ぼっち「my new gearで20万溶かしたらお母さんに怒られた」   作:ぼ喜多スキー

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誤字報告感謝です!
なんであんなとこ誤字るかな。凹む。

今回は喜多ちゃんの母親が出ます。
名前は『喜多郁美』。捏造設定です。




(4)喜多ちゃんママの初恋

 喜多郁美は公務員である。夫も公務員だ。

 生真面目な性格ではあるけれど、堅すぎはしない。

 娘のワガママだって多少は受け入れる度量はあるつもりだ。

 さて、その娘だけれど、いつもであれば部屋に籠ってギターを弾いている時間帯に、わざわざリビングで英語の問題集に取り組んでいる。

 相変わらず分かりやすい頑張ってますアピールだ。一体今回はどんな話が飛び出してくるのやら。

 解答に詰まるとスマホで単語や文法を調べながら問題集を埋めていく娘をなんとはなしに眺める。

 スマホかぁ。私たちの頃は参考書と辞書だったな。これも時代なのかしら。

 そんなことをぼんやりと考えてしまったからなのか、ふと自分が女子高生だった頃を思い出してしまった。

 

『――先輩っ!』

 

 可愛い可愛い妹分。才能に満ち溢れていた彼女。望めばきっと、なんにでもなれただろう彼女。

 あの子が作ってくれたお弁当は、とても美味しかった。唐揚げ、ハンバーグ、エビフライ、オムライス、どれも私の大好物。

 あの子は写真を撮るのがとても上手かった。写真部でもないくせに、幾つもの賞を取ってたっけ。

 あの子は運動も得意だった。1回だけ水泳部の助っ人で大会に出て優勝したんだけど、水着姿目当ての野次馬が多いからって、それ以降はお断りしてたのよね。

 あの子は頭も良かった。学年の成績上位にいつも名前を載せてたわね。人は見た目に依らないのねって言ったら、ほっぺたを膨らませて怒ってた。

 明るくて、可愛くて、優しい人気者。運動が得意で、勉強も出来る優等生。――あら、容姿以外は結構郁代に似てるわね。

 それはともかく。真面目なことしか取り柄がない私に、何故かとても懐いていて、私もかなり気を許していた。

 ……あの野郎に奪われるまでは。

 全く、あんなクズのどこが良かったのか未だに理解不能だ。

 あんなのに心を奪われてさえいなければ、大企業に就職してキャリアウーマンになることも、料理研究家にも、パティシエにもなれただろう。スポーツ選手やアイドル、女優にだってなれたはずだ。なのに、そんな輝かしい未来を捨てて、冴えないバンドマンに心を寄せてしまった。

 もったいない。

 悔しい。

 あんなのに取られるくらいなら、いっそ私がげふん。

 

 ねぇ、郁代。

 あなたは自分の名前がしわしわネームで嫌って言うけどね。私はその名前、とっても気に入ってるの。だって、私とあの子の名前を合わせてあるんですもの。旦那には内緒だけど、まぁ、これくらいは許されるわよね。

 

 艶やかな桜色のロングヘアと、淡く輝くような瑠璃色の瞳。歳下の癖にスタイルは抜群に良くて、並んで立っているとあの子の方が歳上に見られることが多かったっけ。

 今頃、どこで何をしてるかしらね。

 

「お母さん、ちょっと話があるんだけど」

 

 声をかけられて、意識が浮上した。

 ちょっと思い出に耽り過ぎたかしら。

 

「なに?勉強は終わった?」

「終わりましたー。宿題も予習も復習もね」

「お疲れ様。話ってなに?」

 

 改めて、郁代を見る。

 なんと言うか、びっくりするくらい、私たち夫婦と中身が正反対。

 生真面目一辺倒な公務員夫婦の元で、どうやったらこんなイソスタ中毒な娘が育つのかしら。

 それとも今時の女子高生って、大体みんなこんな感じなの?

