【アイドル】   作:マッキーガイア

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真打【アイドル】後編

どんな世界にも薄汚れた部分が存在する。アレが汚れているとは言えないが、それでもあんな部分は世間から言わせれば薄汚れた以外の何物でもないだろう。

 

『誰もが信じ崇めてる。まさに最強で無敵のアイドル』

 

うさぎのぬいぐるみがまるで道化の様に踊っている。周りには誰もいない。

1人で踊って大勢を魅了している。それはまるで楽しげだが、その着ぐるみを着たアイはひたすらに俯瞰的に佇んでいた。

 

孤独だ。

 

アイを誰も理解してくれないし、誰も近寄らない。

 

『弱いところなんて見せちゃダメダメ

知りたくない所は見せずに

唯一無二じゃなくちゃイヤイヤ

それこそ本物のアイ』

 

俺が見る限り星野アイは幸せだったと思う。いつも楽しそうにステージの上で踊っていた。

 

そうステージの上では幸せだったのだ。

 

 

それ以外は?

 

俺たちが生まれた頃は違っただろう。

だが、それ以前はどうだったのだろうか。

 

それからアイの顔が見えなくなった。のっぺらぼうの様にまっさらになって消えた

 

 

 

『得意の笑顔で沸かすメディア。

隠し切るこの秘密

だけは』

 

 

 

瞬間、映る金色の少女と少年、多分この一面だけでこの2人が誰か、わかる者も多いだろう。

 

「ま、待て。」

 

そう声を掛けると共に動画を止める。

知っている。知りすぎている。

身体が強張り表情は険しくなった。ルビーを見てみてもその表情は険しい。ほとんど発狂一歩手前だ。

 

「どう言う事だ?」

 

蚊の飛ぶ様な声で俺は呟いた。

それを聞いたルビーは表情を固くしながら首を振る。

 

「知るはずもない。」

 

そりゃそうだ。俺らの最大の秘密が何処かしらから漏れてるとしか言えない映像の数々。意味が分からないとしか言いようがない。

そうしていると、ルビーは呟き出した。

 

「もしかして、異世界通信の噂…ってマジだったりするのかな?」

 

恐々とそう言うとその画面をみつめている。

 

「正直、もう馬鹿には出来そうにない。」

 

そう言うと俺は画面に手を伸ばして

 

「続き。観るぞ。」

 

そして、再生ボタンを押した。

 

『愛してるって嘘で詰むキャリア。

これこそ私なりの愛だ。』

 

嘘と愛が天秤で吊り合っている。それこそアイの正体そのものだと言わんばかりに。

端の方でコメント欄が困惑を隠せていない。

 

『流れる汗も綺麗なアクア』

 

息を呑む。陽東高校の制服を着た俺が写り込んでいる。

 

『ルビーを隠したこの瞼』

 

「ヒッ…」

 

画面に同じく陽東高校の制服を着たルビーが現れルビーが叫び出さない様に口を押さえた。

 

『歌い踊り舞う私はマリア。

そう、嘘はとびきりの愛だ!』

 

そして、力強くYOASOBIが歌うのを聴きながらアイの瞳に飲み込まれた。

 

『誰かに愛された事も誰かの事、愛した事もない。』

 

画面は切り替わり。あんなに綺麗だったハートがボロボロになって二面性を持つアイの前に佇んでいる。

 

多分、この二面性はずっとそこにあったのだろう。ずっと、アイ自身受け入れられずにいたまま。

 

『そんな私の嘘がいつか本当になる事。』

 

そして、その間を取り持つ様に双子が2人の手を握った。

 

『信じてる。』

 

 

 

 

 

 

 

『いつかきっと全部手に入れる。

私はそう欲張りなアイドル。』

 

いつか、アイが僕に言った言葉。

 

【母としての幸せと

アイドルとしての幸せ。

普通は片方かもしれないけど。

 

どっちも欲しい。星野アイは欲張りなんだ。】

 

そう言ったアイの姿を思い出す。多分そう言う事なんだろう。多分知っているのだ。全部。全部。

 

ため息を吐いた。

 

「どうしたのアクア?」

 

ルビーがそう問いかける。

 

「ここまで知られたらお手上げ状態だと思ってな。俺の前世のことも知られてる。」

 

どう見ても俺の専門外だ。この世には理解できないものがたくさんある。それは俺もルビーも体験した事であり、現代科学がどう頑張ろうと理解ができないものの一つである。

 

「俺たちの転生レベルで意味が分からん。」

 

「はぁ……じゃあ、しょうがないか。」

 

そう言うとルビーは肩を落とした。

 

ルビーはあのアイの久々のlive映像に少々興奮しているらしい。

 

『今日も嘘を吐くの。

この言葉が

いつか本当になる日を願って。

それでもまだ

君と君だけに言えずにいたけど。』

 

画面が移り変わり。俺たち2人がさっきアイが観ていた小さなテレビ画面を見ている。

そしてだんだんと後ろから誰かが近づいてきた。

 

『ああ、やっと言えた。』

 

そして、その誰かの手元からうさぎの着ぐるみがすり抜け。

走り出した。

 

『これは絶対、嘘じゃない。』

 

そして俺たち2人の背中に誰かが飛び乗った。

 

 

「愛してる。」

 

 

右耳を抑える。知っている声だった。知らないはずがない。誰かに今耳元で呟かれた様な気がしたのだ。

 

後ろを振り返れば誰もいない。

 

 

横を見るとルビーも同じ様に左耳を抑えている。そして数秒沈黙した後に少しずつ涙を瞳に滲ませ始めた。

 

「今、ママが……ママが居た。」

 

沈みかけた様にそうルビーは呟く。

しかし、俺はそれを否定できなかった。

 

「そうだ…な。きっと……そうだ。」

 

そして俺もその言葉に頷いた。

 

 




紅白で【アイドル】がやると聞いて、21時に描き始めました。変なところがあったらすいません。
あと6話と設定の矛盾があります。

やばい、コード忘れてたぁぁ!!
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