憑依先生貞操逆転青春物語   作:新参先生

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先生のやらかし(前)

翌日の十五時、会場に着くと盛大に生徒たちに歓迎してもらった。

 

『退院&誕生日おめでとうございます先生!』

 

ミレニアム、ゲヘナ、トリニティ、百鬼夜行、山海経、レッドウィンター、ヴァルキューレにRABBIT小隊の皆。立場上、アリウススクワッドの四人は居ないが、いつか皆と一緒のところを見られればと思う。

 

原作先生に「成り代わった」ような立場として悩んだ時期もあったが、こうして皆に歓迎されていると、自分のしてきたことが間違いでなかったと感じられた。

まずいな、今日泣いちゃうかもしれない。

 

ゲーム部のモモイ、ミドリ、アリス、ユズがまず前に出てきて、四人で一緒に持っていた花束を渡してくれた。

 

「先生、お誕生日おめでとう!」『おめでとうございます!』

 

誕生日をこんなに祝われたのは記憶になかった。

感極まって、ちょっと涙が出そうだった。

 

いや、やばい、本当に涙出てないかこれ?

 

 

 

ざわっ…

 

花束を渡すという最初のイベントで、まさかあの先生が花束を抱えながら片手で涙を拭っている事態に一気に祝賀会場はざわついた。花束を渡してくれたモモイ、ミドリ、ユズは特に狼狽えた。あのいつも冷静な先生が…

 

硬直した空気の中、アリスが先生に近寄り、首をかしげて先生に問いかけた。

 

「先生、アリスは何か間違ったことをしてしまいましたか?」

 

先生は顔を上げると明るい声でアリスに答えた。

 

「いや…こんなに誕生日を祝ってもらったのは初めてでね、本当に嬉しかったんだ」

 

真面目な先生の初めて見せる泣き笑いの顔に一部の生徒が固まった。

 

「皆、本当にありがとう。私は幸せ者だよ」

 

今度は間違いない笑顔だった。一部の生徒がまた固まった。

 

 

いきなり予想外のトラブルはあったが、ここからはお誕生日席に座らせてもらい、入れ替わり立ち代わり生徒たちがお祝いの言葉を掛けにきてくれた。一部何故かぎこちない態度の生徒もいたが。

生徒たち同士でもこういった集まりは稀なためか、それぞれで話も盛り上がっており、会場はにぎやかだった。

 

中には挨拶と共に、誕生日プレゼントを持ってきてくれたりもした。個人では負担になるからと予め断っていたが、部活や学校単位で用意してくれたようだった。

 

お菓子、フライパン、防犯グッズ、掃除ロボット、サングラス、雪かき等々。

この場に料理を準備して持ってきてくれたところもあった。

 

その中で目についたものがあった。

ラベルの表記から見て、お酒だ。シャンパンのようだ。

 

前世は特にアルコールに弱かった記憶があるが、お酒自体は嫌いでなく、この世界に来てから一度も飲んでいないことを誰かに話したことがあった。

ラベルを見ていると、ユウカが答えてくれた。

 

「先生が、お酒は嫌いではないですが、キヴォトスに来られてから一度も飲まれていないということを聞きましたのでご用意してみました」

 

ふとこぼした言葉を覚えていてくれたことで、また嬉しくなってしまった。

 

「ユウカ、ありがとう。忙しくて自分でも忘れていたから、嬉しいよ」

 

お礼の言葉でユウカが顔を綻ばせると、提案をしてくれた。

 

「お祝い向けのものですので、よかったらこの場で開けられては如何でしょう?」

 

ユウカの提案に快諾すると、コルクを開けてグラスに注いでくれた。

 

「流石にお酒ですので、主役の先生だけということで…」

 

皆、乾杯の代わりに、もう一度『お誕生日おめでとうございまーす!』と言ってくれたのがまた嬉しかった。

 

 

照れくささもあってグラスを一気に呷ってしまったが、すぐに飲酒後特有の感覚が昇ってきた。

自分でも顔が熱くなっているのが分かる。アルコール耐性の低さは前世と同じようだ。

 

結果的には大きな事件を生徒の犠牲無く乗り越えられたこと、そしてこの誕生日にお祝いしてもらったことで、これ以上なく気分が良い。

 