 

「この子、どう思う?」

 

 いつの間にかテレビとスマホを繋いでいたらしい。テレビの大画面に何かの雑誌らしい表紙が映されていた。

 そこにいたのは――艶やかな桜色のロングヘアと、淡く輝くような瑠璃色の瞳を湛えた女の子。

 

「みちっ……!?」

 

 咄嗟に口を塞ぐ。

 なにこれ。

 直前まで思い出に浸っていたせいか、あの子にしか見えない。

 でも、流石にそれはない。

 幾ら当時可愛かったとは言え、それは20年以上前のこと。あの子だって今はアラフォーだ。そしてテレビに映ってるのは間違いなく女子高生。

 まさか……娘、なの?

 

「どうしたの?」

「いえ、なんでもないわ。それで、この桜の君、じゃない、女の子がどうかした?」

 

 ちなみに『桜の君』は当時あの子に付けられていた称号だ。古臭いとか言う奴は全員ブチ◯してやるので大人しく手を上げるように。

 ……そう言うのが流行った時代だったのよ!

 

「えと、大丈夫?」

「大丈夫だから話を続けなさいよ」

「あ、はい。この子、読モなんだけど、私のバンド仲間でもあるのね?それで、今日、告白されて、付き合うことにしました。以上」

「へー」

 

 女の子同士で恋人になれるの?

 はぁ、時の流れって残酷なのね。

 私の時は胸の内に秘めておくだけで精一杯だったのに。

 これも時代なのかしら。

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 なんか、思ってた反応と違う。

 へー、で終わる問題じゃないよね?

 テレビに映ったひとりちゃんをまじまじと見つめて、そうかと思うと私からスマホを引ったくってセ◯ンティーンのサブスク画像をスイスイとめくっていく。

 ひとりちゃんの写真は全部で4ページ。表紙にあるワンピースの他にも、スプリングコートやカーディガンにボレロ、パーカーと、大人っぽいファッションからカジュアルな着こなしまで幅広くフォローしてる。

 ホント、何を着ても似合うのよねぇ。なのに本人はファッションに全く興味がないって、それ犯罪じゃないの?素材冒涜罪とか美貌隠匿罪とか。オシャレ義務違反も付きそうだわ。まぁ、そうでなくても私の心を盗んだ窃盗犯ですけどね?

 それはさておき。

 お母さん、ガン見。ただ見るだけじゃなくて、拡大してバストショットにしたりウエストショットにしたり、ひとりちゃんを一番可愛く見るためのバランスを探っているような感じで。

 

「この子、名前は?」

「へ?」

「だから、名前。火鳥って、芸名みたいなものなんでしょ?」

「あぁ、本名ね。ひとりちゃんよ。火鳥は漢字を当てただけなんだって」

 

 本名そのままってワケにもいかないし、でも全然違う名前じゃ自分のことだと思えなくなるから、火鳥の読みは本名と同じ。

 美智代さんの話だと、元々はこっちだったそうだけど、それだと厨二っぽいから平仮名にしたんだそうな。

 意味は『例え困難に遭って傷付き倒れても、火の鳥のように再び立ち上がる勇気を持った子に育ちますように』だって。

 1人目だからじゃなかったのね。

 因みにふたりちゃんの場合は『2人なら孤独ではない。側にいる誰かと寄り添える優しい子に育ちますように』って願いを込めて名付けたんですって。長女は引っ込み思案でいつも一人ぼっちになってしまったから、次女は友達に囲まれるような子になって欲しかったらしい。もちろん、2人目だからじゃない。

 

 ……分かりにくいっ!

 なんか、こう、考えてることは高尚なのに、結果が最悪なところに辿り着いてる感じがする!まさに厨二。平仮名にした程度じゃまるで隠しきれてない!

 いや、『ひとり』って名前、私は好きよ?ひとりちゃんって感じがして。平仮名なのも、柔らかいイメージがあって好き。漢字やカタカナじゃなくて良かったと思う。

 でもこれは私個人の感想だから。他の人からすると、やっぱり変な名前って思われても仕方ない。ひとりちゃんは手遅れだとしても、ふたりちゃんが将来名前のことで虐められませんようにと祈る今日この頃。私も昔、名前で揶揄われたからね、気持ちは分かるの。大丈夫、1人じゃないよ!

 

「フルネームは?」

「苗字は後藤よ。後藤ひとりちゃん」

「後藤、後藤ね。なるほど」

「なに?」

「いえ、遺伝子がいい仕事してるなって思っただけ」

「意味分かんないんだけど?」

 

 いやホント意味不明。

 女の子同士ってことが完全にスルーされてるのはどうして?

