「星野アイ。私の好きなアイドルです」   作:ネオマフティー

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子役時代に、アクアとかなちゃんがもしもう一回共演していたらって幻覚を見たので勢いで書きました。


生存IF√ 青色の宝石に焼かれて 有馬かな編

 

 

 

芸能事務所苺プロダクション。その事務所の一室に、事務所の大人達が集まっていた。

 

「いよいよ、うちのルビーのデビューだ!ここで完璧に仕上げて、ゆくゆくはドームに行くぞ!」

 

苺プロ社長、斉藤壱護。男は『アイ』をドームに連れて行ったように、今度は生まれた時から見守っていたルビーをドームのステージに連れて行く為に気合いを入れていた。

アイを娘のように思っていた壱護にとって、母親であるアイと同じアイドルを目指すルビーは、可愛い可愛いアイとは歳の離れた娘のような存在だった。

 

「あまりルビーにプレッシャーをかけないであげてね…」

 

「大丈夫だよ!ルビーはきっと私と同じあのステージに立ってくれるよ☆」

 

そのアイの言葉に、壱護社長はうんうんと深く頷いた。

 

「間違いなくルビーは『本物』だ。俺の目に間違いはない。歌以外はな……」

 

「ほ、ほら、ルビーだって特訓の成果が出て、最近はカラオケでやっと80点代ぐらいにはなったから……」

 

「とにかくだ。このJIFがあいつらにとっての初のステージだ。仕上げにアイドルの先輩として色々教えてやってくれ。頼んだぞ。『アイ』!」

 

「まっかせてー佐藤社長!」

 

「俺の名前は斉藤だ。いい加減に覚えろ元クソアイドル」

 

こうして苺プロは、B小町の復活ライブを行うジャパンアイドルフェスに向けて動き出した。

 

 

 

 

 

 

side 有馬かな

 

有馬かなが星野アクアと初めて出会ったのは、とある映画の撮影現場だった。当時子役として絶頂期を迎えていて天狗になっていた有馬かなに挫折を与えた存在。それが星野アクアだった。

そんな二人は、アクアが役者を続けていた事で、子役時代にも再び共演していた。

 

「久しぶりね、星野アクア!まさか芸名じゃなくて本名だったのね」

 

初めてアクアと共演した時、私は次こそ絶対負けないと誓った。

でも、この芸能界で生きている内にそんな対抗意識はすっかり無くなり、ただ、アクアが役者を続けていてくれた事が嬉しかった。

 

「昔と比べてなんか変わったよな」

 

「色々学んだのよ……」

 

自分の演技をひけらかして、他人を蔑ろにしていた私は、旬を過ぎればあっという間に仕事がなくなっていった。

 

「もう少し上手くやらねえと、この業界長くやれねえぞ」

 

五反田監督に言われた言葉を思い出す。

アクアや黒川あかねのように、大人達にとって、私より演技が上手かったり使いたい子供は居る。

それでも私を使う意味、それが大事なんだって気づいた。

 

「いつの間にか協調性なんか持つようになっちゃって」

 

「役者に重要なのはコミュ力でしょ。あの日、アンタが教えてくれた事じゃない」

 

そう、私はこの芸能界で生きていく為に変わった。アクアと五反田監督に互助意識の大切さを教えられてなければ、自分の居場所は芸能界から無くなっていただろう。

目指すべきは、我を通さず作品の品質貢献に努める使いやすい役者。求められるのは、他人に合わせる演技。そう演じていれば、少しでも仕事が貰えるから。

 

「それに、変わったのはアンタもでしょ」

 

何より、異質な天才だと思っていたアクアの演技は、確かに才能を感じる部分もあったけど、何より血と汗の滲む努力に裏付けされた『ずっと努力してきた人の演技』って感じがする私の好きな演技だった。

 

『アクアってこんな演技ができたんだ』

 

けれど、そんな姿を見ていると、アクアはどんどん進んで行って、私はどんどん置いていかれていく。そんな気がしてならなかった。

 

 

「……まだ子供(ガキ)だろうに、曇るのは早いだろ」

 

 

撮影が始まる。

カチンコの音が強く響き、カメラが回り始める。

ずしりとした空気が辺りを満たし、人生そのものを問われるかの様な長い一瞬が始まる。

 

私に求められているのは、黒子の様に存在感を消して舞台装置に徹すること。

自我は要らない。

 

『ほら、照らしてあげるから』

 

作品が良くなる、皆の幸せになる演技をしよう。周りの星を照らすように振る舞うのが私の……

 

「違うだろ。お前の演りたい演技は」

 

そんな時、私を見つめる星の瞳が『眩しかったあの頃に戻れよ』と訴えかけてくる。

 

