転生したら宇宙世紀悪役グラサンの部下だった件   作:紅乃 晴@小説アカ

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星の屑作戦の出来事

 

 

 

ソーラー・システム。

 

それは、南極条約によって核兵器の使用を禁止されたことから生まれた、対アステロイド要塞用の兵器だ。

 

原理は単純で、多数の小型ミラーパネルをもって太陽光エネルギーを集中して目標へ照射するというもの。

 

使用されるミラーは20m×10mの大きさで、各ミラーは照射の為にガスジェット式の姿勢制御バーニアで移動する。

 

ミノフスキー粒子下で400万枚以上のミラーを用意して急速展開し、集中コントロールする作業が必要ではあるものの、その焦点での温度は10,000度以上に達し、高熱によって溶解蒸発させる超大型の太陽炉とされている。

 

欠点としては、各ミラーの制御が複雑かつ大量であったため、ソロモンでの使用時は旗艦タイタンのメイン・コンピュータはパンクに近い状態になったと言われていて、一度ミラーを展開すれば攻撃をし続けられるものの、ミラーそのものは無防備な事から攻撃に脆く、使用には護衛艦隊が必要になるという弱点もあった。

 

そして、デラーズ紛争で使用されたものは、ソロモンで使用されたものより更に改良が加えられた「ソーラ・システムII」である。

 

これはコロニー落としを阻止するため、バスク・オム大佐率いる軌道艦隊が地球静止軌道上に展開したものであり、一年戦争時代のミラーが折りたたみ式だったのに対し、薄いミラー膜をロール状にして格納する方式によりMAの推進剤の噴射により簡単に吹き飛ばされるほどの軽量化が実現されている。

 

ソロモンのソーラー・システムと違い、ミラー枚数は減少しているにもかかわらず、焦点コントロール技術の向上により従来のものと同等以上の攻撃力があるとされている。

 

しかし、コントロールシステムが肥大化し、コロンブス級補給艦を改装した専用コントロール艦を必要とするようになってしまった。

 

そして、今まさに……そのソーラー・システムIIが放たれようとしていた。

 

 

「コロニーとの距離、残り200!!」

 

「ソーラー・システム、出力充填……80%です!」

 

 

もう落下するコロニーは目と鼻の先だ。もし間に合わず……コロニーが破壊できなければ、落下予想地点の壊滅的な破壊は免れない。そんな中、指揮を取るバスクは艦長席に座りながら迫り来るコロニーを静かに見つめていた。

 

 

「大佐!発射のタイミングは……」

 

「まだだ」

 

 

ハッキリと副官の進言に断言する。まだ撃つタイミングではないと、バスクの勘が告げていた。今打てば、必ず失敗すると言う予感。

 

それに、彼の目にはまだレーダーの中で戦う「恩人」の姿があった。

 

 

「まだ、奴が戦っている」

 

「奴……ですか」

 

 

不思議な奴だ。こんな状況だと言うのに自然と笑みが出た。最初の頃はよくわからん男だと思って警戒はしていたが……やつは……簡単に言えば「ありのまま」なのだ。飾りっけやプライドもない。自身を示す立場や権力にも興味を示さない。ただまっすぐと実直なのだ。

 

自分も、そんな彼に救われた身だ。バスクは1人ノーマルスーツの中で思う。彼を見殺しにした時、自分の都合で彼ごと殺した時……きっと自分もまた、ろくな死に方をしないのだろう。

 

それでも……。

 

 

「部下の勝利を待ち、焦らずに構える……それもまた、必要なことかも知れんな」

 

 

「総大将は後ろで焦らずどっかり座ってて下さい」と言って出撃していった恩人は、コントロール艦に襲いかかった複数のMSと、巨大なMAを相手取り、今まさにコロニーを破壊するために戦いを続けている。彼の部隊の離脱信号がない限り、バスクは動くつもりはなかった。

 

 

「奴なら、確実に任務をこなす。だから……この信頼に応えてみせろよ、ジン・シェイクハンド」

 

 

 

 

 

 

 

「このジオンのデカブツめ!!」

 

 

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛イ゛ッッ!!

 

ジム・カスタムに乗るカクリコンが俺が相手取るノイエ・ジールに向かってそんな悪態をつく。ライラのジム・ガードカスタムは二機のザク相手に乱戦状態だし、カクリコンもドムの相手をしながらこっちにちょっかいかけてきてるけど、俺はそんな余裕これっぽっちもなかった。

 

だって相手はアナベル・ガトーだぞ!?ふっざけんなよお前!!コントロール艦の護衛を任された段階で予感はしてたけど、マジで現れるもんな!しかもザクとドム連れて!殺意高スギィ!!

