世界に守られたエルフ、オラリオにて   作:アパオシャ

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第十四話

ヴァイトのもとにやってきたフィンの指示をまとめると、団員の育成のためにも手出しは少なめにして欲しいとのことだった。

その程度なら容易いとヴァイトが頷くと、若干気まずそうにフィンが続ける。

 

「とても難しいだろうけど、強いモンスターを可能な限り無事な状態で他を間引くことはできないかな」

 

その言葉にヴァイトは唸り声をあげながら天を仰ぐ。装備についているホルダーから本を取り出しページを捲りだすと、目線を忙しなく動かしながら答える。

 

「それっぽい魔法を探すけどあまり期待は...」

 

そういってグリモワールの流し読みを始めたヴァイトをみてフィンは、ヴァイトに頼りきりになってしまわないよう自制をしっかりしないといけないなと思いつつも、自身も明日、前線に立つ予定なので休憩しようと団長用にと唯一残されているテントに向かう。

 

「はぁ…」

 

まずは勝手に潜り込んでいるであろうティオネをつまみ出すことから始めないといけないフィンは休めるのだろうか。

 

ただ一つ言えることは、フィンがティオネの夜這いを想定に入れて体調管理をしているということは、ロキファミリア周知の事実ということである。

 

 

 

翌日、《転移門》で50層に着くと、そこにいるはずのアイズをはじめとした先遣隊の面々の姿はなく、代わりに書き置きが残されていた。

 

それによると想定よりモンスターの勢いが強く、万が一に備え遅滞戦闘中とのこと。

 

とはいえ、結局やることは変わらない。ベートが《伝言》を使わず、より時間がかかる書き置きを残したということは緊急性がなく、むしろ体を動かすための名目の可能性のほうが高い。

という訳で拠点の設営が始まった。

 

「レフィーヤ、ちょっといいっすか?なんで昨夜、ティオネさんが団長のテントから摘まみ出されてたんすか?

そういう対応されるのは見慣れてるっすけど、彼女、先遣隊にいたはずっすよね?」

 

「ええと、ヴァイトさんに袖の下を渡して転移させてもらったとかで…あ、これは団長には内緒でお願いします」

 

遠征の経験が多い面々は談笑しながら作業する余裕があるものの、今回初参加の面々は直後に戦闘が待ち構えていることもあり表情が硬い。

 

 

以降、つつがなく準備が終わり、書置きに残されていた集合地点に向かうと、戦闘用の陣形をなす。

 

ヴァイトは団員たちを班分けして指揮していたが、団長として長く活動してきたフィンは団員全体の情報を把握しており、彼の負担が増えてしまうものの、より効率的に指揮することが可能となっている。

 

「じゃあヴァイト。よろしく頼むよ」

 

前で戦っていた先遣隊が合流し、それを確認したフィンの言葉とともに前に出たヴァイトは一つの魔法を放った。

 

「《嘆きの妖精の絶叫》」

 

壁を背に展開するロキファミリアの前には様々な種類のモンスターの大群が眼前の敵を蹂躙せんと殺到しているのであるが、そこに理不尽が襲い掛かる。

 

ここに集まっていたモンスターのうち、弱い個体のすべてが魔石とドロップアイテム、そして灰を残し消滅した。

 

ヴァイトが前日の相談を受けて探し出した魔法が《嘆きの妖精の絶叫》である。この魔法は死霊系魔法詠唱者に人気の即死魔法の一つで、即死魔法の中では希少な範囲魔法でもあり、効果範囲内に即死効果を持った女性の絶叫が響き渡る。

 

本職の死霊系魔法詠唱者であれば、この場に存在するモンスター程度であれば生き残りはいないはずであるが、強い個体はほぼすべて生き残っている。

 

その理由は、ヴァイトの職業構成にある。ヴァイトの職業構成はほとんどが魔力系であり、その他の系統はWI、グリモワールの制約を軽減するために習得しているため、それらすべてが低レベルであり、一つの系統に特化していないため成功率や威力などが犠牲になっている。

 

しかし、その欠点が今回はうまく転んだ。元々即死魔法はレベル差によって成功率が大きく変動し、範囲魔法であるがために基本的な成功率が低かったこともあり、強いモンスターのみが抵抗に成功し、結果としてフィンの指令を完遂した。

 

その後は遠征隊の全員の出番である。

大盾を構えた隊員がモンスターの攻撃を受け流し、生じた隙を見逃さず武器を構えた隊員が隙間から前に躍り出て一撃を加え、魔法使いたちが砲撃でけん制している間に再びタンクが守りを固める。

この繰り返しで確実にダメージを与え、ゆっくりだが確実に、安全にモンスターを倒していく。

 

結局、一部好戦的な幹部が突撃するなどのちょっとしたトラブルがあったものの、無事にモンスターが打ち止めとなり、周辺でクエストに必要なものを集めるため一部を留守番として残し、幹部たちがさらに下の階層に下って行った。

 

留守番として残った連中のなかにヴァイトもおり、彼は手持無沙汰となっていた。既にMPは回復しきっており、WIのヒュギエイアの杯に回復効果を溜めようにも、既に最大HPにリソースのすべてを注いだLV100プレイヤー100人を完全回復させれるほど溜まっており、どうしようかと残ったほかの団員に相談すると、他の何かを貯めれないかという提案を受け、忘れかけていたスキルを使いつつ魔法を使う。

 

「《雷鳥乱舞符》《爆散符》《衝風符》」

 

ヴァイトが魔法を唱えると、手に符が現れた。

 

彼が持つ符術師系のクラスは少し特殊で、消費MPが高い代わりに符が形状の異なる巻物として働く。そのような利点があるにも関わらずヴァイトが忘れかけていた理由は、その使い勝手の悪さにある。

一つは使用時にわずかとはいえMPが必要な点。あとはインベントリなどに突っ込むことができないという性質がある。これが致命的であったのだ。

無論、このクラスのレベルを最大の10まで上げる頃には突っ込むことが可能になるのだが、もちろんそこまで上げてないのがヴァイトの職業構成である。

ただ、この符は他者にも使用できるという利点があるため、インベントリという概念のない冒険者たちには魅力的に映り、製作希望が舞い込んだのだ。

 

最大MPの9割を下回らないようにしつつ符を作っていると、拠点の端の辺りから違和感を感じとり、確認のため見渡しのよい場所に移動すると既にリヴェリアが動揺していた団員たちを掌握し、迎撃体勢を整えつつあった。

 

そんな中でヴァイトが誰かに尋ねるでもなく聞いた話によると、ヴァイトより遥かにダンジョンに詳しいロキファミリアでも見たことの無い、新種のモンスターの大群が押し寄せている状況だとか。

 

とりあえず先頭に魔法を撃ち込んで時間稼ぎをと考えたヴァイトがモンスターに目を向けた。

 

「わぁお...」

 

ヴァイトは強い意思(本人談)で目を背けたくなる気持ちを押さえつけたが、現実逃避を含んだ呟きまでは無理だった。

 

そこには、クソ運営と名高いユグドラシル運営でさえも滅多にやらない程の大群が居た。

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