「演りたいようにやりなよ有馬かな。舞台は整えてやる」

 

『輝きが失われるのを見るのは、もう二度とごめんだ』

 

アクアは回想する。

かつて、一人のファン(外星人)によって星の輝きは世界に繋ぎ止められた。

けれど、あの時、アクアは失われていく輝きをただ見ている事しかできなかった。

でも、今のアクアなら役者として失われそうな輝きを()()()事ができる。

 

「お前が調整に周る必要なんてない。それは全部俺がやってやる。だから、持って生まれたその輝き(スター性)をもっと俺に見せてみろ!」

 

アクアの演技は完璧に周りをフォローしていた。

そして、星野アクアによって、有馬かなはもう二度と当てられないと思っていたスポットライトに再び照らされた。

 

「なによ……それ…。せっかく覚悟決めたのに……」

 

アクア……アンタが悪いんだからね。

 

私を見なさい!星野アクア!

 

その日、アクアと共演した私は心の底から役を演じる事ができた。

 

「有馬はまだ子供なんだから、たまには我を通す位が丁度良いだろ」

 

「私はもう立派なオトナよ!」

 

「オトナ?……フッ」

 

「あ、今鼻で笑ったでしょ!」

 

「……有馬は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから、もっと自信持てよ」

 

「………バカ」

 

素直に褒めるのは癪だけど、輝いて見えたアクアはきっと凄い役者になると思う。

作品に寄り添い、役者の強みを引き出す巧みな受けの演技。そして、時々見せる、周りを食べてしまう様な刹那の輝き。

アクアの瞳に星が宿っているように感じる時、私は、あの『アイ』と同じ感覚をアクアから感じた。

 

『そこをどけ。俺は役者として、『アイ』と同じところまで登り詰めてやる』

 

そう何かを訴えてくる感情の入った演技に、私はどうしようもなく惹きつけられた。

 

「あれは錯覚だ」「僕には天性の演技の才能が無いからそれっぽく見せているだけだ」「嘘を吐くのは得意だから、それっぽく『アイ』と同じように、カメラにだけ良い演技を見せて騙しているだけだ」とか、自分を下げる事ばかり言うけれど、普通そんな事できないから。

 

『今日あま』の時に鏑木さんも言っていた。

 

「かなちゃんが仲が良かったおかげで、犯人役はアクアくんが出演してくれたよ」

 

「アクアくんは最高の投資対象だよ。それに、アクアくんがいたら、かなちゃんも自分の演技できるでしょ」

 

そう言って鏑木さんは、将来の金の匂いを嗅ぎつけた守銭奴のような、あるいは、アイドルに狂わされたファンのように、何かを期待する目をアクアに向けていた。

 

初めて会ってから十数年。

最初は天使みたいだと思ってたアクアも、どんどん憎たらしく育っていった。でも、間違いなく、アクアは私の星だった。

 

それなのに……

 

テレビで目にしたのは、出演した恋愛バラエティショーで、よりにもよって黒川あかねとキスを交わしてカップルを成立させたアクアの姿だった。

 

「このスケコマシ三太夫が……!」

 

以来、有馬かなは、しばらくの間アクアと口を利かなくなることになった。

 

 

 

 

新メンバーのMEMちょが加入し、無事にセンターも決まったB小町のメンバーの三人は、この日、事務所の社長の斉藤壱護に呼び出された。

 

「ステージまでもう日数もない。よって、追い込みをかけるために助っ人を連れて来た!」

 

助っ人……それって、もしかしてアク……

 

「よろしくー☆」

 

一瞬期待したものの、出てきたのは、アクアではなくマスコットのようなうさぎの着ぐるみを着た謎の人物だった。

 

「いや誰よ!?」

 

「この声……苺プロ……アイドル関係……(あっ察し)」

 

MEMちょは着ぐるみの中の人物にすぐに察しがついたが、アクアじゃなかった事に少しもやもやして気が立っていたかなは、あまり頭が回っていなかった。

 

「こんなのに、本当にサポートできるの?」

 

すると、そう言われた謎の人物は着ていた兎の着ぐるみをパカリと取った。

 

「これでも私、昔は凄いアイドルだったんだよー☆」

 

着ぐるみの中から、誰もが吸い寄せられる天性の輝く瞳を持つ、一番星のような女性が現れる。

 

元B小町不動のセンター『アイ』

元国民的アイドル。現芸能界の大女優。

 

「おい、正体隠すんじゃなかったのか?元クソアイドル」

 

「やっぱり着ぐるみって暑いよね!」

 

そう言って太陽のような眩い笑顔で微笑んだ彼女に、かなは秒速で土下座した。

 

「舐めた口聞いて誠に申し訳ございませんでした!」

 

(生のアイだ!見た目若ぁ!本当に年上!?)

