転生したら宇宙世紀悪役グラサンの部下だった件   作:紅乃 晴@小説アカ

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グリーン・ノア防衛戦(2)

 

 

 

ラグランジュポイント、L3。

サイド7、グリーン・オアシス。

 

グリーン・ノア1、近辺宙域。

 

地球を中心と考えて月と真逆の位置にあるこのポイントは、天体と天体の重力で釣り合いが取れる「宇宙の中で安定するポイント」であり、その名は存在を確認したジョゼフ=ルイ・ラグランジュにちなんでいる。

 

サラミス級の近代化改修型であるサラミス改。

 

近年のMS同士の戦闘において、MSとの連携が宇宙巡洋艦にも求められたことから、船体前半部にMSデッキを新設、デッキ後部にはハッチ兼用のエレベータ、船体上部にカタパルトが設けられていて、その代償として艦首の単装メガ粒子砲1基および両舷の6連ミサイルランチャーは撤去されているが、左右両舷に存在していた艦橋構造物に代わって戦艦級の連装メガ粒子砲が増設され、結果的に砲力は増大している。

 

また、ブリッジ構造物周辺に合計8基の単装対空砲が増設されており、対空砲は連装6基単装8基合計20門を数える。

 

一年戦争とデラーズ紛争を跨いで、既存艦の近代化改修が随時進められてきたが、今乗っているサラミス級巡洋艦、ローゼンビッダーはデラーズ紛争後に竣工した船だ。

 

増設された武装による重量増加は、メインエンジンの左右に各1基のサブエンジンが増設することで解決。排熱対策に船体下部を膨らませて冷却装置を搭載している。

 

その結果、サラミス級の完成度は非常に高いものになった。

 

宇宙世紀0070年代後半から地球連邦軍宇宙艦隊の中核として大量建造されたサラミス級は、その優れた汎用性によって長期にわたって運用されることとなった。

 

 

「こちら、連邦軍所属サイド7駐留部隊のオズワルド隊だ。貴官と共に作戦に参加できて光栄に思う」

 

 

敵性MS迎撃のために出発したローゼンビッダーのMSデッキにいた俺の機体に、そんな通信が入ってきた。目を向けると通信を飛ばしてきたのはグリーン・ノアの駐留部隊のGMⅡで、今作戦で参加した5機の駐留部隊のMS隊長だった。

 

いきなり通信を受けたので返答を考えていると、通信を投げてきた相手はそのまま言葉を続けた。

 

 

「貴官は覚えていないだろうが、北アメリカの作戦で命を救われた。遅れて申し訳ないが礼を言わせてほしい」

 

 

あー、北アメリカ戦の時か。ジャブロー攻略作戦後にバスク大佐に引っ張り出されてキャリフォルニア・ベースとか、シァイアン基地攻防戦とか、ハミルトン基地とかでえらい目に遭ったりとか色々あったな……。おそらく、そのどこかで援護した味方MSのどれかに乗っていたのだろう。

 

その時はバスク大佐が地盤固めのために基地行脚してて、マジで引っ張り回されてたから……一つの基地に腰を据えることもなかったんだよなぁ……。ちょっと立ち寄った基地で攻防戦とか、暴走する蒼いMSをぶっ飛ばしたりとか、ジオンの騎士とか名乗るやつとの戦いに巻き込まれたりとか……カクリコンは宇宙に行ってたけど、地上も地上で大変なことになってたんだぞぉ。

 

その時、ふと他のGMⅡのヒソヒソとした通信回線が聞こえてきた。

 

 

「おい、あの青と黒の機体って……」

 

「あぁ、間違いない。蒼き疾風の機体だ」

 

「じゃあ、30バンチ事件の……」

 

 

あの、接触回線で聞こえちゃってるんですけど……隣でハイザックに乗るカクリコンの気配が少し変わったような気がする。やめろやめろ!こっちの身内の前で30バンチ事件の話はするんじゃねぇ!禁句なんだぞ!特にバスク大佐の前では!!その後、察したのか「やめんか、貴様ら!」と怒声をあげる指揮官に口を閉じる士官たち。

 

まぁ言いたい気持ちもわかるけどさ。俺を見る視線にも慣れてきたとは思うけど……やっぱりいい気持ちはしないな、こりゃあ。

 

1人コクピットの中で顔を上げてうんざりしていると、今度はローゼンビッダーからの通信が届く。

 

 

「こちら、ローゼンビッダー艦長、エイパー・シナプス中佐である。まもなく予定ポイントだ。各機、発艦準備を」

 

 

サラミス級、ローゼンビッダー。この船の艦長はなんとアルビオンの艦長をしていたシナプス艦長なのだ。え?彼ってコーウェン中将の失脚とガンダム開発計画の機体を無断で持ち出した軍規違反で銃殺刑にされたんじゃなかったって?

