【アイドル】   作:マッキーガイア

11 / 11
ぼぅっとしていたらいつの間にか2週間が経っていた……。
馬鹿な…仕事で塗れてあっという間だった…
本当にすみません。
因みに前回言っていた事だいぶ崩します。


本家【メフィスト】中編

「異世界通信にようこそ。星野愛久愛海様と星野瑠美衣様ですね。

私は映像ディレクターのミッシェルです。気楽にジョジョとお呼びください。」

 

そう言いながら男は「私はハリーではありません」と書かれた名刺を俺に手渡した。どう言うギャグなのだろうか。

 

あれから1週間が経ち今日からMV撮影が始まる。

集合場所である撮影スタジオは我が家から案外近く通える距離にあった。どうもだいぶ昔からあったらしいのだが、こんな大きなスタジオがこんな近くにあった覚えは俺にはない。

まるでこのMVを撮るためだけに急造された様だ。

 

「本日は宜しくお願いします。星野アクアです。」

 

「宜しくお願いします。星野ルビーです。」

 

そんな風に兄妹揃って社会人宜しく頭を下げる。

挨拶を交わしながらも直ぐに目の前の男に視線を移す。正直、異世界通信に関わる様な人間なぞどんな癖が強い奴か見当がつかないと思っていた手前出てきたのが中肉中背、スーツ姿に個性がまるで無い量産型日本人の様な容姿に少し安心した。

多分、次回街のどこかですれ違っても気付かない。それ程に影の薄い男だ。まぁ、内面はどうかは知らないが。

 

「では、早速中へ入りましょう。」

 

 

 

玄関を抜け、スタジオまでの長い廊下を歩いていると廊下の端にテーブルや棚など様々な家具を見ることが出来る。どうやら撮影に使った小道具らしく、見れば何処ぞの生徒会室で見たソファーやら机やらが並んでいる。あれ実写化したのだろうかなどと思いながら見ていると…

 

「…………え。」

 

そんな中に見逃せない物が目に入り立ち止まった。

 

 

それはドアである。

木の枠に中央が曇りガラスを入れられている。

だが、そのガラスの中央にはまるで引きずられたかの様に赤いナニかが塗りたくられていた。

 

俺たち兄妹はこのドアを知っている。

 

「………これ………って……。」

 

 

俺たちが前に……アイと一緒に住んでいた家の扉。そして、アイの最期に背にしていた物でもある。それが確かにあのときの記憶と一寸の狂いも無く煽情的にアイの血を吸ったそのままにそこに佇んでいる。まるであの事件の後、ドアだけ時間を止めて持ってきたかのようだ。

 

「………ルビー……」

 

「………。」

 

ルビーに視線を向ける。あの事件がトラウマになっているのは僕だけじゃない。

 

 

ルビーはゆっくりと扉に近づくと、屈んだ。

見れば下の方の硝子に赤い手形が付いている。たしか、あれは最期にアイが付けた手形だった。

 

「…………ルビー…」

 

「昔はあんなに大きかったのにね…。

もう……ほら、ピッタリ。」

 

そう言いながら手形に自分の手を重ねる。実際、その手形はルビーの手とピッタリ同じ大きさだった。

 

「大丈夫だよ。アクア。行こう。」

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

最初の撮影のセットを覗く。

 

ああ、やはりと思う。

僕たちがアイと過ごした部屋のリビングそのものとしか言いようがない空間がそこにはあった。

 

「…では星野愛久愛海様。じき撮影が始まります。こちらの方でごゆるりと…

星野瑠美衣様の控え室は別になります。付いてきてくださいませ。」

 

端に避けていたミッシェルさんがそう俺に言うと少ししてルビーを連れて部屋を出ていく。

嗚呼、つまりここはセットではなく控え室という事なのだろうか。にしては趣味が悪いとしか言いようが無い。

 

「……ッチ。」

 

ある一点を見つめて舌打ちをする。

こんな所まで再現してるのか…

棚の一番端に飾っている星の砂が入った瓶。あれはアイを殺したストーカーにプレゼントされた物だ。

やはり、奴ら人の心とやらが無いらしい。俺を料理の材料かなんかとしか思っていないのかもしれない。ここに来てから少しずつ心が荒んでいくのを感じていた。

 

「…はぁ……撮影前からこんな調子でどうする。あくまでもこれは仕事だぞ。」

 

自分に言い聞かせるように呟けば自然とソファーに足を向ける。ソファーもあの頃のまま。デザインなんか忘れてしまっていたがこんなのだったかと少し納得した。

 

ストンッとソファーに体重をかければ知らない感触に襲われる。なんか違う。そうか…それもその筈、あの頃と体格も体重も違っているのだから感触もかわるかと少し寂しくなる。

あの頃は体の全てを包み込んでもあまりあったのに今では包み込むことすら出来ない。

 

少し感傷に浸る。

 

ふと、後悔や罪悪感が湧いてきた。

なぜ、僕はあの時ストーカーの存在を知っていた癖に放置していたのか。

何故、アイの子供を取り上げる筈だった僕がアイの子供として産まれたことをのうのうと受け入れてしまったのか。

今となってはどうこうできない後悔だけが僕に残っている。それは生涯僕自身が永遠に抱え続けるものだろう。

 

