転生したら宇宙世紀悪役グラサンの部下だった件   作:紅乃 晴@小説アカ

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グリーン・ノア防衛戦(1)

 

 

「敵の数は15機。データ照合の結果、全てが旧式のジオン系MSであることが判明してます」

 

 

呼び出されたアレキサンドリアの艦橋で宙域マップを眺めながらジャマイカンが簡潔にそう言った。集まっているのはバスク大佐にカクリコン、そしてグリーン・ノア勤務の将官や、警備隊長、連邦士官数名だ。

 

映し出された望遠モニターには星の光とは違う幾つもの光が映し出されていて、コマ送りのように画像を差し替えると、その光は確実にグリーン・ノアに向けて近づいているのがわかった。

 

熱源から逆算したデータでは、旧式となったザクやゲルググ、ドムと……どうみてもジオン系MSですね。受け取ったデータを見て、俺はうんざりしたように息をついた。

 

 

「ジオン系ってことは……やっぱり例の?」

 

「海賊でしょうな」

 

「だよねぇ〜、あ〜やだやだ」

 

 

サイド2の30バンチあたりからこっちに上がってきているのだから、確実にあの宙域を根城にしてる奴らに違いない。〝あの一件〟以降、あそこは無法者の根城になっている。サイド間のテンプテーションや輸送船も何度か襲われているし、奪われる物資も金品よりも食料や空気、水と言った宇宙で暮らす上で必要不可欠なものばかりだ。

 

ジオン残党が細々と廃棄されたコロニーに潜んで決起のために備えてるってか。相変わらずどこまでいっても「他人の迷惑」ということを考えない者たちだ。

 

襲われた輸送船には医療品を積んだ船もあった。そのせいで別バンチに住む治療を待つ住民が適切な処置を受けられず、ひどい場合は亡くなることもあった。それを聞くと、少なからず憤りは感じる。まぁここでとやかく言ってもしょうがないけどさ。

 

 

「あの紛争で取り逃がしたデラーズ・フリートの残党がこうも厄介になるとは……」

 

「あの時のことを今悔いても仕方ないでしょ。ソーラー・システムでコロニー分断して安心した隙に逃げられたんだからさ」

 

「防衛網の完全な穴だったよね、アレ」

 

 

カクリコンの言葉に俺はそう返した。実際、ソーラー・システムでコロニーが分断できたけど、その混乱に乗じてデラーズ・フリートの残党を逃してるわけだし。俺やカクリコン……コロニー破壊のために動いていた部隊は、何ふり構わずに突っ込んでくる敵の対応で逃げた奴らの追跡とかをする余裕もなかった。本来なら、そういった役目は後方にした支援部隊の仕事なんだけどねぇ……昼寝でもしてた?

 

 

「……お前たち、連邦士官の前であまり虐めてやるな」

 

 

ジャマイカンが少し呆れ口調でそう言ってくる。同席していた連邦側の将官たちも顔色が酷かった。いかんな、過ぎたミスをチクチク突くのは大人としては子供っぽ過ぎたか。カクリコン、まだ言い足りないんだけどっていう顔をするんじゃありません。

 

 

「で、どうします?大佐」

 

 

腕を組んだバスク大佐にそう聞くや、彼はすぐさま決定を下した。

 

 

「無論、迎撃だ。奴らの目的は分かりきってるからな」

 

 

敵の目的はグリーン・ノアへの強盗だろう。15機という海賊組織では考えられない数のMSでこちらに向かってきているのだ。おそらく戦艦……軽空母あたりでも強奪して、返して欲しければ……という交渉でもするつもりなのだろうか。もしそれが本気なら、向こう見ずすぎて大丈夫か?と心配なるレベルだぞ。

 

 

「それほど向こうも懐事情が苦しいと見えますな」

 

 

ジャマイカンはそう言いながら、30バンチ近辺の輸送船のルートを表示する。その画面には、わざわざグラナダ経由でサイド2の健全なコロニーへ物資を運ぶ計画が進んでいることを示した。