 

ところがギッチョン。

 

シナプス艦長自身の半ば強奪する形で試作三号機とデンドロビウムを持ち出した件の罪は消えていないわけだけど、シナプス艦長の決断がなかったら俺もソーラー・システムの防衛に間に合わなかったわけだし、あんな優秀な士官を権力闘争の都合で銃殺刑は勿体無いっすよ!とバスク大佐に力強くプレゼンした結果、コーウェン中将じゃなく、ジャミトフ派にスカウト。

 

バスク大佐からは、「貴様が推したんだ。面倒は見ろよ」って仰せつかって、その時に竣工予定が確定していたローゼンビッダーの艦長として抜擢されたのだった。

 

最初はあれこれと警戒はされていたけど、シナプス艦長の決断力と柔軟性に理解を示した上で、しっかりと艦長を任せたことである程度の信頼は勝ち得たようだ。月からグリーン・ノアへ航行するときもアレキサンドリアと共にローゼンビッダーも同行していたしね!!

 

 

「シナプス艦長、シェイクハンドだ」

 

「接触回線で聞こえている。すでにミノフスキー粒子も高濃度で散布されているようだな」

 

 

通信を繋げるとすぐにそんな言葉が返ってくる。

 

艦内の通信は問題はないが、もはや宇宙では通常の通信方法ではコミニケーションが取れないレベルである。こちらは強力なレーザー通信の端末で共有しているけど、その通信距離も極端に短いので、いざ戦闘が始まれば細かいところは個々の判断に委ねられることになる。

 

もう敵はすぐそこに。ミノフスキー粒子をあらかじめ散布していると言うことは、「そう言うこと」……なんだろうな。

 

 

「ノア中佐の予感が来てますね。下手を打つとこの手勢じゃまずいかも。被弾した機体の回収は任せます」

 

「承知した。こちらからも火力支援は行う」

 

 

シナプス艦長との通信を終えて、俺は機体をMSハンガーへと移動させる。カタパルトの脇にある待機スペースに着くと、すぐに発進準備を終えたカクリコンのハイザックも到着した。

 

カクリコンの機体は射撃戦を得意とする彼の腕に合わせて調整がされていて、ジェネレータ出力を強化し、装備する武装も実弾兵器ではなくロングバレルのビームライフルを装備している。

 

俺の乗るプロト・マラサイはカクリコンとは違い接近戦仕様に調整されている。ビームライフルも近中距離の戦闘を想定したカービン仕様にしてもらっていて、肩部、脚部のスラスターも増設。そして腕部には着脱せずとも展開できるビームサーベルを装備しているので展開して腕を振るうだけで立派に近接格闘もできる。

 

その分、長距離からの狙撃やアウトレンジでの戦いには向かない仕様のため、そこはカクリコンのハイザックがフォローする形となる。

 

深淵の宇宙の中、サラミス級はMS発進で騒々しくなる。その喧騒の中でも俺は隣にいるカクリコンのハイザックへ視線を向けた。

 

 

「カクリコン、どう思う?」

 

「隊長、なんだか嫌な空気ですね」

 

 

あぁ確かに嫌な空気だ。戦闘準備が進んでいるし、ミノフスキー粒子も出ていると言うのにあまりにも……静かすぎる。

 

 

「……どうやら獲物を探しにやってきた海賊ではなさそうだ」

 

 

ヘルメットのバイザーを下ろして独りごちる。これはプロの気配だ。食い扶持欲しさにやってきた野蛮な奴らとは明らかに気配がちがう。すると、MSハッチが開き、先ほど会話した駐留部隊の指揮官を名乗るGMⅡがMSデッキからカタパルトへと姿を現した。

 

 

「シェイクハンド少佐、やはり敵は……」

 

「あまり気を張るなよ、大尉。戻ったら一杯やろう」

 

「えぇ、そのときは奢らさせていただき……」

 

 

その瞬間、宇宙のどこかが瞬いた。声を上げる間もなく、ほんの目の前にいた指揮官のGMⅡの胴体に横串を刺すような一閃が穿たれた。

 