 実はお母さんも同性カップルに理解があるってこと?

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 取り敢えず報告はしたし、否定的な反応はなかったので良しとする。

 部屋に戻ってひとりちゃんに報告っと。

 

喜多『お母さんに報告したよ!』

喜多『(敬礼のスタンプ)』

ひとり『お疲れ様です。どうでした?』

喜多『なんか、普通?へーって言ってた』

ひとり『へー?』

喜多『へー』

ひとり『喜多さんのお母さん、公務員って聞いていたので、違う反応がくると思ってました』

喜多『ね。私も』

ひとり『取り敢えず第一段階はクリアですね』

喜多『(バンザイのスタンプ)』

喜多『ひとりちゃんの方はどう?』

ひとり『中学の基礎から、お母さんにみっちりしごかれてます』

ひとり『(泣き顔のスタンプ)』

喜多『頑張って!一緒の大学行くんでしょ?』

ひとり『はい』

 

 STARRYへの道すがら、ひとりちゃんと話したのは将来のこと。

 その中の一つ、進路について。ひとりちゃんは今まで「陰キャだから仕方ない」と言い訳してたのを反省して、私と一緒にいるために頑張ると決めたそうだ。

 そう、私のため!

 わ・た・し・の・た・め!!

 あ……もう、さいっこーだわ!

 テストで0点取るマンガのキャラみたいな子が、私と一緒にいる未来のために泣きながら勉強してるとか、もうね、ゾクゾクしちゃう!

 私、愛されてる!

 

喜多『私も勉強頑張る!もちろんギターも、歌もね!』

ひとり『一緒に頑張りましょう』

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 ふたりはお姉ちゃんと一緒にお風呂に入るのが大好き。

 いつもは変な服を着てるけど、お風呂ではハダカだから、そんなの関係なくなるからだ。あとおっ◯いおっきいので、マクラにすると気持ちいい。おっ◯いだけじゃなくて、身体中もちもちで、すべすべで、つるつるで、どこを触っても気持ちいい。

 指先だけは固いけど、これはギターを頑張ってるからなんだって。努力の結晶って奴だ!って、お父さんが言ってた。

 指が固くなるのはもったいないけど、お姉ちゃんのギターは好きなので、しょうがないなって思う。

 お姉ちゃんのふわふわに包まれてると、ぼんやりしてくる。頭の中もふわふわになる。でもお胸の奥のほうだけはキュっとする。不思議。

 最近、お姉ちゃんは綺麗になった。うーん、ちょっと違うかな?綺麗なことを隠さなくなった。本当は最初から綺麗だったんだって、ふたりは知ってる。ナイショだけど。

 なんで隠さなくなったんだろ?って思ってたら、お母さんが綺麗じゃないと出来ないお仕事をするためよって、お姉ちゃんの写真が載ってる本を見せてくれた。まるでお姫様みたいなお姉ちゃんがいた。

 お姉ちゃん凄い。綺麗。ほっぺたが熱くなって、頭がくらくらした。

 でもちょっと、あーあって感じ。

 お姉ちゃんが綺麗なのは、ふたりだけのナイショにしたかったのにな。

 あーあ、ナイショじゃなくなっちゃった。

 あーあ、お姉ちゃんが綺麗って、みんなにバレちゃった。

 もう、しょうがないなぁ。

 しょうがないから、みんなにもふたりのお姉ちゃんを分けてあげる。

 ふたりはオトナだからね!