「………アイ……ごめん。

君の大切な子供をこんなつまらない大人にしてしまって………」

 

これは()の言葉。

彼女の子供を自分自身として認識する前の……

出来れば彼女の子供にこんな深い後悔なんてして欲しくなかった。

こんな憎しみも何もかも…知らないままでいてほしかった。

 

復讐なんて馬鹿げてるって言えれば良かった。

 

 

 

 

幸せになってほしかった。

 

 

 

 

彼女の子供を産ませると言った時、確かにそんな願いを持っていた癖に全部自分で台無しにした。

彼女の子供を復讐鬼にして…あまつさえ、全てが終われば死のうともしていた。

 

 

なんて邪悪。

 

なんて悪霊だ。

 

 

 

お前は復讐しろと嘯くのではなく、ただ子供の幸せだけを願っていれば良かったんだ。

星野アクアにとってお前は最大の癌になってしまった。

 

最近になって漸く気付いた。

 

幸せになってはいけないという考えに囚われていた。

だけど、雨宮吾郎だけならともかくアイの息子である星野アクアを巻き込むのは間違ってる。

 

逆だった……逆なんだ。僕が星野アクアの人生を幸せな物にしなきゃいけない。

それが君を産ませようとした僕の責任の取り方だったんだ。

 

 

 

 

ふと、カラカラと音が鳴り始める。何の音だろうかと周りを見渡し始めたら急に部屋の電気が消えた。

気付けば目の前には3人の()()が1番星を眺めている場面がひたすら流れ続ける。

背後を見れば古い映写機が回っていた。

 

「……これは………アイと俺たちか…?」

 

回ってはいるがどうやら絵は動かない。

3人の家族が星を眺めている絵。

 

嗚呼、なんだか思い出した。

あの時だ。何げ無く家のベランダからみんなで1番星を探したあの時。

アイが先に見つけて少しはしゃいでいた。そして、流れ星でもないのにお願いをしようって事になって……

 

あの時、アイは何て言ったんだっけ…

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:5文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う(作者:雑穀ライス)(原作:推しの子)

気が付いたら有馬かなにTS転生していた。▼だが、大人になればいずれ精神が身体と環境に適合して、男だった前世の俺の意識は消えていくのだろう。▼だから、俺が消えるまでの間は彼女の心を守護ってやろうと思う。▼なおルート選択をガバってカミキヒカルルートに突入してしまった模様。▼


総合評価:15801/評価:8.39/完結:93話/更新日時:2025年08月25日(月) 08:01 小説情報

ライネス・エルメロイ・アーチゾルテの真似をする性転換少女(作者:ピトーたんは猫娘)(原作:HUNTER×HUNTER)

 FGOのガチャをしていたら、気付けばHunter×Hunterの世界に転生してしまった。▼ それもカキン帝国の王子で、双子の姉はモモゼだ。特に第4王子が危険すぎる。▼ うん、死亡フラグ満載だ。▼ 奴の変態性から考えると殺されることしか予想できない。▼ これはもう、本気で殺し合うための準備をするしかない。▼ どうせ蠱毒の毒みたいな儀式で殺し合うのだし、手段を…


総合評価:12442/評価:7.59/連載:38話/更新日時:2020年07月21日(火) 01:55 小説情報

リーニエと燕を斬る老爺(作者:ハソユア)(原作:葬送のフリーレン)

まだ幼い頃のリーニエはある時、山の中で剣を振る老爺を見つける。▼己の魔法である「模倣する魔法」に活かすため老爺を観察するリーニエだったが、老爺は誰とも戦わないままあっさりと死んだ。▼「模倣する魔法」ですら再現できない秘剣を残して。▼リーニエ編は完結済み。▼シュタルクも一旦完結済み、原作の進行待ち。


総合評価:20875/評価:8.84/完結:18話/更新日時:2026年03月22日(日) 00:00 小説情報

【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)(作者:Woudy)(原作:推しの子)

心の奥底で愛を求めた悪魔は、嘘の愛を真実に変えようとする少女の子に転生する。▼推しの子アニメを見てふと思い付いたネタです。「あれ?アイって城ヶ崎に似てるな?」と思ってたら何時の間にか筆が進んでいました。▼2023/11/9 本編完結。※但し今後もお話を書く予定。▼転生後の城ヶ崎(3~4歳時) ▼【挿絵表示】▼星野マリア(寿みなみと共演) ▼【挿絵表示】▼星…


総合評価:2889/評価:7.65/完結:156話/更新日時:2026年05月08日(金) 12:26 小説情報

【推しの子】ヤケクソハッピーハーレムルート(作者:ただの暇神)(原作:推しの子)

どこまでが真実かわからないカミキヒカル▼この作品は彼が本当にアイと結婚したくて責任取るつもりだったけど手酷く振られて落ち込んでいたという供述が本当だった世界線。▼神がほんのちょっとだけ双子に干渉した結果、世界は優しい方向へと変わっていくことになる。▼ただひたすらに推しの子がハッピーエンドになるだけの話です。▼本当にごく一部の例外を除いて幸せになります。勿論主…


総合評価:9573/評価:9.07/完結:167話/更新日時:2025年04月14日(月) 06:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>