一目見て即死だった。コクピットを通過した閃光はそのままローゼンビッダーを離れていき、宇宙へと飛散する。俺はすぐに穿たれて鉄の塊となったGMⅡを外へと押し出す。当たりどころが悪かったのか、GMⅡは穿たれた箇所がスパークしてそのまま明滅を繰り返したのち、爆散した。

 

 

「敵機が!?いつのまに……」

 

 

突然の強襲と指揮官であった者の死。デッキから出てこようとした駐留部隊のGMⅡが目に見えて動揺していた。

 

敵はすぐにきた。ローゼンビッダー……いや、サラミス級……艦艇の弱点である下からの襲撃。俺とカクリコンはすぐに動き出した。下から来られるのはまずい……!

 

ロングビームライフルであらかた狙いをつけたカクリコンがすぐさま狙い撃った。光は向かってくるどの機体を捉えることもなかったが、それでもその威力は絶大だった。

 

ビームカービンを構えて俺のプロト・マラサイは一気に避けた内の一機であるザクを捉え、ビームで蜂の巣にしていく。ザクは力無く宇宙を漂ってから小さく爆発したのが見えた。

 

まずは一機……!!

 

 

「対空、対MS戦用意!迎撃遅いぞ!」

 

「おいでなすったか!各機散開!出鼻を挫かれた……!」

 

 

先行した俺とカクリコンに続く形で友軍機も続々とローゼンビッダーを後にして行く。敵はすぐに動き出した。ゲルググまで用意しているのか……!

 

先頭でビームナギナタを展開したゲルググに続く形でザクやドムも前へと出てくる。

 

 

【やはりここできたか、連邦ども!!】

 

【ここであったが100年目ぇ!!】

 

「ザクとドムか!これまた骨董品を持ち出してきたな……守備隊は後退!奴らは混戦に慣れてる!同じ土俵で戦う必要はないぞ!」

 

 

出撃したグリーン・ノアの守備隊へと指示を出す。彼らの能力で言えば基本的なMSの操縦技術だけで、実戦経験があまりにも少ない。対する敵はゲリラ戦に慣れた混戦のプロフェッショナルだ。

 

出力の低いビームスプレーよりもビームライフルを持たせたんだから、少しは遠目から援護射撃でもしていてくれ!

 

 

「エマ!迂闊だ!」

 

「す、すいません……!」

 

 

カクリコンがハイザックに乗ったエマを素早く後退させながら、ロングビームライフルを放つ。一閃はドムの頭部を弾き飛ばしてコクピットを抉り取った。これで二機目……しかし、仲間が落とされても敵は構わずにこちらへと攻撃を仕掛けてくる。

 

 

「海賊じゃねぇな、お前たち!!」

 

 

コクピットに二つ、信号音が響く。俺はすぐにフットペダルを踏んでマラサイを機動させると、すぐ前をローゼンビッダーの主砲が横切った。こちらは回避し、突っ込んできていたザクはメガ粒子砲の余波で片腕をもがれた。

 

ビビって下がっちまえ!!

 

くるくると無重力の中で回ったザクだが、すぐにアンバックで姿勢を正して残った腕にヒートホークを装備して再度距離を詰めてくる。こいつら……っ!!

 

 

「死ぬ気か!!」

 

【もとより捨てた命ぃ!!】

 

 

ビームカービンの銃口を向けた瞬間、真横からザクの上半身をカクリコンのロングビームライフルが吹き飛ばす。これで三機目……!!

 

 

「隊長!!」

 

「カクリコン!こいつら、死に場所を見つけたようだ!!」

 

【蒼き疾風……お前が来るのを待っていたぞ】

 

 

瞬間、光が瞬く。差し迫ったゲルググのビームナギナタを腕部のビームサーベルで受け止めると、接触回線で怨念のこもった声がコクピットに響いてきた。

 

 

「はん!エゥーゴから聞いたか?それともアナハイムか?まぁどっちでもいいけどさ!!」

 

 

ビームナギナタを振り払ってカービンで牽制。だが相手もうまいものだ。ゲルググの機動性を存分に活かした機動をしている。こいつら……やはり、海賊じゃない!!

 

 

【星の屑作戦の借りもある。ここで引導を渡してくれる!!】

 

 

そう言った〝反ティターンズ組織〟の男は、ジオン残党と偽装するために手配したゲルググで再び襲いかかってくるのだった。

 

 

 

 

 

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