調べたけど知りたい情報だけはなかったのでもう1から創作です。異世界の話だって割り切って貰って…はい。
「白銀かぐやさん…?」
「そう、明日のグラビア撮影のカメラマン。名前くらい覚えておきなさい。」
いちごプロ事務所。パソコンを睨みながら斉藤ミヤコはソファーに座っている星野ルビーにそう言い放つ。テーブルには幾つの写真が並べてあり観てみればその全てに可愛らしい女性が沢山並んでいる。
ルビーは一つ写真を取ると、写真に映る女性の笑顔に顔を綻ばせた。
「すごい綺麗〜!!腕いいんだね。」
「当たり前よ、女性って事もあって今引っ張りだこの凄腕カメラマンなんだから。お願いするの凄い労力かかったのよ。」
「へぇー!!」
そう唸りながら写真を電灯で透かしてみたりしながら思った事をそのままミヤコに問いかける。
「…でも、白銀かぐや…って何処かで聞いた事無い?」
「あなた良く漫画雑誌も読むでしょう?
そこに名前でも載ってたんじゃないの?」
「う〜ん、そうかなぁ…」
写真をおいて、ソファーの隣に置いてある雑誌を手に取って中を見始める。
グラビア写真が数ページ入っていて最近話題になりつつあるアイドルの水着などが立ち並ぶ。ルビーはここに私が載るのかと一瞬気負うが「まぁ、私の方がスタイル良いし!」と勝ったな!ガハハ!風呂入ってくる!とばかりに拳を天に挙げた。
「やっぱり、写真で見るのと雑誌で見るのとじゃ見方変わるよね……
あ……あった。」
写真の下に『撮影◎白銀かぐや』と言う文字を認める。
「ん〜〜……居たけど。既視感はコレじゃ無い感。」
白銀……かぐや。
「どうでも良いけど、明日早いんでしょう?早く寝なさい。」
「ん〜わかったよ〜…」
そう言いながら私は手元の雑誌を片付けた。
あの【推しの子】の件から2ヶ月が経った。
私達が正体を明かしたあの日、帰ったらロリ先輩とメムちょにツイッターに上げられていたいつしかの私達兄妹のオタ芸のGIFとアニメのオタ芸のシーンを同時に見せつけられながら「凄い再現度!!凄い再現度!!」と笑われた。ピーマン体操と年齢詐称の癖にィ…!!と内心腹が立ったけど流石に口には出さなかった。…あれ?出したんだっけ?まぁいいや。
アクアは依然裏で何やらこそこそやってるらしい。一度聞いてみたら父親を探し出すみたいな事を言っていた。私は……どうなんだろう?憎しみを持ち続けるのは苦しいし難しい。正直、お母さんを殺したアイツが憎くない訳じゃないけど、今は今を一番大事にしたいって思う。アイドルと言う今を楽しめなくちゃ天国のママにも失礼だしね。復讐はその後でもいいや。
アクアも前程追い詰められてるって感じはしないし、今の仕事も楽しんでるみたいだから心配するほどじゃないと思う。
あかねお姉ちゃんとも仲直りしたらしいしね。まぁ、そこは複雑なんだけど。
明日は初めてのグラビア撮影。こう言うのは私の思い描いていたってアイドル像と少し違うけど、やれる事は只管にやっていこうと思う。
そうすればママみたいなアイドルに一歩前進だしね!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
現場に着けば、機材が徐に置かれている廊下を少し歩きスタジオへと向かう。芸能人は毎日レッドカーペット歩いてるもんだと昔は思っていたけれど、現実なんてこんなもんかと内心ため息をついた。
「……で、大丈夫なの?」
隣でミヤコさんが問いかけてくる。それに笑顔で返した。
「大丈夫だよ〜心配性だなぁ〜ミヤコさんは。」
「大丈夫な人はそんな歩き方しないと思うけれど…」
「…………」
見れば私の右手と右足が一緒くたに前に出ていた。所謂ナンバ歩きである。自分が思うよりかなり緊張しているらしい。
「…もう、ガチガチじゃない。まぁ、分からなくは無いけど。撮影中は私もいるから…」
ミヤコさんにそう励まされながらもスタジオへの道は段々と短くなっていく。
スタジオは結構質素な雰囲気だった。
ふと、見れば様々なスタッフさん達が働いているのが見える。挨拶も程々に控えに向かう。案外気が軽い物だなと思いつつも私は周囲に電球のついた鏡の前に座る。名前はハリウッドミラーというらしい。ハリウッド……ハリウッドかぁ……まだまだ先どころかアイドルで行く人なんて見たことないなぁ…あって、俳優志望くらいだろうか。まぁ、別にハリウッドは最終目標でも何でもないからあんまり憧れはないかも英語も喋れないし…
そんな事をおもっていればふと、それは起こった。
視線が誘導された様な錯覚さえ陥る異常。
それはまるで巧妙な罠に引っかかった獲物の心持ちだった。
風が吹く。
清廉、潔白。言葉にしてみては簡単だが、それは極致だったのだ。
首にかけたレンズが私を見つめている。だが、それは凄まじい違和感でしかなかったのだ。
(ぎゃ、逆でしょ!?被写体がカメラ持ってる!?)