 

ついでに歳を気にしていたせいか、MEMちょにちょっとだけ謎のダメージが入った。

 

「今日はB小町のOBとして手伝いに来たよ!」

 

「マ……アイさん!」

 

「助っ人どころか、今からアイドルに復帰しても全然頂点狙えるような……」

 

「いやー、たまにもう一度ステージに立ちたいなーって思う時もあるけど、流石にもう年だからねー」

 

「ぐふぅ!?」

 

「ほら、肌の艶とかー」というアイの言葉を聞いたMEMちょに謎の致命傷が入った。

 

「あと、サポートのためにぴえヨンにも手伝ってもらうから」

 

「ヤァ」

 

「いや、アンタもかよ!」

 

「「ぶふぅ!」」

 

すると、ぴえヨンを見たアイと何故かルビーが同時に吹き出した。

どうやら、ブラコン度の上昇していたルビーの目は誤魔化せなかったようだ。

 

何吹き出してんだバレるだろう。

というかルビーにはさっそく正体バレたか。

……筋肉がたりなかったか?

 

「よ、よろしくねア……ぴえヨン!」

 

また、アクアのあひる声がツボったのか、ゲラゲラと笑うアイからも秘密が漏れかけた。

 

アイまで……もう不安だ。ボロが出ないように祈るしかない。

 

こうして、B小町メンバーの最後の追い込みが始まった。

 

「まずは体力だよね!」

 

坂道ダッシュあと10本!

 

「「「ひぃー!」」」

 

「そして、疲れ切った後にセットリスト通しで3回!笑顔も忘れずに!」

 

「「「サインはB♡」」」」

 

「どうですか?」

 

「うん。細かい所をミリ単位で調整し直そっか!」

 

アイはかなりの完璧主義者だった。

 

走って、歌って、踊って、体力を鍛えながら、アイによってミリ単位の調律を施される地獄の追い込みが続いた。

 

「2曲目のサビ前さ!上手側からぐるっと回って入れ替わったらカッコ良くない!?」

 

「あー良いかも!」

 

それでも、ルビーやMEMちょにとっては憧れ続けた『アイ』との特訓は刺激になる事も多く、とても満足に溢れていた。『アイ』が名実ともに芸能界の頂点に立てたのは、生まれ持った才能だけでなく、それを咲かせ続ける為の多大な努力が備わってこそのものだったというのが、改めて理解できた。

 

「そしたらここのアレンジもさー」

 

「……どっからあの元気出てくるのかしら」

 

ただ、かなだけはアクアのことを引きずっていて、あまり元気がなかった。

 

星野ルビー。

アクアの妹のこの子は本物だ。

アクアが言っていたように、この子には天性の何かがある。

そんな子が、同じ事務所の憧れのアイドルのずっと側に居ることができたのは、きっと何かの運命なのかだろう。

 

『アイ』

彼女は、売れるべくして売れた本物だった。

アイドルを引退して女優になった彼女とも何度か共演させてもらったけど、私は共演するたびに格の差を思い知らされた。

彼女が出演する作品は、その殆どが、彼女によってもっていかれる。

純粋な演技力においては現在台頭しつつある黒川あかねや姫川大輝のように彼女を凌ぐ人間はいるのだが、その演技の自力差を補って余りあるまるで私達全員が彼女の引き立て役にすぎないように錯覚してしまう天性の輝き。

その輝きの中で、真の意味で共演できているのは、役者の中でも最上位の極小数の役者達だけ。

 

だからこそ、そんな困難な道を突き進んでいくアクアの事が、私には眩しく見えていた。

 

アクアは私にも輝きがあるって言ってくれたけど、そんなものは子役時代にとっくに枯れたと思う。

……だけど、少しだけ思う。

もしも、まだ私にそんなものが残っていて、もし『アイ』より凄い女優になれたなら、その時は……

 

『アクアはもっと私のこと見てくれるのかな』

 

アイドルになったのだって本当は………

 

「……何考えてるんだろ。もう終わったことなのに……」

 

そうして、ベランダで黄昏ていると、ぴえヨンが話しかけてきた。

 

「後悔してる?アイドルになった事」

 

「ぴえヨンさん……」

 

「自分で決めた事なので後悔とかは…でも、全然アイドルやれる気がしない。センターなんてもってのほか…」

 

「歌上手いのに、なんでセンターそんなに嫌がるの?」

 

「だってセンターってグループの顔なんですよね。それに相応しいのはルビーみたいな娘で私なんかが居るべきポジションじゃない」

 

「……私なんかって何?有馬かなは凄いと思うけど」

 

「皆そうやって適当な事を言うじゃないですか。何にも知らないくせに。私の何を知ってるんですか?」

 

