森の中の整備された街道で悲鳴があがった。
魔物に襲われた少女。
壊れた馬車。
力尽きている護衛の冒険者。
少女の腕が魔物に引きちぎられて、食われる。
「あ゛あぁあああっ!!」
もう片方の腕で、傷口を押さえる。血がぼたぼたと溢れ、地面に広がる。
腕を飲み込み、少女に迫る魔物。
「ひっ......!」
死にたくないのに。
追い詰められた少女は絶望で頭がいっぱいになる。
と、そこに颯爽と現れる男。
魔物を一撃で倒した男は、少女の姿に眉をしかめる。
「はぁ、はぁ」
腕の痛みで、事態を飲み込めない少女。
男は時間系魔法陣を用いた治癒魔法により、腕を再構築する。細かい傷も癒してあげた。
「え......?」
「大丈夫か?」
痛くない。動く。信じられなくて、助けてくれた存在を見る。
(大丈夫そうだな)
男はそう判断し、「じゃ」と言って去っていった。
「ま、待って......!」
当然呼び止めると、男は立ち止まる。
「あの、助けてくれて、ありがとうございます!」
「うん」
「ど、どうやってお礼すればいいか......」
「いや、いいよ。通りかかっただけだし」
「そんなわけには......!後ほど相応のお金を払います」
「いらないから。じゃ」
またも去る男。
「ま、待ってください!」
「なに?」
「あの、助けて貰った分際で差し出がましいことは承知の上なのですが、護衛の方達がその......殺されてしまったので、街まで同行しては頂けないでしょうか?」
「ごめん、そっちとは逆方向なんだ」
「お願いします!報酬はたくさん払います!だから......!」
「いや、本当にお金はいらないんだって」
「そんな......私、どうしても一週間後までに街に行かなければいけないんです!」
「そう言われても、こちらにもやることがあるし」
「うぅ......」
少女は泣いてしまった。
危険なのはもちろん、馬車が壊れているため少女の足で一週間後までに街に着くのは到底不可能だった。
「どうにか、お願いできないでしょうか?」
「駄目なものは駄目だよ。お金はいらないけど、君の体で払ってくれるなら考えるよ。じゃ」
そうは言ったが当然駄目だろうと、去っていく男。
「......」
(私の、体......)
少女は考える。
一人で街に向かえば、魔物に襲われても為す術がない。
少女にはやるべきことがあるため、男と同方向に行くこともありえない。
このまま街に着く前に死んでしまうなら、私の体くらいこの男に許してしまえばいい。
「待ってください!払います!」
「......」
「私の体なら、街に着いた後に何をしてもらっても構いません。だから、お願いします!私を街に連れて行ってください!」
「......本当に?」
「はい」
力強く頷く少女。
こうして、男は少女を街まで送り届けることになった。
〜〜〜〜〜
男の体力は凄まじく、少女と荷物を持って一日中走ることが出来た。馬車よりも速かったため、少女の目的の日までに余裕を持って街に着くことが出来た。
少女の予定まではまだ日にちがあったため、約束の通り体を男に払うことになった。
普通の宿の、ベッドが一つしかない部屋を二人で取る。
「じゃあ、服を脱いで」
「っ......」
分かってはいたことだが、出会って間もない男に肌を晒すのは、少女にとって耐え難い辱めだった。
しかし、しっかりここまで送ってもらったため、約束を反故にするのはありえなかった。
命令の通り裸になる少女。
たまらなく隠したいが、自分の体は今日はこの人のものなのだと理解しているため、少女の腕は中途半端な位置で宙に浮いていた。
「じゃあ、これを着て」
「え?」
そんな少女に、男は魔法で女物の服と下着を作り、差し出した。
覚悟していたことが起きずに戸惑う少女だが、言われた通りに服を着た。
ピンクのネグリジェだった。
(おぉ、かわいい。ロリはやっぱりネグリジェが似合うな)
男は実は犯す気はなかった。下着を替えさせたのも、一日着た服は寝る前に替えるという習慣に基づいてのものだった。
「おいで」
ベッドに寝転び、少女を布団の中に誘う男。
「......???」
少女は男が何を考えているのかよく分からなかったが、言われた通りに布団に入った。
(やばい。ロリと一緒に寝てる。)
男は女の子と一緒に寝たいだけだった。
そのまま少女を抱き寄せる。
(あったかい。かわいいなあ。)
頭を撫でるなどして少女を可愛がる男だが、しばらくすると静かに寝息をたて始めた。
(......え???)
少女は放心していた。最後までされると思っていたのに、なぜか抱き枕になっている。
全く意味が分からなかったが、やがて少女も意識が薄くなり、気付けば次の朝になっていた。
体を起こすと、ちゃんと服を着ていて、何かされた形跡もない。
「ありがとう!昨日は幸せだったよ」
「え?あ、はい」
「じゃあ、俺は元々の用事を済ませに行ってくるから。じゃあな」
男は大層満足気な表情で別れを告げた。
「......???」
今だに何も理解できていない少女だけが、部屋に残された。