遠山キンジの独白 作:緋色
それで前回のオチ。
屋根が脆かったせいで踏みしめた結果、屋根が崩落した。
直後に通報されてたのか機動隊が殴りこんできたりでてんやわんやしている間にいつの間にか中国人どもには逃げられていた。
「散々な目に遭った」
「まったくじゃ。遠山のが
「いや俺が文句言ってるの警察への対応がクソ長引いたことに対してだからな?」
現在は警察からの帰り道。
玉藻がいるから送迎してくれるとの事で、家まで送迎して貰っている所だ。
後部座席と運転席の間は防弾防音硝子。いたせりつくせりだな。
何でこうなったかというと。
あの後、7課の警視正と知り合いなので「玉藻様がお呼びだ!」というゴリ押しで玉藻に押し付けて逃げる予定だったのだが、玉藻は重要人物だったのか接待されて、俺は別室で厳重な聞き取り調査されていた。
――ジーサードは
どうでもいいがジーサードは治療のために海外に去ったそうである。
で、俺がその後の対応を解消しなくちゃいけないんだと思うが、なんだかんだ公に出来ない案件と認定されたらしくもみ消しは確定したようだ。
その流れでカチコミ等の違法行為はなかったことにされたし、全部あの東大卒とホストモドキがクーデターで組長と副組長になってたらしく全ての責任取る事になってるらしい。
いやー流石はヤクザの親分は器がデカい(棒)
「むしろお主は警察と懇意のようじゃのう。不敬な事をしとらんか散々謝られたぞ」
「何やってんだあのBBA?母親気取りか?」
「経緯を話す羽目になったが裏では協力してくれるそうじゃ。遠山の人脈には期待しておらんかったがそれなりにやりやすくなるの。褒めて遣わす」
……7課は宗教関連や獣人の監視も仕事だし丸投げするには丁度いいと投げたのは失敗だったか?まあ恨まれてるのは今更だし、素人が余計なことすんなと言ってるから文句言われる筋合いはないだろう。きっと。たぶん。
「それで?遠山の女はどうなるんじゃ?」
「菊代は――どうなんだろ?自然消滅だと思ってたがなんかそうじゃないっぽいし――未成年だからどっかの武偵校に転入して経過観察だろうな。一応武偵校で対犯罪対策の役に立てばある程度許されるからなあ」
正直どうかと思う武偵が犯罪者スレスレどころかもろ犯罪者結構在籍してる割にそれなりに機能してるから問題ないのだろう。たぶん。
そこら辺問いただしたら武偵の存在がだいたい問題と言っても過言ではないし。
「そうか。正妻は白雪なら側室はいくら取ろうと誰でも構わんぞ」
「なんでお前にその辺口出されねえといけねえんだよ」
なぜかレキがそれになってるらしいが俺純愛派なので多くいることが前提なのは頭が痛い問題である。
レキの場合、いらないと言ったら即自殺しかけた前科あるからな……。それで他の人間にあんまり興味ないみたいだし。どうすればいいんだ。
「遠山侍は女に好かれるからのぅ。まあやるだけやって捨てることはせんじゃろうし。片手の数に収まるくらいにするのじゃぞ?」
「凄い実感感じるけど。うちの先祖そんなんなの?もう遺伝子で決められてんの?」
一応、爺ちゃんも父さんもそんなに女囲ってるタイプじゃないし。
「遠山侍は五代に一人くらいなにかあれば女を増やすのがいてのぅ。遠山のは――まあ確実にそれじゃの」
「俺別に好かれることしてねえんだけど?」
「うむ。やはりそうじゃな」
「何で納得してんだよキツネ」
何言っても無駄そうなので、話を切り替える。
「で、あの
「……」
「おい?」
「どこから話したものかと思っての。逆に遠山のは何処まで知っておる」
「西遊記に出てくる猿。石から生まれて猿山のボスから天界に登って暴れまわった事で封印されて、天竺に経を取りに行く三蔵法師について行って仏になったとか。物語的にはそのぐらいだな。実在の話を元にしたファンタジーと聞いてるけど」
訳によって話は結構変わるらしいが大筋はそんな所だろう。
「……そうか。まあ間違ってないの。儂も細かいことは知らぬが猴は三蔵法師の供として仙術を使い護衛した話が脚色編集されたものが西遊記じゃ。猴は唐から天竺の魑魅魍魎を下し唐の化生の頂点に近しい立場となったのじゃ」
「ふーん」
「ふーん。じゃないわ!お主そのすごさが全くわかって無かろう!倭で言えば天下統一し征夷大将軍になったようなものじゃ!」
「へー凄いな」
大軍を動かせるというより何かに操られていたように見えたので全くピンとはこないが。
「それはどうでもいいんだが」
「どうでもいい!?猴が倭に侵攻したと捉えられれば
……そもそもその何とか戦争すら無理矢理巻き込まれただけで興味ないんだけど。殻の回収で参戦みたいな認識されているだけで。
「あ?ならジーサード撃たれたのをほっとけと?」
「……そうは言っとらん。ただ少し待て。今回は猴の様子がおかしかったとはいえ、
何言ってるのかわからんが。
猴が悪さしたから殴られるのは自業自得という流れにしたいようである。妖怪どもの考えは理解できんが一旦置いておこう。
「まあ言いたいことはわからんが。攻めに行くのはクリスマス――25日前後だからそれまでにどうにかしろ」
「うむ。伏見にも連絡し急ごう」
誰だよ伏見?いや今はどうでもいいか。
「ただ気になるのは――あいつアリアと同じ気配がしたんだが?」
「――ッ!」
「やっぱなんか知ってるのか手前」
俺の言葉にピーンと尻尾が張る。わかりやすいなあこいつ。
しばらく逡巡したようだが話すべきと結論に至ったのかゆっくりと口を開く。
「……アリアと同じ――ではなかろう、遠山のが感じたのは」
「ん?まーアリアっていうかアリアが超常現象ぶっぱした時の気配が近いから――緋緋神?」
「……そうじゃ。猴は流出した緋緋色金を埋め込み緋緋神を制御するための実験体――と聞いておる」
聞いている?