 

「ふたり、どうしたの?ご機嫌ナナメ?」

「なんでもなーい」

 

 でもやっぱりムカつくので、おっ◯いにチューってした。

 

「んっ、いたっ!こら、ふたり!」

「うごかないで!」

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 路上ライブをしょうってことになったけど、まずは練習だ。

 ぼっちちゃんは2か月近いブランクがあるから、そこを取り戻すところから始める。

 あと、新宿FOLTにゲスト出演させてもらえるクリスマスライブもあるしね。練習する時間は多ければ多いほど良い。

 ぼっちちゃんがいない間は3人で練習してたけど、やっぱりリードギターがいないと締まらないんだよね。

 で、いざ合わせてみたらと言うと。

 

「これは予想外」

「いや、私はこうなるんじゃないかと思ってたよ!」

 

 私たちとアイコンタクトを取るのに躊躇いがなくなった。

 それだけと言えばそうだけど、今までのぼっちちゃんには出来なかったことなんだ。それを復帰後初の練習で改善してきたんだから、感動もひとしおだ。

 喜多ちゃんなんかは感極まってぼっちちゃんに抱き付いてる。

 

「ひとりちゃん!」

「喜多さん……えへへ」

 

 あ、うん。そうじゃなくても抱き付くのはもはやデフォでしたね。はい。

 それはともかくとして。アイコンタクト出来るようになったのは、多分、読モ活動の成果なんだろう。知らない人に囲まれて写真を撮る機会が多かっただろうし、人目に慣れたりしたんだろうね。

 これならアウェーのFOLTや、知らない人だらけの中でやる路上ライブも上手くいきそうだ。

 私たちはこれからどんどん上手くなっていく!

 夢に向かって突っ走る!

 やだなぁ、もぅ。ドキドキとワクワクが止まんないよ!

 

「はーい、イチャ付くのは後にして!練習続けるよー!」

「はーい!」

「あ、はい!」

 

 それからスタジオのレンタル時間ギリギリまで練習したけど、ぼっちちゃんはまぐれじゃなくて、確実に実力が上がってるのを実感した。

 これは私たちもうかうかしてらんないね。

 ぼっちちゃんの本当の実力、ギターヒーローを支えられるようになるんだ!

 

「ぼっち、新しい曲を作ろうと思う」

「あ、はい、良いと思います。でも今からとなると、クリスマスに間に合いますかね?」

「クリスマスライブでやることは想定してない。これから上に行くために、今の私に出来る最高のものを作りたいんだ」

「リョウさん……」

 

 おぉ、リョウが珍しく熱くなってる。

 ぼっちちゃんのスキルアップに触発されたかな?

 

「それでCD作って物販で売る!」

「はい?」

 

 いや、まぁ、やること自体は間違ってないけどさ?

 

「MVも作ろう。読モでセ◯ンティーンの表紙を飾ったぼっちが出るとなれば成功間違いなしだ!」

「あ、はい」

 

 間違ってないだけに、なんかこう、モヤるなぁ。

 あ、そう言えば。

 

「ぼっちちゃん、ちょっと聞きたいんだけど。結束バンドのアー写にぼっちちゃんが写ってるのとか、物販でぼっちちゃんのブロマイド売るのとか、大丈夫?」

「へ?」

「ほら読モやってるとなると、肖像権とかどうなってるのかなって」

「なるほど」

「それは私も気になってた。是非とも売りたい!」

 

 ちょっと聞いてみますね、とぼっちちゃんは電話をかける。

 うーん、どうなのかな。

 最悪ブロマイドは諦めるとしても、アー写は欲しいんだよね。バンドの広報にも使うしさ。

 

「あ、オッケーだそうです。お母さんが契約の時にバンド組んでることを話してくれてたみたいで、火鳥の名前を使わないなら大丈夫って」

「おぉ!なら撮ろう、すぐ撮ろう!くくくっ、これは売れる、売れるぞ!」

 

 おーい、ブロマイドの売り上げは個人ごとに分けるからなー。

 

「そうだ!アー写も撮り直しません?ひとりちゃん、前と違って写真が苦手じゃありませんし、心機一転!ってことで!」

「おー、良いね!」

「あ、はい。今なら割と平気です。と言うか、黒歴史はなるべく早く消し去ってしまいたい……」

 

 思い立ったが吉日!ってしたかったけど、どうせならちゃんとしたのを撮りたいってぼっちちゃんが言い出して、撮影は後日に改めることになった。

 ちゃんとしたのって、なんだろ?

 




喜多母と後藤母の2人は高校時代にちょっと百合っぽい先輩後輩の友人だったと言う概念。
喜多母が「郁美」で
後藤母が「美智代」で
合わせた名前が「郁代」だったら良いなって話

ストックが切れたので書き溜めに入ります。
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