「毎朝、走り込みと発声欠かさない努力家。自分が評価されるより、作品自体が評価される方が嬉しい。実はピーマンが大嫌い……」

 

「え……私の事めちゃくちゃ見てくれてる。嬉しい……」

 

嬉しかった。もうアクアぐらいしか見てくれていないと思っていたのに、他にも私を見てくれていた人がいたことが。

 

「もしかして、私のファンなんですか?」

 

「そうだよ」

 

「えーうそー………居たんだ。今の私にファン」

 

それから、私はどんどんぴえヨンの事が好きになっていった。

あれ?フツーに話してて楽しいや。珍しいこともあるもんだ。

この人のこと、本当に好きになれそうな気がする。

もうアクアなんてポイしてこっち好きになろうかなー……

年収億いってるし正直ありよねー……

 

 

 

 

 

 

「ぴえヨンさんと有馬ちゃん、すっかり仲良くなったねぇー」

 

「あははーそうだねー」

 

(まーたお兄ちゃんが誑かしてる!ライブが終わったら説教確定ね!)

 

「なになに!どうしたの?」

 

「あ、マ…アイさん!」

 

「へー。かなちゃんとぴえヨンさん仲良いんだね〜」

 

(流石アクア。モテモテだねぇ〜。あかねちゃんか、かなちゃんかはわからないけど、このままだと初孫も時間の問題かな?アクアの子供なら、私は絶対愛してみせるから!でも、この歳でおばあちゃんになるのかー……)

 

そんな二人の様子を見て、こっそりと幸せ家族計画の想像を膨らませるアイだった。

 

「でも、やっぱりあのあひる声は面白すぎるね。もう無理、耐えられない!」

 

あと、息子の声真似あひる声は、アイに相当ツボったようだ。

 

 

 

 

 

 

その日の夜、なかなか寝付けず寝室を出た有馬かなは、別の部屋の隙間から偶然覗いていた床に置かれているぴえヨンのマスクをみつけた。

 

ぴえヨンのマスク!

頑なに取らないから気になってたのよね!

 

そして、そっと部屋を覗き込んだかなが目にしたのは、ぴえヨンと同じジャージを着た、瞳に星を宿した金髪の青年の姿だった。

 

「……ア…クア!?」

 

惹かれていたぴえヨンの正体を知った有馬かなは、またしてもアクアに焼かれた。

子役時代、『今日あま』の撮影の時、そして、今回。通算三度目だった。

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「久々のライブだ。私も気合いを入れ直さなくては!」

 

とある公民館。そこにはサイリウムを振る二人の男達がいた。

その内の一人であるメフィラスは、ついに推しの子である星野ルビーのデビューとあって、かなり気合いを入れていた。

 

「これがオタ芸?というものか……」

 

「そうだ!これは、推しの為に捧げる神聖な行為なのだリピア」

 

また、メフィラスはまだまだ未熟?なリピアにもオタ芸のなんたるかを徹底的に叩き込んでいた。

そんな時、メフィラスのスマホに一件の通知が届く。

 

「おや、苺プロの斉藤社長からですか」

 

『JIFの件で相談がある。酒は奢るからいつもの場所で頼む。』

 

「……!飲みに行くぞ、リピア」

 

「今度は何をするつもりだメフィラス。また、星野アイが参加する運動会?や授業参観?というものに参加する人間達に認識阻害やマインドコントロールを掛けに行くつもりか?流石にこれ以上の君の原生人類への過度な干渉に……」

 

「……いいかねリピア。推しの為にする事なら卑怯もラッキョウもないのだよ」

 

この外星人開き直りやがった。そう思ったリピアだった。

その後も「推しの為に貢ぐのがファンというものだ〜」としみじみと語るメフィラスに何を言っても無駄だと悟ったリピアは、これ以上の突っ込みを放棄したのだった。

 

しかし、後にリピアもメフィラスを見習って、人類への推し活(禍威獣退治)を始める事になるのだが、それはまだ先の物語である。

 

 

 

 





有馬かなのたぶん一番厄介ファンの某Aちゃん。

「かなちゃんはね、周りと演技の歩幅を合わせたりなんてしないし」

「皆んなと一緒に生きていく為に星を照らす存在になろうなんて思ったりなんてしないし」

「ずっと身勝手で、圧倒的で『私を見てって』演技をして太陽のように眩しく輝いてなきゃいけないの!」

もしもアクアが恋愛相談するとしたら、誰が一番ベストだと思いますか?

  • 姫川(異母兄)
  • メルトくん(ある意味先輩)
  • 不知火フリル(妹の友達)
  • ???(頭外星人枠)
  • ???(頭日本神話枠)
  • その他
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