と、その時ルビーは思ってしまった程の異常である。
「今日、星野ルビーさんのカメラマンを務めさせていただきます。白銀かぐやです。」
凛とした佇まいに鈴の様な清廉な声でそう言った。
これが一目惚れという奴なのだろうか。返事を返す事すらままならない。
「よ、宜しく頼み申しますぅ…」
無理に言葉に出してなんか変な感じになった。
目の前の女性は所謂大和撫子然とした如何にも仕事が出来る女性と言った雰囲気を漂わせながらも、その実幼さも残した非常に整った容貌であまり近寄り辛さを感じない。それは薬指に光る指輪が原因か。人妻の余裕と言う奴だろうか。
絹の様な滑らかな黒髪は一纏めにして肩まで伸ばし、その美しさを良く見せつけている。
まるで、名前の通り『かぐや姫』が実在していたのならこの様な雰囲気だろうか。幾人もの男性が虜になるのも頷けると言ったものである。
「……ん、藤原さん……?」
女性は呟く。視線は私のバッグに向いていた。
「どうしたんですか?」
「あ、ごめんなさいしげしげと……そのバッグに付いているストラップが知人に良く似ていて。」
「あ!これ!
白銀さんも観ているんですか!?『かぐや様は告らせたい』」
見せるのはつい先日、近隣のショッピングモールのガチャコーナーで一回だけ回した『かぐや様は告らせたい』のラバーストラップだった。
最近まで異世界通信はこういったグッズ等の販売をしていなかったのだが、【アイドル】のバズりが影響しているのか否か、ここ数ヶ月で大量のグッズが販売される様になったのだ。
「私、藤原書記大好きなんですよね〜。一回で出て来てくれて!嬉しくて!」
「そうなのですか。良いですよね!私も持ってるんですよ。」
そう言うと彼女はカメラに付いているストラップを取り出した。
「あっ!会長!」
そこには鋭い目をした金髪の男性。『かぐや様は告らせたい』のもう1人の主人公とも言える『白銀 御行』の姿があった。
「へぇ!もしかして同じ苗字だから…とかですか?」
「まぁ、そんな所です。仕事で困った時もこれを持っていれば落ち着けると言うか。私にとってはもう半身みたいなものなんです。」
なんかこの人、アニメのストラップに重い感情向けてるなと思いつつも流石に人の心があったので黙っておいた。
それからは様々な話を聞かせてくれた。学生時代の時の話等、話も上手でずっと聞き入っていたのを記述しておく。
「なんだかご機嫌ね。ルビー。」
撮影も終了し、帰りの車の中でハンドルを握ったままミヤコさんはそう問いかけてくる。
何せ、ずっと頬を引き上げたままだった為に違和感を感じた様だ。
「えへへ〜、今日のカメラマンさん良い人だったなぁ〜って!」
「そうね。貴方ったらずっと彼女から離れないんだもの。」
「へへ〜、連絡先交換して貰った〜!」
そうミヤコに見せつけるは先程かぐやから貰ったIDであった。
「まるで母娘でこっちとしては微妙な気分だったわ。」
「そう見えちゃった〜?」
「貴方が子供っぽ過ぎるのよ…。」
そうため息を吐きながらもミヤコは安堵する。それもその筈、ルビーの表情には朝の緊張など微塵も感じなかったのだ。
「そう言えば、『かぐや様』の最新話。まだ観てなかったんだった〜♪」
「貴方ねぇ…マイペースにも程があるでしょう。」
そう言いながらも特に気にした様子が無いミヤコはまた車の運転に集中するのだった。
(あれ?私この先、知ってる…)
ルビーは『かぐや様は告らせたい』の最新話を観ているうちに何処か既視感を感じていた。
特に変わらない配信の筈だったのだが、普通知り得ないこの
原作漫画など、この世界には無いアニメオリジナルの体で配信しているこの作品に配信を見る以外にこの先を知る機会はない。
「じゃあ、なんで知って…ーーーーあ。」
ふと、それこそつい1時間前まで一緒にいた彼女の顔を思い出した。
「白銀……かぐや……?」
目の前の映像がさっき彼女が話していた話と全く被る。
変わる変わる変わっていくシーン。その全てを彼女の実感が籠った語り口で話されたのだ。細かい話も聞いた。この時どうで、どうしてからそうなったのかとか、それを思い出す度この作品への没入感が深く深くなっていった。
だから断言できる。決して彼女の話は人から聞いた話でもましてや作り物の幻想なんかじゃない。
彼女は実際に体験したのだ。
つまり、彼女は……
「四宮…かぐや………?」
「へぇ…貴方よく彼女の結婚前の苗字を知っていわね。」
呟いた瞬間にミヤコさんが話に割って入る。
「彼女、あれでも凄いお金持ちのお嬢様なのよ。四宮グループって言う日本の四大財閥って知らない?」
………ああ、知っている。それこそ『かぐや様は告らせたい』のスポンサーにそこの所有している会社が幾つかあった。
「本当にたまーにだけど何度かそこが所有してる会場とかをB小町で行ったりしたんだけど。その時彼女に会った時はもっと冷たい雰囲気があったのにね。成人したと思ったらあっという間に結婚よ?しかもお相手は高校時代の生徒会長って言うじゃない。はぁ〜、良いわねぇ…ああいう家って今でも柵が多いって聞くけど…あの会長さんって別に良い家とかじゃない一般人でしょ…つまり政略結婚じゃなくて恋愛結婚でしょ?大恋愛の末って感じちゃうじゃない?」
ミヤコが一気に捲し立てた言葉を聞き可能性が確信に変わった。
つまり彼女は……本物だったのだ!
なんかすげぇ人と知り合っちゃったなと思いつつルビーは彼女のIDを見つめた。
お久しぶりです。私は生きてます。
でもここ数ヶ月の小説は全部没になっているのでそう言う意味では死んでます。