友人であるライトハローさんとお酒を呑んだある日のこと

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ライトハロー「トレーナーさん好きです!」

「トレーナー、もしかして香水変えた?」

「うん、まあちょっと気分転換にね」

いつも通りトレーナー室でパソコンと睨めっこをしていると、横から担当が顔を覗き込んできた。

「ふーん、なんか大人っぽくなった感じする」

「まあ一応大人の女だからね」

ふふっと冗談混じりに笑って見せると、彼女は目を細めてこちらを見つめてくる。

なんだろう、何か変なことでも言ってしまっただろうか。

「前まではジャージばっかりだったのに今じゃきちんとした服だし、化粧だってしっかりするようになったし、あとは──」

一つ一つ指折り数えるように挙げていく彼女の言葉を聞き流しながら考える。

確かに言われてみれば、彼女ライトハローと親しくするようになって自身の生活は大分変化していた。

今までは仕事終わりや休日にご飯を食べに行ったりしていたぐらいだったのだが、お互い歳が近く趣味が合うこともあって今では休みを合わせて映画とかライブに行くようになったのだ。

それに、合わせて以前よりも身嗜みには気をつけるようになっていた。

 

「ほんとトレーナーって変わったよね。初めて会ったときはもっとこう、地味な感じっていうかさ」

「おい」

「ごめんごめん、別に悪い意味じゃないよ」

「……で、結局何が言いたかったの?」

「うーん、なんていうか、いい意味で垢抜けたなって」

「そういうことね」

そういえば最近は同里や知り合いに会うたびに、雰囲気変わりましたねと言われることが多くなってきた気がする。

これも彼女と仲良くなったおかげかもしれない。

やっぱり持つべきものは親しき友だな、などと一人で感慨に浸っていると。

pp……prrr……

スマホの着信音が鳴り響く。

画面を見ると、そこにはハローさんの名前が表示されていた。

ーよろしければ、今夜一杯どうですか?

 

「こんばんは、ハローさん」

互いの仕事が終業した頃合いを見て待ち合わせ場所に向かうと、既にハローさんの姿があった。

「すみません、待っちゃいました?」

「いえ、私もちょうど来たところなので」

そう言って笑う彼女につられて私も笑ってしまう。

落ち着いた色合いのブラウスにフレアスカートに身を包んだ姿は綺麗というよりは可愛いという言葉が似合っていた。

互いに飲み物を注文してから他愛もない話に花を咲かせる。

「そういえば、この前のライブのチケット取れたんですね」

「はい、お陰様で。本当にありがとうございます」

「いや、私は特に何もしてないですよ」

少し照れたように頬を赤らめる彼女が可愛らしくて、思わず抱きしめてしまいそうになる。……いかんいかん、相手は同性だぞ。

「お待たせしましたー、生二つになります」

店員さんがジョッキをテーブルに置くと同時に乾杯をして、喉を鳴らしながらビールを流し込む。

「はぁ、美味しい……」

「美味しいですねぇ……」

二人でしみじみと呟いて、また一口。

「そういえば最近どうですか?お仕事の方は」

「そうですねぇ、まあぼちぼちと言ったところですかね」

「ぼちぼちですか……それならよかったです」

ほっとしたような表情を浮かべて小さく息をつく。

それから運ばれてきた料理を口に運びながらぽつりぽつりと会話を交わしていく。やはりこうして誰かと一緒に食事するのは楽しいなと改めて実感する。

互いに仕事が忙しくて中々予定が合わないのが難点だが。

その後も会話を弾ませながら時間は過ぎていき、そろそろお開きにしようかという時間になったとき。

突然、ぐらりと視界が歪む。

「大丈夫ですかトレーナーさん

!?」

慌てて椅子から崩れ落ちそうになった身体を支えてくれる。

「すみません、ちょっと飲みすぎちゃったみたいで……」

「とりあえず今日はもう帰りましょう、歩けますか?」

「はい、なんとか……」

肩を貸してもらいながらどうにか会計を済ませる。

外に出ると夜風が火照った肌を優しく撫でた。

 

 