 

敵が輸送船やテンプテーションを襲うというなら逆に考えればそう言った危険地帯に一切立ち入らせないことが重要だと言える。頼みの綱の略奪が出来なくなった以上、海賊たちは強行手段に出るしかなかったのだろう。

 

 

「廃棄されたコロニーを拠点にした海賊だからな」

 

「しかしメンバーはどうします?15機という相手はなかなかに厄介ですぞ。それになりふりかまっていられなくなった相手ほど厄介なものもいないですからな」

 

 

カクリコンの進言はごもっともだ。たしかに一機で15機の量産敵機を撃墜するイカれたニュータイプもいるだろうが、ここにいるのは基本的にコロニー外周を警備するくらいの素人パイロットばかりだ。その上で人員を出さなければならない。

 

問題は誰が上がってくる15機の敵を捌くか。

 

 

「ノア中佐はどうお考えで?」

 

 

ふと、俺が部屋の隅の椅子に座る有名な艦長であった男、ブライト・ノアへ視線を向けた。彼は自分に言葉が来るとは思ってなかった様子で、しばらく宙域のマップを眺めてから静かに口を開く。

 

 

「そう……だな……敵はポイントアルファからまっすぐグリーン・ノアに向かってきている。いささか正直すぎるとは感じる」

 

 

ほえー、さすがブライト艦長。単純に向かってくる敵にそんな感覚を抱くとは……やっぱり彼もまたニュータイプってやつなのかね?

 

ちなみにブライト・ノアと俺は、一年戦争のジャブロー戦で少し面識があったりする。

 

その後は宇宙での戦いになったからあまり絡みはなかったんだけど、デラーズ紛争でNT論に否定的だった武将官の意向で飼い殺し状態だったから、「一緒に衛星軌道に上がってテロリストぶっ飛ばそうぜ!(省略)」って話をして、戦闘指揮官で一緒に戦ったりもした。

 

ソーラー・システム防衛戦もブライト艦長の判断がなかったら対応出来てなかったしな!!そのおかげもあって、今の彼はテンプテーションの艦長ではなく、守備隊の指揮官として、すこし立場がマシにはなっている。

 

さて、ブライト艦長がそう言うなら色々と追加しないといけないな。宙域マップを操作して、俺は全員に見えるようにポイントを示した。

 

 

「では陽動も視野にいれないとまずいな。長旅をMSでしているんだ。奇襲する航路を算出するなら……ここらへんだな」

 

「ジン、貴様の根拠はなんだ?」

 

 

バスク大佐の疑問に、俺はすぐに答える。

 

 

「航続距離です、大佐。燃料を節約してもこの距離は限界ギリギリだ。それで陽動もと欲張るなら……この位置が遠回りできる限界ですね」

 

 

15機のMSは本命でもあり囮でもあるというなら、なけなしの伏兵の配置も限定的になる。敵が輸送用の船を持たずにMSのみで行動しているなら余計にそうなるだろう。

 

方針がまとまったところで、この場の最高指揮官である大佐が集まった将校や士官たちに指示を飛ばした。

 

 

「よぉし、アレキサンドリアは後方待機!MS小隊を出すぞ!ジン、カクリコン、指揮は貴様らに任せる」

 

「了解!」

 

「じゃあブリーフィングやるぞ!パイロットはこっちにこい!」

 

 

俺とカクリコンは招集されたパイロットたちを連れてブリーフィングルームへと向かう。そこには緊張した様子のエマの姿はあったが、ジェリドはいなかった。

 

 

 

 

 

 

それでは任務を説明する。

 

今回の任務はポイントアルファからグリーン・ノア宙域に向かってくる所属不明MSの迎撃だ。

 

敵はおそらく、デラーズ紛争以降、活動してきた宇宙海賊。敵性MSは現在確認されているだけでも15機。陽動作戦も警戒されるため、MSは必ず二機のロッテで迎撃にあたれ。

 

