カライ・バリ島、そしてクロスギルドの殲滅が完了した後も、海軍は行方の分からない麦わら、そして黒ひげの捜索を続けた。しかし何の成果も上がらず、時間だけが過ぎた。やがては、捕らえられた海賊と革命軍、そしてサボの公開処刑の日がやって来た。
「……さて」
「く、クソ、ルフィぃ……」
海楼石の手錠で縛られたサボを眺める。結局、麦わらも黒ひげも見つからなかった。エレジアにも、デロイア島にも居ない。空島も、月まで探ったけど見つからない。本当に不明。
「今日が貴方の公開処刑日です。良かったですね」
「ふざ、けるなよ、赫鳥」
「ふざけてはいませんよ。ゴミが掃けて清々します」
「……」
(ルフィは、エースを助ける為にマリンフォードに乗り込んだ。ならばサボを助ける為に、ここに乗り込んで来る可能性は高い)
私はルフィがここに来る可能性が高いと踏んでいる。理由は簡単、マリンフォードにエースを助けに来た事のアナロジーだ。ここが破壊される可能性を想定して、公開処刑の場所はニューマリンフォードを避けた。サボの隣から離れる。私は歩き始めた。
「……はて」
この場には、海軍の総力を挙げた警備体制を整えている。突破は至難の筈ですが、ルフィならば難なく熟してしまうのでしょうね。
「例のアホウドリ、あいつの所のブン屋も来ている。海軍が少しでも無様な所を見せれば、ブン屋が嬉々として記事に仕立て上げるでしょう。鬱陶しい」
それに鬱陶しいのは、例のアホウドリもそうだろう。西の海に宇宙基地を建てた時、いや、白ひげを始末した時から、ずっと私に付き纏ってきて永久に鬱陶しい奴だし。今回も、海軍が何か失敗すれば、嬉々としてゴミのような記事を量産するに決まっている。
「……となると」
すると、どうするか。少し思案する。回答は、そんなに多くない。
「策は、打ってありますよ」
公開処刑、そのものは円滑に進んだ。まだ問題は起きていない。
「赫鳥、ワシは貴様を好いてはおらん」
「そうでしょうね。私は命令を聞かなかったですから」
「分かっておるなら少しは改善してくれんかのう……」
「重要なのは、海賊の殲滅です。現状の世界は酷く余裕がありません。海軍の衰退に対し、海賊の勢いは、それこそロックスの時代すらも超えて高まっています。最早形振り構っていられません」
「その為なら命令無視も厭わん、と」
「申し訳有りません」
「全く」
赤犬はやれやれ、とでも言わんばかりだった。しかし
「じゃが、ワシは貴様に感謝しちょる。麦わらを倒し、シャンクスを倒し、ローとキッドの小僧を潰した。中途半端に生き延びたカイドウとビッグマムにトドメを刺し、ハチノスを潰して青雉を取り戻し、鷹の目とクロコダイルも殺してクロスギルドを殲滅した。内容は兎に角、結果だけ見ればまさに大戦果じゃ。これ程の結果、貴様が居なければ到底成し遂げられなかったけえのう」
「はい。ですが、まだ麦わらと、黒ひげが残っています。最後の戦いはまだこれからです」
「ふん、分かっちょるなら良いわ。今から世界に平和を取り戻すけえ、貴様も全力を尽くせ」
「はっ」
私は一礼する。そして少しの沈黙。黙っていると、話しかけてくる奴がいた。
「ヤハハハハハ、中々辛気臭いなぁアルメリア」
「エネル、今回は有難うございます」
「空島のエネルか。貴様の立ち位置は外部協力者と言う事になっちょる。呉々も余計な真似はするな」
「ヤハハハハハハハ、元帥殿も大概辛気臭い物だ。分かっているさ、我はニカの相手以外はせん。我は神なり、心配など要らん」
「全く……」
エネルはそう言って笑う。原作に比べたら、エネルは幾らかユーモアのあると言うか、良く笑う性格になったと思う。これも、外の世界を見たお陰なのでしょうか。分かりませんが。
「それにしても、麦わらは」
「ヤハハハハハハハ、どうやら来たな」
「何じゃと!?」
「地下だ。下から這い出て来るぞ」
爆発がする。エネルが言った通り、下から這い出て来る影。間違い無くギア5のそれ。そして
「サボオオオオオォォォっっっ、助けに来たぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!?!」
「る、ルフィいいィィぃ!??」
ルフィが遂に来た。麦わら大船団の船員まで掻き集めたらしい。凄まじい数、数百人は居る。更に。
「ゼハハハハハハハハ、おれの夢はぁ、まだ終わっちゃいねぇぇ!」
黒ひげ、まで? ルフィの奴、よりによって黒ひげと同盟を組んでいるのですか? ああ、でもその可能性も想定済みです。敵の影が見えた途端、赤犬が一気に号令した。
「総員戦闘配置ぃっ! 直ちに黒ひげと麦わらの小僧共を殲滅せぇい! 何としても囚人を解放させるなぁっ。容赦はするな! 正義の誇りに賭けて、徹底的に殲滅するんじゃぁぁ!!」
「了解」
「ヤハハハハハハハ、この時を待っていたぞ。ニカニカの実のルフィよ!」
「うるせえええええ! てめえの相手なんかやってられっかぁぁ! 今度こそサボを救わなきゃいけないんだぁ!」
「ヤハハハハハ、そんなに辛いか? それは良かったぞ。貴様の事情など知らん、我の相手をしろ」