「これは儂が生まれる前――緋緋色金に唆され大陸へと持ち出した緋緋色金があったのじゃが――強大な力を授ける緋緋色金を失いたくない唐と放置できない倭の間で取り決めが行われ――猴に埋め込むことになったのじゃ」
な ん で ?
「倭と唐。どちらも緋緋色金の力を自在に使いたいが、緋緋色金と相性がよく使えるものは。緋緋色金に憑りつかれて緋緋神となって暴れる。そこで解決の糸口として緋緋神が好む恋と戦争と程遠い。肉体は頑丈じゃが恋を知らず争いを嫌う猴に埋め込んで封印しようとしたのじゃ」
「封印て」
「失敗しても唐が緋緋神に荒されるだけじゃからの」
……。
「む?なんじゃその顔は」
「別に。見張るとか言っといたのなんだよと思ってるだけだが?」
「唐で暴れ過ぎれば唐で討たれるからの」
……そういうもんか?
「話を戻すとその実験はうまくいかず――猴の遺志で緋緋神と交代するという不完全な顕現が行われるだけだったそうじゃ。各地の化生を傘下にし
「そんなのが人間に従うのか?少なくとも
「猴の意思で入れ替えは自由だったそうじゃが、争いに巻き込まれるたびにビビりな性格が災いしてすぐに緋緋神と入れ替わってたそうじゃがの」
猴はビビりなのかよ……。
主導権すぐに渡すとか逆の意味で厄介だぞ。
「……ん?ならアリアじゃなくて猴を乗っ取ればよくないか?」
「阿呆。恋と戦争と程遠い性格じゃと言ったろう。相性が悪く緋緋神が憑りついたとして本来の実力を発揮することはできんし、争いが終わればすぐに猴に戻ってたくらいじゃ。逆に言えばそれだけでも唐の化生でも上位になったんじゃ。相性のいいアリアならそれどころではない被害が出ると心得よ」
そーいうもんかねえ。
「そうならないようにさっさと殻金回収しろって事か」
「うむ。遠山の。猴が殻金を持つなら分が悪い。儂の結界に誘い込めれば確実に殺せるがそれを知る猴は絶対に結界に入ることは無かろう。唐に出向き結界を張る作業も時間がかかるため難しい」
「最初から期待してねえよ。殻金の回収は俺がどうにかするさ。アリアを助けるためにな。っと。着いたか」
そうこうしてるうちに実家に着いたようなので車から降りる。
「儂は京の伏見に向かう」
「そうかい。またな」
去っていく車を見送りながら、独りごちる。
「アリアを助けるためだ。――緋緋神とか知らねえよ」
「……すまんのう。遠山の」
「一度、割れた卵の殻が元に戻る道理などあるはずもなし」
「殻金を全て戻したとしてその場しのぎにしかならぬ」
「緋緋神は復活する」
「平安・室町・江戸の終わりに世界大戦」
「幾度となく泰平に倦んだ緋緋神は祟り神として争いの世を引き起こし、長引かせようとした」
「――シャーロックの阿呆が余計なことをせねければあと百年は泰平の時代が守られたものを」
「やはり遠山のじゃな」
「主様そっくりじゃ」
「……キンイチはパトラを引き込むじゃろう。あれは緋緋神への干渉方法を確立させたなら引き込む他はない」
「故に遠山のは緋緋神を相手することになる」
「アリアに共鳴し憑りつこうとする緋緋神」
「すなわちアリアの恋心にあてられて緋緋神も遠山のに恋をする」
「もしかしたら緋緋神にあてられてアリアが恋してるのかもしれんがの」
「遠山のは器が大きいからの」
「我儘で暴力的――おっと恋と戦争を好む相手を嫌わずに相手するものなどそうおらん」
「だが受け入れられてるのはあくまでアリアじゃ」
「緋緋神ではない」
「なれば緋緋神は遠山のを殺そうとするじゃろう――戦う男が好きだとな」
「――遠山のはあと二年で白雪と祝言を上げるんじゃったの」
「ならばそれより前に顕現させるか」
「傷ついた心で全力は発揮できん」
「遠山のが緋緋神を殺せればよし」
「殺せず緋緋神に殺されようとも――恋した相手を殺せば心は割れる」
「簡単に討てる」
「割れた心に慣れればまた乞うじゃろう」
「乞うて争うばかりの先に何もないと気付かずに」
「主様の望んだ平和を乱したんじゃ」
「そうすればまた割ろう」
「何度でも何十度でも」
「心が砕け散るまで」
「それが――」
「嫌うた平和を作るということじゃ」