心がぽかぽかしており、キッチリ締めたネクタイのある首元が妙に熱かった。

 

ちょっと緩めるくらいなら…問題ないか。

 

 

 

盛り上がっていた会場は、先生が熱さたまらずといった形で荒々しく緩めたネクタイとワイシャツのボタンを上から二つ外した時に水を打ったようになった。

 

「えっ…」「わぁ…」「ななな…!」「あらあら」

 

今まで見たことのない先生の姿に会話が止まり、生徒達は思わずガン見するもの、目を逸らすもの、指の隙間から覗き続けるものなど反応は様々だった。

目の前にたまたま座っていたゲヘナ風紀委員会のチナツは狼狽えながら先生に声を掛けた。

 

「せ、先生、大丈夫ですか?とても顔が赤いですが、苦しくはないのでしょうか…?」

 

先生からは大変に嬉しそうな声色で返答があった。

 

「いや…お酒を飲んで、というのは少し恥ずかしいけど、本当に良い気分なんだ。とにかく嬉しくてね」

 

思わずといった感じで再びグラスを呷り、先生の言葉が続いた。

 

「正直、皆からはどう思われているか不安に思っていた時もあったよ。でも今日のことで安心したよ。これからはもっと皆と仲良くなれるといいな」

 

あの真面目な先生が。

明らかにお酒の影響でいつもよりフランクになっている…!

 

一部の生徒の目が光った。

かつてないほどに、今なら今まで聞けなかったことも聞けるのではないか?

 

生徒の皆が内心でそう思う中、便利屋68のムツキが先生へ近づき、口火を切った。

 

「せんせ、もっと仲良くしたいなら、もっと私たちに聞きたいこととか無いの~?」

 

「色々あるけど、聞いて良いか分からないことが多くて」

 

「例えば~?言っちゃいなよ!」

 

「…先生、動物が好きで、一緒にしちゃいけないんだろうけど皆の角とか翼とか尻尾に興味があります。頭の上にある耳にも」

 

「えー!それって、触りたいってこと?」

 

「…問題なければ」

 

 

ざわっ…!

 

先生は、角と翼と尻尾に興味がある。ケモミミにもある。

実のところそれらはキヴォトスにおいて特別な意味は無いが、手を触るよりは親密さが必要だろう。つまりは気の置けない仲と言っても良い。

 

ムツキが素早く後ろを振り返り、声を掛けた。

 

「アルちゃーん!?今すぐ来てー!!」

 

「ええっ!?」

 

後ろから狼狽えたような声が聞こえた。

 

「はーやーくー!!」

 

「うぅっ…」

 

便利屋68のアルがすごすごと前に出てきた。さらに顔を赤くして、先生の前にしゃがみこんだ。

 

「さ、先生。アルちゃんの角をどうぞ」

 

目の前のアルは俯き気味でプルプルと震えている。

 

「…アル、本当にいいの?」

 

「べ、別に特別な意味は無いし、先生にはとてもお世話になっているから…」

 

震えているアルを見ると悪い気がしてくるが、本人が言うならと両手を伸ばして左右の頭の角を触らせてもらう。

周りが何だかとても静まり返っている気がするが、気のせいだろうか。

 

触っている感覚については…ひんやりしている…アルは震えながら目を閉じているので分からないが、多分触られる側も角の感覚は無いのだろう。

今度は周りがざわめいているような気配があるが、今は気にならなかった。

 

さわさわしながら付け根に辿り着くと、首あたりの肌に触れてしまい、アルがビクッと震えたのが分かった。

周りのざわめきはもう無視できないレベルだった。慌てて、手を離してアルに声を掛けた。

 

「ごめんねアル…でも、気持ち良かったよ。ありがとうね」

 

「せせ、先生なら一向に構わないわ!」

 

そういってダッシュで後ろに戻ってしまったアルだが、耳が赤くなっていたように見えた。

 

「んふふ~せんせ、またね!」

 

笑顔のムツキも、アルを追って戻っていった。

 

 

便利屋68の一連の遣り取りに、会場の戦慄は止まらなかった。




・本編先生
貞操逆転世界なのでワイシャツのあたりは逆転して想像してください。
酔うと気安くなるタイプ。
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