「異世界通信のTwitter見た?
YOASOBIの新曲だってさ。今夜、プレミア配信やんの!」
「マジ楽しみ。この間の『祝福』も良かったし。まぁ、いきなりガンダムのOPやるとは思って無かったけど。」
何気ない日々の隙間だった。
意味も無いような会話の合間に挟まるようにそんな情報を耳にしたのは。
異世界通信。俺…アマミヤゴロウが死んで星野アクアに転生する前から存在している、現在チャンネル登録者1億人超えの所謂YouTube界のビッグタイトルだ。
主に投稿内容はオリジナルの映画、アニメ、ドラマ、音楽とさまざまであり、映画に関してはハリウッド映画の大作と遜色ないどころか超えている物まで存在し、海外からの人気も熱い。
しかし、この異世界通信、実を言うと上から下まで秘密ばかりである。
例えばこのチャンネル、オリジナルアニメや映画、音楽と娯楽に関して幅広く配信していると言ったがその全てが異様にレベルが高いくせにグッズ展開などを一切しないため資金源はどうなっているのか判明していない。しかもこのチャンネルに協力しているであろう参加者の人数はとうに一万は超える事が統計として分かっている…が、誰一人として異世界通信に映ったとか、そう言った話をしたがらない。むしろ参加している人が実際に存在しているのかすら確定した事がない。
故にこのチャンネルは昔からもしかして本当に異世界の作品を投稿しているのでは?と言う都市伝説が出回っていた。
「まぁ、そう言う契約だったりするんだろうけど。」
普通に考えて異世界とかあり得ない。いや、転生した俺には言われたくないだろうが、それでも行き過ぎている。
マルチバースとか空想にのみ現実味が起きる様な理論だ。それこそ別にネットの住民だって本気で信じてる訳では無さそうだが、意外と海外の陰謀論者は信じているらしい。
「あほくさ。」
そう一蹴してしまう程にはしょーもない噂話に過ぎなかった。
その日の夜までは。
夕方、俺はなんとなくYouTubeを覗き見ていた。
開いているページは例の『異世界通信』のプレミア公開の待機画面。別にずっと待機していた訳じゃない。本当に気まぐれが重なってやっとこのページに辿り着いたのだ。
「タイトルは…【アイドル】?
さすがに今更アイドル売りは無理があるだろ。」
異世界通信の歌手と言う奴らは良くも悪くもアーティストだ。顔出しだってした事が無いし、テレビにも曲は出てくるが本人が出てきた事はない。曲を出すだけ出して終わり。
以降はiTunes等で曲の販売はされるが、それはそれ、これはこれだ。
本人達が露骨に顔を出したがらない。確かに存在はしているのだろう。じゃなきゃ、ここまで人気にはならない。
「…いや、YOASOBIの存在そのものに否定的なのは…俺だけか。」
双子の妹であるルビーもYOASOBIのファンだ。この間だってOP聴きたいがために予備知識無しでアニメを全話観ていた。
それのせいかは知らないけどしばらく右目に黒い星を浮かべていた気もする。まぁ、気のせいだと思う。
だけど、YOASOBIが初めて『異世界通信』に登場した時から俺は思っていた事がある。投稿された動画のキャプション…違和感しかなかった。
これを書いた人は本当にこれを歌った人なんだろうか。いや、スタッフが書いていたのだろうと言うのだったら分からなくも無い。だが、そこで本人が出しゃばらないのはおかしい。
それはまるでYOASOBI自体がこの世界に
そんなこんなしている内にプレミア公開のタイマーが始まる。
30秒前から始まるタイマーだ。ちょっと長い。
俺は仕方無し気に手元のコーヒーを一口、口に含み。画面が3、2、1とカウントダウンを刻み。いざ、動画が始まる
瞬間、
「…っ!?!?ブフッッッーーーー!!!」
俺はコーヒーを思いっきり吹いた。
「ゲホッ、ゴホッ、グホッ…!!はぁっ!?何考えてんだ奴ら!!」
俺は動揺しながらもぶちまけたコーヒーを雑巾で拭き取る。
「いや、確かにアイドルと言えば…ってのは分かるが…」
画面に映り出す
「なんでアイをっ…」
そこには俺が良く知っている。星野アイの姿があった。
『ふぁ、?なんでアイ?』
『そそそそそりゃあ、アアアアアイはいまでもみんなのアイドルですし?』
『B小町のアイ?だいぶ前に亡くなったんじゃ?』
『これ何処の画像使ってるん?こんな素材知らんのだけれども…』
『いや、画像だけじゃねえぞ。映像も使ってる。どれもこれも新規カットだ。
まるでこのMVの為に撮られたみてぇに…』
『馬鹿言うな。10年も前に死んでるんだぞ!?アイは!』
『じゃあ……
「巫山戯ろ。」
アイは死んだ。俺を抱きながら死んだ。冷たくなっていくアイの体温を覚えてる。
そうだ。
死んだんだ!葬儀も済ませた。
死人が蘇るはずっ、
「ッーーーーー………ハァっハァ……落ち着け。落ち着け。俺。」
そうだ。蘇る例がこんな近くにあるじゃないか。
転生と言うオカルトを体験した奴なんてもしかしたらごまんと居るのかもしれない。言っていないだけで、もしかしたらアイも転生している可能性が…
いや、無い。仮に転生していたのなら外見がこうも変わらない事に違和感が残るし、もしこの姿で路上を歩いていたとするなら大なり小なり話題になっている筈だ。じゃあ次なる可能性は…
「お兄ちゃん!!」
瞬間、扉が開く音と共に双子の妹のルビーが飛び出してきた。