ふと思いついたアイデアを書き留めただけなので続くか不明。
こんなゲームやりてぇなぁ、の気持ちの塊。
「はひ──ぃ、つっかれたー!」
新しく入った後輩のミスに端を発する残業を終えて家へと戻り、服を着替え、化粧を落としてお風呂に入る。
夕食をそこそこで終わらせ、疲労のままベッドに飛び込めるのは独り暮らしの気楽さである。
そのまま寝入りたくなる衝動に襲われるが、その甘美な誘惑から大きく伸びをして逃れる。
仕事は明日は休み、私の夜はここからが本番なのだ。
「うっ、んん…………」
首の後ろの
無線を使って体内のナノマシンに接続する機材とかもあるにはあるのだが、環境によっては通信が不安定になるリスクがあるし……何より高価だ。
趣味の為にボーナス一回分が吹き飛ぶのは流石に厳しいものがある。
それに比べれば、
医療用と違って保険が効かないのはきつかったが、普及当初と比べればその費用は雲泥の差だ。独り暮らしのOLが、ちょっと背伸びすれば可能なくらいには。
そうこうしているうちに、ナノマシンが干渉して『待機中』のウィンドウが視界の中に現れる。
私は慌てて専用の椅子に座り、体の各部を器具で固定していく。
昔はベッドで横になっているだけでもいいくらい規制がゆるゆるだったらしいが、ベッドからの転落による骨折などの負傷事故の発生から規制が厳しくなったそうだ。
ナノマシンが身体の状態をスキャンして固定を確認し、視覚系に直接投影されているウィンドウが『待機中』から『確認完了』に変わると、一瞬の浮遊感の後、視界が暗転した。
視界が暗転して失われたのは視覚だけではない、触覚・聴覚・嗅覚・平衡感覚……味覚にいたるまで全ての感覚が失われ、そして一瞬で戻る。
ただ、戻った視界が映すのは殺風景な私の部屋ではない。
目の前にあるのは、落ち着いた色調の広い部屋。私が借りている部屋の3倍近くあり、品のいい家具や可愛らしい小物なども飾られている。
ここは
初期設定では私の部屋より殺風景なただの白い部屋なのだが、まあ、カスタマイズできると凝ってしまう人種というのはいるものだ。
設置されているオブジェクトの中には課金で手に入れた物も交じっている。数百円くらいのものではあるが。
特に仲の良いフレンド以外に見せるようなものではないので整える必要は無いのだが……中にはこだわり抜いて高額課金をする『ラウンジガチ勢』も居ると聞く。
私にとっては、たまにフレンドと女子会できる便利空間くらいのものである。
「さてさて~、『起動』『モンスターファーム
コマンドで起動するアプリを指定すると、再び視界が暗転し『Now loading……』の文字とデフォルメされたモンスターが映し出された。
『モンスターファーム
昔にあった名作育成ゲームが満を持して
そもそも、ゲームだとしても
迫力重視のアクションがコケてからは戦闘はより現実感を重視した規模になり、戦闘をメインに据えない作品も多く生み出されていった。
モンスターファーム
プレイヤーは自分のナノマシンIDやダウンロードした音楽・映像・オブジェクト・プログラムなどの発行IDなどのIDコードを基にモンスターを再生する。
序盤は再生したモンスターで街の依頼をこなしたりファームの自家農園を開墾してお金を稼ぎながらモンスターを育てる。
それなりにモンスターが育ったら大会に出るもよし、探検に出るもよし。そのまま農園を拡大するプレイだってできる。
なにより可愛かったりカッコいいモンスターたちと触れ合って遊べるのが特にいい。
一応のストーリーラインとしては名だたる大会を制覇して最高位のブリーダーになることが目標だが、結局はプレイするうえでのやりこみ要素感がある。
少なくとも私は、どちらかというならスローライフ寄りのプレイヤーだ。
「やっほーコルトちゃん! 今来たよー」
「あ、どうも! おかえりなさい!」
ゲームを起動して自分のファームに降り立った私は肩に鳥を乗せた女の子に挨拶する。
彼女はコルト、モンスターの育成を補佐したり色々な説明……ヘルプを担当してくれる
調教助手は本当はキャラメイクしてオリジナルの子を作れるのだけれど、私は一目見て気に入ったプリセットテンプレートの一つであるコルトちゃんに決めた。
お姉さん属性のホリィちゃんも捨てがたかったけど、童顔ドジっ子属性には勝てなかったよ……
「ワンッ! ワゥワゥッ!」
「はいはい、ポチも元気だね!」
コルトの元から駆けてきてじゃれついてきたのはファームで育成しているモンスターの一体、ハムライガーのポチだ。
オオカミのような姿をしたライガー種で、サブにウサギに似たハム種の因子が入ったモンスターである。
へそ天で『撫でる? 撫でる?』とこっちを見る姿は完全に懐いた大型犬だが、森仕事ではキッチリ猟師さんの補助もできる賢い子だ。
私のファームのアイドルなので、少し甘やかしてしまっている感は否めない。
「えーと、ナノハナは……農園で畑仕事だっけ。真面目にやった?」
「それが……半分くらいやった後、畑に埋まってサボっちゃったみたいで……」
「あちゃー、やっぱりか」
ファームは飼育舎の規模によって同時に育成できるモンスターの数が変わる。
今の私のファームでは同時に三体まで育成できるが、そのうちの一体がスエゾーの因子を持つプラント種、ヒネクレソウのナノハナだ。
私が育ててきたモンスターの中でも抜群に賢いのだが……その種族名の通り性根がまっすぐではない。
能力は光るものがあるのに、なかなか真面目にしないし、それでいて怒られるかどうかのギリギリのラインを突くあたり絶対わかってやっている。
しかし、賞金狙いの次の大会も近いし、へそを曲げられても困る。
どうせ大会前に『勝ったらパレパレ土*1よこせ』などと要求してくるに決まっている、お高い子である。
だが、食い扶持以上に稼いでいるから強く言えない悪循環。
「しゃーないなぁ、じゃあまずは残りの畑仕事すませちゃおうか」
「わ、私も手伝います!」
思い通りにならないことも多いけど、それを含めて私はモンスターファーム