距離が近いせいだろうか、胸の鼓動が大きく聞こえてくる気がする。

そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にかマンションの前に着いていた。

「じゃあ、おやすみなさい」

「あの!」

部屋に入ろうとしたところで呼び止められる。

振り返ると、彼女は何かを言い淀んでいる様子だった。

「どうしたんですか?何か忘れ物でも……」

「…………いえ、その…よかったら

泊まっていきませんか?」

そう言うと、上目遣い気味にじっと見上げてきた。

その姿はまるで捨てられた子犬のようで。

こんなの断れるはずがないじゃないか。

明るい色のトーンで統一された室内には軽快なBGMが流れる。

ソファに座ってぼんやりとテレビを眺めていた私は、何気なく時計を確認する。時刻は既に深夜1時過ぎを示していた。

「…トレーナーさん」

顔を上げると、心配そうな面持ちでこちらを見つめている彼女と目が合う。どうやら頭を撫でられているようだ。

「……子供扱いしないでもらえますか?」

「ふふっ、ごめんなさい」

軽く抗議すると彼女は微笑んでから手を離した。

そして、今度は私の方から彼女の頭へと手を伸ばす。

さらりとして滑らかな髪の感触を楽しむようにゆっくりと、何度も往復させる。

やがて、くすぐったかったのか身を捩って逃れようとする彼女を逃さないよう、もう片方の腕も使ってしっかりと捕まえてから。そのまま引き寄せるようにして抱き締めた。

耳元に彼女の吐息がかかる。

胸いっぱいに甘いの匂いが広がる。

ずっとこうしていたいと思えるほどに心地が良い。

このまま時が止まればいいと思った。

しかし、無情にも終わりは訪れるもので。

その温もりを名残惜しみながらも、私は彼女を解放することにした。

顔を真っ赤にして俯いている彼女に笑いかける。

「……さっきのお返しです」

悪戯っぽく言ってみせると、彼女の赤らんだ頬がさらに赤みを増した。

その仕草があまりにも可愛らしくて思わず口元に笑みを浮かべてしまう。

「ほら、もう遅いし寝ましょう」

「そうですね、トレーナーさんはベッドを使ってください」

「いや、私がソファーを使いますよ」

「ダメですよ。お客様なんだからちゃんとゆっくりしてください」

結局、二人で一緒にベッドを使うという案が採用されることになった。

「それでは、電気消しますね」

「はい、おやすみなさい」

部屋の明かりが消さて、辺りは暗闇に包まれる。

私も目を閉じて眠りにつこうとするが、何故かなかなか眠れない。

理由はわかっている。

それはきっと……。

寝返りを打つふりをして、横を向くとハローさんとの距離が縮まった。

「……起きてるんですか?」

「……はい、まだ眠たくなくて」

「そうですか……」

しばらくの間、互いに何も言わずに沈黙が続く。

先に口を開いたのは彼女だった。

「……ねえ、トレーナーさん」

「はい」

窓から差し込む月明りによって薄らと照らされた姿は神秘的で美しく見えた。

見惚れてしまいそうになる自分を律しながら短く返事をする。

すると、彼女は少し躊躇うような素振りを見せた後に。

意を決したような表情で言った。

ー好き……です。

その言葉を聞いて、ああ、やっぱりそうなんだなと理解する。

それと同時に、自分の中で渦巻いていた感情の正体が何なのかを理解してしまった。

ーーーこの気持ちは恋だ。

それからすぐに、再び訪れた静寂を破るようにして彼女が続ける。

ーごめんなさい。いきなりこんなこと言われても困っちゃいますよね。迷惑だっていうのは分かってます。だけど、どうしても伝えたくて。

申し訳なさそうに謝る彼女に対して、私は首を横に振った。

そして、小さく深呼吸をしてから。

私も同じだと伝えるために、はっきりと口に出した。

好きです、と。

すると彼女は驚いたように目を丸くした後で嬉しそうな、それでいて泣きそうな笑顔になった。

その後、どちらからともなく唇を重ねる。

触れるだけの優しいキスだった。

それがとても幸せで、心が満たされていくのを感じる。

やがて、ゆっくりと離れた私たちの間には銀糸が架かり、ぷつりと切れた。

お互いに恥ずかしくなったのか、目を合わせることが出来ないまま黙り込んでしまう。しばらく経ってようやく落ち着きを取り戻した頃になって、彼女がぽそりと呟いた。

「……あの、もう一回だけいいですか?」

返事の代わりに、今度はこちらの方から。

私たちは何度も何度も互いの存在を確かめるかのように、長い時間、求め合った。

 

カーテンの隙間からは眩しい朝日が差し込んでいる。

その光に促されるようにして、私は目を覚ました。

隣を見ると、そこにはすやすやと眠っている彼女の姿が。

昨日のことを思い出すと顔が熱くなるのを感じた。

あんなに激しく愛しあったというのに、不思議と身体の疲労感はない。むしろ、今まで感じたことが無いくらいに満たされている気がする。

ふと、視線を感じて顔を上げると彼女と目が合う。

どうやら起こしてしまったようだ。

おはようございます、と言って微笑む彼女に挨拶を返す。

すると、彼女は急にもじもじとした様子で何かを言い淀んでいた。どうしたのだろうと思っていると、しばらくしてから消え入りそうな声で。

ーその……大好きです。

そんなことを言われたものだから堪らない。

私は衝動的に彼女を抱きしめると、そのまま勢いに任せて押し倒していた。

「わっ!?」

突然の出来事に驚いている彼女。白いシーツに包まれた柔らな肢体には所々に赤い印が刻まれていた。その姿に言いようのない興奮を覚えながら耳元に口を近づける。

ー私も大好きです。

そう囁くと、彼女は顔を真っ赤にして俯いてしまう。

我慢できなくなって、首筋に舌を這わせると彼女の口から甘い声が漏れ出た。

もっと聞きたいと思い、今度は強く吸い付く。

ちゅっと音を立てて口を離すと、そこには綺麗に紅い花が咲いていた。満足して眺めていると不意に声をかけられる。

ートレーナーさんって意外と積極的なんですね。

そう言われてハッとする。

いくらなんでもやり過ぎたかもしれない。

慌てて謝罪しようとするが、それよりも早く彼女にぎゅっと抱き締められた。

そして、悪戯っぽい笑みを浮かべて言う。

ー責任取ってくださいね?


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