転生したら宇宙世紀悪役グラサンの部下だった件   作:紅乃 晴@小説アカ

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今回は短め。


前日譚

 

 

グリーン・ノア防衛戦から約一週間。

 

新体制となった我が訓練小隊は順調に訓練用のカリキュラムをこなしていた。新たに配属された警備隊のパイロットと、Mk-Ⅱのテストパイロットとして抜擢されたジェリド、カクリコン、エマ。

 

警備隊は普段のMSシミュレータを使った操縦訓練に加えて試験運用中のMk-Ⅱと同伴でグリーン・ノア1近域での宇宙飛行の実地訓練。

 

ついでにジェリドたちの動きも面倒見るという流れでやっていたが……先日、調子に乗ったジェリドがコロニー外壁にMk-Ⅱを接触させる事故を起こしたのもあって、大佐からは「まぁ、大変だな。だが始末書は書けよ」と励ましの言葉と共にクソ容量でかい始末書のデータをいただき、ジャマイカンからは「きちんと面倒を見ないとダメだろ?」と小言を言われました。

 

ちゃんと見てたけど、ジェリドのやつ急にはしゃぐから……エマに「子供か!!」って事故起こした後めちゃくちゃ怒られたから俺も怒るに怒れなかったんだよな……。そのあと、罰則として基地外周をノーマルスーツ着用で走らせたからアレだけど。

 

で、俺も大佐から仰せつかった始末書を仕上げなきゃならんというのに、再びMPのいる詰所にやってきている。

 

理由?それは目の前で顔に青タン作ってる二人組への説教のためだよ、クソッタレ。

 

 

「お前マジで何やってんの?」

 

(いかん、これはマジでキレてるやつだ)

 

 

ジェリドの隣にいるカクリコンはにこやかに微笑む隊長が、本気でキレてることに戦々恐々していた。それはそうだろう。昨日……いや、二日前にMk-Ⅱの事故起こしておいて、今度は基地ニュートラル駅での乱闘騒ぎなのだから。

 

鼻に絆創膏を張るカクリコンより酷い顔になっているジェリドはガチギレする隊長の顔を見て思わずしどろもどろになってしまっていた。

 

 

「いや……あの……」

 

「言っとくけど、先に相手が殴ってきたからやり返したとか言ったらはっ倒すからな?ん?」

 

「……すいませんでした」

 

 

いやもう本当に勘弁してくれ。報告書になんで書くか悩んで飲み物買いに行ったら駅で乱闘してるってニュートラル駅の駅員に泣きつかれて、現場に行くとハイスクールの生徒1人に軍人がてんやわんやしてる光景を見た時になんて思ったと思う?

 

 

「まぁ……先に突っかかってきた相手も悪いけどさ。それを大の大人、しかも軍人が五人もいたのに止めることもできず?しかも抵抗されたから暴力で鎮圧した?情けねぇにも限度があるだろ」

 

「けど!奴も明らかに格闘経験者だっただろ!?」

 

「あぁ、だから手を捻り上げて俺が拘束したんだろ?ぶっ飛ばされたお前らの代わりに」

 

 

手がつけられねぇって言われたから間に入って止めたけどさ。カミーユってマジで強いのね。受け止めた手がビリビリしびれるほど芯に響く拳を持ってたわ。時代が時代なら世界チャンプも目指せる拳だったね。

 

 

「……まぁ、過剰な暴行をしなかったことは認める。おかげで相手の子はピンピンしてるからな」

 

 

2人は散々な目にあったのか、顔は腫れていたし、ジェリドに至っては目の下に青タン、鼻に直撃を喰らったのか鼻血が出た後が生々しく残っているのが見えた。

 

 

「ジェリドもカクリコンも医務室に行っとけ。骨折してるかもしれんだろ?あと昼からのMk-Ⅱのテストは延期。午後からは待機な」

 

 

それだけ伝えて、さっさと2人のいる部屋から出ていく。次はこの乱闘騒ぎを起こした張本人の元へ向かう予定だ。あぁ、まったく……。そううんざりした様子で部屋を出ていく隊長を見送ってしばらくしてからジェリドは口を開いた。

 

 

「なぁ、カクリコン」

 

「なんだぁ、ジェリド」

 

「あのカミーユってやつ、空手の経験者だったよな」

 

「あぁ、いいパンチしてたぜクソッタレ」

 

 

氷嚢で鼻先を冷やすカクリコンが苛立った様子で返す。その苛立ちはカミーユにぶん殴られたことから来ているのではなく、ジェリドが殴られた後に巻き込まれたことと、それで隊長に手間をかけさせてしまった自分の情けなさからくる怒りだった。

 

ただ、その怒りはジェリドの疑問によって消え去ることになる。

 

 

「ジン隊長、そのパンチを平然と受け止めてアームロックかけてたよな」

 

 

自分やカクリコンを吹っ飛ばすほどの威力を誇るカミーユの打撃を横合いから入ってきた隊長は、片手の手のひらでパジィっと音を発しながら受け止めて、そのまま流れるようにカミーユに関節技を仕掛けたのだ。「ぼ、暴力はいけない」とか言う前に「あがあああああっ!」と悲鳴をあげるカミーユに、対応に四苦八苦していたジェリドたちは呆気に取られる始末だった。

 

その光景を思い出してカクリコンは氷嚢を鼻先から離して、冷静な声でこう言った。

 

 

「ジェリド」

 

「なんだよ」

 

「あの人を常人扱いするな」

 

 

そう言われてジェリドも思い出す。確か、うちの隊長ってメガ粒子砲の弾幕を最小限の動きで躱しながら敵の懐に飛び込む技量を持つパイロットであることを。

 

最近の訓練じゃビームライフルのビーコンを紙一重で避けて真っ直ぐに突っ込んできたりしてたよな……。そんな並外れた動体視力と反射神経を持ってるなら……あの動きも納得できる。ただ、自分も同じように実行できるとは思えないが。

 

 

「あー、うん。そうだな」

 

 

それ以上は考えても無駄だな、と話を切り上げた2人は痛む体を引きずって医務室へと足を運ぶのだった。

 

 

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