「ゼハハハハハハハハ、アルメリア・ファイス、お前が例の賞金稼ぎだなぁ。今になってやっと言えたぜ。どうだ? おれの仲間になれ!」
「何言ってんのかさっぱり分かりませんね。世界を荒らした罪を背負って、死になさい黒ひげ!」
黒ひげと衝突を開始。私は一応言っておいた。
「麦わらと組みましたか?」
「ゼハハハハハ、別に組んじゃいねぇよ。あいつもおれも勝手にやってるだけさ。それにしても、てめえのせいで俺の計画は散々だぜ。てめえに親父を殺されちまったせいで、折角のヤミヤミの実を手に入れる計画も吹っ飛んじまった。艦隊も妙な爆弾で燃やされちまったし、ハチノスにもいきなり突っ込んで来やがるし、本当何一つろくな事しねえよなぁお前、なぁ、少しは責任取って仲間になれよ」
「何言ってるんですか。良いから死になさい」
黒ひげと衝突を開始。グラグラの実は、どうやら持っていないらしい。あれは既に回収して、月面の秘密保管庫に入れてあるから、でしょうね。ですがこれは
「チッ、こいつモアモアの実? バーンディ・ワールドの」
「ゼハハハハハ、気づいたようだなぁ、グラグラの実が手に入らなかった場合の代替策だ。おいてめえ、親父のグラグラの実は何処にやった」
「知りませんよ、そんな事。死ね」
「ゼハハハハハハハハ。なら仇討ちと行かせて貰うぜ。親父の仇は俺が取る。てめえを殺して八咫烏の実も頂いて行くのさ、その上でグラグラの実も取り戻してやる」
「勝手に言ってなさい。死ね」
モアモアの実の能力で何倍にも拡大した暗闇。私を飲み込もうと取り囲む。でも、無駄です。
「滅びろ」
「ゼハハハハ、何っだ、これは」
「何でも良いでしょう、死ね」
ヤミヤミの実の能力は能力者の実体を引き寄せる。解法は一つ。引き寄せられるより先にカウンター。つまり、形振り構わず最大威力の神避。むら雲切りを掴む。覇気を流し込んで強制増幅。
「こいつは『死ね』グギャァァァァァァァァァァァ」
「痛がってんじゃ有りませんよ、死ね、死ね、死になさい、死ねよおい、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
「う、うおおおっ、や、やめてくれ、い、痛『死ね』ぎゃぁぁぁぁぁっっっ」
首を切り落とし、全身を1000以上に分割してズタズタに引き裂く。引き裂いた上から更に燃やし尽くし、その上脳天に延伸した神避を構える。
「イギャァァァっ、ぐぁっくそ、や、やめろ、それ以上は『死ねよ、もう』ぐぁぁ……、ま、待て、おれと組まないか? なあ。おれと組めば、せ、世界政府の、古代兵器の情報だって」
「世界政府とか古代兵器とか、私にはどうでも良いですから。では死ね」
神避、そのまま振り下ろす。黒ひげの覇気が完全に消える。黒ひげも、死ぬのは案外呆気なかった。
「ウギャァァァァ『死ね』……、……」
「案外、簡単な物ですね」
後は、黒ひげを仕留めた事を連絡して、それから……私は少し考えた。考え直した後、また赤犬に連絡を入れる。
「サボの……処刑は完了、麦わらも撃破。分かりました。では私も帰還します」
「ふむ、辞表じゃと」
「ええ、主だった海賊は全て撃破しました。残っているのは小粒の海賊だけ。もう私は必要無いのでしょう?」
「ふん……」
執務室で赤犬と会談、一通り必要事項を確かめて、話を付ける。
「良いじゃろう。ワシも、漸く貴様の相手から解放されて清々するわい」
「成る程、それは良かったです」
「皮肉か? それは。全く」
赤犬はそう言って一息ついた。やれやれとでも言わんばかりに。私は気に留めないでおいた。
「それで、これからはどうする気じゃ」
「一介の賞金稼ぎにでも戻ろうかと。それに、デロイア島の会社も気になります。そろそろ、宇宙開発も再開しなければ」
「成る程……分かった。貴様の辞表を受理する。今までご苦労じゃった。じゃが」
「協力に感謝するぞ。この難局を乗り越えられたのは、良くも悪くも貴様のお陰じゃけぇの」
「ええ、有難うございます」
「ただ、宇宙開発を再開すると言うなら、一つ言っておく事がある」
「何でしょうか」
私は改めて聞き直す。赤犬は、そう言った。
「くれぐれも、下手な真似はするな。世界政府は貴様の事業に、いや、宇宙開発そのものに注目しておる。下手に余計な問題でも起こして、海賊を増やされては堪らんからのう」
「分かりました。覚えておきます」
「全く、本当に覚えておけ」
「ええ、分かっていますよ。これは本心です。それに、青海の海賊が粗方消えましたから、私もやっと本題に入れます」
「本題じゃと?」
訝しむ元帥に、私は言う。
「はい、宇宙海賊の取り締まりについてです」
「何じゃと、う、宇宙海賊?」
それから結構な間話した後、執務室を退出した。私は改めて思った。
「さて、やはり、何か問題を起こすのかと警戒されていましたね。まあ、そこは想定内です」
「せいぜい、余計なトラブルくらいは避けておきましょう。ですかね」
私はそう思いながら、次の方策を思案していた。まだ、先は長いのだから。
書いて思いましたが、やっぱり面白い話になりませんね。次回作を書くならもうちょっと盛り上がる話にしたい所です。