僕の道を進もう。
僕/俺の全てをこの一瞬に賭ける。
やるべき事は唯一つ。世界を騙す、最高の『嘘』を吐くこと。
星に手が届くその日まで。
だって、僕が役者の道を選んだのは……
『本当に凄いよ!アクアならきっと誰よりも凄い役者になれる!』
そう言ってくれた、アイの笑顔のためなのだから。
まだ未熟なところはある。それでも、アクアの感情の入った演技は、確かに作品を彩る素晴らしいものだった。
「演技に感情が乗っている。乗り越えたか、早熟」
これから大きくなっていくこいつは、一体どんな役者になるのだろうか。
監督だった五反田 泰志はそう期待せずにはいられなかった。
「どうだ、芝居は楽しかっただろ!」
そう言った監督に、アクアは強い意志を感じる煌めく星の瞳を向けて答えた。
「……まだわからない。だけど、これだけは言えるよ監督」
「僕は、誰よりも凄い役者になる」
いつの日か、アイと同じ舞台に上がるために。
「それで、何があったんだ早熟?」
「………こう、なんだか、怪電波に汚染されたような…なんとも言えない感じだった」
「何言ってんだ?」
その日、星野アクアは真の意味で、役者としての道を歩み始めた。
あの夢の光景が、アクアの深層心理が生み出したものなのか、本当に怪電波を受信したのかは定かではない。
それでも、アクアにとっての転機になったのは確かだろう。
とはいえ、アイを傷つけた父親を許すつもりは全くない。
「念の為に僕達の父親の事はしっかり調べておく。そして、そいつがもし、のこのことアイやルビーの前に顔を出したら容赦はしない」
もう無力で何もできないからと後悔に焼かれるのはごめんだ。
その後、アクアは苺プロ所属の
その経験が活きたのか、やがて、アクアは一本の特撮作品に出演することになる。そして、ついに、アクアは
正義の味方を演じる者と悪の宇宙人を演じる者として。
なお、片方は本物の宇宙人なのだが、それが知られるのはまだ先の話である。
おまけ
山本メフィラスの朝は早い。
睡眠を必要としていないが、人間として振る舞う為に仮眠をとり、起床後は、テレビの中で輝く推しの姿を見て一度尊死する。
そして、朝のルーティーンを終えた男は気を取り直してコーヒーを一杯味わうと、本日の撮影現場へと向かった。
「1日の計は朝にあり。私の好きな言葉です」
やがて、楽屋に到着すると、パラパラと一通り台本に目を通す。
役作りの為の情報は、それだけで十分だ。
男はいつもと同じように人間を演じる。
演じる個体が違うだけで、やる事はいつもと何も変わらない。
推定IQ10000を超える男の頭脳は、容易く演出家達の頭の中にある理想の姿を導き出し、それを完璧にトレースする。
「
かくして、撮影の準備は整った。
男は、その外星人としての人外の全力をもって芸能界への道を進む。
「では、行こうか」
渦巻くのは人間離れしたオーラとも言える異質な存在感。
生半可な輝きでは、容易く飲み込まれてしまう凶星を抱いて、男は撮影現場へと赴いた。
「いつの日か、共演できる日を楽しみにしていますよ」
芸能界のその先で、男は今日も、推しの子達を待ち続けている。
野心のある光のアクアは、これから関わっていく人達の脳を片っ端から焼いていきそう……そういうところはやっぱり親子だからかな?
そして、アクア自身は、既にアイに焼かれているから、さらにカオスなことになりそう……
もしもアクアが恋愛相談するとしたら、誰が一番ベストだと思いますか?
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姫川(異母兄)
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メルトくん(ある意味先輩)
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不知火フリル(妹の友達)
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???(頭外星人枠)
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???(頭日本神話枠)
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その他