 

 

「だが、ここから先は通さん……と、言っておこうか!!」

 

 

俺が駆るのはバスク大佐がこの作戦のためにアナハイムをゆす……っゴホン。アナハイムに協力を仰いで支給されたガンダム試作0号機、通称ブロッサムである。

 

この試作0号機はガンダム試作1号機と同じくコア・ブロック・システムを採用し、コア・ファイターを背部から差し込む形でドッキングする「ホリゾンタル・イン・ザ・ボディ方式」を最初に採用した機体だ。

 

更にコア・ファイターの戦闘能力を向上させるコア・ブースターのコンセプトも盛り込まれていて、腰部メインスラスターとコア・ファイターを合体させることでコア・ブースターⅡとして運用する事が可能となっている。

 

……まぁ技術チームからの機体説明で「それを戦闘中にやったら合体システムができてないから空中分解するので絶対使用しないでね」って言われたけど。意味ねぇ!!

 

ブロッサムの最大の特徴だが、機体背面のドラムフレームに武器マウントアームを介して多数の装備が使用可能という点だ。

 

右側のドラムフレームには大型ビームライフル、左側にはレドーム状のミノフスキー粒子干渉波検索装置 (MPIWS: Minovsky-Particles Interference-Wave Searcher) を装備……が、みんなのブロッサムのイメージだろう。

 

ただ、今回俺が乗るブロッサムの装備は、右側にハイパーバズーカ、左側にはミサイルポッドが装備されている。

 

なんで変更してるか?あんなもん実戦で使えるか!!

 

MPIWSなんて実戦運用したら誤射、誤射、誤射、ハズレ、誤射、誤射だからな!!うっかり味方を撃ちかねんほど精度が悪い。試験運用の後に「外して❤︎」って言った時のアナハイムのスタッフの顔は「ですよねー」って顔だった。ぶっとばすぞ。

 

この機体は、アナハイムの最先端技術全てを駆使した多機能高性能機として完成している。

 

が、その分パイロットへの負担は大きく、操作性は劣悪。とにかく操作性がピーキーすぎる。機動性は高いけど、癖が強い。あと使ったら空中分解する擬似自爆スイッチがあるから余計に操作がややこしい。ボタンはずせ!って言ったら別の操作系に影響が!って言われました。さてはこの機体はポンコツか?

 

後に開発されたGPシリーズは複数の機体で単一の性能を追求する方向へ転化し、それに際してコア・ブースターのモビルスーツへの搭載機構やドラムフレーム等、本機独自の機構は廃案となった。

 

……つまり、ドラムフレームという特殊構造はこの機体のみである。コア・ブースターへの変形は自爆スイッチです。

 

大佐ってば「貴様なら乗りこなせるだろ」って毎回ピーキーな機体を引っ張ってくるんだから困っちゃうわ。アレックスを地上テストした時なんて「ホゲェエッ!」ってリアルに口にしたもの。

南極でサイクロプス隊に襲われた時は死ぬかと思った。その時は寒冷地仕様のジムに乗ってたけどね。

 

 

【ええい!邪魔をするな!!連邦の犬が!!】

 

 

ピーキーなブロッサムを振り回して相手取るのがジオンの精神を具現化したようなMA、ノイエ・ジールである。ここまでの道中でMSを蹴散らしてきただろうが、残念だったな!私だよ!!

 

四本のクローアームに備わるメガ粒子砲をバレルロールで避けながらハイパーバズーカとミサイルを叩き込む。ノイエ・ジールは即座に距離をとってバズーカを回避、ミサイルを迎撃する。掛かったな、アホが!!

 

 

【なんと!?】

 

「我が兵法は隙を生じぬ二段構え……!!」

 

 

バズーカとミサイルの迎撃に意識を取られたガトーの側面に回り込み、ビームサーベルを引き抜く。この距離ではIフィールドは張れないな!!懐に踏み込んだ俺はそのままノイエ・ジールのプロペラントタンクの片翼を切り裂いた。爆発でノイエ・ジールが揺れる。デカブツを動かすエネルギー源の片側を失い、そのダメージは大きな代償だった。

 

 

【おのれ、連邦のパイロット……!!】

 

「兵士たちはいい!それが戦いだからな!だが無関係な……地球で今を生きている人たちは関係ないはずだ!」

 

 

その時の俺は腹が立っていた。バカ強えノイエ・ジールの相手をさせられているから?アナベル・ガトーとタイマンをさせられているから?いいや違う。俺が怒りを向けていたのは……ガトーや、ジオン兵の自分勝手さだ。

 

 

「怨念が重力にへばりついてるのは、それは宇宙に住む貴様たちの価値観でしかないだろうが!!」

 

 

元気がなくなったノイエ・ジールの迎撃を躱して足が止まった相手にハイパーバズーカを叩き込む。戦いの高揚感でテンションが振り切れた俺はオープン回線で声を荒げた。

 

 

「地球で、貧しくても、苦しくても、今を生きている人がいるんだぞ!!それがわからないのか!!やめろーーっ!!」

 

「ライラ!合わせろ!ジンを援護する!」

 

「言われなくても!!」

 

 