迎撃指揮は〝ローゼンビッダー〟に。アレキサンドリアは後方待機となる。MSはただちにローゼンタールに搬入。守備部隊からもジムⅡとハイザックが参加する。

 

MS部隊の指揮はジン・シェイクハンド少佐。副隊長はカクリコン・カクーラー大尉だ。

 

敵を迎撃するポイントはここだ。グリーン・ノアの目と鼻の先に位置している。コロニーの外壁に穴を開けるような真似は避けろよ?では、シェイクハンド少佐。あとは頼む。

 

今回、君たちの指揮を取るジン・シェイクハンド少佐だ。着任早々だが、君たちの力を貸してほしい。

 

さて、作戦についてだが三方向からの挟撃作戦で行く。敵は15機と貯蓄を全部叩いてこちらにきているようだからな。まずは俺とカクリコン……あと数名で正面から受け持つ。そこから両方向からジムⅡが挟撃。三方向から敵を囲んで袋にするぞ。

 

おそらく混戦となる。迂闊に深く踏み込まず敵とは一定の距離を保って戦え。ジムⅡは後方から援護、機動性のあるハイザックと俺とカクリコンで敵を惑わせる。守備部隊はすくんだ敵を撃ってくれればいい。

 

作戦は以上。予測されたポイントからの伏兵も考えられる。周辺警戒は怠るな。

 

よし、では各パイロットはローゼンビッダーへ。

 

 

 

 

 

 

 

MPの勾留室で、ジェリドはぼんやりと真っ白な天井を見上げていた。

 

 

「……俺はなにをやってるんだ」

 

 

功を焦っていたのは自覚はある。自分のイメージと周りとのギャップ、理想としていたものが裏切られた苛立ち……それからくる怒りとも腹立たしい感覚もあった。けれど、その全てが……さっきの会話でどこかにいってしまったような気がした。

 

〝それってジオン選民思想のテロリストの考え方と、どう違う?〟

 

〝俺たちは職業軍人だ。戦うためにMSに乗るし、相手を殺すために引き金も引く。だが、そこに選民思想や差別感を乗せて弾けば、それはもう違うものだ〟

 

〝……それが間違ってると思うならこの部隊を去れ〟

 

ジン・シェイクハンド少佐。彼から発せられた言葉が全てジェリドの胸に突き刺さる。彼のイメージも、ジェリド自身の中ではかなり違っていた。訓練学校時代の「噂」では、ジン・シェイクハンドという男は様々な姿をしていた。

 

腕利のパイロットであったり、部下に理不尽な要求をしたり、冷酷無比な人物であったり、英雄だったり……。

 

ジェリド自身、初めてジンと対面した時「これがあの噂の男か?」と拍子抜けして、ぐるぐると同じ場所を走れと要求してくるジンの考えが全くわからなかった。

 

けれど、さっきの話でハッキリとしたことがある。自分も彼も……互いのことを知らなすぎるということを。

 

 

「出ろ、ジェリド・メサ中尉」

 

 

ガチャリと、檻付きの勾留室の扉が開いた。扉を開けたのは初老のMPだった。彼は扉が開いて呆然とするジェリドに「ここにいてもどうせ頭が冷えんだろ?」と言い、さっさと出るように促した。

 

ジンの口添えもあったのだろう。没収されていた身分証や手荷物を返却する処理をしている中、その初老のMPは口を開いた。

 

 

「お前さん、あまりあの人に迷惑はかけるなよ」

 

 

あの人……ジン・シェイクハンドのことか?怪訝な目をするジェリドを見ずに、書類処理をするMPは言葉を続ける。

 

 

「俺は引退した身だが、ジャブローや地上戦では随分とあの人に助けられた」

 

「過去の栄光というやつか?」

 

「いや、彼は今でも栄光を重ねているパイロットだよ。近くで見れば分かる。だが、それを見続けられるかは君次第だ。私はリタイアしたがな」

 

 