俺の猛攻にカクリコンのジム・カスタムと、ライラのジム・ガードカスタムが息を合わせる。コクピットのHUDに映し出されているのはソーラ・システムの充填率。すでにそれは90%に達しようとしていた。眼前には大気の熱にさらされようとしている落下するコロニーがある。

 

それを背に、ジオンのザクとドムがこちらに向かってきた。

 

 

【ガトー少佐!我々もお供を!】

 

【ジークジオン!星の屑成就のために!!】

 

【我らの死を持って、後に続く者たちのための標となるために……!!】

 

 

彼らに死の恐れはなかった。大義名分のため。ジオンの栄光を示すため。無念の中死んでいった兵士たちの怨念を晴らすため……。

 

 

【聞こえるか、連邦のパイロット。我々はただ死ぬのではない!義に伏して死ぬのだ……!!】

 

 

だから、ただ上の命令に従っているだけの貴様たちとは違う。そうガトーはいう。その言い分に、俺の我慢は……限界を超えた。

 

 

「貴様ら貴様ら……バカヤロォオオー!!!」

 

 

弾幕を掻い潜り、ブロッサムのデュアルアイが瞬く。一瞬の油断の中で、ザクの懐へと飛び込んだガンダムは、両足と頭部を両手に持ったビームサーベルで引き裂いた。

 

 

「ジン!?」

 

「隊長!?」

 

【なに!?】

 

 

ブロッサムの機動性を最大限に活かした突撃に、一緒にいたはずのカクリコンやライラも目を見張る。なにより驚いたのは、それに対応できなかったガトー本人だった。

 

 

「自分の命を大事だと思えないから人の命を簡単に奪う!!」

 

 

ハイパーバズーカで今度はドムの足を吹き飛ばす。命は奪わない。奴らの好きにさせない。死を恐れない者に死なんて与えてやらない。……奴らが身勝手に望むものなんてくれてやるものか。

 

 

「義のために命を捧げる!?馬鹿馬鹿しい!!なぜ、部下の命すら……自分の命すら義のためなら容易く捨てられるような者が、人類全てのことを……宇宙に住むすべての人のことを考えられると思う!!どうしてそれを信じ、疑わずにいられる!!どうして後に続くものたちがいると盲目的に信じる!!」

 

随伴のザクの頭部と武装した腕を切断して、一条の光となったブロッサムはそのままガトーのノイエ・ジールへと迫る。

 

〝だから滅ぼすのだよ、私を否定したすべてを〟

 

大義など、忠義など、綺麗事を並べていたくせに、結局は自分たちを認めず、踏み躙った者たちへの怨念返し。その気持ちが悪いとは言わない。その気持ちが間違ってるとは言わない。

 

だが……だが……そんな思いに、他人を巻き込むんじゃねぇ!!!

 

 

「死を強いる指導者のどこに真実があるっ!!ねごとを言うなぁーーっ!!」

 

 

ハイパーバズーカで牽制して突撃したブロッサムは、ノイエ・ジールのメインカメラにビームサーベルを突き立てた。閃光がガトーのコクピットを包み込む。

 

 

「ソーラー・システム臨界!カクリコン、ライラ!離脱!!バスク大佐!あとは任せます!!」

 

 

その大きな隙に俺はHUDのソーラー・システムの充填率を目視して一気に離脱にかかる。カクリコンとライラの機体は照射範囲から逃れられる位置にいるはずだ。俺は………。

 

その瞬間、俺のコクピットのモニターいっぱいに太陽の光が溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

青い星を眼下に、ガトーはボロボロになったノイエ・ジールの中で1人項垂れていた。ノイズが走るサブモニターには、三つに分裂したコロニーが地球に落ちていくのが見える。星の屑作戦は……失敗に終わった。

 

だが、それ以上のものがガトーの胸に去来していた。

 

 

〝「死を強いる指導者のどこに真実があるっ!!ねごとを言うなぁーーっ!!」〟

 

 

あのガンダムのパイロットの言葉ひとつひとつが、武人であったガトーの胸に深く、深く突き刺さった。大義のために立っていたガトーを、身勝手と断じ、そしてジオンの栄光を示すためのコロニー落としを失敗させたのもまた、そのガンダムだった。

 

 

「たしか……ジン、と言ったな」

 

 

その時、ガトーの中には2人のパイロットの名が刻まれた。

 

自分を追い続けた男、コウ・ウラキ。

 

そして、自分を止めた男……ジン・シェイクハンド。

 

あぁ、そうだな。結末はどうであれ……あの戦いは、良い戦いであった。デュアルアイを瞬かせてこちらに迫るガンダムの姿を思い返し、そう呟くガトーは、残骸が漂う衛星軌道上で1人、漂うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

オープンチャンネル、全員に聴こえてましたよ。全部が終わった後、ライラにそう言われて俺は地面に突っ伏した。

 

バスクや後方の艦艇に乗っていたジャマイカン、ジャミトフ閣下にも聞こえたわけじゃないですかやだぁあああ!!!

 

けど、特に三人には何も言われずお咎めもなし。

 

そうして俺の星の屑作戦は終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

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