そう言葉を終えて荷物をジェリドに出す。もう世話をかけるなよ、と付け足して、その男性は詰所の奥へと消えていった。

 

 

「お節介な爺さんだ」

 

 

彼は引退したパイロットなのだろうか。そんなことを考えながら詰所を出るとコロニーの時間は夜になっていた。昼間とは違う宇宙本来の暗さの中、ジェリドは自室に向かうために一度、更衣室に向かう。その経路の途中、MSの格納庫に差し掛かった時だった。

 

 

「パイロットが足りない!?」

 

 

格納庫の方からそんな声が聞こえる。目を向けるとハイザックが佇んでいて、そのハイザックの足下で整備兵や士官が騒いでいるのが見えた。

 

 

「警備のMSはあってもパイロットが足りないですよ!」

 

「敵はすぐそこまできているんだぞ!パイロットがいないから出せませんなんて、情けないことを言えるか!」

 

 

騒いでいたのは警備隊の士官だった。MSによる迎撃作戦なのだが、グリーン・ノアの警備隊も参加する予定に対して、機体はあるがパイロットが検出のために別コロニーに向かってしまったことにより、召集される人数が足りていなかったのだ。

 

 

「パイロットがいるのか?」

 

 

気がつくとジェリドの体は動いていた。騒ぐ士官の相手をしていた整備兵がジェリドに目を向けると、「あっ!」と声をあげる。

 

 

「お前……さっきの……!」

 

「乗せろよ、この機体に」

 

「はあ!?お前何を言ってるんだ!?」

 

「お前らが大したことないと言ったエリートが、実力を見せてやるって言ってんだ」

 

「貴様……」

 

 

また生意気な口を!と整備兵の顔が怒りに染まる。だが、ジェリドも引き下がるつもりはなかった。すると……。

 

 

「いいじゃない。乗せてやれば」

 

「兵長!?」

 

 

格納庫の奥から出てきた人物を見て、整備兵はピシリと姿勢を正す。

 

カツカツと作業用の踏み抜き防止の鉄板が入った靴で足音を鳴らしながら近づいてくる……女性の整備兵長は、深い群青色の髪の毛を揺らし、品定めするようにジェリドを見ていた。

 

 

「……一つ言うけど、私たちは何も知らない。整備中のハイザックが一機、勝手に乗って行かれた。だから、どうなろうが知ったこっちゃない。アンタの責任よ」

 

 

パイロットが乗せろと言った以上、その機体を準備するのが整備兵の仕事だ。だが、正式な命令も何もないジェリドが乗れば、その後どうなるかわからない。下手をすれば軍法会議ものだ。そんなリスクを整備兵は背負う気はない。だから、何かあれば……勝手に乗っていかれたと報告する。

 

 

「普通のやつならそんな真似しない。……さぁどうする?」

 

 

自分の身が可愛いなら、そんな真似などしない。自ら価値を落とすことにつながるかもしれない行為だ。〝普通〟なら引き返す。……だが、ジェリドは違った。

 

 

「……ノーマルスーツも借りるぞ」

 

 

そう言い残してMS格納庫の更衣室へと向かってゆくジェリドの後ろ姿を見つめていると、さっきまでジェリドに敵対心を見せていた整備兵が兵長の元への駆け寄ってきた。

 

 

「行かせるんですかぁ!?」

 

「ああいう跳ねっ返りは嫌いじゃないよ、私は。それに、隊長と張り合ってんなら……さっさとあの人の横に行くのがいちばんの近道だしね」

 

 

ジェリドも、どこかでわかっているのかもしれない。「行かなければ何も変わらない」ということを。あれだけ発破をかけられていじける程、ジェリドは利口でもなかった。

 

 

「彼、死ななきゃいいですけど」

 

「それはアイツの腕次第だね。エリートっていうなら……生きて辿り着けるさ」

 

 

そう言って、整備兵長はジェリドが乗り込むであろうハイザックのスタートアップ作業に取り掛かるよう指示を出すのだった。

 

 

 

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